第零世代神機使いが行く!   作:さくさくルミナ

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ブラックでも良いよね、だって極東だもの

「もうすぐとーちゃくするよー」

 

酷く間の伸びた口調で私はオペレーターであるヒバリさんに報告する。

 

「お疲れ様でした、門番には名前とゴッドイーターの免許証を見せれば通してくれます。くれぐれも遅刻はしないようにしてくださいね?」

「はーいよー」

 

・・・まぁ、そうさせたいのは山々なのだけれど。

行く先々に強力なアラガミが待機しているせいで私の行く手を阻むのだが、それはなぜだろう。

いや、意図的に配置しているわけではなく、もちろん偶然、偶発的なものであると頭では分かっている。

だがしかし、こうも邪魔が入ると鬱陶しいこと甚だしい。

いや、むしろ徒歩で極東支部まで行くのがそもそも間違っていないだろうか?

途中まで確かにヘリだったのだ。だというのになぜか急に降りろと言われた私はもちろん反抗した。したのだが蹴られて無理矢理落とされたのだ。

ゴッドイーターとはいえ立派な人間。涙目になりながら走馬灯が駆け巡った気がした。それでも四肢満足で生きているということはやはりゴッドイーターは人間やめてるかもしれない。

落とされた地点から極東支部まで歩いても丸々2日程度。確かに歩いて行けない距離でもないことはないのだがそのままヘリで行っても良かったのではないだろうか?むしろ行きやがれ。

ゴッドイーターとは希少な人材ではなかったのか。

食料すら持たせてくれないとか殺す気だったのだろうか。

そもそも・・・。

 

「──ああ!鬱陶しい!」

 

地面から湧いて出たコクーンメイデンの頭にその2()()()()()()()()()()()

 

ふにゃりと倒れるアラガミを見つつ、次の敵が湧いてくるのを確認する。

オウガテイル。1体1体はザコだし、そこまで群れも成さないために脅威ではない。

 

しかし、

 

「──どっせぇーい!」

 

敵は死ぬ!

 

が、バタりと倒れたオウガテイルの後ろから野生のザイゴードが現れた!

 

しかし・・・!

 

「ちょっと湧いてくるアラガミ多すぎじゃありませんかねぇ!?」

 

その後ろからも既にゆらゆらと地面が動いている。

きっと、いや絶対この後湧いてくるのだろう。

 

「──これが極東支部か・・・」

 

ヘリから落とされ、そこから徒歩2日のそこは地獄のような土地であった。

目の前の光景にふとこう呟いてもしょうがないだろう。いや、呟かずにはいられないのだ。

 

「元の支部に帰りたいよぉ」

 

椎名 亜花梨(しいな あかり)、今日からブラックに働きそうな予感です。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

なんとか、非常になんとか道中のアラガミを屠り終えた私は現在極東支部の入口にいる。門番が姿を現し、こちらに向かってくるところだ。

ちなみに30分ほど遅刻してます。はい、無理でした。あの人数は。

 

「君!君は居住区に住む者かね?それとも・・・」

 

「あ、新しくここに配属されるゴッドイーターです。名前は椎名 亜花梨で、これ免許証です」

 

ふむ、と頷いた門番はその免許証を受け取り、名前や顔に違いがないか、私を見比べながら確認している。

ストレートで腰ほどある髪の色は艶やかで綺麗なブラック。顔は整ってはいるが、どちらかというと可愛いといった感じの部類。身体つきは華奢な方だろう、自覚はある。胸は・・・いや、なんで視線が胸で止まる。凝視するな、無いものはない!このストンとした絶壁がわからないのか!

ていうか免許証に顔より下は写ってないはずでしょう!?

しかし当の本人はひときしりうんと頷き、と免許証を返しながら、

 

「君、可愛いね。この後食事でもどう?」

 

パーンッ!!

 

返された免許証をそのまま顔面に叩きつけてやった。

革製の入れ物に入った免許証だが、ゴッドイーターの腕力だからかなり痛いだろう。

 

「身体ばっか見てないでもっと免許証見たら!?」

 

ぐおおぉ、と悶えながら顔を抑える門番はなんとか耐えながら改めて免許証を見る。

 

「うおおぉ・・・ぉ・・・お゛!?」

 

ようやく事実に気づいたのだろう、何度も免許証と私を交互に見ながら呟く。

 

「・・・有り得ない」

 

そのまま倒れた彼は一向に動かなくなった。

そんな門番には一瞥もせずに落ちた免許証をポケットに入れ、未だ閉まっている扉を開けてもらうために他の門番に声を掛ける。

 

「はい、ぼーっとしてないで早く扉を開けて!こっちは急いでるんだから!」

 

はいぃ!と急いで扉を開ける門番と、まだ開けかかっているだけなのに強引に入ろうとする私。そんな状況を見ていた例の門番は一言思う。

 

