樹海に入れる特殊体質の少年(前世持ち)が愛する三ノ輪銀のためにいろいろ頑張る話   作:exemoon

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interlude Ⅱ

「しかし、ただ休むというのも中々落ち着かないもんだな……」

 

一人きりの病室でぽつりとつぶやく。

もう夜だ。

見舞いは皆、もう帰っていて一人きりの時間が生まれる。

昼間が騒がしい分、一人になるとやけに病室は広く感じる。

 

病室には、毎日誰かが見舞いに来てくれている。

特に、銀たちは毎日どこかしらで時間を作ってきてくれていて、少し申し訳なくなる。

勿論、とても嬉しいのだが、毎日鍛錬漬けだという彼女たちの負担になっているのではないかと少々不安になってしまう。

次によく来てくれるのは安芸先生だ。

新勇者の選定などの仕事も増え、非常に忙しいと聞いているが、わざわざ時間を作ってきてくれる先生にも感謝の念が尽きない。

色々情報も仕入れてきてくれるし、今もとても助けられている。

もっとも、情報をもらえても仕事をさせてくれないというのは秋隆と同じだけど。

他にも、学校の子や三ノ輪家の面々など様々な人たちが見舞いに来てくれていて、孤独を感じる暇もない。

本当にありがたいことだ。

 

 

「さてと……」

端末を使って銀と須美にメッセージを送る。

八月三十日は、園子の誕生日だ。

どうやって祝おうかと三人で相談しているのだ。

 

『やっぱり、園子はただプレゼントを贈るよりも、一緒に遊んだり何かしてあげるほうが喜ぶんじゃないか?』

 

『確かに…。そのっちも特に欲しいものはないとか言ってたし…。一緒にイネス行ったときとかすごく楽しそうだったものね…』

 

確かに銀の言うとおりだよなぁ…。

園子の家は、文字通り別格の名家だ。

欲しいものは何でも揃ってしまう。

ならば、高価なプレゼントをあげるより、一緒に何かして遊んだりするほうが園子は喜ぶだろう。

問題なのは、園子がどのように祝ってほしいかというところだ。

今まではもっと簡単に、手作りのお菓子だったり、園子に似合いそうな小物をプレゼントしていただけだったが、こんなご時世だ。

できるだけ盛大に祝ってあげたい。

 

「うーん。やっぱり、園子に直接聞くのがいいのかね……」

 

結局、色々話しあった結果、直接園子にどうやって祝ってほしいか聞くことにした。

勿論、プレゼントも用意するが、きっと園子も誕生日に一緒に何かするほうが喜ぶだろうし。

この件はもう少しゆっくり考えるべきだな……。

ん、待てよ。

そこで一つ面白いことを考えた。

銀と須美に相談してみると賛成してくれる。

これなら園子も喜んでくれるかな?

多分、銀と須美も楽しんでくれると思うし。

この件はゆっくり詰めていこう。

 

とそこで、病室の扉がそろりと開く。

こんな時間に誰だろう?

看護師さんならノックの一つもするはずだし。

小さく開かれた扉から少女が滑り込んでくる。

あれ…?この人どこかで見たような気が………。

 

「………って弥勒さん!?」

 

「しーっ、しーっですわ!」

 

弥勒夕海子さん。

赤嶺家と共に、神世紀72年の大規模テロの鎮圧に貢献した弥勒家のご令嬢。

もっとも、力を得た赤嶺家とは対照に弥勒家は数百年で没落してしまっているけど…。

それはさておき、赤嶺家とは盟友のような関係の家なので、自分も当然彼女とは面識がある。

彼女の実家は祖父の家と同じく高知にあるので、祖父の家を訪ねた際などにはよく顔を合わせていて、いまも連絡を取り合う仲だった。

確か、今は勇者候補生として大赦の施設で訓練を受けてるはずだけど…。

 

「んんっ…。お久しぶりですわね頼人さん。お加減はよくって?」

 

「ええ、自分は大丈夫ですけど……どうしてここに…?」

 

「盟友である頼人さんが目覚めたと聞いたのですもの。見舞いに行かないわけにはいきませんわ。ちょうど香川にいたことですし」

 

「うん、それは嬉しいんですけど、今は大赦の施設にいるはずじゃ?」

 

