(テレパシー、なんちゃって。)
(なにしてんですか。)
サーヴァントとマスターは声に出さなくても会話ができる。試してみたところ、しっかり伝わっているようだ。
(打ち合わせは、桜ちゃん抜きでやろう。)
(…えぇ、構いませんよ。)
料理の腕はかなり上らしい。ダゴネットという騎士がどんな人物なのかわからないけれど、先程の格好のいい挨拶も本人いわく、“一度、やってみたかった。”そんなことをいう。桜ちゃんの口についたケチャップを拭ってあげている辺り、武勇に優れた英雄というイメージじゃない。どちらかと言えば、誰かの庇護の下に置かれる大人しい人物って感じだ。
「ご飯粒、ついてるよ。」
「え、ありがとうございます。」
…なんだか、しまらない人物だなぁ。
「桜ちゃん、今日は先に寝てて。ちょっとマスターとお仕事のことで相談があるんだ。」
「うん、わかった。言うとおりにする。」
いい子ですね。そういいながら、頭を撫でる小柄な少女。その様子は、バーサーカーの持つ外見と相まって少しばかり年の離れた姉妹のようにも見える。
「それじゃあ、暫し待たれよー。」
「しばしまたれよー!」
ハイタッチを交わして部屋を出ていく桜ちゃん。ハイタッチしている姿なんて久方ぶりだ。
「…それで、話とは?」
桜ちゃんの後ろ姿を見送った後に振り返れば、私に問いかけながらもお皿を下げようとする姿。
「えっと、それは後ででいいから。」
別にサーヴァントに皿洗いをしてもらおうと呼び出したわけじゃないから。
「じゃあ、改めまして。何のご用でしょう。ご主人様。」
「ええっと、ほら。お互いのことをあまり知らないだろう?聞きたいことと言いたいことをお互い交換しておこうと思ってさ。」
召喚されるサーヴァントも聖杯に願いをもって呼び出される。バーサーカーに限ってないと思うけれど、呼び出されたサーヴァントが邪な願いを持たない存在とも限らない。そんな場合には令呪文を使わなきゃいけないこともある。それに己のサーヴァントの得意なこと苦手なこと。その辺をよく理解して戦った方がいいと思う。
「なるほど。それは、妙案です。」
バーサーカーは椅子に深く腰掛け直す。
「では、私から。私の名前はダゴネット。アーサー王に仕えた宮廷道化師にして円卓の騎士の一人であります。私は愚者にございますから、嘘が苦手でございます。くれぐれも後ろから刺したりはしないでください。」
「ありがとう。でも、大丈夫。私はあなたを騙したり裏切ったりはしないつもりだよ。」
ダゴネットのステータスは決して高くない。特筆することとしては、敏捷性が高いこと。狂化の値が低いこと。このくらいだろうか。
「あなたは、聖杯に何を願いますか?」
静かな声で問いかけるダゴネット。
「私は、桜ちゃんを遠坂さんの家に戻してあげたい。平穏な生活に戻してあげたい。でも、そのためにはどうしても聖杯が必要なんだ。お爺様に聖杯を差し出せば、きっと元通りにしてくれるって言われたから。だから、勝たなきゃいけない。どうか、手を貸してほしい。」
…腕を組んで静かにうなずくバーサーカー。
「わかりました。…これは、責任重大ですね。」
「バーサーカー、君はどうなんだ?」
あまり有名ではない英雄だ。しかし、あのアーサー王の臣下であったならば何かしらあるはずだ。
「今は、まだないですね。」