ドラえもんのび太のDr.STONE   作:三柱 努

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※掲載順が絶対に間違っているのは承知しています。
1~4話の続きのお話になります


ドラえもんのび太のDr.STONE【続】
千空たちとの約束を果たしたドラえもん


「この病室だね」

生命維持装置の単調な機械音が無機質に鳴る病室に、ドラえもんとのび太の姿はあった。

2人はストーンワールドを救うため、石化装置を暴発させる前の時間に戻り、オヤツの羊羹を隠してから【神さまシート】を取り出し、その中の人類が石化する前の世界へと降り立っていた。

そして今、大樹の願いであった獅子王未来の植物状態からの回復を叶える番である。

目の前のベッドに眠るのは、6年間眠りから目覚めていない12歳の少女。

「のび太くん、危ないから下がって」

ドラえもんはとりよせバッグで石化装置を取り寄せ、「1m 1second」とつぶやくと、手にした捻じれたアクセサリーから淡い光が溢れ出していく。

その光に触れた側から未来の体が石化していき、全身が石になったことを確認すると、ドラえもんは石化解除液をふりかけた。

すると未来の体は光を放ち、端から元の人間へと戻っていく。

「ここ・・・どこ? 私・・・」

「やったぁ! 成功だぁ!」

目を覚ました未来のうつろな眼に、ドラえもんとのび太の姿が映る。

「これで大樹さんのお願いも叶ったね。あとは杠さんだけだ」

「はぁ~長かったぁ」

のび太の安堵の声にドラえもんもウンウンとうなずく。

千空たちの願いを叶えるために奮闘した2人は、特にこの未来のいる病院探しに苦戦していた。

何故ならストーンワールドでこの病院の住所を知っているのは司だけ。その司が冷凍保存されているため、病院の場所は経度緯度の座標で調べるしかなかったのだ。

そんな事情も知らない未来は、目の前で喜ぶ眼鏡の男の子と青いダルマの姿を不思議そうに眺めるしかない。

その“どこかで見たことがあるような、絶対にいるはずのない存在”を。

「あっ、そうだそうだ。放っておいてごめんね。改めまして、ぼくドラえもんです」

「野比のび太です」

「獅子王・・・未来です。はぁ、ドラえもんって本当にいるんだぁ」

未来は『まだ夢を見ている』と思っていた。

「じゃあ最後に、未来ちゃんにお願い事があります。この連絡先をお兄さんに渡してあげてね」

「千空さんって人の連絡先だよ。お兄さんに、この人とお友達になってあげるようにお願いしてね」

事前情報抜きに、この滅茶苦茶な依頼を理解できるわけがない。だが、すでに疲労困憊の2人にとっては、一秒でも早く任務を終わらせて元の地球に帰りたいだけで一杯なのだ。

こうして、呆気にとられる未来を残し、ドラえもんとのび太は元の世界へと帰っていった。

 

 

