「起きて、雁夜さん。」
いつのまにか気絶していたらしい。結局、サーヴァントは呼び出せたのだろうか。
「バーサーカーさんが待ってるよ。」
バーサーカーさん?…バーサーカー!?
「バーサーカー!?」
待ってるって何を?!そもそも、私が呼び出したのって本当にランスロットさん?
「はい、誰です?私を呼びましたか?」
そこにいたのは、黒々強い鎧を身に付けた強者…ではなく、派手な装いをした仮面の人物であった。
「桜ちゃん、この子は誰?」
背丈は小学生程度だろうか。私も人のことを言えたものじゃないが、線が細くて頼りない。狂戦士、バーサーカーと呼ぶにはあまりにも似合わない人物だ。
「呼んどいてそれは…。」
少なくとも、狂戦士は床に“の”の字を書いていじけるような子供じゃないはず。
「今度からは、私の顔を忘れないように枕元にたっていてやりましょうか?」
「やめて。」
枕元に立つ幽霊って古典的なホラーじゃないか。そもそも、仮面だから顔なんて見えないし。
「あ、そうそう。ひとつやりたいことがあるんですけど。お付き合いしてもらっていいですか?」
「何だよ。改まって。」
狂ってるという割りにはよくしゃべる。意思疎通すら困難と聞かされていたから拍子抜けだ。
「サーヴァント、バーサーカー。ここに召喚されました。ここに問いましょう。あなたが、私のマスターですか?」
言葉使いは丁寧に物腰は柔らかく。柔和な笑みを浮かべながら道化師は問いかける。
「あぁ、そうさ。私があなたのマスターだ。」
令呪を見せながら答える。そうすれば、どこか満足そうにうなずいて笑みを浮かべる狂戦士。
「よかったぁ、召喚されてみたら老人が笑っていて貴女は倒れているものですから、ビックリしたんですよ?」
なんだか、倒れた私の近くで右往左往する様子がすぐに想像できる。頼りないだの子供っぽいだのと好き勝手な印象を抱くが、召喚されたってことは生前は名のある英雄であり、人知を越えた力を発揮するのだろう。
「そういえば、お前はランスロットなのか?」
たぶん、違うのだろうな。ランスロットが道化師の格好をしていたなんて逸話はないし。円卓最強の騎士が小柄な少女な訳がない。
「いいえ、違います。しかして、何ら問題はありません。私とて、円卓の騎士。」
茶化すような口調で話す自称円卓の騎士。
「有名なの?」
ガウェインやパロミデス、パーシバル…。いや、それもなさそうだ。どのキャラクターも騎士であって道化師ではない。
「いいえ、ちっとも。このダゴネット、道化であり騎士でありますがマスターも知らぬのでしょう?」
…知らない。聞いたことのない名前だ。あとでアーサー王伝説の書籍を調べ直そう。
「ごめんね。知らない。」
「謝らないでください。マスター、知らなければ尋ねればよいのです。わからねば、調べればよいのです。私もマスターのことはよく知らない。ほら、お互い様でしょう?」
サーヴァントに狂化を施したはず。クラスとしては狂っているはず。
「ねぇ、バーサーカーさん。食事、冷めちゃうよ。」
「あ、そうだった。そうだった。せっかく作ったのにダメになるところでした。」
…作った!?私は英雄を召喚したのであって文字通りのサーヴァント(召し使い)を召喚した訳じゃないんですけど!?
「ささ、こちらへどうぞ。」
まぁ、桜ちゃんが楽しそうだからいいか。