とある霧の惑星に不時着したミステリートレイン。
周囲の無事を確認した千空たち5人は、ドラえもんとのび太の無事を(一応)確認しに、列車の屋根伝いに走っていた。
「おう、2人とも無事だったか?」
「千空さん? そちらも大丈夫でしたか?」
駆け付けた千空たちの無事な姿に、ドラえもんとのび太、そして彼らと一緒にいた車掌や、展望車で知り合った乗客・ボームは安心した顔を見せた。
「まっくろくろすけシャドウ団は?」
「分からない。まだこの近くにいるかもしれないよ」
「そんな~、ジーマーで?」
ボームの言葉に不安な顔を見せる(作る)ゲン。
ヒュ~~~~パァンッ
突然、遠くから爆発音が聞こえた。
一瞬、敵襲を疑い恐れおののくドラえもんとのび太。
だがその音は花火の音であり、楽しげな音楽が聞こえ始め、徐々に霧が晴れはじめた。
「皆さま、皆さまようこそいらっしゃいました。宇宙最大・最新・最高の夢の楽園、ドリーマーズランドでございます!」
霧が晴れ、ドラえもんたちの目の前に現れたのは巨大なテーマパークのゲートであった。
ドリーマーズランドとは銀河の果て『ハテノハテ星群』に作られたと噂の遊園地である。
「最初のアトラクション、列車強盗ショーはお楽しみいただけましたか?」
「じゃあ、あれはショーだったの?」「気が付かなかったな~」
驚くのび太に合わせ、(白々しさマックスで)驚きを見せるゲン。
『っつうか命の危機系ドッキリを持ってくるか普通? 下手すりゃパニック起こして怪我人出るレベルだったろ?』
そんな千空の真っ当な心配をヨソに、列車の中から続々と乗客が飛び出してきた。
誰もがショーのドッキリに安心し、ランドへの興味に目を輝かせている。
時代が変われば倫理観も変わるのだろう。
「うむ、22世紀の人間というのは皆、心が広いではないか」
「鈍感なだけかも知れねぇがな」
人々の笑顔を微笑ましく眺めるコハクであったが、千空はそれを皮肉っぽく笑った。
そんな中、乗客の子供たち3人組が列車の上に乗る千空たちに気付き興味を示した。
「ちょっと見てあの子たち、面白い恰好してるわ」
「大昔の恰好だぜ」
「昔モンじゃねぇの?」
嘲笑にも似た雰囲気のある3人組であったが、そうとは気づかないのび太が挨拶に降りる。
「やぁ、僕たち20世紀から来たんだ」
「20世紀!?」
のび太の自己紹介を3人組は笑い始めた。
古臭い恰好だの、歴史テレビで見たことあるだの、と言いたい放題。
「なんか俺ら、馬鹿にされてねぇか?」
「まぁ彼らからすれば古い恰好は間違いではないが、気分の良いものではないな」
「スイカたちの恰好ってそんなにおかしいんだよ?」
憤慨するコハクたち3人であったが、子供たち3人はそんなことに一切気付かず。
洞窟で暮らしているだの、石斧を使ってるだの、鉄とか銅とかは使えるレベルだの、笑い続ける。
ポームもまた子供たちの言動に眉をひそめるが、言われている当人である千空とゲンはニヤニヤしながらそれを見ていた。
「まぁ、半分当たってんだがな」
「だね~」
「半分? それは本当なのかい?」
子供たちの暴言を相手にしていないというわけではない2人の様子を怪訝がるポーム。
「ああ。さすがに洞窟じゃなく木と藁の家だが。実際、去年までメインウェポンが石槍だったからな、石神村も司帝国も」
ヘラヘラと笑う千空に、ボームは「えっ? 20世紀だよね?」と自分の知識と千空の冗談を疑う。
「ちなみに俺らは58世紀人だ」
「58世紀!?」
「21世紀に人類ほぼ全滅しちゃって、3700年くらい経っちゃった世界ね~。でもって鉄と銅。ジーマーで懐かしいねぇ」
「あぁ、作ったな鉄と銅で。発電所」
サラッとトンデモナイことを言う千空とゲンに絶句するボーム。
58世紀人という割に原始人のような恰好なのは説明がつく。パラレルワールドの話なのであれば辻褄が合うとボームは推測した。
