シャンフロ恋愛異聞譚   作:戯れ

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あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……!
Twitterで、ヒロインちゃんが胸部装甲にラーの翼神竜―球体形を2積みしているとの爆弾が投下されて、休日を迎えた俺は4時間掛けて1万字のサンラク×ヒロインちゃん物を書いていた……!何が起こったのか(ry

勢いで書いたものなので推敲も何もしていない
それでもおk?



追記
ドチャクソ誤字だらけの状態は修正いたしました。報告を下さった方、ありがとうございます
勢い最重点で書いていたとは言え、ヒロインちゃんの名前間違えてたのは我ながらショックだったよ……

追記2
誤字報告受けて修正したけど、レジストの効果って展開と逆じゃね―か
元々はタブーと間違えてたし、タブーの印象がアクセルの効果とレジストの名前でごっちゃになってましたね……
えー、本文に出てくる飲料は斎賀印の極めて特殊な飲料でレジストの効果が逆転したということで文章を修正しました
あと改めて読み直してちょいちょい手直ししました。ちょっとでもマシになってれば幸いです……



ヒロインちゃんが胸部装甲にラーの翼神竜―球体形を2積みしているってマ?

「こ、こんにちは、陽務君! いい天気ですね!」

 

「あ、斎賀さん。こんにちは」

 

 いつの日かぶりに、普段使いしているコンビニで斎賀さんとエンカウントする。

 こうしてコンビニで斎賀さんと偶然出会うのも、随分と久しぶりな気がする。具体的には丸三年くらい時間が経っているような……いやそこまでじゃねーよ、なんでそんな気がするんだ?

 

「斎賀さんは何しにコンビニまで?」

 

「え、それはもちろん陽務君に会……いえ!!! そうです!!! 気分転換のお散歩です!!!」

 

「え、うん」

 

 何故にただの散歩に対してそこまで全力なのかはわからないが……いや、何気ないことにも全力で取り組むその意識の高さこそが、シャンフロにおいてトッププレイヤー足り得る理由のひとつなのかもしれない。

 さすがはシャンフロで最高火力の称号を獲得したプレイヤー、斎賀玲。

 さり気なく人としての格の違いを見せつけられた気分だぜ。

 

「日差しも落ち着いて、随分と過ごしやすくなってきたよね」

 

「はい、今が一番過ごしやすい時季、という気がします」

 

 のんべんだらりと、散歩の一貫なのかごく自然に俺の隣を歩く斎賀さんと談笑しつつ、新たに買い込んだエナドリの重みを感じながら帰路を歩く。

 

「そういや、今日はゲリラ豪雨が降るとか予報で言ってたっけ。こんな快晴の中いきなり雨が降るとか信じられ」ゴロゴロ……「嘘でしょ?」

 

 不穏な音を響かせる空を仰ぎ見れば、そこには結構な速度で流れてくる分厚い雲が見えて……

 

 直後、バケツを引っくり返したような雷雨が降り注いだ。

 

「うぇ!?」

「ひぁ!?」

 

 あまりに予想外。俺の発言がフラグになったかのようなタイミングで、尋常でない土砂降りが襲いかかってくる。

 

「ちょ、ま、マジで? こんな事ある? と、とりあえず斎賀さん、どっか適当に雨宿りでき……いや、ここからなら俺ん家が一番確実か。とりあえず俺ん家まで案内するから! 止むまで家で雨宿りしていって!」

 

「へあ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ◇

 

「ふいー、いや参ったね。まさか本当に降られるとは……大丈夫? 斎賀さん」

 

「ひゃい!!! わらひは元気れす!!!」

 

「え、はい。それは何よりです」

 

 バグり方がやや酷目な斎賀さんを尻目に、自宅へと上がる。

 

「ただいまー……あれ、誰もいないのか。まぁ割といつもの事だけど」

 

 母は森、父は海、妹はバイトだろう。心配すべきは海に出ているであろう父がゲリラ豪雨の被害にあっていないかどうかだが……いや、「これくらい海が荒れてるほうが引きがいいもんだ!」とか言って大物釣り上げてきそうな気がするな。まぁ、筋金入りの釣りキチだけあって水泳力もそこそこあるから、仮に海に放り出されても溺れることはないでしょ。ウチの父に限って。

