「私たちが、何者か...ですか?」
「はい」
冬也は自身の腕は止めずにの目を見てはなし始めた
「湊にあなたたちのことを聞いて、本であなたたちのことについて少しは詳しくなれました。
はっきり言って艦娘は謎が多過ぎる存在です。
科学が発達した現代突如として現れた深海凄艦、やつらは現代兵器の攻撃ではほとんど効果がなく戦艦クラスや空母クラスに至ってはミサイルの直撃ですらかすり傷で済むほどらしいですね」
彼は鳳翔を目を細くして見つめた。
「そして世界中の海路が分断されて人類は窮地に立たされた。
某国は戦術的核の使用を行うがやはりこれも効果がなかった。誰もが人類絶滅という言葉が頭をよぎったその時、艦娘が現れて人類に味方し、現在では制海権を5割り近く取り戻すことができた。
これがこの世界の近代の歴史だそうですね」
鳳翔は冬也を見て首を傾げた。
「あの…あなたは何が言いたいんですか?」
「えっ、あぁ…すんません。今の話は今から入る本題への 前置きみたいなもんですよ」
冬也は一瞬だけ笑顔を見せたがまたすぐに先程の真剣な表情に戻った。
「各国は最初は艦娘も深海凄艦の仲間なのではと警戒していた。けれど命を懸けて戦う彼女たちをみた世衆が艦娘の支援等を国に要求し、艦娘が望む提督となる者の排出等が行われることになった」
彼は一度深呼吸をした。
「僕が言いたいことはですね、鳳翔さん。もしも人間と艦娘が深海凄艦との戦いに勝てたとしても、あなたたち艦娘が人として生きていけるか分からない、ということです」
「強い力は争いが終わってしまえば不要となり、それは結局世界中の脅威となってしまいます。もしかしたらあなたたちは迫害を受けるかもしれません。
人権を得らえないかもしれません。
もっとひどい場合は、別の新しい兵器を作るための実験材料にされるなんてこともあるかもしれません。
そんな危険があるというのにあなたたちは戦い続けるんですか?裏切られるかもしれないのに?」
気づけば外はオレンジ色の空で染まっていた。
鳳翔は手を止めずに考え始めた。初対面にも関わらずはっきりと本来聞きずらいことを聞いてくる彼に少々驚いていたが、彼の度胸に免じて質問にしっかりと答えることにした。
「冬也さん。あなたの言いたいことは分かりました。確かに私たちは人間からしたら深海凄艦と同じくらい脅威となりえるでしょう。それに私はもう退役をして後方支援のみを行っている身、だから艦娘のことをおいそれと言えるわけではありません。」
鳳翔が退役しているということを知らない冬也は少しばかり目を見開き驚く素振りをみせた。艦娘たちの数少ない娯楽である飲酒、居酒屋の『鳳翔』を開いていることは知っていたが非戦闘員だということは知らなかった。
「なるほど。でもあなたたちは人とは認められていない。それに現状艦娘という意思を持つ兵器は日本では危険視されているんですよ?
