ツバキ「若輩零世代とかまじ勘弁」
サカキ「私を待たせるとな(憤怒)」
支部長「とりま、フェンリル4000年の歴史を話そう」
主「ツッコミが追いつかない」
サカキ「ところがぎっちょん(意識を)」
主「全てをお湯で流しちゃえ」
こんな感じ。
「お前な、そういう特異な攻撃をするなら始めから伝えておけ!私でも全てを理解しているわけではないのだぞ!」
・・・なんかデジャブ感。
アラガミ防壁を破ってきたアラガミ、『コンゴウ』4体を駆逐してようやくおふとぉんinできると帰投してきた私への第1声がこれだ。
「ですけど、ツバキさん。私、ボルグ・カムランの時に既に使ってましたよね?」
「お前は1度見ただけでその攻撃の本質を全て分かるというのか。──そうかそうか」
「いや、すみません、本当に申し訳ございませんでした」
どうせ口論じゃ勝てないのだから先に誤っておく。
ツバキさんが言う攻撃とは私がボルグ・カムランに放っていた最後の銃弾のことだ。
神機の銃弾は全てオラクル細胞によって構成されている。そしてその銃弾はアラガミバレットを除き、全てが曖昧な光の玉や線を形作っている。
私の銃弾も基本はその例に漏れないのだけれど、コンゴウ達を仕留めた攻撃だけは。
「あれはまるで鉛弾だった」
あやふやな存在ではなく、確固たる物。
鈍色に輝き、通常のオラクル弾とは比較にならない速度で飛ぶそれは、まるで旧時代の鉛でできた弾のようだったとツバキさんは言う。
「はい、あながち間違っていませんよ。それを模倣してバレット組みましたし。勿論オラクル製ですけどね」
「バレット組みましたってお前な・・・。簡単に作れるなら私が驚く訳ないだろう」
「えぇ・・・作れますよぉ。実際簡単なバレットエディットですよ?」
「なに?」
「──ただ、複数個のバレットで構成されてますけど」
ツバキは考える事を止めた。
コイツとは常識で考えては駄目だと悟ってしまったからだ。
亜花莉曰く、あのバレットは圧縮弾のプログラムが組み込まれたオラクルチップの上から更に幾重にも及ぶ圧縮のオラクルチップを掛けられた超圧縮弾らしい。
「レーザーみたいな貫通弾で、一撃で喰い破れるバレットが欲しかったからエディットしたらこうなりましたー」
彼女曰く、弾丸のような火力を持ちつつレーザーのような貫通攻撃できるバレットが欲しかったらしい。
「・・・そうか」
実は何も分かっていないツバキ。圧縮に圧縮とかどうやっているのか。そもそもバレットにバレットを重ねがけとかできたのかとツッコミを入れたい所だ。
だがこれだけは分かる。聞いてもツッコミを入れても予想を斜め上を行く難解な回答が返ってくること。そして結局それは一般には普及できないことだ。
「まあいい、話はそれだけだ。引き止めて悪かった。休んでくれ」
「やった!おふとぉんinできる!」
「・・・リッカ、コイツを唐突に殴りたくなったんだが、大丈夫か?」
「なんで急に振ってくるんですか!?でも良いわけないでしょう、ツバキさんしっかりしてください!」
唐突に話しかけられたリッカはそのぶっ飛んだ内容に驚きつつも否定だけしておく。
よかった、彼女は常識者のようだ。
私がいた支部では、『 そうか、思う存分やれぇい!』とそそのかす研究者に『 まだまだ手ぇ抜いてんぞ!』と囃すゴッドイーターまでいたのだ。
まぁ、皆暇だったからね。しょうがない。
「そうですよ!休めって言われたから休もうとしただけじゃないですか!」
「少し黙っていようか?」
「理不尽!」
ツバキさんって実は前の支部の人と気が合うんじゃありませんかねぇ!
事前情報の威厳と尊厳はどこいった!
