「見ろ、私の手を。ここに令呪はない。」
ソラウがランサーのマスターになった。令呪を現在持っているのは彼女だ。魔術刻印が破壊され、魔術の行使ができなくなった為に仕方なく渡した。
「確認しよう…。」
魔術どころか、身体中がボロボロだ。ソラウはランサーのチャームによって心奪われてしまっている。だから私はここまで車椅子で移動してきた。一つの賭けを成功させるために。
一歩
…まだ早い。
二歩
…あと少し。
三歩
…激鉄を起こす。
四歩
ここでトリガーを引く!
「…あっけないものだな。」
監督役であった神父が地に伏せている。二度と起き上がることもないだろう。途中ですれ違ったのはバーサーカーの主従のみ。次に対決すれば、間違いなく倒すことができよう。バーサーカーは、円卓最弱の騎士。ランサーが好む騎士道とやらに基づく勝負となれば負ける道理がない。
「それにしても、この私が…」
こんなカラクリで騙し討ちをするほどに落ちぶれてしまうとは…。しかし、どんな手段を用いてでも私は聖杯を手中に納める必要がある。あの男、あの忌々しい魔術師殺しによって私は多くのものを失った。だが、まだ終わりではない。聖杯を手中に納めれば、すべてを取り戻して尚お釣りが来る。
…キャスターのマスターを仕留めた魔術師殺しに令呪が授与されたなら脅威だ。よってここで始末したのは間違えではないはずだ。
「…射殺だと?」
あの監督役を射殺?死体には一発の銃創のみ。私や弟子には彼を殺す動機はない。衛宮切嗣なら確実に仕留めるために手段を問わないだろう。魔術師殺しと呼ばれたプロなら少なくとも二発は撃ち込むだろう。しかし、銃を用いたならば魔術師というよりは魔術使いといった線が濃厚だろうか。…となると、彼女。間桐雁夜はどうだろうか?彼女はセイバー陣営と同盟を締結している。全くあり得ない話ではない。
「しかし、その上で私と話がある…?」
私もまた狙われているのだろうか。いや、しかし…。不意討ちならば危険だが、今の彼女と戦ったとしても結果は見えている。英雄王は強力なサーヴァントだ。並大抵のサーヴァントでは同じ土俵に立つことさえかなわない。いくら魔術の落伍者でも白痴ではなかろう。魔術師としても私と彼女では実力が違いすぎる。
「…常に余裕をもって優雅たれ。」
いずれにしても準備を怠ることなく出迎えてやれば問題ない。念入りな準備、周到な計画。これこそが優雅に物事を進めるポイントなのだ。運や勢いに任せて進むと必ずどこかで失敗する。常に余裕をもって優雅であるためには、影における努力を惜しんではいけないのだ。