樹海に入れる特殊体質の少年(前世持ち)が愛する三ノ輪銀のためにいろいろ頑張る話   作:exemoon

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happen to me

神世紀298年4月、それは唐突に起こった。

いつものように、教室で朝の号令を行い皆が着席しようとした瞬間、時が止まった。

まわりのクラスメイト達の動きがぴたりと止まっている。

意識があるらしいのは、銀、鷲尾さん、園子ちゃんの三人だけのようだ。

思考が空白に染まる。少々混乱している。

まともに考えれば、これは夢とかそういった類の現象だ。

だが、頬をつねっても痛いし、おそらく現実。

だとすれば……これは樹海化の前触れか?

ということは、鷲尾さんと園子ちゃんもそうなのか。

しばらく前に銀から「御役目」のことを聞き、自分でもそれなりに調べていたので推測はできる。

しかし、樹海化の詳しいプロセスについては掴めていなかったため確証は得られない。

そして、何よりこれが樹海化によるものだとして、なぜ自分も動けているのかが分からない。

少し慌ててしまい、きょろきょろ辺りを見渡してしまう。

 

「え、どうして、赤嶺くんも動いて…?」

「あれ、ライ君?」

「頼人!?何で動いてんだ!?」

 

三人が気付き、口々に疑問を述べる。

やはり、彼女達も混乱しているようだ。

この様子を見るに、彼女たちもこの状況に陥るのは初めてなのだろう。

と、そこで廊下の向こうから光が広がっていく。

それは映画で見る終末の光のよう。

 

「銀っ!」

 

死を意識したせいか、気付けば銀を抱き庇っていた。

樹海化ならこれくらいでは危険はないはずなのに、つくづく銀のことになると体は勝手に動くらしい。

まぁ、万一死ぬとしても銀と一緒なら悪くないかもしれないな、なんて馬鹿なことを考えながら目を閉じる。

 

目を閉じていてもわかる。

全てが光に包まれていく。

 

 

「く、苦しいって頼人!」

 

銀の声がして、目を開けた。

気が付けば、周りはおとぎの国のよう。

四国が色とりどりの樹木に変化していた。

あまりにも幻想的な風景にしばし見惚れてしまう。

 

「こらー!いい加減放せー!」

 

おっと、銀を抱きしめていたのを忘れていた。

放してあげると、銀は頬を赤く染め、こちらを可愛らしく睨んできた。

かわいい。もう一度抱きしめたくなる。

 

「おーおーお熱いですなぁ二人ともー」

「み、三ノ輪さん、赤嶺くん!わ、わわわ私たちには、ま、まだそういうのは、は、は早いと思うわ!」

 

鷲尾さんと園子ちゃんはいまだに混乱しているらしく、よくわからない事を言っている。

とりあえず、二人を落ち着かせて、この状況を整理するべきだろう。

 

「あ、あそこ見て!」

 

と、思ったら園子ちゃんが突然叫ぶ。

大橋だったと思しき場所に巨大な怪物が浮かんでいる。

あれがバーテックス…なのか?

この距離からでもあんなにはっきり見えるとは…

思っていたものより、格段にでかい。

あんなのと銀は、彼女たちは戦うのだろうか?

不安が高まる。正直行ってほしくない。

そんな俺の内心を知ってか知らずか、

 

「あ、あれが敵だな!よし、さっさと行こう二人とも!」

 

銀が慌てた様子で二人をせかす。

何をそんなに慌てているのだろう?

……もしかすると、銀は俺に「御役目」について話したことがばれたくないのだろうか。

俺はわざわざ言うつもりはないけど……あり得るな。

 

「待って、三ノ輪さん。赤嶺くんを放っておくわけには…」

 

「大丈夫だって!ここは大橋からかなり離れてるし、ここで待っててもらったほうが安全だ!それに早くあいつを何とかしないとだろ?」

 

「うん、私たちで止めないとだね!」

 

「……そうね。今はお役目を果たすのが先決だわ」

 

話しかける間もなく、気付けば自分を抜きに話がまとまっている。

流石に扱いがあんまりだと思い、話しかけようとすると、三人が携帯端末を触りながら、何か祝詞のようなものを唱え始める。

そして、彼女たちが光に包まれたと思ったら、不思議な衣装に身を包み、それぞれ武器を携えていた。

園子ちゃんや鷲尾さんの武器はまだ現実味があるけど、銀の斧剣は常軌を逸している。あんなの大きなもの二振りも持つなんて大人でもできるか分からない。

 

