公園の横の広い道路で彼女を待つ。彼女とはこの公園でよく待ち合わせをした。夜になるとこんなに静まり返るだなんて、知らなかった。しかし、遠くから足音がする。微かな話し声。間違いない、彼女の声だ。
「…ねぇ、雁夜ちゃん。一緒にいきましょう?」
雁夜ちゃんに声をかける。
雁夜ちゃんは車イスに乗せられていた。半身が麻痺しているために自分では移動できないのだろう。後ろの女性が彼女のことを介助している。
「葵さん?」
驚いたように顔をあげる。
「後ろの人があなたのパートナー?」
たしか、聖杯戦争は過去の英雄をサーヴァントとして使役して行う魔術儀式。
「はじめまして。私はダゴネットといいます。アーサー王の道化師であり彼の有名な円卓の騎士の一員でもありました。今回は、雁夜さんに召喚されてここに存在しております。」
うなずく彼女。そして後ろの小柄な女性は可愛らしい声で話し出す。どこかで見たような洋服。女の子らしいデザイン。…いつかの雁夜ちゃんのお古だろうか。
「ご丁寧にどうも…。私は、遠坂葵と申します。雁夜ちゃんとは、幼馴染みで仲良くさせてもらっています。」
小さく頭を下げる。決して強そうには見えない華奢な身体。それでも微かに感じられる人間でないような存在のオーラ。
「なんだか、可愛らしい人を召喚したのね。」
そういうと、ダゴネットは少し照れ臭そうに微笑んだ。
「実を言うとね、あなたたちを待っていたの。敵対している魔術師の拠点に近づくのは危険だって聞いたから通り道でね。予想通りの道を使ってくれてよかったわ。」
本当は、夫と一緒に教会で待つつもりだった。でも、雁夜ちゃんのことが心配だったから車で迎えに来たのだ。彼女の今の身体じゃ車なんかは使えない。歩くにしたって時間がかかる。放っておいたら今にも死んでしまいそうな、そんな顔をしている。
「ありがとう。実は、すごく緊張しててさ。葵さんがそばにいてくれるだけで百人力だよ。」
ドアを開けて乗車を促せば、ゆっくりと車イスから立ち上がり、ダゴネットさんに支えられながら座席に座る。
「大丈夫。彼だって酷いことはしないはずよ。それに教会は中立地帯だって教えてもらったでしょ?」
だからこそ、話し合いの場所に選ばれたのだ。相手を呼びつけるのではなく、敵対することもなく、あくまで対等の立場にある者として語り合うために。
「まったく…私だっているのに心配性なマスターですね。」
呆れたように後部座席のダゴネットは言う。それを聞いてフードを深く被ったまま雁夜ちゃんは苦笑する。