「(あれは相当な男泣かせだろうなぁ)」

 

そんな事を思われているなどとは思ってもいない私はこれ以上の遅刻を回避すべく、知らない支部内をダッシュで駆け巡る。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「何か言うことはあるか?」

「なにもありません・・・」

 

現在、私は叱られています。しかもあの雨宮 ツバキさんだ。いや、めっちゃ怖いんだが。

 

「本当か?別に何も言うわけではないぞ?」

「・・・ほ、ホントにないです」

いや、反論したいことは沢山あるのだ。なぜ徒歩で行かせたのか、なぜ支部の案内人がいないのか。

案内人がいなかったせいであの後、更に30分も遅刻したのだ。そのせいでここまで怒られているのだ。

しかし反論してはいけない。それがどんなに理不尽だったとしても。

なぜなら・・・

 

「そうか、ならいい。早く付いてこい」

「Yes・・・」

 

彼女の情報は既に聞いている。何でも、私の言葉には全てYesで答えろ、らしい。なんて理不尽な・・・。

 

「本当はアリサと貴様を同時に紹介したかったんだがな。まぁ・・・実地訓練の時にでもしておけ」

「申し訳ないです。──それで確かアリサって人は新型ですよね?」

 

顔や姿は知らないが極東にそういう人が入るというのは聞いている。

にしても可哀想な人だ。いきなりブラックな職場で働かないといけないだなんて。

 

「そうだな、極東2人目の新型ゴッドイーターだ。貴様からしたら何とも言えない心情だろうがな」

 

新型ゴッドイーター。剣と銃、更に盾まで全てを兼ね備え、状況に応じて切り替えることができる神機使い。

今まで主流であった近接型がオラクルを補充し、遠距離型にオラクルを受け渡すという流れを根本的に覆してしまいそうなほどポテンシャルが高い。

第1世代ですら嫉妬と羨望を向けるであろう存在なのだ。

ましてや、自分は。

 

「第零世代神機使い・・・か。データベースに残っているような物だったら笑いものだが、貴様のはおかしい所があるからな」

 

初代神機はオーガテイルよりも小さいアラガミのコアから作られた物だ。故に弱く、保有できるオラクルもたかが知れている。

あんな物で当時のヴァジュラを倒すことに成功している者がいるのだから凄い。

 

「私の神機は普通の零世代ですよー。ちょっと特殊仕様にしてもらってるとこもあるけどそれ以外威力も当時のままですし」

「・・・そうだったな、おかしいのは貴様だった。すまない」

「ちょっと!?私が変な人のように聞こえる誤解はやめて!?」

 

ただでさえ、根も葉もない噂が乱立してるというのに!

 

「上官に敬語を使おうか?椎名?」

「──申し訳ありませんでしたぁ!」

 

今更それを言う?と思ってしまったことは内緒だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「俺から教えることは3つだ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。運がよければ不意をついてぶっ殺せ。・・・あ、これだと4つか?はは」

「ふん、死なないなんて当たり前です。それに不意をつかなくたって私なら倒せます」

「・・・へぇ、楽しみだなぁ。そんなに強いんだ。新型ゴッドイーターって」

 

脇にある高台から飛び降りた来た私は、どうやらまだブリーディングの最中らしいからそれっぽい演出で場に出ることに成功した。

何とか間に合いましたよ、実地訓練には!・・・え、出撃には間に合ってない?そう厳しいことは言わないでよー。

 

「勿論です。旧世代とは違って1人で何でもできますから。ていうか、貴方誰です?」

「私?私は椎名亜花梨。一応、君の上官に値するんだけどな」

 

途端に怪しむような眼差しで見る露出狂。新型ゴッドイーターということはこの人がアリサなのだろうか。

いちいち人のファッションに口を出すつもりはないのだが・・・寒くないんだろうか。ヘソ丸出しの南半球半出しで。

 

「貴方が・・・私の?リンドウさんは見た目も雰囲気もそれらしい貫禄を纏ってますので納得できますけど・・・貴方は私と同じ位、いっそ新人と言ってくれた方が遥かに信じられます」

「貫禄って・・・。でもほら私もそれぐらい纏ってるでしょ?歴戦の戦いが生んでいる心の余裕みたいなやつが」

「ああ、余裕というか見た目からおちゃらけてますよね。Tシャツとかいう怪我しそうな軽装、動きづらそうなデニムパンツ・・・物腰弱そうだし、あ、後輩に頭をペコペコしてそうですね!」

 

言ってくれるじゃないか!何気気にしてる所を・・・。この半裸体の変態がぁ!