だが、科学技術発展の歴史を考えると石器からの製鉄、発電技術は不条理が過ぎる。
『なるほど、からかわれているのか』
そうボームが納得していると、車掌が『入場のために一旦列車にお戻りください』と誘導を始めた。
こうしてミステリーツアーの目的地である遊園地にたどり着いた千空たち。
客車がそのままロッジ代わりとなり、乗客はそれぞれ好きなように遊園地や各種アトラクションのある小惑星に遊びに行くことができる。
「ゲン、遊園地って何なんだよ?」
「子供向けのテーマパークだね~。いろいろ楽しいアトラクションやらパレードやらで、一日中遊べる場所のことだよ」
両手から花びらを舞わせゲンが説明すると、その楽しそうな雰囲気にスイカは目を輝かせた。
「だけどよぉ、俺らただ遊びに来たわけじゃねぇんだろ? そんな遊んでばっかで科学の土産はいいのか?」
「何言ってやがるクロム。エンタメは科学の進歩の結晶みてぇなもんだ。たっぷり遊んでたっぷり学んで、アホほど意味のある旅行にすりゃあいいだけだ」
そう言ってアトラクションの説明の載ったガイドカードに目を通す千空。
ドリーマーズランドは本星の遊園地の他に、周辺の小惑星に星を丸ごと改装したアトラクションが用意されているらしい。
レンタ・ロケットという小型ロケットに乗り、それぞれの星を自由に見て回ることができるようだ。
・西部の星
19世紀の西部開拓時代のアメリカを舞台に、乗馬をしたり拳銃を撃ったりと、西部劇風のアトラクションで遊ぶことができる。
・恐竜の星
中生代の恐竜型が生息するエリアで、自由に探検をしたり、恐竜と仲良くなったり、レースをしたりできる。
・忍者の星
忍術を習い、試練を乗り越えることで上級の忍者を目指すことができるアトラクション。
・メルヘンの星
童話の世界を壮大に再現したエリアで、童話の主人公を演じることができるアトラクション。童話の種類は1001種類も用意されている。
・怪奇と伝説の星
古今東西のあらゆる怪物や妖怪、モンスターがいるアトラクション。
「う~む、たくさんあるな。それで、私たちは何処で遊ぶのだ?」
「ちなみにコハクちゃんたち、リクエストとかご希望とかある?」
「いや。どれもさっぱりだ」
「スイカもチンプンカンプンなんだよ」
「んなもん、今日1日じゃねぇんだから全部行きゃいいだろ」
「だよね~。でもさぁ最初は何処にしようかは悩みどころだよね~」
「まぁテメーも俺も22世紀の勝手がわからねぇからな。そこはその道の“プロ”を頼るのがベストだろ」
そう言って千空は、最初はドラえもんとのび太と共にアトラクションを回ろうと提案した。
「もちろんいいですよ!」
「一緒に行きましょう!」
2人は千空たちの同行を快く承諾し、7人で『西部の星』に向かうことに決めた。
ロッジを出て、レンタ・ロケットの貸出エリアに向かう千空たち。
道案内のロボットによると、ロケットのエリアは真っ直ぐ2km進めば到着するのだという。
地道に走るしかない、と滅入る千空とのび太。
「あっれ~? ジーマーで2キロ走るつもり? 千空ちゃん、忘れてない? クロムちゃんたちに使い方、教えてあげるんでしょ?」
ゲンのニヤニヤした顔に、千空はハッとした表情を見せ、その真意に気付いたクロムとコハク、スイカが歓喜する。
「ああ、そうだったな。ドラえもん、こいつらにタケコプターのレクチャーをしてやってくれ」
「あっ、そんな約束しましたね。いいですよ。ハイ、タケコプター!」
ドラえもんの取り出した竹とんぼ型22世紀科学に飛び上がるクロムたち。
「タケコプターを頭につけたら、空を飛ぶイメージをしてください。コンピューターが脳波を読み取って、反重力場を発生させてくれるので、イメージの通りに空を飛べます」
ドラえもんの説明の1割も理解できないコハクとスイカ。クロムもせいぜい2割の理解といったところだ。
