幼馴染がVTuberを始めたら友人Aちゃんと呼ばれるようになった私の恋愛事情 作:yosshy3304
もし少しでも世界が違ったら。
世界というのはいくつもの同じだけど少し違う、所謂平行世界と言われる世界が無数に重なり合って出来ていると何かで読んだ覚えがある。
もしかすると私はそれを体験しているのかもしれない。
これが平行世界の過去の自分に憑依してしまったのか、それとも死後の輪廻転生なのかは判らない。
ただ前は成人した男で、今は小学生の女の子であるという事実だけ。
子供の頃からませているを通り越し、成熟した精神といった方が早い。
仕方ないだろう精神は大人の物なのだから。
今更子供のふりなど出来る筈もなく、周囲から一歩引いた位置でただただ周りの面倒を見ていた。
「あーちゃんって、呼んでいい…?」
「はい?」
小学校の入学式、その帰りに満開の桜を見上げていれば、いきなり校門のところでそう声を掛けられた。
母親は近所の知り合いと話している。
確か、その知り合いの家にも同い年の女の子がいたはずだ。
よくよく見れば、確かに声を掛けて来た女の子を見かけた覚えがある。
「小夜とお友達になってくださいっ!」
「いきなり何よ。」
「おかあさんが友達作っておいでって。私幼稚園は行ってなかったから。」
そういえば同じ地区なのに幼稚園では彼女を見かける事は無かったなと思い出し、不安げにゆれる彼女を改めて観察する。
自分と同じぐらいの背格好、さらさらのショートカットに徐々に涙が貯まっていく大きな瞳。すらっとした顔立ちは将来美人になるだろう。
「いいわよ、家すぐ近くだった筈だし、母さん達も多分一緒に帰るんじゃない?」
「ほんとっ!?わーい、あーちゃんと友達になったー!」
返事を返せば、泣きそうだった顔は一瞬でコロっと反転する。
体全体で喜びを表現し、跳びはねる彼女。
「おかあさんに知らせよう!」
「ちょ、私は別にいいでしょ! って力つよ!?」
すぐさま私の手を取り、母親の元へと駆け出す小夜。
繋がれた手を振りほどこうとしてもがっちりと繋がれた手はほどけず、同じぐらいの体格の筈なのにズリズリと引き摺られていく。
「おかあさーん、あーちゃんと、お友達になったよー!」
「あらあら、あーちゃんも小夜をよろしくね。」
「あ、はい。」
叫びながら、私を引きずりながらそう母親に報告する小夜。
小夜の母親はニコニコとホンワカと文字にすればなりそうな笑顔で私にそういってくる。
これは私と小夜の出会い。
その思い出だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ、何でこんなことになったかな……」
溜息一つ、私は一人でビルが立ち並ぶ一画をとぼとぼと歩いている。
今日は珍しく小夜がいない。
小夜との小学校からの付き合いも今や8年目だ。
中学校3年に進学したばかりの今日、いつも一緒だった小夜と珍しく本当に珍しく離れ、別の友人達とカラオケと洒落込んだ筈だった。
誰が言いだしたか、ノリで点数の一番低い奴が罰ゲームなと言いだし、そして見事私が最下位だった。
「まさか92点で最下位になるとか、誰も思わないじゃない。」
一番最初に歌った私の点数は92点という高得点をたたき出したものの、次々と自分より高得点をたたき出していく友人たちに戦々恐々しつつ、アッこれダメな奴だと思い始めれば案の定で。
罰ゲームは私に決定。
「馬鹿じゃないの!? 逆ナンして証拠の写メ送れって…」
内容はナンパする事だそうだ。
いや、襲われたらどうすんだとか考えるも、ノリのいい友人達は私の背中を押して外へと追い出す。
証拠の写メを送るまで入れないと言われ、無視して帰ってもいいが、少なくとも明日からの学校生活は針の筵だろう。
適当に声を掛けて事情を説明して写真撮らせてもらうとしよう。
「わきゃっ!?」
「おっとっ!」
とぼとぼと歩いていると、ビルから出て来た男性とぶつかった。
「すみません!」
「いやいや、大丈夫かい?」
「はい!大丈夫です。」
「そう? 今度から気を付けてね?」
「ほんと、すみませんでした。」
小さな体の私は軽く吹き飛ばされるも、よそ見していた私の方が悪いのですぐさま謝罪する。
男性を私を心配し手を差し伸べてくれて、掴まれば起こしてくれる。
短く注意され、もう一度謝った所ではたっと気付く。
「あ、あの!」
「どうかしたかな?」
「い、今、時間ありますか!?」
「はい?」
いきなりな質問をした私に素っ頓狂な返事を返した男性であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あっはっはっはっ………」
「うぅぅ、そんなに笑わなくていいじゃないですか…」
「いや、いや、ごめんて、でもマンガみたいなシュチュエ―ションだなって…」
「すみません、パン咥えて無くて…」
「あっはっはっはっ…」
私の返答にまたも口を開けて笑う男性。
あの後事情を説明し、近くの喫茶店で話していた。
証拠の写メはすでに送信済みであり、今は迷惑を掛けたお詫びにコーヒーを奢っている。
「にしても、よくあのマイナーなゲームを知っていたね。」
「あ、はい。親がゲーム好きで、私もそれに影響されてって感じで。」
「なるほどね。」
男性とはゲームの話で盛り上がる。男性は現在16歳で、中学校の間から動画投稿で稼ぎ、高校は行かずに自分で会社を立ち上げたのだという。
主にマイナーな誰も知らないだろうフリーゲームの紹介等を行い、だがきちっと稼ぎを出せるぐらいには登録者と視聴回数を稼いでいた。
「でもお兄さんがVTuberだったとは知りませんでした。」
「VTuber?」
「あ、いえ、……」
男性の見せてくれた画面には男性は移っておらず、手書きの男性アニメキャラが映っている。
前世の知ったかぶり知識でそう言ってしまったが、この時期にはまだVTuberという言葉はまだなかった筈なのだ。
「いいね、それ! VTuberか、今度からそう名乗る事にするよ!」
「えっ、あっ、いえ……」
何かやらかした感がある。
VTuberという言葉が生まれたのは2016年、今はまだ2011年であり、5年ほど先取りしてしまったようだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ゲーム実況?」
「そう、頼めないかな?」
時間は過ぎ、高校受験で周りがピリピリしてるころ、私にお兄さん、配信名『
お兄さんの会社は一応順調に大きくなってはいるが、クリエイターの数がまだそろわず、ほとんどお兄さん一人の力で仕事を回しているそうだ。
「一応受験生なんですが……」
「知ってる。でも君、いまさら慌てて勉強する必要もないでしょ?」
「それは、そうですが……」
「お願い! 助けると思って!」
「うぅ~……、仕方無いですねぇ……」
初めて逆ナンした時からそれなりの付き合いをし、前世が男性だった等忘れるようにお兄さんに恋をした。
同じゲームの話題で盛り上がり、配信時のキャラならともかく、普段のおだやかなでコロコロ笑う性格に絆され、そんなお兄さんの困り声に断る事も出来ずに、私は動画投稿を始めるに至ったのだった。
ほんの少しだけズレた世界