「…舞弥!」
酷い怪我だ。狙ったように急所を壊されている。こんな芸当ができるのは、アサシンだけだ。残りのサーヴァントの数を聞いたときにアイリが悩んだのは、おそらくアサシンが残っていたからだ。大多数を消耗しても全滅はしていなかったということだろう。
「あぁ、切嗣。泣かないで…。」
しかし、後遺症こそ残れども即座に死に至る傷ではない。どういうことだろうか。…挑発か。戦力を確実に削ぎつつ、こちらの感情を揺さぶろうなどと考えているのだろうか。
「舞弥、それ以上しゃべるな。身体に響く。」
僕がライダーのマスターを始末する間にセイバーをアイリの護衛につかせたのは、失策だったか。いや、今さら悩んだところで前へは進めない。
「…セイバー、状況を報告しろ。」
もう後戻りはできないのだ。もう、アイリとの別れは済ませてある。はじめからわかっていたことだ。そして、二人で決めたことだ。故に後悔などないし、あってはならない。
「すみません、マスター。不覚をとりました。」
まさか、アーチャーを囮としてアサシンにアイリスフィールを奪われるとは。
「相手は、アサシンとアーチャーでした。私がアーチャーに釘付けにされているうちにアサシンに出し抜かれました。申し訳ない。」
それにアーチャーはダゴネットを捕らえたようだ。彼女から奪い取ったと見られる剣。それは、本物だった。私が渡した剣。見間違えるはずもなかった。
「同盟相手であるダゴネットとそのマスターも教会にとらわれているようです。…恐らくは、アイリスフィールもそこに。」
アサシンとの交戦によって負傷したマイヤに涙したマスター。彼も人間なのだ。だから、自分の妻が奪われたことに何も抱かないはずがない。その叱責は受け入れるべきだ。受け入れなければならない。
「…そうか。」
マスターの言葉はそれだけだった。
「お久しぶりです。」
ダゴネットは、生き残ったアサシンによる不意打ちで昏倒し、鎖で縛り上げられてしまった。正直、アーチャーに目を奪われているところを襲撃したアサシンには卑怯だと罵りながら石でも投げたくなる。
「カリヤもここにいたのね。大丈夫?」
神父によって担ぎ込まれたのはアイリさん。ここは、いつから捕虜の収容所になったんだろうか。本当にどうしようもない。
「すこぶる調子が悪いですが、生きています。アイリさんこそ大丈夫ですか?」
割と乱暴に扱われていましたけど。
「平気よ。私は、皆が思うほど脆くないもの。」
それでも、どうしてか弱々しい印象を受ける。どうにも生命力に欠けるというか、何というか。
「私、もうそろそろ死んでしまうの。」
そうですね。私と同じで聖杯戦争が終わったら死んでしまうんですよね。なんだか、実感がわかない。
「少し、話し相手になってほしいわ。」