「じゃあな、頼人!ここでおとなしくしてろよ!」

 

呼び止める間もなく、銀が跳んで行った。

瞬きする間に銀の姿が小さくなっていく。

速すぎる。確実に人間のそれじゃない。

 

「ミノさん、私もー」

 

「二人とも、待ちなさーい!」

 

二人も続けて跳んで行ってしまった。

………………完璧に取り残されてしまった。

この扱いはさすがにひどい気がする。

 

落ち着かないから、彼女らの近くに行きたいのだが、どう考えてもここから移動するだけで一苦労しそうだ。

仕方がないので、ポケットから携帯端末を出し、怪物を撮影する。

かなり距離があるが、怪物は非常に大きいため、カメラのズーム機能を使えばそれなりに様子は分かる。

怪物が突然ビームのようなものを打ち出す。あの散らばり方を見るに、あれは水流か?

どちらにせよ、あんなものをうけたら只じゃすまない。奴がバーテックスなのだとしたら当然攻撃しているのは銀たち、勇者。

銀は、あの三人は大丈夫なのだろうか?

心配で心配で気が狂いそうになる。

何もできない自分が歯がゆい。

 

しばらくすると、水流は止まり怪物は再び移動し始めた。

それはつまり…

 

「やられ…た?」

 

銀が負けた?

そんな簡単に?

こんなにあっさり、世界は滅ぶのだろうか?

 

…………いや、まだそうだと決まったわけではない。

あの怪物が水球を吹きだした。

あれはおそらく攻撃、なら対象となる存在がいるはずだ。

それはつまり、まだ勇者が生きていることを示している。

 

しかし、またすぐに怪物は移動し始めた。

現状、怪物にほとんどダメージを与えられていないことから銀たちは攻めあぐねているのかもしれない。

やはり、安否が知れないことも不安であるが、それ以上に彼女たちの力になりたい。

奴が移動している今なら問題ないだろう。

銀の端末に通話をかける。正直、この空間でつながるかどうか不安だったが、無事につながった。

 

『……ぁぃ』

 

妙に気持ち悪そうな声。

不安が募る。

 

「どうした!?どこか具合が悪いのか!?」

 

『サイダーの途中でウーロン茶になった………』

 

「は?」

 

言ってる意味が分からないが、ともかく無事なようだ。

言葉は聞き取れないが、鷲尾さんと園子ちゃんの声も聞こえる。

三人とも無事なのが分かって少しホッとする。

 

『あっ、そうだ!頼人もあいつの倒し方考えてくれ!』

 

元気になった声で唐突に言われる。

よし、それなら多少は役に立てるかもしれない。

やる気が出てくる。

 

「よし、手早く三人に出来ることを教えてくれ」

 

何をするにもまずはデータが必要だ。

幸い怪物に出来ることはある程度観察して分かった。

後は勇者の能力だけだ。

 

『ああ、まず…ってどうした園子?え、うんうん。…それなら行けそうだな!悪い頼人大丈夫そうだ!』

 

つー、つー、通話が切れた音がした。

…………………やっぱり俺の扱いがひどい気がする。

とはいえ、銀と少し話しただけで冷静さになれた。

まったく我ながら、単純な奴だ。

 

気を取り直して、もう一度怪物の撮影に戻る。

しばらくすると、再び怪物が水流を放った。

何かが、それを弾きながら接近している。

なるほど、勇者のうちだれかが盾を持っているのか。

それで、三人で無理やり接近し、叩く。

良い作戦だ。

 

水流が止まった。

その瞬間を狙ったらしい。直後に、怪物の球のような部分が破裂する。

そして、紅い閃光が怪物の体を駆け巡る。数瞬後には、怪物の体はごく一部しか残っていなかった。

 

唐突に大橋を中心に明るくなっていく。

気が付けば、怪物の姿は影も形もなくなっていた。

どうやら撃退に成功したらしい。

良かった…

と思ったら、轟音と共に再び光が広がっていく。

 

今度は目を閉じなかった。

気付けば、学校の屋上にいた。周りを見ても誰もいない。

パニックになりそうな心を押さえつけ、できるだけ冷静に通話をかける。

 

『あ、よかった!頼人、無事か!?今どこにいる!?』

 

矢継ぎ早に繰り出される質問。

いつもの銀の声だ。たまらなく安心してしまう。

 

「こっちは今、学校の屋上。そっちはどこ?三人とも無事?」

 

