ドラえもんのび太のDr.STONE   作:三柱 努

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NASA宇宙飛行士編 その5

2029年2月7日。この日、石神千空25歳は宇宙へと飛び立つ。

フロリダ州ケープカナベラル、ケネディ宇宙センター、打ち上げロケット・アレスⅠへの搭乗。

隔離施設クルークォーターを出ると、そこには千空たちの出発を見守りに来た報道陣と人々が、大地が震えんばかりの歓声を挙げて待ち構えていた。

「千空ぅーーーー!」

嫌がおうにも目に付く一団から、嫌でも目立つデカブツが手を振っているのが見える。

「震度2の震源地がいやがったな。ククク」

打ち上げのために駆け付けてくれた仲間達。その隣で涙と笑顔とが入り混じった少女たちとその母親。

1人1人の姿を目に焼き付ける千空。

「千空、龍水。いってらっしゃい」

「ああ。いってくるぜ。宇宙に」

ウイルス感染等のリスクを避けるため、宇宙飛行士たちは彼らと接触することはできない。

名残惜しい想いを胸に別れを告げることしか・・・

別れではない。出発なのだ。必要なのは再会の約束。それを胸に、千空は拳を高くつき上げて、発射台行きバスへと乗り込んだ。

 

 

「いよいよだな」

「皆、心の準備はいいかしらん?」

バスの中、百夜とダグが声をかける。

「は、はい。大丈夫です」

緊張を残した面持ちのせりか。そんな彼女の肩を百夜はポンと叩き、千空と龍水を指さした。

「はっはー。出航だ。この世界の外洋へ。宇宙へ!」

「ククク。っつうか社長様が3か月不在で経営大丈夫なのかよ」

「誰にモノを言っている? 10年不在でも万全盤石な布陣を残してきた」

「じゃあお前はもうお払い箱でALL OKじゃねぇか」

余裕の駄話をはべらせる2人の姿に、せりかはリラックスを通り越して苦笑いに達することができた。

 

 

そしてバスはついにシャトルの足元にたどり着く。

ここで5人は輪になって立ち向かい合った。

「ついにこの時が来たな。俺たち世にも珍しい5枚葉のクローバーズ。四つ葉なんか目じゃねえ幸運に守られてる。心配無用だ。さあみんな。一緒に行こう、宇宙に」

「「クローバーズ!」」

百夜の掛け声に、5人は手を合わせて叫んだ。

「だが、五つ葉のクローバーはそんな珍しくねぇぞ。100万に1の割合だ。1万に1の四つ葉と比べたところで、球場1個探しゃ見つかる」

「四つ葉は幸運の象徴。五つ葉は財運の象徴だったな。俺を祝っているのか、いいじゃないか」

「う~ん水差すねぇ若者たち」

リーダーとして引っ張るべき百夜がこの扱い。せりかとダグはこの和やかさに何度も救われてきた。

それが彼ら5人なのだ。

 

 

5人は鉄檻のエレベーターに乗り、シャトル頂上へと上げられていった。

ガシャンガシャンと鉄網の通路を渡り、最後の部屋へ。

「行ってらっしゃい。よい旅を」

宇宙服の動作確認は念入りに。

ヘルメットを被せられ。

シャトルに乗り込み、ベルトでギチギチに絞められる。

そこから打ち上げまであと2時間の放置プレイだが、千空たちは胸に溢れる想いと向き合っているうちにあっという間に時は過ぎていく。

 

残り20分。

もう後戻りはできない。

 

燃料ポンプの音が聞こえてくる。いよいよだ。

ブースター、燃料、誘導、環境、航法、遠隔、制御。全ての計器がチェックOK。

秒読みに入る。

振動が千空たちを揺らしていく。

10,9,8,7。

点火開始。

いよいよだ。

6,5,4,3,2,1

点火

リフトオフ!

 

振動がこれでもかと千空たちを揺らした。

痺れと感動が心と体を揺らす。

『うおおおおおおおおおお』

興奮が千空の脳内でスパークした。思っているだけなのか口から出てしまっているのか、自分でも分からない。

「船内気圧5.5で安定。第一段ロケット切り離し」

百夜が切り離しスイッチを押し、無事にシャトルが分離される。

体を圧迫していたGが解かれ、ジェットコースターの“ヒュン”ってなる感じが何倍にもなった感覚が体を襲う。

全身の血が頭に上り、耳と鼻がツーンと詰まった感覚を味わう。

その頃には窓から見える景色の色が美しい漆黒に塗り替わり始めていた。

「ぁん?」

気が付けば腕の重みが感じられない。手荷物にしていた“仲間との集合写真”がフワッと浮き上がっていく。

 

「ククク。これが宇宙か」

微笑みを漏らす千空。その実、ちょっと宇宙酔いを起こしていた。

無重力になって上半身の血流量が増え、顔がパンパンのムーンフェイスになる。

だがそれでも、興奮と緊張が入り混じり、心臓がバクバクと鳴りやまない。

「来たな千空。俺たちついに」

「ああ。つっても地球からせいぜい400km。東京と大阪程度しか距離ねぇよ」

「はっはー。近いな」

そう言い合いながら地球を眺める龍水と千空。

ここからもISSからも、地球を真ん丸に見ることはできない。

だが、目の前に広がる地球の美しさは見ることができる。

つい昨日まで見上げていた青の空から見た青の海と黄色の大地、それが混ざりあってできたような緑、糸のような白雲。

そればかりは何をどう話し合っても、言葉では現わせなかった。

 

 

その後、千空たちの乗ったCTV-28オリオンはISSとのドッキングシークエンスに入った。

ISSとオリオンが繋がり、それぞれの圧の均衡を調節していく。

宇宙服を脱ぎ、ジャンプスーツになった千空たちは隔壁の前に集まった。

いよいよハッチを開ければISSだ。

「千空。せりか。この扉を開けるのはお前らの役目だ」

百夜はそう言って2人を招いた。

2人は静かに頷き、ハンドルに手をかける。

 

ギギィと音を立て、開いた先に広がる狭い通路。出迎えるISSの前任者たち。

「ようこそ国際宇宙ステーションへ!」

 

 

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