 

「新品のタオルとかどこにおいてあったかな……ごめん、ちょっと待っててくれる? 今なにか拭くもの……」

 

「い、いえ! そんな! ご迷惑おかけするわけにはいきませんから! ……家に電話して、迎えを寄越してもらいますので、どうかお構いなく……」

 

「そう? 別にそれくらい気にしなくてもいいんだけど……」

 

 流石に、雨に濡れた知人をそのままにしておくつもりはない。風邪でもひかれたら心も痛むし。

 目の前にいるのが仮に外道共であってもまぁとりあえず世話は焼くだろう。隙あらば煽り合う関係とはいえ、リアル健康事情に響くような悪質な行為をする気はない。やっていいこと悪い事の区別はちゃんとつけないとね。

 ましてや、なんやかんや仲良くしている、普通に友人と呼んでもいい間柄である斎賀さん相手ならなおさらだ。

 

 とはいえ、他人に世話になりすぎることの後ろめたさというのも理解できる。

 斎賀家のパゥワーを使えばなんとかなるという彼女の言を信じるとしよう。

 

 

(は、早くこの場から離れなければ……!)

 

 まさか、こんなにも突然に陽務君の家に上がることになるとは……!

 余りにも急であったがために、心の準備も何もできてない。今にも心臓が爆発しそうな緊張感……千載一遇のチャンスではあるが、無闇にこの機会に飛びついてしまえば待っているのは……

 

(死……!!!)

 

 いや、その理屈はおかしい。

 と突っ込む理性も既に斎賀玲にはない。

 

震える手を酷使して、携帯端末を取り出し家の番号を呼び出す。

 

『はい、斎賀ですが』

 

「せ、せせせ仙姉さんですか?」

 

『……玲? 一体どうしたのですか?』

 

「で、でで、でかけた先、で、あ、雨に降られて、しまって……その、今は、と、もだちの家に、上がらせて、貰ったのですが……か、体も濡れてしまったので、車を一台……」

 

『………………ふむ』

 

「あ、あの。せ、仙姉さん……?」

 

『そのお友達というのは、以前お招きした玲の懸想する相手ですか?』

 

「へけっっっっっ!?!?!?!?!?」

 

『成程』

 

「せ、仙姉さん? 一体何を考えて……」

 

『玲。実はたった今、車を運転できるものが全員出払いました』

 

「仙姉さん!?」

 

『そのため、今迎えに出せるものが居ません。心苦しくはありますが、そのお友達のお世話になりなさい。体調を崩しては一大事ですからね』

 

「ちょ」

 

『それと、私からの『贈り物』、使うならば今が良いでしょう。改めて言っておきますよ、玲。……既成事実です』

 

「まっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 ガチャ。ツー、ツー、ツー……。

 

 

「あの、斎賀さん?」

 

「………………その、運転の出来る者が、折り悪く全員出払っているそうで」

 

「あー、そうなの?」

 

「お、お世話になっても、よろしいでしょうか……?」

 

 

 ~~……♪

 

「あれ」

 

 映像で見ているときは気にならないけど音声だけで聞くとちょっと残念さが際立つよね、と言われた永遠様ボイスの着信音を聞いて首を傾げる。

 この曲を設定しているのは確か……

 

「お兄ちゃん? なんだろう、珍しい……はい、もしもし?」

 

『あぁ、瑠美か。突然で悪いんだが、お前の服で借りていいやつってあるか?』

 

「は? 何、お兄ちゃん女装にでも目覚めたの? それなら私が完璧にコーディネートしたげよっか!?」

 

『馬鹿違うわそんなわけねーだろ俺じゃねーよそしてなんでちょっと乗り気なんだよ……友達に貸したいんだよ。ゲリラ豪雨に降られちまって……』

 

「え、お兄ちゃんの友達に女装癖がある人いるの?」

 

『んなわけ………………いや、いま家にいるのは普通に女子だよ。つか、いくらそのへん無頓着な俺でも妹の服男に着せるつもりはねーよ』

 