『ああ、みんな大丈夫だ!アタシたちは大橋横の公園にいるよ。全員上履きのままだけどなー』

 

三人は同じ地点にいるらしい。みんな無事で何よりだ。

肩の力が急に抜ける。

 

「了解、無事でよかった……迎えは来るの?」

 

『ああ、大赦の人が迎えに来てくれるってさ』

 

「そっか。じゃ、またあとで」

 

そう言って、通話を切る。

同時に現実を思い出してしまう。

 

「ああ、教室に戻りたくないなー」

 

今頃、教室は大騒ぎだろう。おそらく大赦の人間がフォローするのだろうが問題は自分自身。

勇者でない自分もいなくなっているのだ。

今戻ったら、絶対に厄介なことになる。

しかしながら、この件は遅かれ早かれ対応しなければならない。

しかも現在地は学校の屋上。

どんな行動をとろうと最終的に発見されてしまう。

結局行くしかないのだ……

 

「消失マジックって言ったら、誤魔化されてくれないかなぁ…」

 

益体もないことをつぶやきながら、重い足を頑張って教室に向けた。

 

予想通り、教室に戻ったらさらに大騒ぎになった。

安芸先生が一番驚いている。

これは先生も大赦の人間だったと考えるのが自然か…

 

その後、授業そっちのけでどこかの病院に連行され、色々な検査を受けた。

また大赦の人からかなり質問攻めにあったが、すべて知らぬ存ぜぬで押し通した。

実際、なんで樹海に自分がいたのかも分からないし、なんで帰りは自分だけ学校にいたのかも分からないのだ。

分からないことだらけだったので、逆に樹海やバーテックスのことを知らないふりして聞いてみた。

当然、答えてくれなかった。

残念、まあ大方、判断を決めかねているのだろう。

結局、その日の検査では何も分からないのが分かったので、家に帰された。

 

赤嶺家に帰ったら、両親が待ち構えていた。

心配をかけたらしく、また同じようなことを聞かれる。

当然知らぬ存ぜぬで返すしかない。

答えてくれないとは思ったがもう一度バーテックスや勇者について聞いてみる。

 

だが、意外なことにある程度のことは答えてくれた。

とはいえ、教えてくれたのは既知の事実だけだった。

バーテックスが世界を壊すもので勇者が守る存在。

勇者は神樹に選ばれた少女たちで構成され、神樹の力を宿す彼女たちでないとバーテックスには対抗できない。

バーテックスはウイルスの海から生まれ、人を襲う存在。その目的は神樹の破壊。

聞けたのはここまで。

やはり、バーテックスやウイルスとやらの詳しい情報は得られないか。

 

まあいい、とりあえず三ノ輪家に行くとしよう。

両親には今の話を聞いて銀に会いたくなったと説明し、準備のために部屋に戻る。

ついでに今日は三ノ輪家に泊まるとも伝えておく。

今はとにかく銀に会いたい。

 

夜。

三ノ輪家に行くと、あちこちに包帯を巻いた銀が出迎えてくれた。

胸が苦しくなる。

でも、それ以上に元気そうな姿が見れて安心した。

横から飛びついてきた鉄男を抱え、家に入る。

なにか、ようやく日常に戻れた気がした。

 

 

「んー、結局何もわかんないのなー。頼人―ほんとになにも心当たりないのか―?」

 

布団で横になりながら、今日のことについて話す。

三ノ輪家に泊まるときはいつも鉄男と銀と川の字になって寝ている。

鉄男は隣でとっくに寝てしまっていて、三ノ輪のご両親と金太郎は別の部屋だ。

 

「ないよ、本当に。明日も俺は大赦の方に行かなきゃいけないらしいからその時にでもまた聞いてみるさ。それより、銀。そっちこそ、本当に体は大丈夫なのか?」

 

「アタシはご覧の通り、全然平気さ!銀様をなめんなよー?こんなもん屁でもないね!」

 

―――鉄男が起きちゃうから声落としなさい

 

―――すみません…

 

小声で銀を軽く叱る。

 

「だけど、樹海の中で電話した時、気分悪そうだっただろ?本当に悪いとこはないのか?」

 

そう、あのとき電話したとき、銀は妙に気分が悪そうだった。

おまけによくわからないことを口走っていたし、体に異常はないのか心配になる。

 

「あー、あの時か。あの少し前に、バーテックスの出した水球に閉じ込められちまって、仕方がないからその水全部飲み干したんだ。ただ、味が初めはサイダーで途中からウーロン的な味わいに変わって、気持ち悪くなってさ……」