元より日本は戦後に武力を持たないことを決定している。
にも関わらず今再び世界トップレベルの軍事力を持っていて人類総発起の時代だというのに世界から批判を浴び、戦争に勝った後は艦娘を全て日本以外の国に引き渡せという連中もいるそうですね…
もしかしたら戦後の長門や酒匂のような目に逢いかねませんよ...」
「それでもあの子達は日本を…世界を守るために戦います。それに中には電ちゃんのような深海凄艦との和解を望む子もいます。今人類は妖精さんや艦娘の技術協力のもと新しい武器や兵器を開発して徐々に有利に立ち回っています。
だからきっとあの子達は成し遂げてくれるでしょう」
「信じているんですか」
「あの娘たち自身を」
鎮守府はすでに青い影の中にすっぽりと飲み込まれていた。海だけがぽっかりと空の赤を映している。あちこちの斜面に、ピンク色の夕もやが湧き立ちつつある。町の上空を舞うスズメが、放課後の埃みたいにランダムにきらきらと輝いている。
「最後にもうひとつ」
「はい」
「空母の母と言われ、終戦まで生き残ったあなたは、たくさんの艦たちが沈んでいく姿をみたはずです。
そしてその艦たちが沈む原因となったアメリカ艦…連合国の艦娘がこの鎮守府には多く所属しています。
俺にはかつて敵だった連中と共に戦える理由が分からない。何故共に戦えるのですか」
鳳翔は眉間に手を当て少し考えると
「そうですね。先程も言いましたが私はもう戦わないでいる身。ですがあの娘たちはきっと、嫌々共に戦っているわけではないと思います」
「...........」
鳳翔が何を言っているのか分からないという顔を冬也はしている。
「海外の娘たちも日本の娘たちも生まれた場所や考え方も違っていても皆生まれてきたのは人々を守るためです。人を守るということに生まれや考え方の違いは関係ありません。だから互いに手を取り合って戦える、私はそう思いますよ」
2人の間にまた数分沈黙が訪れた。
気づいた頃には洗濯物は畳み終わっていた。
「…俺がいた世界では生まれや考え方が違うだけで嫌いあったり殺しあったりなんてことは当たり前だった。
そんななかで国も違ってお互い敵同士だったのに共に戦えるあなたたちが羨ましいです…」
「冬也さん?」
「でも、あなたのお陰で気になっていた事が解決しました。ありがとう…これからも、よろしくお願いします。鳳翔さん」
冬也は鳳翔を見て顔を綻ばせ笑顔を見せた。
とても清々しく憑き物がとれたような笑顔だった。
「はい。改めてよろしくお願いします」
俺は今湊へ仕事が終わったという旨の報告をしに執務室へ向かっている。
だが鳳翔さんには悪いことをしてしまった。
いきなりデリケートであろう話を聞いて自分が満足したら話をバッサリ切って、そんな話をしだした自分が小っ恥ずかしくなって「湊に報告をしてきます」と言って出てきてしまった。
それにしても、
(人を守ることに生まれや考え方の違いは関係ない)...か。
俺がもといた世界ではもうきっと...無能力者の人間は全員殺されてしまっているだろう。
結果として、俺たちの世界ではみんながみんな、分かりあうことは不可能だった。
結局、過去の歴史と同じ失敗を繰り返してしまった。
冬也は執務室にたどり着くとドアノブに手を着け開けると同時に警報音が鎮守府中に鳴り響いた。
俺が、仲間たちみんなが求めていた理想の世界ってのはこの鎮守府のような世界の事なのかもしれないな...
湊の横に立っている艦娘一大淀が配線ビッシリが繋がっているマイクを取り
『緊急連絡!緊急連絡!沖合の灯台にて重巡リ級と戦艦ル級が発見されました!待機中の艦娘は全員艤装を持って集まってください!繰り返します!重巡リ級と戦艦ル級が発見されました!待機中の艦娘は全員艤装を持って集まってください!』
「ん!、冬也!お前仕事は終わったんだな!今近海に深海凄艦が発見された!お前は部屋に戻って待機していてくれ!」
ここが、俺が求める理想の世界だとするならば俺は今度こそ守りたい。自分たちみんなの力で、協力して、守ってみせたい。
冬也は湊に歩み寄り彼の肩を強く握った。
「艦娘たちに艤装を着けたり集めているうちに奴らは攻めてくるだろ?
俺が時間を稼いでおく」
「いや今回の相手は戦艦クラスだ!重巡や軽巡を相手にするのとは訳が違う!さすがの君でも危険だ!」
「大丈夫だ。これも仕事の一貫だよ」
そう言い俺は自身をもうひとつの人ならざる龍人としての姿に変えた。湊の隣にいた大淀は驚いて目を丸くしていた。
「じゃ、行ってくる」
残業の開始...だな。
PM ??:??