「女装癖のある友達は居るんだ……」

 

『不本意ながら二人ほど心当たりがある』※片方は風評被害

 

「へー……まぁいいや、どうでも。で、貸していい服だっけ。……お兄ちゃんが私の部屋漁るの?」

 

『いやまぁ不快な気持ちもわかるが……こっちもちょっと緊急事態なんだよ。女子に風邪引かせるわけにもいかんでしょ』

 

「うーん……あ、じゃあその女友達さんに代わってもらえる?」

 

『ん? あぁ、そうか。俺入るよか同性の方がまだマシか……わかった。……ごめん斎賀さん、妹と直接話してもらっていい?』

 

 ……

 

『は、はひれましれ! さいがれいともうひまひゅ!!』

 

 やっべ何だこの面白い人。

 

「……あーはい、初めまして、斎賀さん。陽務楽郎の妹の瑠美です」

 

『ひゃ、ひゃい。あ、あの、陽務君にはいつもお世話になっておりまして……』

 

「いえいえ、一先ずそういった挨拶はまた今度ゆっくりということで。雨に降られて大変だったんですよね? 気の利かない兄のことですから、シャワーもまだなのでは?」

 

『そ、そんな! そこまでお世話になるわけには……』

 

「まぁまぁまぁ、別にそんなに気にしなくていいですから。こちらのおもてなし不足で風邪を引かせてしまうほうが心苦しいですし、どうか遠慮なく兄に甘えてください」

 

『ひ、陽務君に、甘え…………!?!?』

 

「………………んふ」

 

 おっといけない、心の声がちょっと漏れてしまった。

 今までのやり取りだけでも、声からしておそらくはかなりの美少女であろうこの人物が、兄に想いを寄せているだろうことは丸わかりだ。

 けどまぁ、あの脳みそをゲームに侵されている愚兄は何にも気づいてないんだろうなぁ……。

 それが、突然の豪雨で体の濡れた状態で家に上がり込むことに……こんな面白い状況はない。

 他人の恋路は応援すべしという永遠様からのお告げもあるし……うん、ここは可能な限り、緊張しいなこの年上の少女のサポートをしてあげるとしよう。

 

「一先ず、斎賀さんのスリーサイズを教えてもらえますか?」

 

『ふぇっ!?!?』

 

「数値次第では、着れる服も限られてきてしまうので。大丈夫です、私口は硬いですし、兄にも絶対言いませんから!」

 

『そ、その……』

 

 コショコショと、おそらくは兄に聞かれるのを恐れてだろう、こっそりと告げられた数値は……かなりのパラメータだった。もし告げられた数値がなんの嘘もないのなら、才覚があれば即日モデルになれてもおかしくない……いやむしろ大きすぎて逆にモデルになれないレベルである。読モとはいえきっちりモデル業をやっている私が言うのだから間違いない。

 

 ていうか……

 

「斎賀さん、ここで残念なお知らせがあります」

 

『は、はい?』

 

「斎賀さんにお貸し出来る服がありません」

 

『え?』

 

「ウェストはそう変わらないようなので下はスカート類を選べばどうにかなるでしょうが……上はちょっと。どんな生活をしたらそんなおっきなモノに育つんですか?」

 

『え、そ、それは、その……』

 

「おっと、今はそんなこと言ってる場合じゃありませんでしたね。まぁ上に関してはちょっと今思いついたことがあるので、置いておいてください。それで、スカートなんですけれど……」

 

 ※少女説明中

 

「見つかったようで何よりです」

 

『本当に、何から何まで申し訳……』

 

「大丈夫ですって。気になるようでしたら、今度兄にご飯の一つでも作ってあげてください。浮いたお昼代で今度は私が兄になにか奢ってもらうので」

 

『ひ、陽務君に、お弁当……!?』

 

「そのあたりは後の楽しみということで……ちなみにですが」

 

『はい?』

 

「そのスカート、既に流行が去ってしまってフリーマーケットに売る予定のものなので、折角ですからそのまま差し上げます」

 

『え、いえそんな! きちんとお洗濯して返却を……』

 