「あら、ご存じでしたのね。ええ、詳しくは話せませんが、今わたくしは重大な御役目の候補者として日々訓練を行っていますの」

 

うん知ってる。

元はと言えば、提案したの俺だし。

 

「だけど、あの施設って今外出禁止じゃなかったでしたっけ?」

 

そう、改革反対派の介入を抑えるために勇者の選抜期間中は候補生は外出禁止になっていたはずだ。

こんな夜更けだし、まさか………。

 

「な、なぜそれを……?」

 

弥勒さんが急に固まった。

やっぱりそうか…。

 

「弥勒さん………まさか抜け出してきたんじゃ………」

 

「ま、まま、まさか、そ、そんなこと、あ、あ、あるはずありませんわ!」

 

「………抜け出したんですね」

 

「し、仕方がなかったのですわ!ほかに方法はありませんでしたもの!」

 

意外とあっさり認めたな。

はぁ……。まったくこの人ときたら。

気持ちは嬉しいのだけれど、下手しなくてもこれがバレたら選抜に影響するだろうに。

弥勒家の再興が悲願であるならこんな迂闊なことしないほうがいいのに、純粋に俺を心配してきてくれているのが分かるから始末に負えない。

まったく、どうしてこう俺の周りには自分より他者を優先する人が多いのだろう。

 

「仕方ありませんね……。迎えを呼びますから帰りは家の車を使ってください」

 

「そ、そこまでしてもらう必要ありませんわ!自分で戻れますから!」

 

「あの施設、中から抜け出すならともかく外からこっそり戻るのは無理ですよ。警備が厳重すぎるので」

 

あの施設の警備には赤嶺も関わっている。

外からの侵入は難しかったはずだ。

だけど、少女一人に抜け出されてるって中々不安だな。

外からはともかく、中からなら抜け出しやすいのだろうか。

後で確認させよう。

 

「し、しかしこんなことでご迷惑をおかけするわけには………」

 

「勿論、ただではありませんよ。代わりに、迎えが来るまで自分の話し相手になってください」

 

「頼人さん……で、ですが……」

 

「気にしないでください。お見舞いに来てくれた盟友をきちんと送り返さないと、それこそ赤嶺の名折れですから」

 

そう言って、秋隆に迎えをよこすよう連絡する。

それと、弥勒さんが施設を抜け出したのは赤嶺の警備チェックに協力してもらったからだということにしておいてもらう。さすがにこういうことなら秋隆も素直に仕事を引き受けてくれた。

これで大丈夫なはずだ。

 

「頼人さん……。この御恩は必ずお返ししますわ!」

 

弥勒さんは俺のお見舞いに来てくれただけなのに、恩を感じる必要ないんだけどな…。

弥勒家らしい生き方というのもなかなか大変そうだ…。

 

「あ、入院中退屈でしょう?お礼にという訳ではありませんが、この本を差し上げますわ!」

 

そう言って、弥勒さんは「弥勒家三百年史」という本を俺に手渡してくる。

カバーから見るに自費出版っぽいな…。

内容はかなり誇張されてそうだし。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「これくらい、礼には及びませんわ!」

 

それから、迎えが来るまでの間、俺たちは本当にとりとめもない話をした。

学校の話だったり、入院生活についてだったり本当に他愛のない話。

彼女が病室を出て行ってから、ふと気づいた。

ああいういい子たちを自分は危険な目に合わせようとしているんだな……と。

無論、銀たちのことを考えたら勇者の増員に迷いはない。

だが、新しく勇者になる少女たちには、何も知らずに平和に生きる道だってあったのだ。

俺が、その道を潰すということをもっと強く自覚しなければならない。

 

「はぁ……七面倒な時代だな……」

 

まったく、天の神なんて厄介な奴がいなければもう少し青春を謳歌できたものを。

まぁ、愚痴を言っても仕方ないよな。

今は俺に出来ることをするだけだ。

もう少し休んでいようかとも思ったけど、そろそろウォームアップくらい始めなきゃな。

端末を操作し、通話を掛ける。

 

「赤嶺です。先生、新規勇者の選抜についてなんですが―――」

 

状況は未だ、解決には程遠いのだ。

むしろ、神樹の寿命のことといい、バーテックスのことといい、状況は加速度的に悪くなっていってる。

そうそう休んではいられない。

 

