ーーー4ヶ月前。
「友哉さんに3-7かー!オレにしてはまあ頑張った方か!」
1人の槍使い、米屋陽介が緊急脱出用のベッドの上で天を仰ぎながら呟いた。
「どうでした友哉さん?オレ最近は足狙いなんすけど!」
『…太刀筋は悪くなかったよ。』
「そ、それだけっすか〜、もっとなんかアドバイス的なの欲しいんすけど」
『…アドバイス?…そうだなあ、強いて言うなら足狙うの割とバレてるよ。…もっとこう、相手に回避されにくい攻め方をしたら決まりやすくなると思う。』
スピーカーの向こう側で淡々と話す彼、樋上友哉の言葉は、短いが的確なものであった。
「あちゃーバレてたかー!もっと幻踊のタイミング絞らないとっすね!」
『…そうだね。でも、陽介らしい陽動する戦い方は形になってきてると思う。頑張ってね。』
そう告げると友哉は個人ランク戦ブースを後にした。
(弧月のポイントが11000…ってことは大体5位か6位くらいか…鈴鳴の村上くんって人が伸びてきてるんだっけ。あんまり個人戦には顔出して無さそうだけど今度対戦してみたいな。)
そんなことを頭に浮かべながら友哉はいつものように音楽をかけ、廊下を歩いていた。今日は友人の迅にわざわざ玉狛ではなく本部に呼ばれて来ていた。そこで偶然米屋と会い、時間もあったため、10本勝負のランク戦を行い、それを終えたので待ち合わせ場所の食堂に向かっているところだ。迅曰く、「会わせたい人がいる」とのことだったのだが。
「おー!友哉!こっちこっち!」
食堂に着くとそこにはいつものように明るい迅と、ボーダー隊員としては似つかわしくない、というか異端ともいえるスーツ姿の男性の姿があった。
「…悠一、今日も元気だね。…で、会わせたい人がいるって言ってたけど、この方?」
友哉は基本的に個人戦しか行わない。また、防衛任務は迅のつてで玉狛支部と合同で行うことが多かった。そのため、あまり個人戦に参加しない隊員の顔は知らない。というか、名前か顔は知ってても一致しないのである。そしてまた、この男を前にした時もそうだった。名前は東や木崎から聞いてはいたが。
「二宮隊の二宮だ。あまり個人戦をやっている訳でも無かったから面識が無いのにも無理はない。」
「…はじめまして、樋上友哉です。…よろしくお願いします。」
二宮匡貴。そうかこの人が、と友哉は心の中で頷いた。射手ランキング1位、個人ランキング2位の実力者だとは友哉自身も知っていた。しかし、実際に対戦したことはなく、記録もほぼ見たことがない。以前たまたま出水と戦っていたところを通りかかったくらいだ。
(そんな人に何故悠一は会わせたがっているのだろう。)
「じゃあ2人とも挨拶できたところで、本題に入りたいんだけどさ、
友哉、二宮隊に入ってみないか。」
「…え!?」
友哉は珍しく大きな声を出してしまった。迅からは前々から「どっかのチームに入ってみなよ」とは言われていたが、こうも具体的に推薦されることはまずなかった。
「急な話ですまない。ただ、迅の言うとおり我々二宮隊としては、お前を隊に迎えたいと考えている。迅からお前のことを紹介されて、記録を見た。噂通りの優れた攻撃手だ。戦術が個人戦に突出している点はともかく、基本的な試合の展開や射程はうちに必要だと感じた。」
迅から勧誘、というか推薦されることははじめてだったものの、それ以前に沢山のチームから勧誘されたことはあった。具体的なところで言うならば、諏訪隊、茶野隊、王子隊、東隊(とはいえ小荒井の独断ではあるが)、荒船隊、柿崎隊、あとは太刀川隊からのオファーもあったっけか。出水がお荷物の面倒見れないとか言って。しかし、
「…ありがたい話なのですが、お断りさせていただきます。」
それらの勧誘を友哉は全て断ってきた。理由は単純だ。自分が入ることによってチームの戦術の邪魔になりかねないと考えていたからだ。先程二宮が述べたとおり、友哉の戦法は個人戦に特化している。数人まとめて相手取るわけではなく、一人一人を確実に仕留める、といったところだ。この戦法がチーム戦になったときにそう上手く作用するとは思えなかった。それでチーム全体の士気が落ちたり、雰囲気が悪くなることを嫌っていた。そして大体その旨を話すとどこのチームも、そう深く問い詰めることはしなかった。ただ、目の前にいる、この男は違った。
「俺の隊でお前の戦い方程度、さほど問題にはならん。」
友哉にとって、それは思ってもない返事であった。実際1度だけどこかのチームにこんなセリフを言われたような気がするが、それは友哉自身の技術にしか目がない、戦力をさっさと上げたい、といったそんな目をしていた。
「うちがお前の個人技に付き合ってられないほど脆弱なチームだと思うな。現に2ヶ月ほど前までは狙撃手を擁した4人編成のチームだった。人数が増えようが、オペレーターの負担に差はない。むしろ個人で動ける駒がいて助かるだろう。また、うちは前線の連携を軸として戦うわけではない。攻撃手はいるものの1人だけだ。そしてその攻撃手はサポートがかなりできる奴だ。お前が前線で暴れ回ろうと、さほどうちの邪魔にはならん。むしろ前線を張ることも狙撃もできるとなるとこちらとしてはありがたいものだ。これでもまだ、お前がうちの負担になる理由があるのか?」
しかし、この男、二宮匡貴は違った。他の隊とは違い、友哉を入れることでどのような利点があるのか、どのように立ち回るのかを自分たちの力量に沿って既にプランニングしていた。そして、どの隊よりも、淡々とした口調ではあったが、熱く、真剣な眼差しを向け、この勧誘に全力を注いでいるように見えた。
「あと、ちなみに言うと二宮隊の面々は結構寡黙な人多いから、友哉と気が合うかもよ?」
「ふんっ…寡黙で悪かったな迅」
「あらら怒らないでよ二宮さん、、」
ただ、迅の言うとおり隊の雰囲気に馴染みやすいとわかったのは、かなりありがたい情報だった。自身があまり口数が多い方ではないので、チームに馴染めるかは心配だった。しかし、迅の言うとおりなら、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。
「…少し考えさせてください。…来週までに連絡する形でよろしいでしょうか。」
「いや、今すぐ決めろ。」
友哉は驚愕した。こんなに大事なことを今すぐって、どういうことだ!?何か裏の事情でもあるのか、?実は自分が人気物件だったりして他の隊に取られたくないのか、?いや実際オファーは沢山来てたけども。
「今シーズンのランク戦のエキシビションが4日後に控えている。竹富が考案したそうなのだが、今シーズンで目まぐるしい活躍をしたチーム同士で模擬戦を行う、だそうだ。そこにお前を入れたチームで挑みたいと考えている。試験的にチームとしての動きを来シーズンまでに確認しておきたい。お前がチームとなったときにどの程度動けるか、連携できるかを、な。」
ここまで先を見越してのこのタイミングだったのか。と友哉は頷いたと共に確信した。
(こんなに熱意のある、先見の明もある人に応えなくてはいけない…!)
「入隊させてください。二宮隊に。」
友哉のその言葉は力強く、そして二宮に劣らない気迫あるものだった。
「協力感謝する。では今からチーム戦の訓練があるので参加してもらう。隊室に案内する。ついてこい」
こうして、友哉の二宮隊としての生活は始まった。
不慣れな文章ですみません。
戦闘描写はまたしばらくしたら出てくると思います!