「後で返す品、と思ったら気を遣ってしまうでしょう? だから大丈夫です。どうしても気になるのでしたら、兄へのお弁当一週間で手を打ちましょう。その分兄から私への奢りを豪華にさせる事ができるので、私はそれで全然構いませんよ?」

 

『一週間、毎日……!?』

 

「これで下については解決ということで。あとは上なんですが……」

 

 

 

 

 

 

「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーー………………」

 

 今私は、陽務君の家のお風呂に居る。

 

 もう一度言おう。

 

 今私は、陽務君の、家の、お風呂に……居る。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー………………」

 

 深呼吸してもバクバクと鳴る心臓が一向に収まる気配はない。

 いや、別に何も特別なことなどなにもない。

 単に、ゲリラ豪雨に降られて雨に濡れたから、ただの緊急避難として家で過ごすことを提案してくれた。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 陽務君には、なんの下心もないだろう。

 だから私だって、ここから、もしも『何か』あったら、なんて期待はしていない。

 

 

 

 期待はしていない。

 

 

 

 けれど、ここは陽務君が普段から使っているお風呂場で、つまりはここで陽務君は衣服を脱いで、裸体を晒し、シャワーに打たれ……

 

「はっふっ!!!!!!!」

 

 脳裏をよぎった光景をブンブンと頭を振るって払い除ける。

 

「平常心……平常心です、玲」

 

 何度も何度も、自分自身に言い聞かせる。

 間違っても仙姉さんの言うような既成事実なんてものを目指してはいけない。

 陽務君はきっと、私の事を純粋なゲーム友達としてしか見ていないだろう。

 私の価値は、同じシャンフロをプレイする同志で、最大火力としての能力を持つ、よく役に立ってくれる知人。

 その現実に、少しだけ寂しさを感じてしまう気もするけれど、顔を合わせて会話をすることすら出来ていなかった以前に比べれば随分と前進している。

 欲を出し、一時の感情に流されて強引な手段に出て、全てをおじゃんにしてしまうわけにはいかないのだ。

 岩巻さんからは、もっと焦るべきだというアドバイスを受けてはいるが、即日押し倒せなんて言われてはいない。むしろそんなことはすべきではないと押し止められた。そんな極端なことを言っているのは私と血の繋がっている姉だけだ。

 

「平常心……平常心……」

 

 無茶を言うなと、己の心臓がロックバンドを思わせる抗議の音を奏でているが、それでも私はどうにか落ち着けと何度も言い聞かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーー………………」

 

 今、家で斎賀さんがシャワーを浴びている。

 

 もう一度言おう。

 

 今、家で、斎賀さんが、シャワーを、浴びている。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー………………」

 

 ゲリラ豪雨に端を発した今日の事件は、ふと冷静になってみるとかなりやばい状況ではないかと思う。

 学校において高嶺の花である斎賀さんを家に連れ込み、衣服を剥いてシャワーを浴びせている。

 悪意ある言葉のチョイスではあるが、実際それほど間違ってはいないのが困りどころだ。

 『付き合っているかも』疑惑であれだけ沸き立っていたクラス連中にこの事実が知られれば、吊し上げを素通りして極刑に直行しても何もおかしくはない。

 

 しかし、俺に一切の邪心はない。

 雨宿りするために自宅へと招いた。

 濡れたままでは風邪を引いてしまうので着替えを勧めた。

 冷えた体を温めるためにシャワーを浴びることを提案した。

 それらは全て、純粋に斎賀さんの体調を案じればこそだ。そこになんの下心もない。

 

 ………………いや、正直に言おう。

 

 なんの邪心も下心も、なかった(・・・・)

 

 改めて、少なくとも全校生徒が認める美少女である斎賀さんが、自宅でシャワーを浴びているという状況に、薪としてクソゲーにくべたはずの、俺の青春回路とでも言うべき思春期の少年特有の情動が激しく稼働しているのを感じる。

 もし。まさか。ひょっとして。

 

「いやいやいや」

 

