ドラえもんのび太のDr.STONE   作:三柱 努

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銀河超特急【最終回】

「いや嘘だろ」

 

禁断の星で機関車を手に入れ、千空を復活させた一行。

ヤドリからの追跡に備え二手に分かれ、警備隊の星へと向かっていた。

そこに現れたヤドリの軍艦。囮にも引っ掛からずにドストレートにクロムたちの機関車の横に現れていた。

 

「いや嘘ではないか」

 

ヤドリの戦艦は2隻。

1台はいかにも20世紀後半の趣味で作ったような、スターでウォーズするような戦艦。

もう1台はいかにも20世紀前半以前の、58世紀の科学王国が建造を目標にした帆船タイプの戦艦。

コハクの目から見ても時代錯誤のアンバランスさが際立つ代物だ。

 

「いや嘘だろ」

 

千空は『ヤドリは寄生の宿主になる人間を殺さない』と、客車の中にいればひとまず安全だと推測していた。

そこに艦隊砲台の一斉掃射が、客車を襲った。

「千空ちゃんの悪い予想、当たるからジーマーで!」

ゲンの悲鳴が轟いたが、22世紀の客車は無駄に頑丈であった。

だが、機関車は無駄に弱かった。

「落ちるんだよ~!」

砲撃によって操縦不能になった列車は、一面が荒野の星に墜落してしまった。

 

 

 

「人間共よ諦めろ。大人しく出てくれば、悪いようにはせん」

機関車から距離を置いた台地に着陸したヤドリの戦艦。

警戒しているのか、一斉攻撃に出てくることなく、大音量の呼びかけがドラえもんたちに届いていた。

 

これを好機と、ドラえもんたち10人は反撃の準備に出た。

『みんな、準備はいい?』

客車中から集めた水鉄砲にヤドリ特効のある石鹸水を詰め、列車の背後に隠れる。

 

ヤドリに支配された人間たちやヤドリのUFOが隊を作り射程内に入った。その時

「今だ!」

ドラえもんの合図に飛び出した人間軍団の一斉掃射がヤドリたちを襲った。

「待ち伏せか!」

不意を突かれたヤドリたちも応戦する中、石鹸の水がヤドリたちに命中・・・は、あまりしなかった。

のび太の撃つ水は百発百中。ドラえもん、ゲンが健闘するが、それ以外のメンバーはイマイチ命中しなかった。

たしかに、石鹸の帯が地面に這われていくことで、下手に歩こうとすると滑って転ぶかもしれない。だがその程度の妨害である。

 

「だろうね~。ただでさえ水って真っ直ぐ飛ばないし、みんな射撃大会の成績イマイチだもの~」

芳しくない状況を実況するゲンであったが、その笑みの奥には一切の絶望は無かった。

「射撃だけじゃ、ね」

 

 

「水遁・水龍弾の術!」

 

 

その異変はヤドリたちの足元から湧き上がっていた。

彼らの足元で、小さな“ネズミ”が口に巻物を咥え立っている。

そのネズミの周囲から水の柱があふれ出し、みるみるうちに巨大な水の龍と化した。

「ただのこけおどしの術ではあるがな」

忍者の星で巻物を手に入れていた中忍ネズミが勝ち誇った笑みをこぼすと、水の龍が地面を這いながらヤドリの人間やUFOを次々と飲み込んでいった。

 

術はたしかにこけおどし。誰一人として水流に流されることもなければ、溺れて窒息するわけでもない。

「だがな。水は石鹸を溶かすんだぜ! 喰らいやがれ、ゴリラソープだ!」

クロムのガッツポーズに、ネズミから元の人間に戻ったコハクがグッと握り拳を向ける中、ヤドリに取りつかれていた人間たちは倒れ、ヤドリUFOも次々と墜落していった。

 

これがドラえもんたちの奥の手。直接戦に追いやられた時に、のび太たちの射撃を囮にして一網打尽にヤドリたちを倒す作戦。

結果を見るに、大成功であった。

 

 