一アメリカの某研究施設一
もしもここを東京ドーム換算をすると5個分入るか入らないかというサイズの地下施設。
そこには白衣を着た男女が1m50cmはあるであろう巨大な砲のようなものををいじくり回していた。
砲の持ち手には何か青く発光しているエネルギーが注入されていた。
「やっと完成しましたね。」
「あぁ、これさえあればあの化け物どもを海の底に沈ませてやれるな。
それにあのジャップの横須賀のミスタミナトに一泡吹かせ、我々アメリカこそが最強の軍事力を持つと世界に知らしめることができる。」
「あなたのジャパン嫌いは変わりませんね。それに一泡吹かせるって、ミスタミナトは敵ではないんですよ?
にしてもこれ、本当に素晴らしい性能ですよ。これほどコンパクトにプラズマ砲を造ったのは我々が初です」
「それに只のプラズマ砲ではない。こいつは放射状に衝撃波を放ち、正面から食らえばいかに深海凄艦と言えどその身体を維持することはできずにドロドログチャグチャのシチューになる」
「えぇ。それでは長官に完成の報告を…」
と、女性の研究員が受話器に手を掛けた時、
ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ…
施設全体が波に揺れる船のように大きく揺れた。
「!?」「何っ!」「地震か!?」
地震に慣れていない研究員たちは揺れに恐怖し、しかも揺れは徐々に強くなってきている。
施設の床に大きなヒビが入りその中心地から口元にシュレッダー、側面に先端が機銃になった触手を無数に付けた巨大なワームが出てきた。ワームは体をくねらせ施設を破壊してまわる。
「きゃあっ!!」「なんだコイツらはぁっ!!」
そして突如急停止し、その背中がバクリと割れ巨大なバイザーを着けた深海凄艦が出てきた。
「し、深海凄艦!?」「なんでこんなところに!」
謎の襲撃者に研究員たちは恐怖し逃げ惑う。
バイザーの深海凄艦は自身の目の前にある巨大な砲を持ち上げワームの胴体に持っていこうとしている。
砲を固定していた器具がバキバキッと音をたてて破壊され、深海凄艦は砲を奪おうとする。
「まずい!アレが奪われる!」
「近くに艦娘はいないのか!」
「演習をしていたとWest VirginiaとLexington級が上にいます!」
「今すぐ呼んでこい!アレを奪われるわけには行かない!」
艦娘を呼ぼうとした人間たちをワームの機銃と触手が撃ち殺し、握り潰し、刺し殺し、殺害していった。
施設内には人々の悲鳴と怒号が飛び交っていき、深海凄艦は既に新兵器の砲をワームの背中に収納を終えていた。
そこに銃撃音と爆発音に気づいた2人の艦娘、LexingtonとWest Virginiaが施設に入ってきた。
「What!?なぜここに深海凄艦が!?」
「Shit!迎撃するわよ!OpenFire!」
彼女たちは装備していた艤装を一斉射しバイザーの深海凄艦を狙い打つ。
弾は全て着弾し、轟音が響く。だが全弾彼女を庇うように前に出てきたワームの体にあたった。
だが演習用の弾ではほぼ効果がなかった。
「ほウ、お前たちは確かレキシントンとウェストバージニアだったな。この前の欧州では同胞が世話になったナ」
そう言い自身の右手に縫合していた51cm砲を彼女たちに向け放射した。
ウエストバージニアとレキシントンはすんでのところで回避をするが爆発の衝撃で飛び散った破片が彼女たちに直撃する。
「うぐっ!」
二人の艦娘が一度施設から引き上げて行くのを確認するとワームは身体をのたうちまわらせ施設全体を破壊して回った。
この一晩のうちに施設周辺は更地になってしまっていた。
冬也が鳳翔をさん付けで呼ぶのは本能的にそう呼ばなきゃいけないと感じたからです。