幼馴染がVTuberを始めたら友人Aちゃんと呼ばれるようになった私の恋愛事情   作:yosshy3304

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作者様の許可済みです。


第1話 幼馴染がVTuberを始めるまでの話2

「ごめんね、忙しい時に呼び出して。」

「いえいえ、堂々とゲーム出来る口実になりますから。」

 

お兄さんの謝罪に私はそう口にした。

初めて出会ったビルの中、お兄さんに出迎えて貰った私は、色々と機材の置いてある部屋へと案内される。

 

「ご両親にはちゃんと伝えて来た?」

「はい、知り合いのお兄さんのお手伝いしてきますって伝えました。」

「よくそれで通ったね。」

「一応、親友の御両親も含めて、それなりに信用はありますから。」

 

一番大変だった小夜の相手も、受験勉強でぐったりしている時を見計らったら簡単だった。

私はまだ中学生だ。

3月31日までアルバイトはおろか働くことが出来ない。

だからこそ、知り合いのお兄さんのお手伝いという事になっている。

一応子役のような映像作品関連には問題ないようだが、それでも問題の出ないように配慮していると言う訳だ。

こういう時には小さい頃から問題児である小夜の面倒を見ていたというのは有利に働く。

 

「一応説明させて貰うね。今回朝陽ちゃんにやってもらうのは先月正式リリースされたマインクラフトって名前のサンドボックス型クリエイトゲーム。基本的には自由にプレイして貰っていいよ。」

「これやれって指示はないんですか?」

「うん、元々マイクラにはストーリーらしいストーリーもないしね。自由こそが売りのゲームだね。」

「分りました。」

 

PCを立ち上げ、ゲームのショートカットキーをクリックするお兄さん。

画面にカラフルだが地味という何とも言えないタイトル「Minecraft」と表示される。

 

「マイクの音量とか位置はそこで大丈夫? 声出してみて?」

「はい。あーあーあー、マイクのテスト中……」

「うん、大丈夫そうだね。次にこれが朝陽ちゃんのキャラクター。」

「なんだか私にそっくりですね。」

 

マイクの位置を治し、音量を弄るお兄さん。

定番なセリフを言えば、声は小さくもなく大きくもなく、ちょうどよさそうだった。

画面右下に自分そっくりなキャラクターを表示され、PC上に付けられた深度感知カメラが私の表情を読み取りキャラクターへと反映させる。

 

「ここはVTuber用の部署にしようと思っているからね。」

 

お兄さんの口からVTuberという言葉が出てきて内心ぎょっとする。

未だ慣れない、自分の失敗から未来の言葉を先取りしてしまったその言葉。

 

「プライバシー保護の観点から見ても、出来たらもっと簡単にアバターが作れるようになったらVTuberも増えてYouTubeももっと流行ると思うんだけどね。」

 

私の内心に気付かずにお兄さんは苦笑しながらそういう。

 

「取りあえず、朝陽ちゃんのキャラクターの名前、決めようか。」

「まだ決まってないんですか?」

「うん、ついさっき実装したばっかだからね。」

 

一応お兄さんの会社にスタッフはいるが、まだ少ない。

中学校からの付き合いのある、元々お兄さんと一緒に動画投稿し始めた仲間だそうだ。

 

「『春乃 朝日』って一応仮名はあるけどね。」

「あ、私と同じ名前……」

「うん、だってこのキャラクター朝陽ちゃんイメージして作った奴だからね。分かりやすくアサヒっていれたんだ。」

 

私と同じ名前に思わず呟いてしまった。

それを拾ったお兄さんはやや視線を斜め上にしながら私に、私の名前が元だと言うが、お兄さんのデスクトップにある三ツ矢サイダーに目をやると、途端に慌てだす。

へいへい、私の名前と同じ飲料メーカーから取ったんですね?

 

「取りあえず挨拶の定型文でも決めようか?」

「あ、はい。あの今日も余の配信を見れた事光栄に思え!って奴ですね?」

「それは、今は忘れてください。」

 

何故かお兄さんに土下座されました。

いやそれ言ってるのはあなたなのですが。

 

「それ配信始めた頃にふざけて言って定着しちゃったやつだから、普段はあまり言わないでほしいかな?」

「判りました。」

「うん、とりあえず、挨拶は『こん朝』でいいかな?」

「いえ、出来れば特徴無いけど特徴的な奴って感じの方がいいです。」

「さいですか。」

 

おはようの人もこんにちわの人もこんばんわの人もおやすみなさいの人もおはようございます。という無駄に長い挨拶に決めて、リスナーの人は視聴者さん呼び、ツイッターの検索用に♯あさちゃんと決めておく。

