ーーーーー3時間後、二宮隊隊室にて。
「いやー、やっぱ樋上さんはえげつないなー。タイマンだと勝てる気がしない。」
訓練室から出てきた二宮隊銃手・犬飼澄晴はサブマシンガンをしまいながら苦い顔でそう言った。
「…あまり戦ったことないけど犬飼くんの動きもなかなかだよ。…銃手の強みをよく理解してて、シールドの使い方も面白い。」
タオルを手に取りながら友哉は犬飼にそう告げた。
「いやいや、樋上さんの攻撃の密度半端ないですよ。あれ1人で凌げる人間いるの!?辻ちゃんと組んでやっと捌けるレベルだし。」
「攻撃手同士なのになかなか間合いを詰めることができない。旋空の射程も相当ですね。樋上さんの攻撃を捌ききったとしても、反撃に転じるには踏み込むリスクを背負わなければならない。」
冷静に分析を重ねるのは二宮隊の攻撃手・辻新之助だ。彼もまた自前のお茶を飲んでいる。
「1対1、ないし1体2での実力は確かだ。だが、その前に行った2対2の訓練では、味方の犬飼との連携がぎこちなかった。1人で戦うことに慣れすぎている。少し休んだら次は俺1人を3人で相手しろ。樋上、お前は味方のことを頭に入れて戦闘に挑め。仮にお前のしくじりで味方が落とされた場合、いくら個人技が優れているとはいえ、お前1人で敵全員を捌ききれると思うな。」
「…了解です。」
模擬戦の様子を眺めていた二宮の口からは厳しい言葉が飛んだ。
確かに友哉は、防衛任務を除いて味方が複数いる局面を体験したことがない。また、防衛任務においても基本的には単独で行動する、ないし玉狛と合同で任務にあたるため、集団での戦闘が頻繁に発生するわけではない。1番最後にした集団戦らしい集団戦といえば、那須隊との合同防衛任務中に狙撃手の日浦の背後に現れたモールモッド5体を、近くにいた熊谷と共に片付けたくらいだ。共にといっても、友哉の初撃の旋空で3体ほど散っていったが。
「次は頼みますよ樋上さん。さっきの二宮さんの全攻撃追尾弾(フルアタックハウンド)ガン無視で特攻とかはやめてくださいね。」
「確かに誘導半径を見切って前に出るのは得策ですが、犬飼先輩はそれで落ちてるので、そこは見落とさないようにお願いします。」
「…わかった。俺なりにやってみるよ。」
友哉は後輩からも苦言を呈されたが、気持ちを切り替えて訓練室に戻っていった。
「始めるぞ。」
『模擬戦開始』
開始の合図が鳴り響いたと共に二宮は通常弾を生成。独特な菱形のような分割がなされた弾丸が襲いかかる。3人はそれぞれにシールドを出しながら各々の防御を…と言いたいところだったが、1人違う男がいた。
(…自分だけが生き延びるようにじゃなくて、味方もしっかり守らなければ)
「…!?」
「ひ、樋上さん!?」
「弾丸を、全て叩き斬った…!?」
友哉は二宮が放った通常弾を全て孤月とスコーピオンで相殺。しかも動きを制限するために散らすように放たれた弾丸を全て斬ってみせた。
「…ほう。やってくれるな。だが、お前はその方法で犬飼と辻をカバーできるのか?」
二宮は次に両手から通常弾を生成。これもまた散らすように放たれた。
(二宮さんが全攻撃に入った。シールドを生成できない今のうちにおれが撃ち返したいところだけど…)
「(…犬飼くん、俺がもう一度弾を捌くから二宮さんに仕掛けてほしい。)」
「(了解です。辻ちゃんもいるので1人で全部捌かなくてもいいですからね、!)」
「(撃ち漏らしは俺がガードします。)」
そうして犬飼は頭上から山なりに追尾弾を発射。辻は犬飼のカバー、友哉はもう一度弾を捌こうと試みる。
(…さっきより弾の数が倍くらいあるけど、落とせない量じゃないな。)
孤月を振るった、次の瞬間
ーーパキッ
