思い付きからの衝動書きですので期待せずに
新世界にある"ワノ国"より東に位置する冬島。
そこは和服姿の人々が住む島。
彼らは標高が高い土地に住み、またその文化も非常にワノ国に似ている。
だがここはワノ国以上に閉ざされた島である。
まさに断崖絶壁と言える崖の上にある城とその城下町は、海岸より恐ろしく長く伸びる階段をひたすら登ってやっと辿り着く程の高さである。
だがその程度の不便性から孤立したわけではない。
どういうわけか島を囲む霧が、島の磁気を阻害しているようなのだ。
ログポースは役に立たず、エターナルポースですら島の外に出てしまえばここを指し示すことはない。
島に渡る方法を知るのは唯一ワノ国だけであるらしいのだが、長年に渡り
島の名前は"アシナ"
源より流れ出ずる水をこよなく愛する民の住む島だ。
アシナの中心であるアシナ城の城下町、そこですら既にかなり標高の高い位置に属している。
だがそこからさらに島の奥に位置する山"金剛山"の中腹には"オチ"と呼ばれる村がある。
どういうわけかこのアシナは高ければ高いほど気候が穏やかになると言う性質を持っている。
このオチもその例に漏れず、城下町のような冬の気候ではなく秋のような気候となり、そこら中に紅葉を散らした鮮やかな色彩を持つ村だ。
そしてこのオチは仏教の盛んな土地であり、アシナの仏教の聖地として有名だ。
そこには小さな村には似合わないような立派な"
元は昔にこのアシナを開拓したという"仙峯上人"が建てたとか。
・・・だがこの立派な寺は荘厳な静寂とは違う静けさに満ちていた。
よく耳を澄ませば聞こえる小さな呻き声。
本堂の中を覗けば痩せ細った人々が幾人も石畳に敷かれた
この仏の住まう村は今、飢餓により滅びようとしていた。
「オボロよ、どうか聞き分けてください」
その寺の本堂よりさらに奥に位置する奥の院。
そこで上等な着物に身を包んだ小柄な少女が老婆を優しく説いていた。
オボロと呼ばれた老婆は涙を流しながら首を横に振り続ける。
「御子様・・・それだけはいけませぬ・・・!神々を喰らうなどとは・・・!」
老婆はやせ細った身体を必死に動かして訴える。
頭を荒れた畳に擦り付け、目の前の少女に心変わりするように請いている。
もはや飢えにより満足に動かせないであろう身体はまさに気力だけで保っているようなもの。
しかし小柄な少女はそれを見ても目を閉じて微笑みを浮かべながら顔を横に振った。
その上等な着物のせいで隠れてはいるが、少女の顔も頬がこけ、恐らく身体も老婆と同じくやせ細っていることがわかる。
しかしその穏やかな表情を絶やすことなく浮かべている様を見れば、そんな優しさの中にある強かさを見出すことがきるだろう。
そしてそれは目の前の老婆に対する意思表示に他ならない。
この話だけは譲るわけにはいかないのだと。
「オボロよ・・・」
「あれは仙峯上人の残した遺物・・・神々を練ったと言われる実・・・あれを食べるなど、何人たりとも犯してはいけない大罪でございまする・・・!」
「オボロよ・・・・・・」
「飢餓とは言え口にするべきものではございません・・・さらなる災いが村を襲いまするぞ・・・!!それでもよろしいのですかぇ?民はあなたを恨みながら死に絶えるでしょうな・・・?」
「・・・」
「そのような厚顔無恥な・・・「オボロよ」・・・!」
徐々に目を鋭くさせて力強く訴え始めていたオボロは、ハッとして少女の顔を見直した。
御子と呼ばれた少女はどこまでも優しい笑みを浮かべてそこに居た。
「もういいのです・・・そのような嘘などつかなくて」
「・・・何故・・・そのような・・・」
「いつから共にいると?それが分からない程私の目は悪くはないですよ?」
「それは・・・」
今オボロの目の前で優しい笑みを浮かべている御子の焦点はオボロを捉えてはいない。
すでに目が見えていないのだ。
今のは皮肉ではなくきっとオボロを安心させようと口にした慣れない冗談のつもりだったのだろう。
しかしオボロはそれに返す言葉が見つからなかった。
オボロはただただ悔しかった。
一瞬でもこの自身が仕えている主を止められないと思ってしまったが故に。
「ありがとうオボロよ・・・そなたの嘘で私も救われました・・・こんな私でも身を案じてくれる者がいると知れて・・・」
「御子様・・・!」
「私に成させてください・・・
"神食み"
文字通り神を喰らうこと。
かつてこのアシナという島を開拓したという仙峯上人が持ち込んだという実。
それは神々を練って作ったと言われる禁忌の果実。
名を"蛇柿"と言い、大きな柿に似た形に
その模様はアシナに住む白き神・・・白蛇が住まう証でもあるという。
