「ゲヘッ,ケホッ…。」
痛い。気持ち悪い。身体の中で虫が暴れている。
「ま、けるもんか…!」
吐き出した血液の中に泳ぐ糸のような虫。ボロボロと涙が溢れてくる。苦しい。辛い。寒い。なんだか、とても惨めに思えてきた。
「うっ…!」
胃袋の中身だけじゃなくて、内蔵を全部吐き出しそうになるような吐き気。
情けない。情けないにもほどがある。そもそも今回の目標は、こちらの力を各陣営に見せつけること。そして同盟相手とするに適した相手を見つけること。それなのに、私は物陰でのたうち回るばかり。
『マスター、ごめんなさい!本当に、ごめんなさい!』
念話が来た。まさか、初陣で令呪を使わされるとは。
“正気に戻れ、バーサーカー!”
これじゃあ、バーサーカーとして召喚した意味がない。狂気に捕らわれたバーサーカーを見ていたくない。そういう気持ちがなかったかと問われれば否定できないが、やっぱり無駄遣いをした気がする。
…私のバーサーカーは分かりやすいサーヴァントだ。彼女は自分の大切な人。すなわちアーサー王を傷つけられたことに怒り狂ったのだ。その辺りを十分に考えなかった私にも責任があるかもしれない。
でも、結果としては正解だったかもしれない。あのままなら確実にランサーに潰されていた。素人目に見ても実力の差は明らかだった。結果、絡め手を使って脱出。あの状況で理性を取り戻さなかったなら、今ごろ二人で死んでいただろう。ついでにランサー陣営にも令呪を消費させた。
「…大丈夫、こっちは生きてるよ。」
『ごめんなさい、本当に…。』
泣きそうな声で謝られる。というか、たぶん泣いてる。
「ねぇ、セイバーってアーサー王なんでしょ?同盟とか組めないかな?」
『え、あっはい…。ちょっと聞いてみますね。』
完全に同盟のこと忘れてたなダゴネット。そういうところだぞ。そういう抜けてるところが、残念なところだ。
「あ、あいつは誰だ?誰なんだライダー!」
バーサーカーが爆発して仮面の人物が現れた。でも、質量保存法則どこいった。どう考えても鎧の中身にしては小さすぎるだろう。
「だから、セイバーが言ったであろう。奴の名前はダゴネットだと。」
ライダーは言う。ただ、セイバーが騎士王だとするならばバーサーカーもまた人外魔境のようなアーサー王伝説に登場する人物だ。警戒しておくのに損はないだろう。
「何だか、電話を受ける子供みたいね。」
ペコペコ頭を下げたり、首を縦に横に振る。切嗣に電話をもらったイリヤを連想させられる。
「えっと、王さま。同盟を結びたいって。そういっています。」
黒々とした鎧を脱ぎ捨てた少女のように小柄な姿。まるで別人だ。
「同盟?同盟ですか。アイリスフィール、どうでしょうか。ダゴネットはいい騎士です。」