「・・・・・・まぁ、いい。少しどうかしていたかもな。さぁ、戻れ」
「はい、帰らせていただきまっす!あ、おふとぉんの前にお風呂入ろ!結局邪魔されたからね」
「やっぱりここで1度シバいておいた方がいいんじゃないんだろうか?」
「特になにもしてないのに?」
「どことなく腹が立つからな?」
「超理不尽!」
やっぱりツバキさんの好感度上げるの不可能っすわ。
仇討ち取りに来た相手の好感度上げるくらい不可能っすわ。
まぁ、それはもう置いておくとして。
「私はもう戻らせてもらいますね?2日の野宿とアラガミ連戦で流石に疲れたので」
「ん、そういえばそうだったな。なるほど、だからか」
「?・・・なにがです?」
意味有りげに含み笑いするツバキさんに、なるほどと合点がいったように手を叩くリッカさん。
いや、本当にわからないんですがそれは。
「いやな?椎名、多少臭うぞ?」
「──えっ?」
「だから臭うと」
「え、・・・な」
待て、落ち着くのよ亜花莉。まだ身体が臭いと言われたわけではない。そうよ、例え野宿してアラガミと戦って汚れまみれになったとはいえ、私は確かに1度お風呂に入って────。
「身体を洗っていないっっ!?」
そうだ、私はお湯で1度身体を温めた後お風呂に入り、その直後戦闘に駆り出されたのだ。
つまりは。
「本当に臭いな、椎名?」
今日1番の笑顔で肩に手を置くツバキさんの姿。
半歩ほど後退するリッカさん。
言われてみれば確かに臭う私。
「嘘だぁぁぁぁぁっっ!」
全力でお風呂に駆け込んだのは言うまでもない。
なお、この時の私は知るよしもなかったがお風呂に入る前に身体と髪を洗うのは常識のようだ。
元の地方ではそもそも大浴場がなかったために知らなかった。
◇◇◇◇◇
「おぉい、いつまで寝てんだよ亜花莉ぃ!」
「みぎゃあ!?」
ドアを盛大に開けて熟睡していた私を叩き起こしたのは声的に恐らくリンドウさん。
てか、なんでドアが開いて・・・、あぁ鍵閉める前に寝たのか。
「ところでリンドウさんはなんで起こしにくるんですかぁ、アラガミなんて出てないですよぉ」
「まぁな、でもこんな時間まで寝てたら身体に悪いぞ?」
ベッドのそばに置いてある置時計の針はまだ10の数字を指している。
なんだ、まだ午前中じゃないですか。
「大丈夫ですよー、前の支部では夕方頃まで寝てた時もありましたし。寝れる時に寝ておけ!ですよ」
「規則正しく寝起きするのも大事だぞ?それにその様子じゃ朝メシも食ってないだろ、お前さん」
まぁ、そりゃそうですけど。今まで寝ていたので素直に頷く私にリンドウさんは呆れたように頭をガシガシかいていた。
「アラガミが来ていたらその腹が減った状態で出撃しないといけないんだぞ?朝のメシってのは食う食わないで身体のパフォーマンスにも影響してくる上にここは極東。朝方にも頻繁にアラガミが出没するから朝メシは食っておけ?」
「・・・はぁい」
確かにここは極東だ。いつもの支部の感覚でどっぷり寝ようと考えていたけど、いつ襲撃があってもおかしくはないのか。
少しだけ反省した私はひとまず上体を起こしベッドの上に座る。
「それでリンドウさん。食堂はもう昼まで閉まってると思うんですけどどうするんですか?」
「そうだなぁ、俺の部屋でって言いたい所なんだが。生憎そうしちまうとサクヤに怒られるし何より俺の冷蔵庫の中はビールくらいしか入ってないな?ハハッ」
「だめじゃないですか」
なぜリンドウさんのお部屋にお邪魔したらサクヤさんに怒られるのかは知らないけど、どの道ビールしかないんじゃ意味無いよ。未成年だよ、私。
「まぁまぁ。そんな早とちりするなって。要は簡単だ、食料が無ければ調達すればいい」
「今から外に出てイノシシやらなんやら狩ってこいと?」
「あ、いや。普通に町で売ってるんだけどな・・・」
本当に早とちりしすぎたぁぁ!そうだよね、流石にリンドウさんとはいえそんなアホなことは言わないよね!ほらリンドウさん戸惑っちゃってるよぉ。
恥ずかしさで顔を瞬時に赤くしてしまった私はそう思いながら見えないようにうずくまる。
「も、モチロンジョウダンデスヨ?」
「お、おう・・・そういう事にしておくわ」
うぅ。これは寝起きだから思考がまとまってなかっただけなんだ・・・。だからこの雰囲気どうしよっかなーみたいな表情やめてくれませんかね!
