僕とやべぇお嬢様は能力者   作:悲しみの向こう岸

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第二話

 とある日の平日、()()()()()()()()()()()()。僕はそれが自分の意志で自由に出し入れできることを知った。

 そしてなんとなく引き金を引いて、実際に撃てる物だと知った。さらに引き金を引いて、反動が強く連射ができないことを知った。

 そして最後に勘に従うまま銃口を自分の頭に突きつけ引き金を引き、この銃に十分な殺傷能力があることを知った。そして──少なくとも自分は()()()()()()()()()()()()を知った。

 


 

 不幸中の幸い……というやつなのだろうか。死んだフリして能力を解除してもらう作戦はどうやら失敗したようだが、川から出ることには成功したらしい。 

 どういうわけか、あの川は底が見えないほどに深かった。だが、だからと言って体が浮上しないのはよく分からないし、この空間も作り出せるのはよく分からない。能力がありすぎではないだろうか。

 一応、僕のも『拳銃を生み出す』と『この拳銃で死んでも甦る』能力だと考えれば二つあるが……それでも納得はできない。

 けれど、もしもあの少女が『川では生物は浮上しない』という能力を持っているならむしろ好都合だろう。川幅は多分10mぐらいはある。水の上でも走らない限りこちら側にはこられない。遠距離攻撃がない少女ができるのは、ずっと撃たれ続けるか、能力を解除するかの二択。能力が解除され、元の場所に戻ったあと僕と少女の位置関係がどうなるかは分からないが、このままだとしても巻き込まれた時の状況だとしても、逃げきれる筈だ。

 目を凝らして少女の足を狙い打ち続ける。まあ、正直そんな遠くの距離を狙ったことがない……というより、そもそもこの能力は最初に使ってから一度も使ったことがないので、ある程度狙いが雑になってしまう。

 日本という国は銃社会じゃないのだから当然と言えば当然だが……こんなことがあるのならモデルガンでも買っておいて練習すべきだったのかもしれない。あまりにも今更過ぎるが。

 

「早く能力を解除してくれないかな!」

 

 距離が離れているという点と銃声で聞こえないかもしれない点からそう大声で叫んでみる。このまま閉じ込められたままというのは困る。早く諦めてもらって、帰りたいところだ……と考えていると、その声を聞いてか少女は川から離れた。

 距離が離れればその分僕は狙いにくくなる。だとすれば弾切れでも待っているのだろうか。普通、ずっとリロードもせずに打ち続けているのだから弾切れはないと考えるのは普通だろう、いったい何を考えているのだろうか。

 

「──!!」

 

 彼女が叫んだようだが、遠いし銃声が大きいしで聞こえない。ただ、彼女は大きく振りかぶって何かを投げてきた。それは想像以上のスピードで、真っ直ぐ僕の顔を目掛けて飛んでくる。

 

「危なっ!!」

 

 遠距離攻撃はないと油断していた僕は反応するのに少しだけ遅れてしまう。ただ、十分な距離があった分、余裕をもって回避できた。

 飛んできた何かは地面へと当たり、その衝撃で石が飛び散る。投げられたそれは恐らく石だろうが……小さいとはいえ、あれだけのスピードで投げられるのはどれだけ力があるんだろうか──そう、考えた時だった。

 

「──ッ!!」

 

 右手に衝撃が走り銃が吹き飛ぶ。油断していた……こんなに早く二発目がくると思っていなかった。けれど、僕は焦らず銃を消し、もう一度右手に銃を生み出す。

 次弾がくるのは早いし、狙いは正確すぎるし、なんか襲ってきてるし、本当にあの少女はいったい何者なんだ、そう考えながらも石が飛んで来た方向に銃口を向けようと振り返る。

 

「……は?」

 

 けれど、目に写った光景が信じられず手の力が緩む。何故なら、僕が振り返った時には少女は既にそこにはおらず、()()()()()()()()()のだから。

 

「さて、これで振り出しですわね」

 

 そのまま少女は華麗に着地し、僕の目の前に現れる。それでも、状況が把握できずに僕は立ち止まったままだ。そんな姿を攻撃するのは嫌なのか、口を開いた。

 

「何を困惑してますの?走り幅跳びの要領で飛んできただけですわ」

「走り幅跳びの要領って、この川の幅は10mぐらいあるんだけど……助走があったとしても普通越えられるものじゃなくない?」

「普通はそうでしょうが私は軽いので簡単ですわ」

「……?」

 

 何度考えても言っている意味が分からない。普通、よく飛ばすならどちらかというと重さより力じゃないだろうか?