「小癪な人間共が!」

残すヤドリは、金ぴかのド派手なヤドリ大帝ただ1機。

「アイツを倒せば、きっとスイカたちの勝ちなんだよ!」

「だろうね~。ヤドリたちも“様”って言葉使ってたから、上下関係がある組織体系の生き物だって分かってたし。確実だね~」

「だろうな。よっぽど奴らが奥の手でも用意してなけりゃな」

 

千空の根拠のない危惧に、ドラえもんとのび太が「またまた~」と笑う。

 

だがその眼前で

無様に逃げていったはずのヤドリの親玉が帆船の中に消えていき

直後に巨人の石像と共に現れた。

「嘘だよぉ」「や、やべぇ・・・」

人間の20倍はあるであろう巨人のロボットが次なる敵。

サイズ感が58世紀の常識からかけ離れすぎた巨体に怯むスイカとクロム。

「怯むな、かかれぇ!」とドラえもんが勇猛果敢に叫び、タケコプターを装備した面々が一斉に飛び掛かる。

だが、水鉄砲の石鹸はロボットの表面に弾かれて効果がなかった。

 

「だめだ。中にいるヤドリに届かない!」

「いや私なら!」

諦めを見せるドラえもんであったが、コハクだけは水龍と共に特攻を仕掛けた。

「小癪な、小娘が!」

ヤドリ巨人が剣を振り回し、コハクに襲い掛かる。

 

ヤドリの剣技は大したことはなかった。その生態系から接近戦の必要がなかったこともあるだろう。

大振りの緩慢な動き。コハクであれば目をつぶっていたとしても容易い技量だ。

だがそれは等身大の話。

20倍のリーチから繰り出す剣の振りはもはや大嵐。

 

「くっ」

わずかにコハクの足が滑った。

その隙を突かれ、コハクは巨人の腕に捕らえられてしまった。

「コハクちゃん!」

「動くな人間共。この娘を握りつぶされたくなければな」

勝ち誇ったヤドリ大帝の声が荒野に不気味に響き渡った。

 

「あ~、お手上げだ。コイツには100億%勝ち目がねぇ」

気怠そうに強がりながら、ドラえもんたちの中から足を踏み出したのは千空であった。

「降参だ。このまま物理で潰されて痛ぇ思いをするよか、素直に体をくれちまったほうが痛みが無くて合理的だ」

「聞き分けが良いな小僧」

千空の敗北宣言に、ドラえもんやボーム、のび太はガクッと項垂れる。

 

「駄目だ千空! 私の身など気にするな。最後まで諦めるな!」

「そうだよ千空ちゃん! 千空ちゃんがまた敵になっちゃったら、今度こそジーマーで俺らの負けだよ!」

コハクとゲンの悲鳴にも似た叫びに、ヤドリ大帝は高笑いした。

「なるほど小僧、貴様が人間共のリーダーか。褒美だ。手始めにワシ自ら貴様の体を貰ってやろう」

巨人はコハクを捕まえていないもう一方の手で千空を摘まみ上げ、千空を巨人の口の前に持って行った。

 

ヤドリ大帝は巨人の口の中から現れた。

狙撃や早撃ちで狙うなら今だが、のび太たちのいる地上からは離れすぎており、千空はポケットに手を突っ込んだままだ。

 

閃光が走った。

ヤドリが寄生する時に出す光線が、千空の額を捕らえた。

「フハハハハハハ! 容易いぞ人間」

千空らしからぬ高笑いに、クロムたちは絶望を覚えた。

ヤドリに再び千空を奪われた。この事実に逆転の手は無い、そう誰もが思った。

 

 

だがその時

 

千空の体から勢いよく

泡が噴き出した!