 

「わ、た、し、がゴッドイーターになったのは今から1()0()()()()9()()()()。年はアンタと変わらないだろうけど、大ベテランです!頭は逆にペコペコさせる側だったし、分かったら敬え!そして軽装は貴様も変わらぁぁん!」

「なっ、9歳から!?それこそ信じられません!そんな年端もいかないような年齢でアラガミと戦うなんて・・・」

 

これには周りの人も驚いていた。

そんなにだろうか?確かに力とかは通常のゴッドイーターより劣るけど思考は問題ない位には育っていたし。戦う分にはそこまで不自由にしたことはない。・・・ていうか赤い神機の人。落としたタバコが靴の中に入ってったよ。

 

「──うおぉっ!あちち!?・・・ったぁ、にしても流石に俺も驚いたな。10年のベテランが極東に来るってのは聞いてたがまさかこんなに若いなんてな。お前には背を任せそうだ、亜花梨。あ、俺はリンドウな、よろしく」

「よろしくです、リンドウさん。こっちの新型はユウさんかな。よろしく。で、サクヤさんは名前的に女性だろうから貴方かな?よろしく。あとアリサも」

「「「よろしく……お願いします」」」

 

やはりアリサは納得してないって感じの表情だなぁ。ユウさんとサクヤさんは単に驚いてるって感じだね。ま、慣れてもらおう。こんなことで驚いてたらやっていけないだろうし。

 

「──で、ソーマさんとコウタさんはどっちかな?」

「あ、俺がコウタっす」

「・・・ソーマだ」

「うん、よろしくね。ソーマさん、コウタさん」

 

なんとなく暗そうなのがソーマさん、逆に明るそうなのがコウタさん。よし、覚えたぞ。ふふん、どうよこの記憶力。凄かろ?え、この程度の人数普通?厳しぃ。

 

「じゃあ、ちゃっちゃと訓練始めますかね・・・っと、そういえば亜花梨。お前さん、神機持ってないように見えるんだが持ってきてないのか?」

 

・・・・・・・・・──あれ、ツバキさんから聞いてないの?ここの隊長さんにそれすら話してないの・・・ツバキさん?わざとなんです?

 

「えぇっと聞いてなかったんだ・・・。一応持って来てますよ、ほら」

 

私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()

 

大抵驚かれるポイントは2つ。

まず、圧倒的に小さいこと。第1世代や第2世代も手に持つ柄があり、そこから人の大きさに迫るようなデカい剣や銃や盾やらが付いている。

それに対して私の直径30cmにも満たない、それこそハンドガンのような形状をしているのだ。

しかし、零世代ということを説明すれば基本納得してくれる。

が、問題は2つ目だろう。

2丁拳銃。呼んで字の如く、()()2()()()()()()使()()()()()

そんな神機使いは私以外に存在しない。まだ見つかっていないだけの可能性もないことはないが、現状2つの力を奮えるのは私だけだ。

故に。

 

「何それ!?チョー強そう!銃だけってことは第1世代?あれ、でも俺のと全然違うよな・・・なんなんだろ」

 

はしゃぐコウタさん。

目をそんなにキラキラさせて子供みたいだ。

逆にこのサイズは第零世代でしか有り得ないことを知っているのか、リンドウさん、サクヤさんにソーマさんは不安そうな表情をしている。

 

「えーと、亜花梨さんや。それってもしかして第零神機ってやつかい?」

「よく分かりましたね、そうですよ」

「──てことは威力も・・・」

「当時のままですね!」

 

はしゃいでいたコウタさんが止まった。まるでリンドウさんの言葉が信じられないかのように『え』と呟いた後に私の方を見てくる。

 

「あ、でも何故か私が装備すれば第1世代と同じくらいの威力が出ますから大丈夫ですよ!」

 

そう。ここが私自身よくわからないとこなのだ。

性能は確かに過去の零世代神機と同等の物のはずなのに私が装備した途端その性能は既存の第1世代神機まで底上げされる。

技術班は神機の適合率がどうの、オラクルとの親和性がこうの言っていたが言っている意味がよくわからなかったから無視した。

 

「そーかい。それならいいんだけどな。・・・ああ、これならお前さんの情報を少しでも見るべきだったなぁ」

「まー、いいじゃないですか。今日は訓練で、基本私達は見守るだけなんですよね?次の任務の時にでも私の事を隅から隅まで教えてあげますよ」

「確かにそうか。今日は訓練だし、特に必要ないか。・・・ところで亜花梨さんよ。隅から隅までってことは・・・どうだい?夜の散歩でもこの後アデェ!?」

「調子乗らない、リンドウ?」

 

ニヤリとしながらリンドウさんが散歩を誘ってきたんだけど笑みが何故か怖いサクヤさんにしばかれていた。合間に聞こえてくる冗談だよぉという声が空しく響く。

・・・夜の散歩ってなんだ?

まぁ、何ともあれ、これからこのブラックな極東で働かなければならないのだ。

 

「──ああ、元の支部に帰りたい・・・」

 

切実に探しな願いは、しかし誰にも聞こえず虚空に消えた。

 

 

 

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