 馬鹿な。

 斎賀さんと俺は、極めて純粋なゲーム友達だ。

 JGEにも一緒に行ったりしていることから、まぁ貴重な友人くらいの立ち位置には立てているんじゃね? というくらいの自負はある。

 とはいえ、だからといってそれがすぐさま恋愛につながるかと言えばそんなことはない。

 男と女で一緒にプレイしていて、ナイスなコンビネーションを披露できたからと言って、調子に乗って「リアルで会いません?」なんて言えば「ごめんなさい直結厨はちょっと……」と断られてフレ登録を抹消されることすらあり得る。

 それが人間関係というものだ。友人として仲良くなれたからと言って、じゃあ恋愛関係にまで発展するかと言えばそんなことはない。男女間であっても友情というのは成立するのだ。

 

「あの、シャワー、ありがとうございました……」

 

「ん、あぁ、どういたしま……」

 

 

 

 絶句。

 俺は、目の前に現れた光景を前に固まってしまっていた。

 

 下に履いているのは、瑠美から貸してもらったスカートである。

 しかし瑠美よ、なんでよりにも寄ってこんな膝上までしかない丈のミニスカートを貸し出したんだ。おかげで斎賀さんの健康的な太ももが半分くらい露出してしまっているじゃないか。

 

 そしてそれ以上にマズイのが上半身だ。

 サイズがないから、という理由で瑠美の服を借りることが出来なかった上に関しては、仕方がないので俺の持っている中から新品の白シャツを貸し出すことで応急処置とした。

 男物なので丈が足りないということはなかったが、大きすぎて若干ずり落ち気味で、上から覗き込めばその双丘の谷間が非常によく見えてしまう。

 しかも斎賀さん、肌着までぐっしょり濡れてしまったのだろう、現在は下着をつけておらず、心なし胸部体積が増加して……いや絶対気のせいじゃねぇよこれ嘘だろ斎賀さんにはキャストオフ機能が搭載されていた!? たたでさえ美少女だったというのに装甲解除で戦闘力が桁違いに増大している!?

 

 というか、その、下着をつけていないせいで胸部の双丘の頂点にそれぞれ小さな………………

 

 

 

 そこまで頭を駆け巡ったところで、ミラーボールに照らされる増殖したディプスロがSNF(サタデー・ナイト・フィーバー)のポーズで「「「「「Foooooooo!!!!!!」」」」」と叫んで居る光景が脳裏に過り、すん……とテンションが落ちる。

 

「さ、斎賀さん? とりあえず服が乾くまで適当に寛いでてくれる? あ、そう言えば乾燥機の使い方大丈夫だった?」

 

「あ、はい。特に問題なく……」

 

「それなら良かった。じゃあ、俺もシャワー浴びてくるから……」

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 思わず、斎賀さんを邪な目で見てしまったことに自己嫌悪。

 俺も所詮は思春期の少年ということなのだろうか……本能的な反応なのだから仕方ないと自己弁護したくもあるが、それでも自分に『ディプスロと同じ素養がある』という一点が思った以上に精神にダメージを刻んでいる。

 『こっちに来なよぉ……サンラク君ぅん?』 と手招きするディプスロの幻影を水晶巣崖に叩き込み、マブダチ達にミンチにして貰うことで心の平静を保ちながら、グッショリと濡れた衣服を脱ぎ捨てる。

 

「シャワー浴びて落ち着こ……」

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 やっぱり、下着まで外したのはまずかったでしょうか……。

 

 まだ秋口ということで薄着にしていたのがまずかったのか、先程の豪雨は下着まで侵食していた。

 だからシャワーを浴びる前に濡れた服一式を乾燥機にかけさせてもらい……そして、シャワーを終えた後で流石に下着は借りていなかったと気づいたのも後の祭り。まるで痴女のような格好で陽務君の前に出ることに。

 彼は何も言っていなかったけれど、少しばかりの逡巡の後にストンとテンションが落ちていた辺り、きっと碌でもない印象を与えてしまっていたのだろうと思う。

 

「やっちゃったなぁ……」

 

 もしこれで、「斎賀さんがそんな人だとは思わなかったよ」などと言われて絶縁を申し出られたらどうしよう。

 そんな不安が頭を過り、ぐるぐると嫌な想像ばかりが頭を占める中で……

 

「あ」

 