 

「それで、サイダーからウーロン茶に、なんて言ってたのか……一応聞くけど、飲んでも大丈夫だったんだな?」

 

「ああ、検査でも異常なかったし、そんな心配すんなって」

 

安心すると同時に少し呆れてしまう。

本当に型破りな奴だ。

しばし、静寂が訪れる。

 

ふと、銀の手を握る。

いつもあたたかくて、とてもやさしい手。

その手が今日は少し傷ついていた。

武器を握っていたんだ、と信じたくないけど実感してしまう。

できることなら、戦わせたくない。代われるものなら代わってやりたい。

だけど、俺が戦わないで、なんて言っても銀を困らせてしまうだけだろう。

なら、そんな意味のない事を言っても仕方がない。

無理しないで、とも言えない。きっと、銀は必要ならどんな無理でも無茶でもしてしまうだろう。

その時に余計な罪悪感を持ってほしくない。

だから、ただそっと手を握る。

 

「銀」

 

「ん、どした?」

 

手を握り返される。

俺の一番大切な存在。

誰よりも温かい女の子。

 

「好きだ」

 

ぽつりと言葉が漏れる。

結局、この一言に尽きる。

どんな心配の言葉や安堵の言葉より俺が伝えたい言葉。

理屈も何もかもすっ飛ばしてしまう、どこか気恥ずかしい台詞。

きっと、俺は自惚れている。

どんな言葉よりも、この言葉が一番こいつを強くすると思ってしまう。

呆れた考えだけど、これが俺の真実だ。

誤魔化すことなんてできやしない。

 

「ああ、アタシもだよ」

 

頬を赤く染めながらも、微笑みながら銀がそう言ってくれる。

いつもなら、もっと照れたり冗談交じりで返してくるけど、今日は俺の不安を感じたのか真剣に返してくれた。

それが、どうしようもなく嬉しかった。

 

 

次の日、学校で安芸先生が勇者に俺を加えた四人が御役目でいなくなることがあるとクラスメイトに紹介していた。

正直、俺を含められるのは心外でしかないが、こうする他に場を穏便に済ませる方法はなかったらしい。

おかげで、また質問攻めにあってしまった。まあ、言えないんだと答えるだけなのだが。

 

放課後、俺はまた安芸先生に連れられて病院で検査を受ける羽目になった。

昨日したのとは違うものらしいが、さすがに疲れる。

検査が終わったと思えば、今度は神樹近くの大赦の施設に連れていかれる。

そこで、また神官やら何やらに質問攻めをされる。

答えは変わんないんだけどなぁ……

 

色々聞かれては知らぬ存ぜぬと答えるプロセスを繰り返していると、神託が下ったとかなんだとかで尋問タイムが中断される。

何やら慌ただしくなっている。

俺は完全に放置状態。

こういう時は、大抵良くないことが起こっているんだけど……

しばらくすると、神官服を着た安芸先生が来て言った。

 

「赤嶺くん、突然ですが神樹様に”御挨拶”する栄誉を授かりました。」

 

「―――――――」

 

言われた意味が分からない。

ゆっくりと言葉を咀嚼していくと、その言葉の重さが理解できた。

これはやばい。絶対やばい。

そもそも、神樹に挨拶なんて聞いたことがない。

神樹はそれこそ神聖不可侵な存在とされているのに、勇者でもないただの小学生が接触するなんて間違えなく厄ネタ、絶対、異常事態だ。

受けたら多分やばい展開になる。

 

「…………誰がですか?」

 

せめてもの抵抗。分かってはいても、信じたくない。

 

「もちろん、赤嶺くんがです」

 

絶望の鐘が鳴り響く。

勿論、普通ならこれは想像もできないほどの栄誉なんだろうけど、この状況から急遽こうなってることを考えるとどうしても喜べない。

猛烈に嫌な予感がする。

 

「すぐに着替えてもらいます。まずは水垢離よ」

 

今からすべきことに意識を向け、無理矢理思考を冷静にする。

水垢離、確か冷たい水を浴びて体を清めること…

暖かくなってきたとはいえ未だ四月、水浴びは少々辛い。

正直断りたいけど……仕方がない。

どのみち、拒否権はないのだ。

ここで駄々をこねたら最悪、家の名に傷がつく。

それはできるだけ避けたい。

腹をくくるしかないか。

まぁ、水垢離といっても少しの間水風呂に入るだけだろうし、挨拶だってすぐに終わるだろう。

 