それから1時間後・・・

千空は自宅のマンションへと帰っていた。

「おい新婚夫婦。イチャイチャすんなら、とっとと愛の巣に帰巣しろっての」

「なんだ千空、連れないじゃないか! そんな邪見にするなよ!」

この日、5年越しの恋を確認し合うことに成功した大樹と杠が、千空の部屋に居座っている。

カップル誕生の甘美な時間を過ごすには、2人はウブすぎた。

普段と違う過ごし方をすると落ち着かないのだ。

「ところで千空くんは、さっきから何をしているの?」

「あぁ。さっき来た郵便を量子分解すんだよ」

物騒なことを言いながら、千空はガラス張りの容器の中に小さな箱を放り込んだ。

「つっても、んな高度科学を学生が再現できるわけがねぇ。せいぜい消し炭だ」

「それで、何を燃やすんだ?」

「タケコプター」

サラッととんでもないことを言ってのける千空に、大樹と杠は目を丸くする。

「百夜のつまらねぇ冗談に付き合うな。宇宙に行く前にサプライズ、ちったぁ息子の喜ぶもんを寄越せっつう話だ」

そう言うと千空はつまらなさそうにスイッチを入れ、閃光と共に、その小箱を黒い何かに変貌させた。

「お父さんのドッキリに付き合ってあげてもいいんじゃないかな?」

「んなもん、世間様の面白ニュースのほうが100億倍唆るっての。『霊長類最強の高校生様が試合放棄』だとよ。下痢でもしたのか?」

これでもかと意地悪くイジる千空の口に、大樹と杠はお手上げ状態であった。

ピンポーン

その時、訪問客を知らせるチャイムが鳴り、千空は気怠そうに玄関へ向かった。

この家に用事がある人間として考えられるのは、友人の大樹と杠。それ以外は新聞やなにかの勧誘しか無いからだ。

「あのぉ・・・こちら石神千空さんのお宅でしょうか?」

「ぁあ、オタクは?」

目の前にいたのは筋肉質な女性だった。仏頂面の千空を見て、何か期待していたものと違うと残念がった顔をしている。

「あの。私、花田仁姫っていうんだけど。後輩からはニッキーって呼ばれてて。あのさ、変なこと言うけど・・・アンタに会いに来た」

ニッキーの言葉に、これでもかってくらい興味薄な目を向ける千空。

その空気を察したニッキーは顔を真っ赤にするが、負けじとポケットから紙を取り出した。

「今日、部屋にこの紙があったんだ。私の字に間違いないけど、書いた覚えは全くない」

そこには『石神千空に会いに行くこと。迷わず、すぐに!』というメッセージと共に、千空の連絡先が書かれていた。

ニッキー自身、自分でも言っていて違和感だらけのエピソードであり、ドン引かれ覚悟で話していた。だが、その目の前の千空の表情は今までとは異なり目に輝きを宿している。

「唆るじゃねぇか」

意外な返事と共に、千空は「入りな」とニッキーを部屋に招き入れた。

杠と大樹が同席し4人で机を囲むと、ニッキーは壁に掛けられた写真に釘付けになった。

「あのさ、間違いだったらゴメンだけど。この写真の男の人って・・・宇宙飛行士の?」

「ああ、千空のお父さんだ」

大樹の答えにニッキーは飛び上がった。

「ままま、まさか石神百夜!? 今、ISSに行ってる!?」

「詳しいんですね」

とてもではないがインテリよりもファイターが似合うニッキーから出た言葉に驚く3人。

「だって私、この人と一緒に行ってるリリアン・ワインバーグの大ッファンなんだ! えええ、そんな人の息子さんのウチに来ちゃってんの!?」

興奮して立ち上がるニッキー。その様子を楽しそうだと感じる大樹と杠であったが、千空は何かを察したように白けた目を向けた。

「親父の企画、壮大すぎんだろ」

どうやらニッキーのことを、百夜が用意したサプライズの仕掛け人の1人だと思っているようだ。

ピンポーン

その時、チャイムが再び鳴り響いた。

「どんだけ用意してんだ? あいつは」

そう呟きながら玄関に出る千空。

「・・・・ぁあん?」

千空の妙な返事に、大樹たちも「誰が来たんだ?」と玄関に集まり、一同に『はぁ?』と目を丸くした。

「試合放棄した霊長類最強様が、俺に何の用だ?」

訪問客は獅子王司であった。

「突然の訪問ですまないが、俺も色々と混乱している最中だ。だが、どうか不気味がらずに聞いてほしい話がある」

力づくで捻じ伏せればどんな相手にも話を聞かせることができそうな司が、こうも低姿勢で話しかけてくる現状に困惑する3人。

千空だけは「ま~たあの親父のクソ企画に付き合わされた犠牲者が来やがった」と白けた様子である。

「キミの父親は関係ない。俺は俺の意思でここに来た・・・いや、ここに呼ばれたと言っていいか」

「ぁん? 呼ばれてんならテメーの意思100%じゃねぇぞ。大体、どこのどいつが科学部部員に格闘野郎を付け合わせて得すんだよ」

獅子王司相手に少しくらい物怖じくらいしろと、千空の相変わらずの口の悪さに戦々恐々する大樹と杠。

すると司は白い顔を少し赤らめて、言いにくそうに口を開いた。

「妹・・・いや、ドラえもんだ」

「・・・・・ドラミの間違いじゃねぇのか?」

 

