「おや、こんなところで奇遇ですね。ライダー。」
酒樽を担いで戦車とは中々に不思議な光景ですが。このサーヴァントは堂々と自分の名前を明かしてくる辺り、常識にとらわれない人なのかもしれない。
「おう、道化師とそのマスターよ。」
声も大きい図体も大きい。一口に王といっても色々いるものなんですね。
「私たちは、これから王さまのところに見舞いにいくのです。なんでも、王さまのマスターとその友人が怪我をしたときいたので。」
「そうか、なるほど。それはいい。余もまたセイバーの居城に出向こうというところでな。徒歩では辛かろう。どうだ、乗っていかぬか?」
なるほど。私がマスターを担ぐよりも負担は少ない。マスターも私も楽ができる。それに他人の宝具に乗せてもらうなんてことも滅多にない貴重な体験だ。
「マスター、面白そうです。どうでしょう、ここはライダーの言葉に甘えてみるというのは?」
道化師にとって面白いってのは大事なことなのです。
「そうだね。うん、そうしようか。」
空を駆けるチャリオット。酒樽まで積んであるので少し狭くも感じるが、きっとライダーも荷物を積載して生身の人間も乗車してると思えば無茶な運転もできないでしょう。…できないよね?
「…つまり、ライダーは酒盛りをするために各陣営のサーヴァントを誘っているのか。」
相変わらず英雄というものはよく分からない。殺し殺される相手と酒を酌み交わすなど、やはり理解しがたい存在だ。英雄王もまた王として“聖杯問答”とやらに参加なされるようだ。
「ここは、1つ試してみるのもいいかもしれない。」
無傷のライダーの実力が不明なのが気がかりだ。ライダーのマスターは時計塔の生徒の一人。あの戦車【神威の車輪】のみが宝具とは思えない。世界を征服しかけた王。イスカンダルが1つの宝具しか所持していないとは限らない。むしろ、切り札となり得るものを隠し持っている可能性だってある。
セイバーはランサーの槍による呪いを残しており、剣士でありながら片腕しか使えない。つまるところ、かなり弱体化しているといえる。手負いのセイバーなら英雄王の敵ではない。
…ここで重要なのは、現時点でもっとも脅威となり得る相手の手札を知ることだ。
「綺礼、君のアサシンを利用してライダーの切り札を見極めたい。」
百の貌を持つハサン。群にして個、個にして群。その性質はとても便利である。これを利用しない手はない。
「7割でいい。すべてを投入するには惜しいからね。」