「ええ、選抜に自分も一枚噛ませていただきたく―――」

 

さて―――御役目を続けよう。

 

 

 

 

side/秋隆

 

硯秋隆の家は、代々赤嶺家に仕えていた。

いわば、赤嶺にとって最も信頼に足る家系。

秋隆も例に漏れず、赤嶺家に仕え、当主の信頼を得ていった。

故に彼が、赤嶺の長子である頼人の付き人になったのも、ある種、当然の流れであった。

 

秋隆は極めて優秀な人材であり、彼の高い情報収集能力は赤嶺においても注目されるものであった。

実際に、赤嶺現当主の付き人が何らかの理由で動けなくなった場合、彼がその代わりを務めることもある。

そんな彼が頼人の付き人をやめなかった理由は、ある種の好奇心であったといえよう。

結局、赤嶺の使用人といえども行っているのはルーチンワーク。

そんな中で、頼人の傍でその成長を見守る仕事は、秋隆にとって唯一変化を楽しむことのできる仕事なのであった。

 

少年自身はとても変わっていた。

幼くも麒麟児とさえ呼ばれた少年には、その高い能力に反して、自惚れや傲慢さのかけらも見当たらなかった。

使用人に対しても、何かを頼むということはほとんどなく、一人で完結しているかのような振る舞いをしている。

ある意味、完璧ともいえるような子供。

秋隆は、そんな彼が何を見ているのか、なぜそんな振る舞いができるのかがなぜだか気になったのだ。

 

そんな少年が、ある時期から急激にその振る舞いを変化させていく。

 

きっかけは、三ノ輪の長女との接触だろう。

あれから、頼人は使用人に何かを頼むことが増えていった。

それまで、執着というものが致命的に欠けていた頼人が、初めて執着した存在。

それからの少年は今までよりもずっと快活になり、今までより完璧さというものは薄れた。

しかし、秋隆にはそちらのほうが人間味が豊かなように思え、変化を好ましく思っていた。

恋というものは子供ですら変えるのだな、と感心さえした。

しかし、少年の異常性にはまだ気づいていなかった。

 

ある日から少年の動きには不審なものが増えた。

頻繁に、様々な名家の人間と接触し始めたり、家の中でも一見そうとは分からないように人払いをしたり、怪しい行動が多い。

両親には将来のために今の内に関係を強くしておくと説明しているようだが、違和感が拭えない。

おそらく、何かを企んでいる。

今までずっと、頼人を観察していた秋隆だからこそ分かった。

彼が三ノ輪の長女よりも名家との接触を優先していること自体がおかしいのだ。

心配になった秋隆は、秘密裏に彼の情報を集めることにした。

次期当主への内偵は裏切りを疑われても仕方のない行為であったが、秋隆は頼人への不安と一縷の好奇心を抑えることができなかったのだ。

 

しかし、調べてもその行動の真意は杳として知れない。

頼人が接触した名家の情報を集めても、赤嶺の分家が多いということや頼人を欲しがっている家が多いことくらいしかわからず、頼人が接触していた理由もよく分からない。

なにせ、ただ話したり、食事をとっていただけだったのだ。

念のため、会話の内容を集めたものの大したことは話していなかった。

若干、大赦関係の話が多かったぐらいだが、その話題も一過性のもので大した情報はない。

確かに、名家とのパイプを太くするためだというならば筋は通る。

だが、どうしても他に何か意図があるように思えた。

 

そこで、秋隆は別の角度からのアプローチを始めた。

三ノ輪家の長女に何か変化があったかどうかを調べることにしたのだ。

結果は大当たり。

彼女が勇者の御役目に選ばれたという情報を掴んだ。

これが頼人の行動の原因であることは容易に考えられた。

しかし、それでも頼人の行動の意味は読めない。

情報を欲しがっているのかとも思ったが、接触の際の会話はあまりにも断片的な話しかしていない。

勇者についての情報を得たいのであれば、直接ご当主に聞くなどほかの手段を試すはずなのだ。

あるいは、ご当主に聞いても答えてもらえない情報を探っているのか。

 