 

「いいかい? 枠とってツイッターで告知するよ?」

「はい。」

 

お兄さんの言葉に初めてのライブ配信、緊張してきた為に深呼吸を一つ。

 

「最初はまだリスナーは来ないと思うけど、来たらいらっしゃーいでいいからね?」

 

定型文を使うのは配信待ちしていた人に向けてだそうだ。

まだ会社自体が無名の上、VTuberという名称自体定着していない。

最初は気楽にでいい、アーカイブを編集して動画にしてから徐々に慣れて行けばいい。

この時、私は気楽に考えていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はい、はい、いえ、こちらには来てませんが……少しお待ちください。あさひーっ!!」

「はーい、なにー?」

 

小学校時代のある日、夕飯を食べてたら突然鳴る電話。

母親が出てみれば、どうやら小夜のお母さんからだった。

少し慌てているお母さんの声色に、何事かと思えば突然名前を呼ばれた。

 

「小夜ちゃん、まだ帰ってきてないんだって、あんた何か知らない?」

「はい? いや、知らないけど……」

「そう、はい、はい、今娘にも聞いてみましたが何も知らないそうで、ええ、ええ、判りました、手伝います。」

 

ちょっと出てくるわと行って外に出て行く母親。

季節は夏の為、まだ日は沈んではいないが、夕日が見えている。

 

「あぁんのバカ、何処で何してるのやら……」

 

悪態を吐きつつ居なくなった小夜の心配をしていると、すぐ近所で犬が鳴く声がした。

 

「……あ、まさか!?」

 

その声に思い当たる事があった。

この頃は実は捨て犬を拾って小夜と二人で神社の境内で勝手に飼っていた事があった。

その数日前からその犬は姿を見せず、小夜がものすごく心配していたのだ。

 

「……探しに、行った?」

 

そんな馬鹿なとも思う。

そう、その頃飼っていた犬はお参りに来たおじいさんに見つかり、そのおじいさんに引き取られている。

さっき鳴いた犬がそうだ。

だけど小夜はこの事を知らなかった筈、家が近いからすぐに気づくと思って放置した私の責任だ。

 

「小夜っ!!」

 

私は家を飛び出していた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「うわーーん、ぽちたー、どこーっ!!」

 

とぼとぼと山道を歩く。

一応帰り道という事は判っているが、いなくなった犬を探して神社の傍から一山超えたのはやりすぎだったと今更ながらに後悔していた。

足の裏は擦り剝け、手足にも小さな擦り傷は無数に作りながら、もうすぐ沈む夕日に不安を覚えて泣いていた。

腕でぐしぐしと涙をぬぐいながら、一歩一歩でも足を前に進めないと帰れない事を理解している為止まる事は無いが。

 

「ひぃっ!? なに、なに? もうっ、やだー!!」

 

キィエーンという今にして思えばただの鳥の声が山彦しただけとわかるが、不安だった当時は妖怪か何かだと思っていた。

 

「だれか、たすけてよー!!」

 

わーんと泣きながら、下り道を降りていると……

 

「小夜―っ!!」

「あえ?」

 

友達の声が聞こえた。

 

「あ、あーちゃん?」

「小夜――っ!!」

 

それは確かに聞こえて、徐々に大きく聞こえて来た。

 

「あーちゃーんっ!!」

「小夜っ!!」

 

すぐ目の前にまで走ってきたあーちゃんを全力で抱きしめる。

ボロボロ泣いて、でも安心感から出て来た涙だ。

あーちゃんの体温に安心して。

 

「このおバカっ!! なに皆を心配させてるのよっ!!」

「ごめんなさーいっ!」

 

あーちゃんに怒られたが、それも自分を心配しての事、泣きながら、抱きしめながら謝る。

もう、もう! とあーちゃんも怒りながら私の背中をポンポン叩いてくれて……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「あの時あーちゃんも泣いてたよねー。」

「はぁーっ!? 泣いてないし、あんたが考えなしに行動するからでしょ、周り全部心配させて、本人はニコニコしてるんだもん。」

「あっはっは、それはあれだよ、あーちゃんと一緒だったから。」

「結局二人とも怒られる羽目になったし。」

「その事は感謝と共に謝罪のご用意がございます。」

「駅前喫茶のパフェね。」

「ええーー、あそこ結構な値段するよー!」

「あら? 謝罪のご用意があるんじゃなかったかしら?」

「ぬむー、今月は欲しい物あったのにー!」

 

まぁ、いつもの日常に戻ったという事で。

めでたしめでたし。




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