ドラえもんのび太のDr.STONE   作:三柱 努

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銀河超特急その6

メルヘンの星を堪能した千空たち、西部の星を堪能したドラえもんとのび太。

ドリーマーズランドをしっかり一日満喫した彼らは本星の自分たちの車両ロッジに戻り、ミーティングルームにて7人で食卓を囲んでいた。

 

「ヤベぇええええええええええええええ!!!」

 

クロムの絶叫が迷惑承知で狭い部屋に反響する。

一口ごとにこれだから、それだけで消費カロリーは半端ないだろう。

 

「美味ぇえええええええええええええ!!!」

「だあぁ! うるせえぞクロム! ちったぁ落ち着いて味わえ」

千空の叱咤も、涙とよだれをまき散らすクロムの耳には届かない。

そして、そんな彼にいつもなら味方してくれるコハクとスイカも料理に夢中で全然アテにならない状態だ。(ゲンはこの手のパワー案件にはいつものように傍観勢である)

 

「いやいや千空。これはめっぽうクロムの言う通りだぞ」

「ピザって、このモチモチがノビノビしておいしいんだよ!」

チーズをこれでもかと伸ばして口から垂らすスイカ。

その先端が床に垂れては勿体ないと、コハクが掬って自分の口に運ぶ。

「んな意地汚ぇ食い方しなくても、まだ料理はあんだぞ」

千空の言う通り、テーブルの上には古今東西の様々な料理が揃っていた。

 

「ハンバーガーやべぇ♪」

「カツどんだよ♪」

「ジーマーのコーラ♪」

「ねこじゃらしじゃねぇラーメン♪」

「カレーライス♪」

 

いつもの大冒険よりも賑やかな食事風景に、ドラえもんとのび太も『連れてきてよかった』とご満悦だ。

 

 

酒盛りならぬ料理盛りがしばらく続き、腹が満たされたことでようやく箸休め。

この日一日、ドリーマーズランドで遊んだ感想発表の話題が自然と始まった。

「いや~、ジーマーで最初はどうなるかと思ってたけど、しっかり楽しめたね~」

「うむ。桃太郎の原作があのような複雑なアフターフォローの要る話だとは思わなかったぞ」

「西部の星も面白かったんだよ」

「ドラえもんものび太も、そっちはあれからどうだったんだ?」

「強盗団以外の事件も起きたりして、大忙しでしたよ」

「正保安官のノビータくんが大活躍! 楽しかったねー」

「っつうか、のび太レベルの射撃の腕前でようやく合格&活躍とか、どんだけ難易度設定ミスってんだっつう話だな」

口々にあーだこーだと、楽しかったことや不満点、面白かったことや満足したことが飛び出してくる。

 

「いや~千空ちゃん。ぶっちゃけて言っちゃうと、俺はこのメンバーになるようにコントロールして正解だったと思うよ~」

ゲンがヒソヒソと千空に告げると、千空も妙に納得したような表情で返した。

「だろうな。復活者組の21世紀人にゃ、この刺激は強すぎる」

「あんま楽しい時間過ごしすぎるとさぁ、21世紀の石化前の生活が名残惜しくなっちゃって、元の科学王国の生活がブルーになっちゃうよね~。龍水ちゃんとかならまだ耐えられるかもだけど、メンタルケアの手間が少なくて済むのって、千空ちゃんか俺くらいだと思うからさ~」

そう言って手をヒラヒラと振って、ゲンは皿に残ったハンバーガーのソースを指ですくってペロリと舐めとったのだった。

 

 

 

こうして7人のドリーマーズランドで過ごす最初の夜はふけていった。

 

だが彼らは知らなかった。

 

宇宙の果てから寄生生物の脅威が、ドリーマーズランドだけではなく、銀河全体の危機として迫りつつあることを。

 

 

 

 

翌朝。ドリーマーズランド2日目。

ドラえもんとのび太は『恐竜の星』に遊びに行くことを所望。

「で、俺たちはどこにしちゃう? やっぱここは・・・ってあれ? コハクちゃんは?」

集合予定時間、ミーティングルームに入ったゲンが部屋を見回すと、スイカが手を挙げて答えた。

「コハクちゃんはお風呂なんだよ」

「昨日の夜、入ったのが気に入っちまったらしい。静香ちゃんポジションじゃねぇくせにな」

「しずかちゃんポジション? なんだそりゃ、ゴリラ枠か?」

コハクがいたらタンコブ3つはできそうなつぶやきをサラリと言うクロム。

 