玄関で立ち話もなんだと、とりあえず5人は部屋に入り話をつづけた。

「さっき言っていた試合放棄の件だが、その妹が関係している。妹は6年間意識不明だったんだが、今日突然目を覚ました。その知らせを受けていても経ってもいられず、俺は会場を飛び出した」

「そんな事情があったのか! 良かったな、妹さんが治って! だが、それならなおさら妹さんの傍にいてあげるべきじゃないのか?」

「ありがとう。精密検査こそ受けているが、妹は元気だよ」

大樹の熱気に司が礼を述べると、千空はピクッと眉をひそめる。

「ぁあん? 6年寝たきりが元気満々っつうのは矛盾してんぞ。もうちょい凝った設定持ってきやがれ」

「いいや事実だ。俺も目を疑ったが。そんな妹が俺と再会してすぐに言ったんだ。『ドラえもんに治してもらった。石神千空と会ってくれ』とな」

話の脈絡が無さすぎる、と千空以外も頭を捻り始める。

すると司は同席していたニッキーに初めて気づいた。

「キミはたしか、柔道の花田選手?」

その指摘に杠は「そういえば、見たことある気がしてたけど」と驚く。

「そういえば自己紹介もまだだったな。俺は大木大樹。こっちが石神千空で、こっちが・・俺の・・・」

「今日、彼女になりました。小川杠です」

顔を真っ赤にした大樹に代わり、杠も顔を真っ赤にして名乗ると、司は眉をピクと動かした。

「そうなんだ、おめでとうだね。私は花田仁姫、柔道をやってて。今日初めてこの家に押しかけちゃったところ・・・って、その理由が自分でもよくわかんないんだけどね」

ニッキーの名乗りは司の耳には届いていなかった。司は身を乗り出し、大樹と杠に顔を向ける。

「お二人の名前・・・大樹さんと杠さん、だったか?」

「あぁそうだが、それが何か?」

「同じなんだ。妹がドラえもんから聞いたという名前。彼いわく俺の妹の治療を願ったのは『大樹さん』だと」

偶然にしては奇妙すぎる一致に、司は自分の顔に手を当て困惑する。その様子は嘘とか作り話のリアクションではないことは誰の目から見ても明らかだ。

「で、杠の名前はどこから出やがった?」

「・・・杠さんの願いは、『俺に石神千空と友達になってくれ』というものだったそうだ」

またまた飛び出した突拍子もない展開に3人は混乱を極めるが、千空だけはニヤッと笑みをこぼす。

「人生一、クソくだらねぇ仮説が出来ちまったじゃねぇか。映画ドラえもんに、俺らが出木杉君を出し抜いちまったってことか?」

さっきまで話を馬鹿にしていた千空が一番に乗り気になったことに驚く4人。

「どういうことだ千空?」

「俺でも引くが、引くなよ。簡単に言やぁ『ドラえもんのび太の科学大冒険』だ。ここにいる5人で世界救って、歴史がまた元に戻ったんだ」

司の話を馬鹿にしていいレベルじゃないトンデモ話に、司以外の3人は「どこをどう繋げたらそうなる?」と、やや引いていた。

「つまり俺の妹の治癒はその功績からの謝礼だということか?」

「あぁ。妹もそこで目ぇ覚まして。司、てめぇは死んでるよ。だからこのお人良し夫婦は代わりに司ブラザーズの願いをリクエストして、柔道女は俺の父親経由でリリアンと会いたいつった。で、俺は・・・・!!??」

そう言うと千空は急に顔を青ざめさせ飛び上がり、自室に駆け込んでいった。

そして、この世のものとは思えない悲鳴を上げて卒倒したのだった。

 

「ま・・・まぁ気を落とすな千空!」

人生最大の失敗の成れの果てを手にどんよりする千空を必死で励ます大樹。

その様子をご愁傷様としか言えない3人。

「だがその理論だと、おそらくは千空くん。キミが俺たちのリーダーということになるな」

いかにもリーダーポジションキャラの司の言葉に杠は「どゆこと?」と首をかしげる。

「俺のリクエストの矢印を考えれば、大樹さんと杠さんではなくキミに向かっているのは不思議だろう。そして花田さんもリリアンに直接ではなく千空くんを経由している。つまり、俺たちには他の願いを差し置いても繋げたい絆があったと推理できる」

