西暦5740年から、さかのぼること3721年の、現代2019年。
科学部室において、司VS千空(VSゲン)の戦いが始まった。
舞台はここ、ゲンが宣伝している新しいTVゲーム。
ゲン、千空、司。各自のモニターに表示されているのは自軍チームリーダーと、最初に各自が召喚した戦闘ユニット。のうち、ゲンのユニットだけは既に司の出した『勇者王』によって倒されていた。
「言っても、今回俺は司会進行がメインだから、2人で遊んでもらうんだけど、このままじゃ2人とも相手の居場所が分かっちゃうよね? だから『かくれんぼ』機能を使っちゃうよ~」
そう言うとゲンはオプション機能を操作した。途端に各自のモニターには、先ほどまで表示されていた自軍以外のキャラの居場所が真っ黒に塗りつぶされた。
「うん。なるほど。あのままだと俺が圧倒的有利だけど、これでイーブンだね」
「さっきも説明した通り、いくらガチャで出した子が生き残っていても、リーダーがやられちゃったらゲームオーバーね」
「っつうことは、だ。司の最強キャラ様はリーダーの隣で大人しくさせとくしかねぇなこりゃ」
千空は分析していた。この戦力差はそのままイコールで千空圧倒的不利とはならないことを。
戦力が拮抗している場合、開幕早々に互いの戦闘キャラを使った『どちらが先に敵リーダーを確保するかの競争』となる。
だが、戦力が揃うまで司『勇者王』が前線に出ないのであれば、長期戦となり千空にも逆転のチャンスが出てくるのだ。
「とは言っても、まずは不利すぎ千空ちゃんにアドバイスでもしに行こうかな~」
ゲンはチームリーダーを操作して千空の陣地に向かっていた。
おおまかな方角を予想して走らせること2分。
ようやく発見された千空はサポートキャラのガチャを回している所であった。
「何か出たぞ」
千空のチームリーダーの目の前に光の柱が現れ、その中からヘッドライトを付けた少年キャラが姿を現した。
「おっ、その子は『探検家』ちゃんだね。探検に行かせると素材をゲットして帰ってきてくれるよ~」
「ほぉ、そいつはおありがてえ」
千空は『探検家』を操作し、探検に向かわせる。このキャラは戦闘キャラと異なり自律行動をとるため、その間に千空は他の仕事ができるのだ。
そこから待つこと5秒。ガチャ権が復活する。次に引くのもサポートキャラ。
光の柱から、今度は小学1年生くらいの等身のキャラクターが現れる。
「次の子は、『名探偵』ちゃんだね。ゲームで使用できるアイテムやキャラをいつでものぞけるよ~」
「じゃあ、もうテメェのアドバイスは要らねぇっつうことだな?」
ゲンは「ドイヒーだけど正論だね~」とヘラヘラ笑いながら、今度は司の陣営を確認しようとリーダーを操作する。
するとその時。
ガンッ!!!
ゲンが到着する直前に、千空がガチャで出していた『溶岩魔人』がリーダーを殴り飛ばしてしまった。
「何してんだ?」
「ぁぁ・・・忘れてた。溶岩魔人って、敵を見つけたら容赦なく、全ターンで先制攻撃しちゃう子だった」
あらかじめサポートアイテムの『草のよろい』を装備していたゲンのキャラは辛うじて生き残っていたものの、HPのゲージはほとんど黒になっていた。
「主催者がゲーム終了させんじゃねぇよ」
そう言うと千空はサポートアイテムガチャを回し、3回ほどトライし『薬草』を出してゲンに与えた。
3分後。HP満タンのゲンの姿は司陣営にあった。
各キャラには近寄らず、距離をとって進み司のリーダーの姿を発見する。
「来たのかいゲン」
「司ちゃんもガチャ中だね~・・・って、えええ!?」
司の出した光の柱は虹色に輝いていた。一定のレアリティ以上がないと出てこない演出である。
「出たね。また人間キャラだ」
「UR・・・『長槍使い』だね」
司の出したキャラに目を丸くするゲン。
だが、一見するとヒョロッとしてレア度の割に豪華さはない。
司は「長槍? 素手じゃないか」とステータス画面を確認して首をかしげる。
「この子ね。何も装備してないとライオンやゴリラにも簡単に負けちゃうんだけど、サポートアイテムで『長槍』を出して装備させちゃうと、勇者王と同じくらい強くなっちゃう隠れ最強キャラなの。リーチはこの子の方が上」