「ようは電車ん時の俺らみたく宙に浮いてる自分を思い浮かべてみりゃいい」
「それ説明雑すぎじゃない?」
簡単に言ってのける千空に苦笑いするゲン。
だが、そんな彼の心配とは裏腹に・・・
「おお! これは、これはだぞ!」
「うぉおおお! 科学ってヤベぇ!」
コハクとクロムはたちまち宙に浮かび、自由に空を飛び始めた。
「ジーマーで!? 俺も初体験の時、そこそこガクガクした飛び方だったよ!」
「まぁ小難しく考えると抵抗感あるだろうが、ようは自転車に乗るコツみてぇなもんだ。元の運動センスと力学の理解の土台がありゃ、一発で使いこなせる代物っつうわけだ」
感覚的には自転車に乗るのと同じだとはいえ、空を飛ぶという概念すらなかった原始時代を生きてきた2人が一発で巧みに飛行する姿に感心する千空とゲン。
「コハクちゃんとクロムはすごいんだよ。スイカは怖いんだよ」
スイカだけは超低空飛行でフワフワと漂うので精一杯の様子であった。
「まぁ子供は補助輪から始めるからね~。最初のうちは両手を握ってもらいながら飛ぶのがいいと思うよ~。多分」
「そうですね。慣れないうちはそういう飛び方がいいですよ」
ゲンの口からテキトー発言にドラえもんの太鼓判が押される。
こうして優雅なタケコプター飛行のまま(コハクだけは既に残像すら出現させる高速移動で)ロケット貸し出しエリアに到着した千空たち。
「さぁて、いよいよお待ちかねの22世紀のロケットだ」
目をウキウキさせる千空を、微笑ましく見守るコハクたち。
ガイドのロボットに案内され、レンタ・ロケットの展示されたエリアに入ると、目に飛び込んできたのは数多の流線形・・・ではなく。
「あ゛?」
飛行機や車が並んでいた。年代的にはやや古め、19世紀後半から20世紀前半のアンティークなプロペラ機や車。
期待を打ち砕かれた千空が一瞬凍り付く。
「ほぉ、これがロケットというものか」
「いや~俺らのイメージのロケットとちょっと・・・というかだいぶ違うんだけど~」
「ククク。さすが22世紀のロケット。空気抵抗や推進力なんざガン無視。見た目なんてただの飾りっつうことか」
千空の知るロケット工学が根本から全否定されている現状にも、彼は苦笑いしながらもロケットをレンタルして“操縦”できるならば、それを楽しもうと気持ちを切り替えた。
が、この重力波推進ロケットは“音声入力の自動操縦”であり、無免許の子供でも安心して搭乗することができるのだ。
「・・・・・」
「千空ちゃん、ドンマイ」
そんな千空をさておき、ドラえもんとのび太はオープン座席のプロペラ機を選択していた。
科学の常識に照らせば大気圏突破の風圧や大気圏突入の摩擦、宇宙空間の真空を前に防御力ゼロという無謀な選択であるが、それすらも大丈夫ということなのだろう。
「千空、俺らはどれにするんだ?」
「あ~、んなもんテキトーでいいぞ。どうせ同じ目的地に自動的に着くんだ」
21世紀の科学の無常を嘆いているわけではない。千空としては自分にはチョイスセンスが無いからと、ロケット選びはクロムたちに丸投げ宣言した。
「クロムちゃん。俺のオススメはこの大型車だよ~。中もバイヤーな豪華さだし、みんなで乗って楽しむなら雰囲気ジーマーで最高だから」
それはバイヤーな人たち御用達の車であった。21世紀の公道を走っているのを見かければ、誰もが避けて走るほどの存在感と危険性を兼ね揃えた車である。
「おい。これ“ヤ”のつく奴らが乗る車じゃねぇか?」
「そうだね~。でもさ~、こういう時じゃないと乗れないんじゃない?」
「お~! カッコいいんだよ」
「座り心地の良い椅子だ。さすがはゲンだな」
普通の社会人であれば警戒と緊張間違いなしの車内でしっかりくつろぐコハクとスイカ。
苦笑いする千空の背を押し、ゲンは操縦席へと座り込んだ。
「それでは千空さんたちも、西部の星へレッツゴー!」