「どうした、何がおかしい。道化師よ貴様、何を笑っておる。」
ダゴネットは笑っていた。私を含めて三人の王の語らいを笑っていた。
「王さま、発言しても構いませんか?」
挙手して私に問いかける。ダゴネットを指して多くの者は言う。彼女は愚か者でどうしようもない騎士であると。しかし、彼女は子供のように無垢であり、聡明でもあるのだ。王への諫言もまた道化師の役目。仮面を被った彼女は王に意見する宮廷道化師としてここに立っているのだ。
「おい、道化。人形よ。早く語るといい。何がそれほど面白かったのか。我も道化の言葉が聞けぬほど狭量ではない。」
「…ダゴネット、どうしてあなたは笑うのですか?」
その問いかけに対しダゴネットは唐突に立ち上がって踊り出す。ヒラヒラした衣装。月明かりに照らされた仮面。鈴のような声で彼女は言う。
「だって、わかってしまったのですから。少なくとも、私が今回の聖杯戦争で召喚された騎士の中でもっとも賢いことが!」
「どういうことだ?」
征服王が問う。
「道とは、歩いたあとにできるもの。歩いた足跡こそが道。王の道もまた然り。征服王。貴方は数多の地を征服したけれど、雪山を砂漠のようには進めまい。」
異なる時代、異なる場所を生きた英雄ならば歩んだ道に違いがあるのは当然のこと。これは恐らく私がライダーを暴君と称して否定したことと、ライダーが私を王と認めないと発言したこと。その両方を皮肉っているのだ。
「だが、道化師よ。お前の主は過去を改編するといったぞ。お前や仲間たちが歩んだ道を消し飛ばそうというのだぞ?」
ダゴネットは首をかしげた。
「どこか、問題でも?」
そして彼女は酒杯でもってライダーの持ってきた酒をコクりと飲んだ。アーチャーに安酒と称された酒を敢えて口にした。おそらくは、無礼討ちを避けるための逃げ道。酔った道化を討ったとなれば、王としての器量を問われるからだ。
「私は王を愛していません。王さまという一人の人間を愛しています。我が身は道化なれど、立場を愛することのできる怪物ではないつもりです。愛する人の幸福を祈る私は罪の子でしょうか?」
膝をつき、祈るように手を合わせて問いを投げる。神の血を引く征服王を神に見立てて発言する一方で、声色は普段のそれと同じ。
「人形が雑種への愛を語るとはな。これもまた愉快なことよ。」
自らを法と称する王は心底愉快そうに笑った。
「なぁ、道化師よ。お前は自分の王をどう思っている。」
「…アーサー王は偉大なお方!獣を騎士に変え、人形を人間に変える。アーサー王は愚者たちの王、私の王は騎士王その人ただ一人。王の奏でる音楽の中でなら、私はいつまでも踊っていられましょう!」
彼女は目を背けたくなるほどに堂々と言い切った。