 だが、今そんなことを考えたって仕方がない。少女既にありそうだけどは目の前まで来ていて、接近戦はこちらが不利。ならばもう一度距離を取るしかないと川に逃げもうと、少女を避けるように大回りして川へと向かう。

 

「同じ手を使えると思いまして?」

 

 当然、少女は川から僕を遠ざけるように間に入ろうとしてくる。なので牽制として多少は狙って銃を撃ってみるが、弾は逸れ、彼女は恐れることもなくそのまま突っ込んでくる。

 逃げきれないと判断した僕は、もう銃で殴ろうと立ち止まり少女を待ち構えたが──

 

「うおっ!!」

 

 突然飛んできたスニーカーを回避し、体勢が崩れてしまう。そこを彼女が見逃すわけがなく、殴られた蹴られで地面へと突っ伏す。更に少女に上に乗られ逃げることはできなくなった。

 殴られた場所や蹴られた場所が痛み、あまり力を入れられない。仮に力を入れられたとしてもこの少女に力比べで勝てる気はしないが……。

 

「貴方、面白い能力でしたわね。銃という武器を作り出せるのもそうですし、それを使って死んだ振りもできる……貴方が銃で死んでも蘇るだけなのか、その銃で殺されても蘇るだけなのか……気になりはしますね」

「多分、前者かな。試したことはないし、試したくないけどなんとなくそんな気がするよ」

「そうですか。日本じゃあ撃つことも問題ですかね。検証もままならないでしょうし、失敗したら死者がでると考えたら、まあ試せませんよね」

「……ちなみに僕はなんで襲われたのかな?」

「それは連れてからのお楽しみ……と言いたいところですが、抵抗の意思も無さそうですし、先に話しておきますか」

 

 そういいながら少女は僕から降り、立ち上がる。隙ではあるが、この少女の身体能力が異常なのは目に見えて明らかで返り討ちにあう未来しか見えない。大人しく話を聞いていた方がよさそうだ。

 

「さて、貴方はこの日本に我々のような能力者が何人いるのか知ってますか?」

「……考えたことすらないかな」

「そうですか。勘でもいいですから答えてください」

「えぇ……じゃあ、百人ぐらい?」

「全然違いますわね」

 

 ため息をつきながら、少女はそう呟く。そんな残念がられてもヒントも無しに勘で当てようとなるとこうなるのは当然だろう。そこを期待されても困る。

 

「……じゃあ、何人いるの?」

「我々が把握しているだけでも千二十四人、推定では三千人程度はいると考えていますわ」

「へー、それは多い……のかな?」

「五万人に一人と考えれば少ない気もしますが、能力者がそれだけいると考えれば多いでしょう、何しろまだ三分の一程度しか把握できていませんし」

「……で、君はその能力者の能力の把握が仕事ってこと?」

「正解ですわね。貴方を実験場へ連れていってある程度能力の実験してもらって、データを取るのが仕事ですの。ああ、その後はちゃんと元の生活に返しますわよ?」

 

 能力者が持つ能力の詳細の把握。どんな目的なのかは知らないが、彼女の言葉を信じ、詳細を把握した後無事返されるというのならそこまで悪い組織とかでは無いのかもしれない。ただ──

 

「それを最初から話せば、こんな暴力なんて振るわなくていいんじゃないの?これじゃあ誘拐と変わらないでしょ」

「安心してください。記憶は消しますわ」

「それ聞いて何が安心できると思ったの???」

 

 少女は僕の言葉から目を逸らすかのように耳を塞ぐ。証拠隠滅もしてるし、やっぱり悪い集団なのではないだろうか、しかし抵抗は無理そうし、やはり少女の言葉を信じるしか無いのだろうか。

 そう不安になっていると、それに気づいたのか少女が呟いた。

 

「貴方の能力は危険なものですし、色々調べたいこともあるでしょうけど……まあ、明後日には解放されると思いますわよ?学校を休めると思えばラッキーじゃありませんか?」

「学校を休めるって……サボり扱いでしょ」

「ちゃんと連絡はして、忌引きになるようにしますわ。サービスですわ」

「それならまあ──あっ」

「どうかしましたの?」

 

 そこでどうしようもない事実を思い出した。明日……いや、この一週間は学校を休むわけにはいかないのだ。

 

「明日からテストだ」

「──それは不味いですわね」

 

 妙な緊張感が二人に走っていた。

 

 

 

 

 

 

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