そう。コハクは今、客車に備え付けられたお風呂に入っているのだ。

無論、22世紀の技術が詰まった風呂は、21世紀のものとも、58世紀の湯治ともレベルが段違い。

かけ湯にサウナ機能も充実。シャワーや温度管理、ドライヤーやら何やらのグレードも高い。豪華な温泉施設並みの装備が揃っている。

壁紙だってバーチャル映像で切り替えられ、銀河の中でお風呂に浸かることだってできる。

 

そんなお風呂でコハクの入浴シーンがどうなっているかというと・・・

一言でいえば“泡”である。

「この泡風呂というのは最高だな!」

泡の化物が浴室を駆け回っていた。

22世紀の泡は目に染みない。滑って転ぶようなエグい潤滑性も無い。浴室中を泡まみれにして、コハクはその中で体の洗えるところを逃すところなく洗っていたのだ。

 

カラン

 

「ん?」

その時、部屋の入口辺りで何かが落ちる音がした。

何かと思ってコハクが調べに行くと、そこには小さな円盤型の置物が落ちていた。

 

 

 

「千空、これは何なのだ?」

風呂から上がったコハクが、その円盤を渡して尋ねる。

「知るわきゃねぇが、まぁこの遊園地のUFO型玩具ってところか?」

紫色を基調としたUFO型で、てっぺんに触手のような異物が生えた円盤を、千空は興味ありげにジロジロと観察した。

「コハクちゃんのお風呂を覗きにきたんだよ」

「物好きなヤツだな」

クロムの何気ない一言にコハクの拳がいつものように炸裂する。

 

「ドリーマーズランドの玩具ロボットかもだね~。こりゃあ“正当防衛”になっちゃうね~」

ゲンがニヤニヤと言うと、千空もまたニヤァと悪い笑みを浮かべる。

「おぉ、なんだ悪っい顔をするなキミたちは」

「まぁ俺らの言い分としては『コハクちゃんの裸でも録画されてちゃたまらないから、分解して調べてみました。お客さんのお風呂に入ってくるほうが悪い』だね」

「だな。22世紀の機械を正式にイジってもイイっつう正当な言い分だ」

千空はそう言うと、ドラえもんたちが出発する前に借りておいたドライバーセットを取り出した。

「ゲン、今日はまかせたぞ。コイツら連れて遊びに行ってきてくれ。俺は・・・こいつが終わってからテキトーに追いかける」

「オッケーだよ千空ちゃん」

そう言うとゲンはクロムたち3人の背を押して、客車から追い出すように外へと出た。

 

「どうしたのだゲン? 千空を置いていく気か?」

「置いてく、というより好きにさせてあげるっていうほうが正しいかもね~」

ゲンはヘラヘラと笑いながらも、その顔に気遣いの様子がうかがえる。

「ぶっちゃけて言っちゃうと、この遊園地の科学って俺らのいた21世紀の時代よりも、ちょいと古い時代の文明を再現したアトラクションが多いわけよ。言っちゃえば科学王国でも再現可能なレベルね~」

「・・・なるほどな。俺らにとっちゃどれもヤベーもんばっかだが、千空にとっちゃ期待してたほど目新しさが無かったっつうのか」

ゲンの説明にクロムが納得して『ふーむ』と手を顎に当てる。

「そこに来てさっきのUFO。あれってジーマーに科学の塊っぽいし、千空ちゃんにとってもアトラクションより面白いこと間違いなしのアイテムなの」

「たしかに千空の目、キラキラしてたんだよ」

「ということで、俺らは俺らだけでアトラクションを楽しんじゃって、千空ちゃんを引率の先生の仕事から解放してあげようってこと」

「そういうことなら仕方あるまいな。私たちだけでは右も左もわからんが、ゲンが案内してくれるのであれば問題あるまい」

コハクの合点もいき、4人組はアトラクション巡りを決行することにした。

 

「それで、これからどこの星に行くんだ?」

「スイカは行ったことのないところに行きたいんだよ」

クロムとスイカがワクワクを露わにする中、ゲンはニコ(ヤ)ッと笑ってガイドを操作した。

 

「じゃあ行っちゃう? 俺らが司帝国とたたかう時に、この技術さえ学んでれば攻略難易度ゲキ落ちのスペシャルマーシャルアーツの文明。忍者の星に」

 


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