 

「なっ!? こ、これは!!!」

千空の体を包む泡に、ヤドリの人格が慌てふためく。

必死に泡を除こうと腕を振り回すが、泡は止まることを知らないように、ついには千空の体中を覆った。

「お、おの~れ~!」

断末魔の叫びと共に倒れるヤドリ千空。そして巨人ロボット。

 

落下の中、千空とコハクを間一髪のところで助け出したのは、タケコプターで駆け付けたボームとドラえもんであった。

「やった! ヤドリの親玉を倒したんだ!」

喜ぶのび太たち。地上に降り立った頃には目を覚ましていた千空がニヤリと笑う。

 

 

「やっぱり、千空くんの体から出てきた泡はヤドリを倒せる石鹸の泡だったのか」

「でもどうやって?」

ボームとのび太の問いに、千空はニヤリと笑って返した。

「自爆装置だ」

 

「じばく?」「そうち?」と首を傾げるコハクとスイカ。

「クックック。言ってまぁアホほど原始的な科学だ。アイツらが散々に馬鹿にした、な」

「えっ? 千空さんって何か道具を見つけていたんですか?」

ドラえもんが尋ねると、千空は首を横に振った。

「材料は石鹸と、コーラと塩・・・理想を言やぁメントスがあると分かりやすいんだがな」

千空の言葉に、それが流行した20世紀・21世紀の現代人、のび太とゲンは互いに顔を合わせた。

「メントスコーラ!」

 

「ああ。コーラに塩を入れりゃ泡が一気に噴き出す。その原理で石鹸の泡をスプリンクラーみたく噴き出させた。ヤドリに寄生されて俺の意識が消えた時に発動するようにしてな」

「なるほど、だから自爆装置・・・えっ? でもどうやって?」

「意識が無くなったら、自爆装置のスイッチを押せないじゃないですか」

千空の説明に納得しかけたドラえもんたちであったが、その説明の矛盾に首を傾けた。

 

「あ゛? その逆だ。意識が消えるまで“スイッチを押し続ける”ようにしたんだよ。塩とコーラの境目をポケット越しに握っておいてな」

そう言うと千空は服をまくり上げ、2日前の夕食でゲンが飲んでいたのと同じコーラの容器と、その先に繋がって千空の服に隠したチューブを見せた。

 

「ヤドリが体を乗っ取りゃ、何も知らずに手を離す。その瞬間にメントスコーラのソープスプラッシュだ。ククク、科学王国の原始科学で22世紀のバケモノエイリアンを倒してやったぜ!」

 

 

 

 

こうして、銀河の危機は避けられた。

残ったヤドリは宇宙の彼方へと逃げていき、宇宙警備隊によってドリーマーズランドの安全は守られた。

ツアー客は誰一人傷つくことはなく、ランドの修復も被害者が協力を申し出た。

のび太たちを馬鹿にしていた子供たちも、今回の一件で考えを改め、最後にはのび太と握手を交わしていた。

 

最後には大トラブルに巻き込まれた千空たちであったが、銀河の平和を守ったという壮大すぎる誇りを胸に

 

彼らのいるべき場所

科学王国へと帰還する。

 




「ん? なんだ千空。もう帰ってきたのか?」
どこでもドアから姿を現した千空たちを、龍水はキョトンとした顔で出迎えた。
「千空様、皆様も。今しがた出て行かれたばかりですが、お忘れ物でも?」
ドラえもんのアニメにそこまで精通していなかった完璧執事フランソワは知らなかった。
どこでもドアには『来た時間に戻る』時差調節ダイヤルの機能がある。
これにより、4日間の大冒険に出ていた千空たちは、科学王国を出てから1秒後の時間に戻ってきたのだ。

「聞いてよ龍水! スイカたち、銀河の平和を守ってきたんだよ!」
ピョンピョンと興奮して飛び跳ねるスイカの可愛らしい姿に、フランソワは冗談を聞き流すように「それは素晴らしい体験でしたね」と微笑んだ。

「それで千空、ゲン。22世紀の科学土産を早速見せてくれ! フッ、貴様らのことだ。フエルミラーで荒稼ぎしてきたのだろう? 当たるぜ船乗りの勘は!」
龍水の指パッチンが響く中、千空とゲンはハッと思い出してしまった。


銀河を救う大活躍に浮かれて、ドラえもんを強請ることを、すっかり忘れていたことを。





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