摺りつぶされ、練られた神々はまだその柿の中に生きており、故に食べた者には神々の罰が与えられ、当人のみならず周囲に災いをもたらす・・・とオボロは御子に伝えていた。
しかし御子それが嘘だと気づいていた。
いや、正確には知ってしまっていた。
偶然にも仙峯上人が記した"
まだ目が見えていた頃、奥の院にある恐らく御子にだけにずっと知らされていなかった偶然開いた隠し扉の先、その奥にある木箱に納められているのを。
オボロも既に御子が真実に気づいていたということを察してしまった。
教えたはずのない"神食み"という言葉を知っている時点でそれは明白であった。
だからこそ、全てを知っている御子に返せる言葉はなかった。
"
それこそが神食みに対する神々からの罰・・・或いは力というべきかもしれないモノ。
人を死なずにする力。そして自身も血すら流せなくなる死なずに変えるモノ。
我、死なず。竜の帰郷をただ願う
みな死なず、永く待とうぞ
御子が見つけた永旅経には、そう記されている。
竜が何かはわからない。だが他の記述を見る限り死なずの力は間違いないようだ。
もはや御子もこれに縋るしかないのだ。
例え異端の力であろうとも。
例えこの罪を永遠に背負い続けることになろうとも。
例え神々に受け入れられず、
「オボロよ。蛇柿をここに」
「御子様・・・」
「お願いします。私に成させてください。この飢餓という由々しき事態に最初から何もできなかった私は、せめてそれを成さねばならないのです。私の務めなのです・・・オボロよ・・・蛇柿を
御子は、オボロが自分を想うが故に蛇柿を密かに口にすることを禁じた。
これは自分の務めなのだと、せめて不甲斐ない自分に成し遂げさせて欲しいと懇願したのだ。
その両目は光を写すことはなくともはっきりと力強くオボロを捉えていた。
老婆の両手が震える。身体が震える。
本当は気づいてほしくなかった。
優しい主はその苦しみを背負う覚悟をしてしまうだろうと。
だから例え村諸共飢えで死に絶えようとも黙っているつもりだった。
きっとそれは死より辛いことだから・・・。
しかしオボロは御子の目をみて完全に折れてしまった。
・・・同時に意図せず笑みを浮かべてしまってもいた。
―――なんとご立派になられて・・・―――
オボロは腹を括る。共に地獄に堕ちる覚悟をする。
もしも蛇柿が御子を殺すならば共に死のう。
民を救えどそれは
人々はその永遠に絶望するかもしれない。
その矛先は当然御子に向くだろう。
だがどうであれ、誰が敵に回ろうとも共にあり続けようと。
気付けば震えは止まっていた。
ならば立ち上がらなければならぬ。
飢餓は今も村を蝕んでいる。
一刻の猶予もありはしないのだ。
なのに・・・あぁなのに。
―――足が動かぬ・・・!―――
オボロは既に限界だった。
本当ならば喋ることもできぬほどに。
ただ主である御子を想う気持ちだけでここにいたのだ。
だが限界を超えてしまった。
もはや自身の体重を支えることすら叶わないほどに。
「・・・オボロ・・・?オボロ!」
御子の叫ぶ声が奥の院に響く。
―――情けなし・・・何故立ち上がらぬ・・・!この細枝のような婆でも成さねばならぬことがあるのだ・・・!―――
「御子様。蛇柿ならここに」
「あなたたちは・・・」
オボロは動かぬ足の代わり両手を付いて身体を引きずるように振り向いた。
「アヤ・・・キヌ・・・おぬしら・・・」
「これでワシらも同罪じゃて」
「御子様が身投げをすると言うのならば共に堕ちようぞぇ?」
振り向けば共に御子使える比丘尼である二人の老婆・・・アヤとキヌが錫杖を支えに歩いてきていた。
その手に蛇柿の入った木箱を抱えて。
「・・・おぬしら、その錫杖はどうしたんじゃ・・・」
「決まっとるじゃろうが!そこらへんで大の字で寝とる坊主から盗んできたんじゃっ!」
「困ったのぉ?盗みなんぞしたババアどもは罰を受けなきゃぁいかんのぉ?」
「そうじゃのぅ。そこで這いつくばっとるババアにも
「そりゃぁちょうどええ!道連れは多い方がいいからのっ!」
そう言ってアヤとキヌはなんとか汗を流しながら床を這っているオボロまで辿り着くとその木箱を押し付けた。
「おぬしら・・・」
「ヒィ・・・後は・・・ハァあんたの役割じゃろうて」
「こっちは・・・フゥ・・・坊主から盗んだ杖だけで地獄に堕ちるにゃ十分じゃろうて・・・成すんじゃろう?」
「・・・!あぁ・・・もちろんじゃ・・・!」
オボロは四つん這いになりながら不格好でも必死に木箱を抱えて御子の元へと向かった。