そんな折、頼人が勇者の御役目に巻き込まれる。

それにより、ご当主から頼人も勇者についての情報を教えられた。

しかし、その後も彼は名家との接触をやめなかった。

やはり、情報が目的ではなかったのか。

秋隆はそう思い、確認のために再度、頼人が名家の人間と接触した際の情報を得ようとして…気付く。

今までに比べ、格段に情報が集まりにくくなっていたのだ。

何を話していたかなど、今まで名家側の使用人経由で探っていたが、そもそも使用人を同席させずに話をするケースが増えていた。

いくらなんでも不自然過ぎる。

しかも、その後の頼人の処遇を決める会議では、彼が接触していた名家の殆どは頼人の立場向上を支持したという。

 

挙句の果てには、ご当主をすっ飛ばし、直接大赦上層部と何らかの取引を行ったという情報まで出てきた。

たしかに、その時点で頼人は御役目に関しての一定の立場を得ていた。

だがそれでも、大赦と直接取引を行うなど、いくら赤嶺の長子であるとはいえただの子供には絶対に不可能だ。

何らかのカードを持っていなければできない。

秋隆は何とか取引の内容を探ろうとしたが、赤嶺の力を使わない、秋隆個人の力だけではまるで情報は得られなかった。

この時、秋隆は言葉に出来ない敗北感というものを初めて味わった。

自分の情報収集能力について一定の自信を持っていた彼が、取引の内容を推察すらできなかったのだ。

しかも相手は小学生の子供。

自信を喪失しかけるのも無理のない話であった。

 

そんなある日、秋隆は頼人に呼び出された。

そこで頼人から教えられた情報は、秋隆の想像をはるかに上回ったものであった。

しかも、頼人は大赦の改革を行うつもりだから手を貸してほしいと言う。

 

そこで秋隆は理解した。

この少年は三ノ輪の長女一人のためにここまでやったのだ。

 

なんて常識外れで、大胆な子供、いや人間であろうか。

好きな少女一人のためにここまでするのは、大人でも早々できない。

笑ってしまいそうになるほど愉快に思える。

 

それでいて、頼人の語った手段は、計画的かつ現実的なものだった。

しかも、今まで赤嶺の分家の掌握を行っていたという。

彼は本気でこの計画を実行しようとしている。

もはや、秋隆に頼人を只の子供だと思う気持ちは微塵も残っていなかった。

赤嶺頼人は誰よりも特異な存在だ。

 

そんな彼が今、秋隆を頼っている。

その信頼はとても重く、そして得難いなものだ。

その信頼に応えたいと思う。

そして、間違いなく、赤嶺に忠を尽くすよりもこの人に忠を尽くすほうが、価値的かつ面白いだろう。

 

選択に迷いはなかった。

この人は自分が仕えるに値する存在だ。

 

この日、硯秋隆は己の主を赤嶺頼人に定めた。

 

 

 

side/???

 

概要1

 

赤嶺頼人。

赤嶺本家の長子として生を受け、その際立った才から若くして頭角を現す。

交渉力並びに情報収集能力が非常に高く、大赦の改革を促す遠因ともなった。

勇者の御役目が開始されて以降、樹海に入ってしまう特異性が発覚。以後は、勇者の支援に従事する。

三体のバーテックスが襲来した際には、独断で勇者システムの使用並びに精霊(詳しくは後述)を顕現させ、最終的には単騎でこれを撃退した。(後に、この件から勇者システムの管理体制の不備や同人の危険性が取り沙汰されたものの、バーテックス撃退の功から不問となっている。)

 

勇者システム並びに封印されていたはずの精霊をなぜ扱えたかは、同人の特異性と共に未だ不明。

前述の戦闘により一時は危篤に陥るものの、約一か月の昏睡状態を経て意識を取り戻す。

なお、前述の負傷の大部分は、戦闘記録からバーテックスを原因とするものでなく、勇者と精霊の力に対する身体の拒絶反応及び反動によるものではないかと推測される。

 

覚醒後の検査により、左目の失明、聴力の低下など一部の身体機能に問題が見られたものの、筋肉組織、神経系などはおおむね回復しており、覚醒の二週間後に退院。

だがこの際、回復の異常な早さから精霊による侵食が示唆された。

次項では、西暦時代の勇者である伊予島杏様の遺した研究結果を基に精霊の解説を行っていく。

 

