「マスターはマスター同士、サーヴァントはサーヴァント同士というわけですか…。」
確かに交渉の席にサーヴァントが同席するのは危険だ。交渉が決裂した時に武力衝突となれば、辺り一面が即座に地獄となるだろう。
「そうよ。でも、ほら。主従水入らずで話したいことだってあるでしょうし、私も同盟相手のことはよく知りたいもの。」
アイリさんは言う。
「それもそうですね。」
なんだか、きれいな人だと思う。漠然とした印象だが、その白い肌と赤い瞳。整った顔。どうにも人間離れした美しさだと思う。
「ねぇ、雁夜さん。あなたはどうして聖杯を望むの?」
「…幸せにしたい人がいるからです。救いたい人がいるからです。」
葵さんや桜ちゃん、凛ちゃんを幸福にするためなら私は何だってできる気がする。
「私も愛する人の望みを叶えてあげたいの。」
静かに微笑みながら言う表情に嘘はない。まぁ、あのセイバーのマスターだ。極悪非道で残虐無慈悲なんてことはないと思っていたが彼女も愛する人のために遠い異国から来たのだと思うと少し親近感がわいた。
「ふふふ、私たちって似た者同士ね。」
彼女は愛する夫のために死地へと踏み込んだという。なんて素晴らしい勇気だろう。殺したり殺されたりする世界とは無縁にありそうなこの人は、ただ一人の望みの成就のためだけに飛び込んだのだ。
「そうでしょうか?」
もしも、私が人並みに丈夫に生まれていれば胎盤として飼い殺しになっただろう。それならば、桜ちゃんは遠坂桜のままでいられた。葵さんも凛ちゃんも悲しい思いをしなくてすんだはずだ。
「そうよ。私、この戦争が終わったら死んでしまうの。」
「…え?」
この人は何を…?死んでしまう?この戦争が終わったら死んでしまうのか?そんなことを平然と口にした。
「でも、悲しくはないわ。愛する人の願いを叶えて死ぬのなら本望ってものよ。」
「…私も死ぬのです。」
一ヶ月も持たないだろう。最後は地下室で餌になって終わるのだろう。もう、左目は見えなくなって久しい。鏡を見るのは怖くてやめた。
何だってできるけど、死ぬのはやっぱり怖い。きっと楽には死ねないだろう。なにせ、文字通り身を蝕まれながら死んでいくのだ。胎盤となれなかった私。その役目を誰かに背負わせてしまった私。それが楽に死ねるなんて道理はないけれど私だって人間だ。怖いものは怖い。
「ほら、あなたと私は似ているわ。失礼だろうけど、調べてみたの。それで興味を持ったわ。貴女も私も愛する人とその子供のために戦ってる。」
「アイリさんは優しい人ですね。まるで魔術師じゃないみたいです。」
暖かな人だ。優しくて豊かな人なのだろう。汚しがたい白い布のような人だ。
「ふふふ、よく言われるわ。」