「…なるほど、これは大変なことです。」
巷を騒がせる犯罪者がマスターでキャスターも狂人となれば、惨劇へのシナリオが揃うわけだ。
「どうしようか。アイリさんたちも動くみたい。」
王さまの陣営と組んだのはいいが、令呪を消費した。私がアイリさんの命令を一度聞くようにと命令された。無論、相手陣営にも同様の条件を負わせている。
他にも
・遠坂時臣の殺害の禁止。
・関係者への攻撃の禁止。
こういったルールを双方に負わせたらしい。念話で相談されたから許可したけれど…。どうにも嫌な予感がする。しかし、終わってしまったことを蒸し返すのも建設的なものではない。
「しかし、私のような貧弱なサーヴァントにとって一画の令呪は一山の黄金のような価値を持ちます。」
残る令呪は1つだけ。ホテルが倒壊するほどの争いが繰り広げられている現在、手札が多いことに越したことはない。
「あちらからの情報だとセイバーをジャンヌダルクと勘違いして狙っているらしい。」
私の王さまを彼の聖人と勘違い…?狙うのは子供ばかり。性別も関係なく、ひたすら子供を害する。訳がわからない。1つわかるのは相手が正気ではないということ。…なら、試してみようかな。
「ダゴネット、セイバーに化けられる?」
「できますよ。ただ、サーヴァントに化けるとなると相手に警戒されるかもしれません。なるべく、警戒を解いて急襲したいところです。」
仕留めるなら一撃で。戦闘が目的ではない。非力な私が目指すのは一方的な殺しだ。
「そっか。そうだよね。」
相手が狂人だと何をしてくるかわからない。それは、とても恐ろしいこと。
「私も警戒網を広げてみるよ。」
…虫を頼るわけですか。まぁ、他に方法があるわけではありませんが。それでも無理だけは禁物です。相手はキャスター。直接対決ならわからないが、陣地の防衛に関しては一流のクラスだ。
「子供を狙うなんて許せない。それに万が一にも凛ちゃんや桜ちゃんの友達に何かあったりしたら…。」
なるほど。それは、考えが及ばなかった。確かに彼女たち姉妹の幸福を考えたならば交遊関係も大切な部分だ。マスターは善良だ。こんな家で育ったからか欠けている部分も見えるけれど、それは今後に期待するとしよう。
「…桜ちゃん。ちょっといい?」
どうせ騙すのなら完璧に騙そう。化けるにしても対象を具体的にイメージする必要がある。そうでないと、ずれが大きくなってしまう。
「どうしたの?」
こらこら、流れるように人様の仮面を勝手に剥がそうとするんじゃありません。…まぁ、いいけれど。
「1つ大技を出そうと思いましてね。」