先程は難なく落とせていたはずの弾が、落とすどころか友哉の孤月の刃を砕いた。
「なるほど、次は捌ききれないように威力重視にチューニングしたってわけね。樋上さんこれは一杯食わされたなー。」
「ふんっ…。いつまでも同じ手が通じると思うな。確かに刃で弾を斬る方法もあるだろうが、相手が対応してきたら終わりだ。現にお前のその選択で、既に3点取られている。藪から棒に剣を握るのはやめろ。」
そして二宮の放った雨のような弾丸は、3人を確実に捉え、犬飼や辻が展開しておいたシールドをも貫通し、試合は終わった。
(個人戦の慣れはあるものの、あいつは自分の実力に縋っているな。いや、味方を信用していないと言うべきか。チームとしての時間をより増やす必要がありそうだな。)
そんなことを考えながら二宮もまた、訓練室を後にした。
ーーーーーそれから1時間後。
「炸裂弾」
「…全防御。…犬飼くん!」
「捉えてますよ!通常弾!」
「樋上さん、防ぎきれない弾は俺が落とします。トドメを」
「…了解」
二宮が生成した炸裂弾の弾幕を掻い潜り、友哉はグラスホッパーで一気に二宮との距離を詰める。
(…ここまで詰めれば、旋空の射程内だ)
「ふんっ…、悪くない動きだ。犬飼の追撃も生かせていて、先程よりも形になっている。だが」
「…!?」
ここで二宮は寄せにかかった友哉に炸裂弾を直撃させる。友哉の胴体に無数の穴が空いてしまう。
「俺の勝ちだ。」
「…いいや。俺たちの勝ちです。」
刹那、辻の旋空が友哉ごと二宮を捉えた。二宮からすれば完全に死角であり、防御する隙を与えなかった。
「ふんっ…、少しは仲間を使うことを覚えてきたか。」
その言葉を残して友哉と二宮は緊急脱出した。
訓練室を出た先で、1人の金髪の女の子が待っていた。
「皆さん長い間お疲れ様。」
「…あの、失礼なことをお伺い致しますが、どちら様でしょうか。…あ、いや、基地で顔は見たことあるのですが、名前と一致しなくて。」
「いやいや樋上さん、女の子の名前忘れたらダメでしょ。」
「あはは、忘れるのも仕方ないですよね、あんまり一緒に仕事しないし。改めて、二宮隊オペレーターの氷見亜季、17歳です。二宮さんから事情は聞いています。これからよろしくお願いします。」
「…この子が氷見さんか!これは大変失礼いたしました。自分としたことが、申し訳ない。」
「いえいえ、構わないですよ。これから覚えてくださいね?」
そう言って氷見は手にしていたタブレットを開いて友哉に見せた。
「これが樋上さんの新しい隊服のイメージです。といっても、スーツに変わりないのですがね。」
「…おお、これが二宮隊の隊服…ちゃんとフォーマルだ。」
「ちゃんとフォーマルってどういうことですか樋上さん。二宮さんに怒られますよ?」
と犬飼も交えて談義しているところに、ペットボトルを捨てに行っていた二宮と辻も合流した。
「これから飯だ。折角樋上も加わったんだ。俺が肉を奢る。」
「え、二宮さんまた肉ですか??」
「文句があるのか犬飼」
「いやー、文句というか…」
と犬飼がぼやこうとしたとき、
「いやいや、文句というより大歓迎だよ二宮さん。」
まるで未来予知していたかのように(というかしていたんだろうが)友哉の唯一のお友達の実力派エリート迅が乱入してきた。
「つまり、こういうことだ犬飼。」
「いや、こういうことだというより二宮さんのお財布大丈夫なんですか?」
「迅に関しては金を出すとは言っていない。自腹で食え」
「そう言われると俺のサイドエフェクトも言っていたよとほほ…」
というわけで迅を含めた6人で二宮が足繁く通っている焼肉屋「寿々苑」へと向かった。
次回、個人的に原作でも大好きな焼肉回です!
私は食べ物に目がないのです笑