 ふと、その存在を思い出す。

 家を出る直前、「想い人のところに行くのですか? では、これを持ちなさい、玲」と仙姉さんから手渡された水筒。

 ちなみに、確かに陽務君に会えたらいいなーという思いを抱いて散歩に出はしたものの、特に約束をしていたわけではなかったので仙姉さんの推測はやや的はずれだったわけだが……ともかく。

 『もうひと押しの勇気が欲しいときに飲みなさい。グイッと』という言葉と共に渡されたこれには、嫌な予感しかしなかったので力を借りるつもりはなかったのだが……

 

「起死回生の一手となるならば……!!」

 

 仙姉さんから手渡された物品がそんな都合のいいものであるわけがないのに、どうしても現状を打破したいという思いに支配されて冷静な判断力を失っていた私は、中身もよく確認しないままにその液体を飲み干した。

 

「………………あれ」

 

 濃厚なカフェインの独特のエグミを孕んだ風味……それに、この舌を焼くような味わいは、まさかアルコー…………。

 

 そこで、私の意識はぷっつりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

 手早くシャワーを浴びてさっぱりとした俺は、斎賀さんを待たせている居間へと戻る。

 戻り際に乾燥機を確認してみれば、乾燥機が終わるまでもう一分となかった。正直あの状態の斎賀さんと長く一緒にいるのはちょっと色々マズイと思っていたところだったので、慌ただしくて悪いが彼女には早々に着替えてもらうことにしよう……。

 

 そんな思いを抱いて居間へと戻った俺が見たのは、床に倒れ伏す斎賀さんの姿だった。

 

「斎賀さん!?」

 

 慌てて駆け寄り状態を確認すれば、普段から血色のいい斎賀さんの顔が尋常でなく真っ赤に染まっている。

 すわ何かの病の前兆かと焦るが、そこで目の前に倒れている水筒の存在に気づく。

 やけに嗅ぎなれた覚えのあるその匂いに引かれてすんすんと嗅いでみれば……。

 

「……ライオット・ブラッド?」

 

 それも、このエグ味の強さからして恐らく、短時間ながら即効性と効力に定評のあるリボルブランタンだ。

 それに、何か他の匂いが……っていうかこれ間違いない。俺はロクに飲んだことはないけど、親父や母さんが嗜んでいたから知っている。アルコールだ。

 つまりこれはレジスト? だがライオット・ブラッドである以上は合法……馬鹿野郎未成年の飲酒はどうあがいても違法だよ!! なんでこんなものがここに!? ていうか斎賀さんこれ飲んだの!?

 

「うっ……」

 

「斎賀さん? 大丈夫?」

 

「は、れ……? 陽務君?」

 

「斎賀さん、とりあえず……これ、何?」

 

「それは……仙姉さんから……何かあったら、飲めと……」

 

 風雲斎賀城で出会ったあの人か……なんでこんなものを妹に預けたんだ?

 まぁ、そのへん詳しく聞くのは後にしよう。

 

ライオット・ブラッドスレで見たレジストの効果はアルコールの効能を無効化するという話だったが、酒のほうが特別なのか最近発売されたリボルブランタンが例外なのかそれともドリンク同士の相性なのか……ともかく、今の斎賀さんは深く酒に酔っているように見える。

この状態では、冷静な判断ってのは期待できそうにないし……。

 

「なんで、陽務君が、うちに……?」

 

「いや、ここ俺ん家……うん、とりあえず水を……」

 

「あぁ、わかったぁ……これは、夢、ですね?」

 

「違うよ!?」

 

 なにやらやばい目つきをした斎賀さんには、俺の言葉は届かないらしい。

 くすりと、妖艶な笑みを浮かべた斎賀さんはそっと手を俺に向けて伸ばして……

 

「のわっ!?」

 

 気づけば視界が旋転する。

 酔っぱらいとは思えない鋭い動きで投げられたのだと気づくのは、背中がソファーへと叩きつけられ、その上から斎賀さんに馬乗りになられたあとだった。

 

「さ、斎賀さん!? ちょ、何して……」

 

「玲」

 

「へ……」

 