概要2

 

神樹様には地上のあらゆるものが概念的記録として蓄積されている。その記録にアクセスし、抽出し、力を自らの体の顕現させる――これが旧世紀の終末戦争において活躍した精霊の概要である。

 

今回、赤嶺頼人が使用した精霊は、対象者の戦闘力の向上と一度の蘇生を可能とする大嶽丸。

この精霊の力は、西暦の勇者が使役した酒呑童子、大天狗にも匹敵する。

 

これ等精霊は悪鬼怨霊の側面を持っている。精霊を呼び出し、人の身に人外の存在を宿らせることは降霊術に近い。

降霊、憑依という現象は、人類文化の中で遥か昔から存在する。

シャーマニズム。イタコ、ユタ、審神者。彼らは人ならざるものを自身の体に宿す。犬神憑き、狐憑きといった現象もある。

だが、どれも危険が伴う。犬神憑き、狐憑きに至っては呪いのようなもの。人と人ならざる者の境界は、時としてあいまいになる。

切り札はその境界の先に半身を浸すようなものなのだ。

 

このように、精霊を体の中にいれる行為を続けてしまうと体内にケガレが溜まり、精神に悪影響を及ぼすという欠点が見られた。

不安感、不信感、攻撃性の増加、自制心の低下、マイナス思考や破滅的な思考への傾倒……等々、精神が不安定になって、危険な行動をとりやすくなるのだ。

しかし、同人の身体にはこれらの悪影響だけでは説明のつかない異常が起こっている。

その説明は次項で行うとする。

 

概要3

 

担当医師の報告によると、回収された直後の赤嶺頼人の身体は、四肢だけでなく、内臓器官にも多大な損傷が認められ、回復は絶望的であったという。

少なくとも、半身不随は避けられないというのが医師の見方であった。

 

しかし、昏睡状態から覚醒した時点で身体機能の大幅な回復が認められ、また一か月の昏睡を経たにもかかわらず、筋力の衰えなどがほとんど見られなかった。

この回復力は勇者のそれと比較しても尋常な物でなく、すぐさま医療面、呪術面双方からの原因究明に向けた調査が行われた。

 

まず、赤嶺頼人が心肺停止の状態を脱した際、装束の変化があった。このことから、同人は大嶽丸の蘇生能力を使用し致命傷を回復させたと考えられ、同人が致命傷を受けた部位の検査を実施。

結果、該当部位における筋肉組織の強化と神経の発達が確認される。

このことに加え、システム解除後も異常な回復が続いたことから、同人の体内に精霊が残留し、影響を与え続けていると判明。

 

今のところ、身体の回復へのみ、精霊の力は向けられているが、怪我が完治した以後、同人の身体にどのような影響が出るかは未知数である。

精霊の残留が続くことを想定すると、最悪の場合、同人は人ならざるものへと変化する可能性もある。

また、現状問題はないが、精神への悪影響も予想され、速やかな対処が求められる。

 

当初は勇者への悪影響を未然に防ぐため処理が提案されたものの、同人の能力は非常に貴重かつ稀であり却下される。

そのため、次善策が採用された。

次項においてその説明を行う。

 

概要4

 

鬼は古来より、悪や恐怖の象徴とされてきたが、同時に強さの象徴でもあり、時に神として祀られることも多々あった。

そして、大嶽丸は鬼神という神の側面も持ち合わせているため、その性質は顕著である。

したがって、大嶽丸は神と同じように力を封印することが可能であると考えられる。

 

この推察を基に、注連縄の技術を流用し、精霊の力を封印可能な眼帯を作成。

これをもって、同人への精霊からの影響を最小限に抑える。

しかしながら、これはあくまで対症療法であるため、根本的な解決には至らない。

精霊の摘出に関しては今後も研究が必要である。

 

なお、本件は赤嶺頼人本人には秘匿する。

本人が精霊の存在を自覚した場合、封印で抑えられていた影響が解放される危険性があり、そうなった場合、勇者の力による処理以外に無力化できなくなる恐れがある。

現状の赤嶺頼人の影響力を見るに、そうなった場合の被害は計り知れない。

 

故に、この件は大赦の最重要秘匿事項の一つとして今後扱われる。

反対意見は封殺する。

 

以上。

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