 

甘かった。

寒い寒い寒い寒い寒い。

滝に打たれるとか聞いてない。

 

「あばばばば」

 

歯がカタカタなる。

全身がものごっつい震える。

身体が芯から冷えてきた。

さすがにもういいだろう。

とはいえ、無様な姿は見せられない。

平静な顔を装い、滝を出る。

 

 

巫女が神樹の下へと案内してくれる。

初めて見た神樹は、前世で見た縄文杉を思い出させた。

不思議と緊張や畏れは感じなかった。

 

―――これが、この世界の生命線か…

 

この神樹がいなければ人類は生きていられない。

前世の世界を知る身としては、歪んだ世界にも見える。

しかし、同時に前世の世界のような問題はなく、理想郷のようにも映る。

果たして、どちらが正解なのだろうか。

 

なんて考え事をしていると、巫女の言葉が耳に入る。

どうやら、神樹に触れていいらしい。

そっと、手のひらを幹に触れさせる。

 

―――少し、温かい。

 

銀の手を思い出す。

あれほど、嫌な予感がしていたのに、こうしていると安心感すら感じる。

しばらくすると、巫女の声が耳に入る。

もう下がっていいらしい。

教えられたとおりの礼をして、神樹から離れる。

 

それにしても、なぜ俺にこんなことをさせたのだろう。

よくわからんな。

仮説はいくつか立てられるけど、どれもこれも確証がなさ過ぎて絞り切れない。

神託の内容自体はある程度予想できるけど、やっぱり神樹の意図が読み切れない。

とりあえず、安芸先生に色々と聞くことにしよう。

 

と思ったんだが、安芸先生曰く現状情報を精査中だから、詳しいことはまだ分からない。

何かわかったら今後の処遇と共に伝えるとのこと。

………おー、まじか。

前々から思っていたが、やっぱり大赦は隠蔽体質あるなこれ。

せめて、神託云々に関しては教えてくれてもよかったんちゃう?

もっとも、見方を変えれば高度に政治的な事案である故、小学生に聞かせる必要はない、という感じにもとれる。

普通に考えて只の小学生にいちいち情報を与える訳もない。

とはいえなあ………

是非もないし、この件は後に回そう。

どうやら、今日はここで泊っていかなきゃいけないみたいだし。

 

与えられた部屋のベッドで寝っ転がりながら、これからのことを考える。

おそらく、今の俺の扱いは保留中といったところか。

樹海に入ったのが、一度だけのアクシデントなのか、もしくは恒常的なものなのか。

次にまた四国が樹海化した時に判断されるということだろう。

今日の神樹との接触も十中八九関係してるだろうし……

んー。今のうちに何かしら準備していたほうがいいかもな。

 

とそこで、銀から電話がかかってきた。

コミュニケーションアプリじゃないのは珍しい。

通話に出る。

 

「もしもし銀、どうかした?」

 

『ああ、頼人。今大丈夫か?』

 

やっぱり銀の声を聞くと落ち着く。

これからのことも、何とかなりそうだと思える。

 

「大丈夫だよ、ちょうど銀の声を聞きたかったし」

 

『はいはい。それで何かわかったか?今日は大赦に行ってたんだろ?』

 

俺のこっ恥ずかしい台詞も簡単に流されてしまう。

随分なれたもんだ。

昔の初々しい反応が懐かしくなる。

 

「あー、結局何もわからなかったけど、結構とんでもないことになった」

 

『ん、なんだ?とんでもない事って』

 

訝しげに銀が言う。

 

「なぜか、神樹様に挨拶した」

 

『え、マジ?』

 

まぁ、当然こんな反応になるよな……

いまだに俺にも実感がないのだから。

 

そうして、今日あった色んなことを話した。

今日は勇者三人で祝勝会をしたこと。

鷲尾さんと園子ちゃんのこと。

金太郎のこと。

とりとめもない話だけれど、こうして話してる時間が嬉しい。

銀の話を聞いてるだけで元気が湧いてくる。

もし、世界が滅べば、こういう時間も無くなってしまうのだろう。

それは嫌だな。

 

『それじゃあ、そろそろ寝るから切るよ。おやすみ、頼人』

 

「ああ、おやすみ、銀」

 

そう言って、電話を切る。

銀と話してて決めた。

やっぱり手段を選んではいられない。

集められるだけの手札は集めておこう。

 

―――とりあえず、赤嶺の掌握から始めるか

 

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