「玲って、呼んでくらさい……この前は、そう呼んでくれたじゃないれすか……折角、二人きり……なんれすから」

 

「い、え?」

 

 言っている意味がわからない。

 レジストの影響なのか時々呂律の回らない言葉を吐きつつ、「私は不機嫌です」と主張するムッとした表情で見下ろしてくる斎賀さんを前に、逆らうという選択肢は思いつかなかった。

 

「れ、玲さん?」

 

「玲」

 

「…………玲」

 

「……はい、楽郎くん♪」

 

 表情が一転し、むふふとだらしのない笑みを浮かべながら、甘ったるい声で名を呼ばれる。

 まるで恋人のようなやり取りだ……という意識をどうにかこうにか振り払い、せめて俺だけでも正気にならなければと叱咤する。

 

「あの、玲さん」

 

「むー!」

 

「……玲」

 

「うふふ……なんですか、楽郎くん♪」

 

「その、玲は今ちょっと正気じゃないんだ……だから、な? 一旦水でも飲んで落ち着こう?」

 

「そんなことより楽郎くん、聞いてくらさい」

 

「お願いだから話を聞いて!?」

 

 そんな俺の願いも無視して、馬乗りになった斎賀さんはその上体を倒して……ガッチリと、俺の体に密着してきた。

 

「ん“っっっっっ!!!!」

 

 まつげの本数まで数えられそうな程に近い、視界いっぱいに広がった斎賀さんの顔とか。

 シャワーを浴びただけなのに、脳髄の奥をしびれさせるような匂いを醸し出す斎賀さんの体とか。

 蛇のように絡みつかれているせいでどうしようもなく感じてしまう、押し付けられた太ももや胸部の質量兵器の柔らかさとか。

 今まで意識して排除してきた、斎賀さんの女の子として要素が、俺の心を右ストレートで殴り飛ばす。

 

「はぁ……♪ 楽郎君の、体……うふふっ、思ってたより、がっしりしてます……♪ すぅ……」

 

「ちょ」

 

「楽郎君の、匂いぃ……♪ はぁ……ずっと、ずっとこうしたかった……♪」

 

「さ……れ、玲ちょ、すとっぷ……」

 

「ん……れろ♪」

 

「ひゃん!!!!」

 

 喉元を通った、熱く湿った、ざらついた感触に思わず女の子のような悲鳴を上げてしまう。

 己の許容限界を第二宇宙速度で吹き飛ばす出来事の連続に、視界はぐるぐると周りただでさえ破損していた判断力がゴリゴリと削られていくのを感じる。

 

「楽郎君の、あ、じ……んふふふぅ♪」

 

 

 

 

 

※これ以上はR-18になりそうなので自主規制※

 

 

 

 

 

 目の前に、土下座してる美少女がいる。

 ちょっと倒錯した趣味を持っている紳士諸君であればこの光景に滾る思いもあるのだろうが、極めて一般的な性癖しか持たない俺としては、純粋に心苦しいだけである。

 

「本当に……! この度は、本当に申し訳ありません……っ!!!」

 

「いや、その……」

 

「かくなるうえば腹掻っ捌いてお詫びを……!!!」

 

「いやいやいやいや、そんなことしなくていいから!? あーとにかく、難しいかもしれないけど、お互い落ちつこう? な? 土下座もしなくていいから」

 

「ぅぅぅぅぅぅぅ…………」

 

 ちらり、と顔だけ上げて視線を合わせる。

 そして、恥ずかしさからどちらともなく視線を外す。

 

「その、れ……あ、いや、斎賀さん」

 

「はぃ……」

 

「なんで、なんだ?」

 

「その、仙姉さんから貰ったあれを飲んでから、意識が朦朧として、その……」

 

「いや、そこじゃなくて……なんで、俺なんだ?」

 

 ことここに至っては、流石に自覚せざるを得ない。

 斎賀さんは、俺に対して好意的な感情を持っている。

 それも、ただの友人ではなく、明確に、男女としての特別な感情を。

 酒に酔っていたとはいえ、斎賀さんがなんの好意を抱いていない相手に対してあんな行為に及ぶような人物だとは思えないのだから。

 