呼吸は荒くなり、空腹でやかましく鳴る腹の音が静寂の中はっきり聞こえてしまい傍から見たらなんと醜い光景だと笑う者もいるだろう。
だが御子はオボロが目の前来るまでその光のない目を背けることなくただ黙ってじっと待っていた。
ただ両の拳だけは、血が滲むほどに握りしめられている。
たった数メートルもない距離をたっぷりとかけて移動しきったオボロは力を振り絞って膝立ちとなり、御子へと木箱を持ち上げた。
「・・・御子様・・・・・・蛇柿を・・・ここに・・・お持ち・・・しました・・・」
「・・・・・・お検め・・・下され・・・・・・」
御子は木箱を優しく受け取り・・・その手を離れた途端オボロは崩れ落ちる。
だが這う這うでオボロの横に並ぶことができたアヤとキヌがオボロを挟むように支えた。
もはやこうまでやって見せた従者に気遣いの言葉は恥の上塗り。
御子は黙って木箱を足元に降ろす。
そして御子が木箱を開けてその手のひらの大きさ程ある蛇柿を手探りで取り出すのを、三人も口を噤んで見ていた。
「・・・蛇柿・・・・・・確かに、貰い受けました」
御子はそう応えた。
これは三人から託されたのだと。
とても穏やかな気持ちだった。
怖くないかと言われればそんなことは無い。
御子もまた人の子、失敗すれば無残に死に、成功しても飢餓は凌げど死なずを蔓延らせる。
いや、本当に飢えを凌げるのか?そもそもこれが本物じゃない可能性すら大いにあり得る。
オボロを説得している間も本当は不安しかなかったが、それも今は感じない。
どんな結果であれ恐れやしない。
共に堕ちてくれる従者がいるのだから・・・。
「みんな・・・ありがとう・・・・・・では、神食みの儀を・・・」
一口。
同時に凄まじい嫌悪感がこみ上げる・・・!
思わず蛇柿を手放してしまいそうになる程に。
だけど神食みは全て
そもそもこんな状況で残すことなど言語道断。
「はぐ・・・ふぐ・・・もぐ・・・」
従者たちが固唾をのんで見守る中、御子はその手のひら大まである禍々しい柿を目の端に涙を浮かべながらも食べきった・・・!
ひどく味が舌に残り不快ではあるが、今はそれを気にしている暇は御子にはなかった。
すぐ身体に兆候が表れるのか?数秒後なのか数時間後なのか、それともさらに後なのか・・・そしてこの身に訪れるのが無残な死なのか、それとも凄惨な呪いなのかもわからないのだ。
やはり一抹の不安は拭い切れない。
「み、御子様?」
「お身体の方は・・・?」
「いえ・・・特に変わったことは・・・・・・?」
その時、唐突に世界が白く染まった。
それは一瞬の事ではあるがあまりの眩しさに脳が驚いたのか反射的に目を固く閉じた。
もしや、と思った。
御子が恐る恐る目を開くと薄暗い部屋の中に、確かに三人の老婆の顔が浮かび上がった。
まだひどくぼやけるが間違いない。
「オボロ・・・アヤ・・・キヌ・・・?」
「御子さま・・・!?目が!?」
「なんと!?・・・これが竜胤の力・・・!?」
「おぉ御子様ぁ、良かった・・・これで・・・「ポロッ」・・・・・・はぇ?」
御子の目の端より流れ出でた涙が白い細長い粒になって落ちた。
「え」
「ほぇ?」
「んぁ?」
一早く気が付いたオボロはその白い粒を拾い上げた。
―――いやまさかそんな―――
―――いやいやどうみてもこれ―――
「なんでしょう・・・私はまだよく見えなくて・・・」
「「「・・・」」」
妙な静寂の中、さらに御子の涙が白い粒に変わり落ちる。
アヤとキヌもそれを拾い上げ、三人で顔を見合わせた。
パクリ
無言でもちゃもちゃと老婆たちが咀嚼する音が聞こえてくる。
「「「お米じゃぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁ~~~~~~~~~!!!???」」」
「えぇっ!?」
コメコメの実、モデルアシナマイ
これによりオチは飢餓より救われる。
"オチの御子"
後にワノ国でも豊穣の女神と呼ばれることになる女性と、そのお供の話。
続かない
あちっじゃ婆さん=おぼろ比丘尼=オボロ
量産型あっちじゃ婆さん=アヤ、キヌ(オリジナル)
二人の名前の由来は米の品種から
アヤ=あやひめ
キヌ=キヌヒカリ
コメコメの実:詳細不明
モデルは植物由来のためかその"産地"の名前が付けられる
土地の特性に影響を受けるようだが・・・?
食べたのは散々言っていた竜胤とは違う実です
御子たちは見た目が似てるので間違えて保管されていたと認識してます
本物はもちろんあの人へ・・・
尚、この小説は
おぼろ比丘尼=北海道米のおぼろづきでは!?
という仕様もない理由から始まりました
続かないけど掘り下げや竜胤については考えがあるのでいつか暇があればやるかも