「それじゃあ、いってくる。」
お守りと不思議な模様の刻まれた天然石。お土産は二人で選んだらしい。私も連れていってくれればいいのに。雁夜さんの首につけられたネックレス。私へのお土産と同じような模様がついている。
「いってらっしゃい。」
お爺様も雁夜さんの兄さんも私には興味がないみたいだ。地下室に送られなくなった。…けれど、私は知っている。隣で一緒に眠ってくれた雁夜さん。優しい雁夜さんが夜中に危ないことをしているのを。日に日に疲れていくのを。
「気を付けてね。」
私は手を振って送り出す。ダゴネットさんも優しい人だ。ちなみに“バーサーカー”というのは役職名らしい。外国語はまだよく分からない。
「待ってないで先に寝てていいからね。」
そんなことを言って二人は出ていく。先に寝る?この無駄に大きなベッドでたった一人きりで?そんなのは嫌だ。寂しいし、怖いし、それに眠ってしまったら二人とは二度と会えなくなるような気がする。
雁夜さんがお土産にくれた色とりどりの天然石を並べておはじきのようにして遊んだ。寝る前にダゴネットが読み聞かせてくれた絵本を一人で読んだ。お手伝いして三人で作ったご飯を大きなテーブルで食べた。
…お家の大きさは昔と変わらない。けれど、あっちには皆がいた。ここには、誰もいない。空っぽなんだ。雁夜さんとダゴネットが帰ってこなかったら…。私は、きっと寂しさで死んでしまう。
「早く帰ってこないかな…」
地下室送りにされたっていい。痛いことだって苦しいことだって我慢できる。だから私は何をされたっていいけれど、あの二人だけは無事に戻ってきてほしい。それだけ。それだけが1つの願い。
大きな振り子時計の針の音が響く。ダゴネットの奏でたハープ。後でゆっくり教えてもらおう。彼女ほどは上手にできないかもしれないけれど、私もやってみたいと思った。雁夜さんのカメラ。お古を1つもらった。普段お仕事で使うようなカッコいいやつではない。小さくてかわいいカメラ。まだ使ったことはないけれど、使い方は教えてもらった。シャッターを切ってフィルムを巻く雁夜さんは、とても格好よかった。
レコードを機械にセットすれば、ダゴネットと一緒に踊った曲が流れ出す。雁夜さんは古い曲だと笑った。ヒラヒラした衣装で踊るダゴネット。ピエロにしては決して派手ではない衣装。それでも私にはきれいに見えた。
ダゴネットは、恥ずかしがり屋で目を離せばピエロのお面を着けてしまう。でも、その目は前のお家で見たどんな宝石よりもきれいで…。隠してしまうのはもったいないと思ってしまう。
「お仕事が終わればいいのに…。」