司の強運具合に度肝抜かされるゲン。
だが、それだけで済むならまだマシな話で・・・
「長槍というのは、これかい?」
直後にサポートアイテムガチャを回していた司は、長い槍の武器を出して言った。
「ゴイスー!!!」
開始10分弱でこのゲーム最強キャラ2人を揃えてしまった司。
もう、勝負は完全に見えていた。
「これは流石に。俺が千空ちゃん側について2人がかりじゃなきゃ、無理ゲーかなぁ」
ゲンはそう決断すると、再び千空の陣営に移動を始めた。
その様子を、司はジっと眺め「うん」とつぶやき、何かを決断する。
「どうかな~千空ちゃんのほうは?」
ゲンが千空の陣営を覗くと、こちらでも着実にメンバーが揃いつつあった。
・服と言えない恰好の『ややこい職人』
・金の槍というアイテム以外の魅了系の特殊効果を無効化する『眼鏡仮面』
・ガチャで召喚したそばから逃亡した『GGR』
・古い世代っぽい見た目の『仙台長』
など、戦力としては心許ない軍団であるが、ざっと40のガチャ成果が揃っていた。
「司の方は武力が武器だろうが、俺の方は武器を武器にしてやるよ」
大事な事だから2回言った?と、ゲンが首をかしげると、千空は素材アイテムを組み合わせて作った『鉄の刀』を取り出してみせた。
「探検家が探した『鉄鉱石』を『職人』に加工させて作った。他のキャラも動員して工房作らせておいてな。下手にサポートアイテムで出てくんのを待つよりか、こっちのほうが効率が良い」
ヘビーユーザーが語るような効率論であるが、たしかにこの方法のほうが強い武器アイテムが手に入る。
千空は開始15分で、このゲームの本質にまで踏み込んでいたのだ。
「つっても戦力差やべぇだろ。もはや帝国だな、司帝国。こっちは真逆に村レベルだ。石神村ってか?」
「なるほど良い例えだね。その帝国が村を滅ぼしにやってきたよ」
その時、司の不敵な笑みが会話に割って入ってきた。『長槍使い』が不気味に森の中から姿を現す。
「悪いがゲンを尾行させてもらったよ」
「えええ!? ドイヒーすぎない!?」
「いいや。どのみち戦力の半分で斥候すんのは正当な戦術だ。効率で言やぁ、来んのが今か5分後かの違い程度だろ」
「どのみち、お友達に使う戦術じゃないよそれ!」
騒ぐゲンであったが、司と千空は涼しい顔で対峙した。
「千空もそう思うかい? 俺は手加減抜きの本気の戦いがしたいと思っていたんだけどな」
「いいや、上等だぜ司ぁ」
そう言ってニヤリと笑った千空だが、先制速攻で『長槍使い』が『眼鏡仮面』を槍で突き刺し、HPを一気に削ると「おい、ちょっとタンマ!」と叫ばずにいられなかった。
「そうだね。10秒だけだよ」
「ククク、最強のくせにセコいな」
そうつぶやきながら、千空は『ゴリラ』と『溶岩魔人』に鉄の刀を装備させ、あらかじめそれぞれに習得させておいた自律戦闘パターンで突撃させた。
「2対1か。これは厳しいね」
そう呟く司であったが、長槍のリーチでゴリラと溶岩魔人を易々とけん制していく。
「こりゃマズイねぇジーマーで」
「なら、やることは1つだな」
そう言うと千空はおもむろに席を立ち、科学室のシンクに何かを垂らし、火をつけた。
ボウ!
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
リアルの世界の方で起こるファイアーに、部屋に居た誰もが驚き飛び上がる。
当然、司の注意もそちらに向かう。
「隙あり」
皆の目がTVモニターから離れた隙に、千空はサポートアイテムの『武器破壊のナイフ』で長槍を破壊した。
「いやいや千空ちゃん! 火事はジーマーで駄目だよ」
「心配すんな、ただのガソリンだ。ペットボトルキャップ1個分。火災報知器すら反応しねぇのは実証済みだ」
いやいやそういう問題ではない。というハプニングの最中、司は『ゴリラ』の攻撃の直前に辛うじて長槍使いを退散させた。
「このキャラは素手だとライオンにも劣る。そうだったね、ゲン」
いやいやそういう問題ではない。千空のやることが危険ではないと信頼しているからこそ、すぐにゲームに戻れたのかもしれないが。
当然、この数秒のシーンはカットである。