鎮守府のまもりびと   作:石器

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第一話 目覚め

母なる海。全ての生きとし生けるの源と言われる海。そこでは数多の生命が生まれ出でては消えていく。この惑星が誕生してから絶えず繰り返されてきた自然の摂理。いかなる生物にも例外なく、等しく訪れる生と死のサイクル。

 

 

 

 

 

 では、突如として世に現れた"それ"は果たしてどうなのであろうか……

 

 

 

 

 陽の光も殆ど届かない海の底の暗闇の中。そこは闇に溶け込む程にどす黒い、朽ち果てた残骸で埋め尽くされていた。

 

 

 

 古い残骸が完全に朽ち果てても、海流に乗って新たな残骸が運ばれてきては堆積する。

 

 

 

 そして今、新たにボロボロのゴミクズの様になった黒い物体が海底に流れ着いた。

 

 

 

 しかしその物体は、まだ微かに脈動していた。それは淡く光る緑の眼をもって、海面の方を見つめる。

 

 

 

 だが、そこには何も見えない。一匹の小魚すらも、その視線の先には存在していなかった。

 

 

 

彼女たちが、またはそれらが、はたまた奴らが何者なのかは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風によって開かれた窓の隙間から陽の光が入り込む。その眩しさゆえに瞳の周りの筋肉が一瞬ピクリと痙攣する。

 

あまりの眩しさにもう一度寝てしまおうかと考える。が、そういうわけにもいかない。

 

まだ寝てたい気持ちを何とか抑え込み、ゆっくりと目を開く。眼前に映ったのは真っ白な天井、そしてしっかりと固定された電灯。

 

 

 

腹部と脚部の痛みに耐えながら、再びゆっくりと体を起こしていく。やっとのことで上体を起こしきると、自分の体の様子を目で確認する。体の各所に包帯が巻かれている。何者かによって治療された様子が窺えた。

 

 

 

頭の中で自分に何が起こったのかを整理しようとし始めたその時、すぐ隣から寝息が聞こえた。

 

俺は思わずその方向に目を向けると女の子が机に頭を突っ伏して眠っており、その子に声をかけてみることにした。

 

 

 

「おい。お前、お前!」

 

 

 

「目を覚ましたの!?」

 

 

 

「確かお前は夕立...だったよな」

 

 

 

女の子は椅子から飛び上がり彼の前へ来た。

 

 

 

「お前が俺をここまで運んできてくれたのか?」

 

 

 

「そうっぽい。私たちがトーヤをここに運んできたっぽい!今提督さんを連れてくるね」

 

「...っぽい?」

 

夕立は部屋の外へ走っていってしまった。

 

「元気な子だな」

 

俺は一人呟いた。

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

それから数分後、部屋の扉をノックする音が響いた。

 

「はい。」

 

「失礼します」

 

 

 

扉が開き、夕立と白を基調とした装いの軍人風の男が入ってきた。

 

「気分はどうかな?」

 

軍人風の男が口を開く。

 

「……体のあちこちが痛みますが、それ以外は特に変わった所はありません」

 

冬也が答える。

 

「あなた方が手当てしてくださったんですか?」

 

「うん。夕立たちが君のことを連れてきたんだ。俺も驚いたよ、まさかいきなり全身ボロボロの傷だらけの男をはこんでくるなんてね」

 

「ありがとうございます。おかけで助かりました」

 

「いいんだよ困ったときはお互い様だ。あとあんまり堅っ苦しい話し方はやめてくれるかな。それにみた感じ俺達年も同じくらいだろ?俺も喋りづらいから...」

 

 

 

「...じゃあそうさせてもらうよ。サンキュー」

 

俺は顔を崩し指し出された男の手を握り握手をした。

 

「さて、自己紹介がまだだったな。俺はこの基地を任されている者だ。所詮、提督という役割を与えられている」

 

「提督......?」

 

「あぁ、名前は荒海湊[あらみみなと]だ。改めて君の名前を聞かせてくれ」

 

「俺は清瀬冬也だ。よろしく頼むよ」

 

「トーヤか。なかなかいい名前じゃないか。」

 

「名前で誉められたのなんてはじめてだよ。俺も改めてよろしくな。湊」

 

 

 

「それにしても、5日間も眠ってたから頭に異常が出ててもおかしくないと思ったがどうやら問題ないらしいね。いやぁよかったよかった」

 

自分が想像したよりも時間が経過していたことに驚いた冬也。

 

そこから気がかりな事が浮かんできて湊に質問をする。

 

「一つ聞いて言いか?」

 

「ん、なんだ?」

 

湊が夕立が運んできたフルーツを摘まみながら聞いた。

 

「今、この世界の状況はどうなっているんだ?」

 

あまりにもあっさりとした質問に湊は眉を潜めた。

 

「ずいぶんとあっさりした質問だね。でも5年前から俺たちはどうにか盛り返して、状況もかなり好転してきた。欧州の奪還も成功したしな。」

 

「そうか。それは良かった。それにしても欧州も奴らの手に堕ちていたのか。世界中の主要都市を破壊してまわっていたと聞いたときはどうなるかと思ったけど俺たちにもまだまだ戦う力は残っていたんだな」

 

「...........ん?ちょっと待ってよ。主要都市を破壊だって?確かに奴らの力は強大だけどまだ世界の主要都市を破壊されたなんて報告は聞いたことない、あぁでもハワイは完全に奴らの手に堕ちたらしいけどね」

 

湊の発言に対しトーヤは何をいっているんだと言うように反論する。

 

「いや、何をいっているんだ湊。5年前の隕石の落下、あれに付着していた未知のウイルスによって今世界中で異能力者と非異能力者の戦争が続いているんだろ」

 

「隕石?能力?何の話をしてるんだい、冬也は?」

 

「夕立も全然分からないっぽいよ」

 

話がまったく噛み合わない。湊は目の前の男の言っていることに対して理解が及ばない。何を言っているのかわからない様子の冬也に対して何かを理解したかのように湊は頷いた。

 

「冬也、今度は俺から質問する。君は、深海凄艦って知っているか?」

 

「シンカイ……セイカン?いや、初めて聞く言葉だ」

 

「艦娘という言葉に聞き覚えは?」

 

「……ないな」

 

 

 

その後も湊は、冬也に向けて質問を繰り返す。

 

 

 

そして、一通り質問をした後に

 

 

 

「最後に、ここに来る前にお前は何をしていたのか話してくれ。もし話しにくい事があるのならば、無理して話さなくてもいい、もし話してくれるなら今の君の知っているこの"世界"の現状とどうして海に流されていたのか、そしてどうして龍に似た姿の生物に変身できるのかを...話してくれ」

 

「!...湊、お前、夕立から聞いたのか」

 

「あぁ」

 

そういうとさっきまで眠たそうに二人の話を聞いていた夕立が目を細く開き、申し訳なさそうな目で冬也を見つめていた。

 

 

 

「ごめんなさい...何があったのか提督さんに聞かれてあなたが龍みたいな生き物に変身して私たちを守ってくれたことを全部喋っちゃった...」

 

 

 

「いや、いいんだよ別に。お前たちには命を助けてもらった恩がある。そんなことで責めたりなんてしねぇよ。少し長くなるけど、俺がどうして海に流されてたのかを話すよ」

 

 

 

湊と夕立は笑顔になり彼の話を聞き始めた。

 

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