 だが、俺は別に異性に好かれる方じゃない。

 というかそもそも、他人との交流に関してそれほど積極的な方じゃない。

 一応、それなりに社交性はある方だと自負しているが、新規に発掘したクソゲーでもあれば交友関係よりもそっちを優先するくらいには、自分で言うのも何だがまぁまぁ人でなしだ。

 

 そんな自分が、学校全体の憧れの的、良家のお嬢様で成績優秀スポーツ万能な完璧超人である斎賀さんから思いを向けられる理由がまるでわからない。

 

「………………きっかけは、ある雨の日のことでした。

 その時、私はとても憂鬱で。それは、他のみんなも変わりありませんでした。

 そんな中で……楽郎君、貴方だけは違ったんです。

 貴方は、本当に楽しそうに、満面の笑みを浮かべて、雨の中を走っていきました

 

 それから、貴方のことを目で追うようになりました。

 いつでもどこか憂鬱だった私には、いつもどこか楽しげな貴方の生き方が、とても鮮烈に写ったんです。

 ずっと憧れていて。いつまでも、見ていたくて。少しでも、近づきたくて。

 それで、ロックロールに足を運んでいるのを知って……この思いが恋なのだと、岩巻さんに教えてもらって。

 だから……」

 

 俺は、顔を覆っていた。

 全くの予想外。完全な不意打ち。

 まだレジストの影響が残っているのか、遠くを見るような瞳で、訥々と自らの心中を語る斎賀さん。

 今の今までこんな風にまっすぐ好意を向けられるというのは、少なくとも現実では初めての経験であり、らしくもなく耳まで真っ赤になっているであろうことを自覚する。

 

「……ごめんなさい」

 

「え?」

 

「迷惑ですよね、私なんか……」

 

「なんで!?」

 

 いやいやどう考えても『私なんか』じゃないでしょうに。

 

「なんでそんなに自信がないのさ……」

 

「そんなの……だって、こんな、恋愛下手な女なんて……らく……楽郎君の前では、不甲斐ない姿を見せてばかりで……」

 

 がっくりと項垂れる斎賀さんは、全身から『やってしまった』オーラを醸し出しており、今にも泣き出しそうな程に落ち込んでいた。

 それを見て、俺は――

 

「………………すぅ」

 

 深く深く、深呼吸をする。

 湧き上がる決意を、自らの内に根付かせるように。

 

 

 

「斎賀さん」

 

「へ、あ、はい! なんでしょうか」

 

「俺は、何かとクソゲーにばかりかまける人でなしで、今までも斎賀さんの気持ちにかけらも気付かずにいた碌でもないクソ野郎だ」

 

「そ、そんな……楽郎君は、何も」

「けど」

 

「そんな俺でも、そうして、まっすぐに好意を向けて貰えるのは、嬉しい」

 

「………………へ」

 

「……斎賀さんさえ、よければ……これからも、俺と一緒にいて欲しい。今までとは、違う形で」

 

「そ、れは……!」

 

 

 

「斎賀玲さん。俺と、付き合ってください」

 

 

 

「………………………………はぃ」

 

 

 

 絞り出すように。

 掠れるような声で。

 けれど、確かに。

 

 彼女は、了承してくれた。

 

 なんとなく気恥ずかしくなった俺は恥じらいで火照る体を誤魔化すように、すっと片手を差し出す。

 

「その、これからよろしくおねがいします……楽郎、君」

 

「あぁ、こちらこそ……玲」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっふっっっっっ!!!!!!!!!!」

 

「斎賀さん!?」

 

 俺と斎賀さんの交際は。

 幸せの許容限界を超えた彼女の鼻から迸った赤い情熱とともに幕を開けた。

 

 




 ウワバミだって一発ノックアウト!
 ヒロインちゃんだって勇気を出せる!
 そう、ライオットブラッドならね。

 この一杯は、あなたの『人生』を『加速』させる―――!

 ライオットブラッド・リボルブランタン

 平行世界にて好評発売中!



※R-18※な部分に関しては、もし要望があったら書こうかな





R18部分要る?

  • 要るゥ!(鉄の意志)
  • (゚⊿゚)イラネ
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