耳が恥ずかしくなるほどの司のくさい台詞に、ニッキーも杠も少し頬を赤らめる。

大樹は想像に難くないほど、この言葉にテンションを上げていた。

「ぁあ・・・まぁそんなところだな。で、ついでに言やぁ、今がちょうどいいタイミングだ」

そう呟くと千空はくたびれた体を無理やり起こして、部屋から持ち出したパソコンを開いた。

「ISSじゃ、週15分だけ家族との交信が許可されてんだ。俺は利用する気なんてサラサラねぇけどな」

カタカタとキーボードを打ち、交信依頼のメールを打ち込む千空。

すると数分してパソコンの画面から髭面の男性の顔がドアップで飛び出してきた。

 

「千空!!! 俺は・・・俺は・・・俺は、千空!!」

部屋中に鳴り響く父親の慟哭に、当の千空は耳をほじって「お前は百夜だ」と冷静にツッコミを入れた。

「お前が家族通信なんて利用するとはな。彼女でもできた報告か? (杠ちゃんは大樹くん派。となればその少しゴツい娘か・・・)やるな!」

画面越しの百夜の目が、千空の近くに並ぶ4人に移っていったのが分かる。当然、千空は「アホか」と冷静に否定した。

「まぁ時間が惜しい。てめぇの勘違いした女のリクエストだ。リリアン・ワインバーグを出してくれ。ファンなんだと」

「そうか! 分かった!」

『いやいや、世界トップの無茶ぶりをそんな軽く流すな』と驚く4人。

だが意外にもISSのノリは世界トップクラスに軽く、モニターの前に宇宙飛行士5人と歌姫が「何だ何だ?」と揃い踏みしていた。

「UAhhhhh!! リリアン! 本物!」

卒倒して涙と鼻水を垂れ流すニッキー。

主役が倒れてどうする? と、起こそうとしてギブアップした千空に代わって、大樹と司が起こす。

「へ~、これが百夜の息子くん。似てないね~」

フフと笑うリリアンの親しみやすい笑顔に、大樹や杠はホッと心を和ませた。

だが、そのリリアンの目からは涙がこぼれ始めていた。

「あれ? どうしちゃったんだろう私・・・千空くんの顔を見たら・・・・」

その異変はリリアンだけではなく、残る5人の宇宙飛行士にも起こり始めていた。

「私もだけど、シャミールまで。どうして?」

ダリヤが泣き顔を誤魔化すようにシャミールの肩をバンバン叩く。

「オッホーッ。なんだろ、ワシまで。悲しいとかじゃなく、嬉しい感じ」

ヤコフが怖そうな髭顔をくちゃくちゃにして涙している。

「分からないけど、揃ったって感じなんだよ」

コニーもまた美人が台無しになるほどクチャクチャ顔で喜んでいた。

この光景に、英語がほとんど理解できなかった大樹や、なんとなく理解できた杠、ニッキーも涙し、千空は顔をうつむかせて表情を隠していたが、パソコンのキーボードには数滴の水が落ちていた。

「千空、俺はなぜか今お前に無性に会いたい気分だ。帰還したら、そこのお友達も誘って来てくれないか?」

そういう感動の親子の再会に千空が興味ゼロなことは百も承知の百夜であったが、千空は意外にも「ああ」と力強く答えた。

「そういえば、アンタも宇宙飛行士になるんだってね? 大歓迎するから絶対になりなよ!」

ダリヤの命令に似た懇願に、司は「いや、彼だと体力が心許ないね」と冷静な分析を加える。

「だけど大丈夫だ。惑星探査に耐えられるよう、彼の体は俺が鍛えると約束する」

ドンと胸を張る司に「俺も協力は惜しまんぞ!」と大樹も胸を張りニッキーも名乗りを上げるが、その絶望的な脳筋提案に千空は動揺を隠せないでいた。

 

かくして、再会を果たした科学王国。

その夜、七海財閥からの連絡が入り、数日後には自衛隊からも。

そして、数週間後にようやくドッキリの疑いを外したメンタリストからの連絡が入るのは、また別のお話

 

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