「…遠からんものは音に聞け、近くばよって目にも見よ!我が名はダゴネット。円卓の末席につく者なり!」
声色は勇ましく、表情は真剣そのもの。ただ、舞台に上がる道化師のようにお辞儀をする。
…あとで騎士としての正しい作法を教え直した方がいいかもしれない。
「ブリテン王、アーサー・ペンドラゴン。推して参る!」
「いいだろう、実に愉快だ。」
笑いながらアーチャーは言う。虚空から2振りの剣を抜き放ち、獰猛な笑みを浮かべた。
空に浮かび上がる波紋。無数の宝具が覗く門。しかし、無数の剣を用いても究極の1には勝るまい。ならば、私はその1を振るう担い手として立とう。
それに私は彼女を彼女は私を知っている。共に戦った日々は昨日のように思い出せる。
「…来ますよ!」
降り注ぐのは雨粒ではない。剣、槍に斧…。一つ一つが宝具であり、神秘を帯びた武器だ。
「なんて、でたらめな!」
まるで戦争という暴力を具現化するような能力。
「良いことを教えてやろう、この我の蔵には総ての原典が納められている。時間を稼いだところで財が尽きることはない。失望させてくれるなよ、騎士ども。」
全ての原典を納めた蔵…。その鍵を握る人物となれば、アーチャーの真名はギルガメッシュ。すべてを見た人と伝えられる古代ウルクの王。
「ダゴネット、風を踏んで走れるか!?」
「いけますよ!」
彼は王。剣を振るう剣士ではない。斧を扱う戦士ではない。彼は王。玉座にあって人々を統べる者。ならば、彼は担い手ではない。
「【風王鉄槌】」
風が彼女を包み込み、アーチャー目掛けて押し出す。風は彼女を傷つけるものを許さない。刃を弾き、巻き込み、吹き飛ばす。刃の雨を裂いて一直線に進む。
「…行きます!」
加減する必要はない。全力で叩きつけよう。王さまの風に身を任せて肉薄する。
「【懲愚の剣】シャスティフォル!」
真名を解放。鎧を穿つのは自信がないので、狙うのは首。急所であり、基本的に落とされれば死ぬ部分だ。
衝撃
…仕損じた!?
手に伝わった感触は剣を打ち合わせた時のもの。防御されたらしい。
「ふむ、道化にしては上出来だ。」
並みの剣ならシャスティフォルから流し込まれる魔力で砕けるところ。それが弾かれるとは…。
「そら、今度は我からいくぞ!」
二刀流だなんて、器用な真似を…!対応しづらくて苦手なんですよ。
私の剣は剣舞の延長。見映えがよくても実用性に欠ける。
…流れるように剣を打ち出し、回転する。
本当なら邪道な剣だ。相手から目を離す動きが生まれることを前提に振るうのだから。
しかし、振り向いてわかったことがある。王さまは、宝具を使うつもりだ。
星に鍛えられた聖剣が確かな光を放っていた。