「あ、朝ご飯買いに行きましょう!」
どうしようもなくそんな事しか言えない私にふっ、軽く鼻で笑ったリンドウさんはそうだなと道案内をし始めた。
◇◇◇◇◇
「あ、ここ・・・」
「お、流石に気づくか」
流石にって。誰であってもこれは気づくよ。
4-5地区。昨日コンゴウ4体による襲撃から守った地区なのだから。
「結構頑張ったんですけどね・・・流石に爪痕残っちゃってますね」
お風呂に入っている途中で緊急出撃したために全身濡れている不快感を帯びた状態で着いたここは既に戦場の真っ只中だった。
コンゴウ4体が繰り出す突進はゴッドイーターだけでなく家や公共設備をも破壊しており、甚大な被害を受けていた。
「しょうがないさ。ここは極東。アラガミの出現予測なんてものはできないんだからこうやって修復を繰り返してくしかないんだよ」
「でも・・・」
破壊されるのを許容するなんて。と呟く前にそれを遮られる。
「なぁ、亜花梨。俺らゴッドイーターは命を掛けてアラガミを倒してその報酬にちょっとばかしのお金と配布物を受け取る事ができる。命を掛けてる割には少し見合ってない報酬だよな?」
でも。と損傷を見受けながらも活発に働く人々を見渡す。
建物は傷跡が残っているものの、人的被害は起きていない。住民もゴッドイーターも死者0人。
「こうやって俺達が食い止めているからこそ、今の光景が保たれてる。未来に繋ぐ事が出来てるって考えるとそれはどんな報酬にも変え難いしアラガミなんかに負けてないんじゃないのかってな」
世界一過酷な支部だからこそ辿り着く答えなのだろうか。少なくとも私が元いた支部でそう考える者はいなかった。
日々雑魚アラガミを狩り、稀に出現する大型にうんざりしながら出撃を繰り返し。なんなら変異種が出た際には誰も出撃したがらず、人へ人へとミッションを押し付けていた。
なんだかんだ危険が及ぶこともない住民も当たり前のようにその恩恵を受けていた。
まだ数日しか経っていないが確かにここは大変だ。大型種程度ならザラに出てくるし、変異種だって現れるだろう。
しかし。
「──お姉ちゃん!昨日は助けてくれてありがとう!」
どこから摘んで来たのか。真っ白な花を1輪差し出しながら綺麗な笑顔で感謝を込める少女を見て。
「そうですね・・・。私もそう思います」
この子の未来を守る手助けが出来るのなら。花を受け取り実直に思える。
だろ?とニカッと笑うリンドウさんは本当に素晴らしい人なんだろう。
こんな世の中でも本来の目的を忘れずアラガミと戦える人は数えれるほどしかいない。なんて良い人なんだろう。本当に・・・、
「──初めからこんな上官がいたらよかったのにな」
「・・・?なんか言ったか亜花梨?」
「いーえ!何も言っておりません、上官殿!私はお腹が空きました、ご飯を食べに行きましょう!」
リンドウさんは少しばかり怪訝そうな表情をするがすぐに戻り、はいはいと相づちを返した。
◇◇◇◇◇
まだ夏中盤、暑さが残る中涼しげに響く風鈴の音とは真逆に熱々な親子丼が目の前に置かれていた。
「リンドウさん・・・。クーラーが効いてない部屋で親子丼のチョイスはないと思うんですよ」
「亜花梨が1番美味いやつって言ったんじゃないか。てかこのご時世クーラー付いてるとこなんて極東支部ぐらいだわ。戻ったって食堂は開いてねーぞ」
だから冷たい物でよかったじゃないですかぁぁと項垂れる私を見て恐る恐る少女が口を開いた。
「亜花梨お姉ちゃん、親子丼だめだった?おじさんに1番美味しいのは親子丼だって言っちゃったから・・・。ごめんなさい・・・」
「うぐっ!?──あー急に親子丼が食べたくなってきたなぁ!」
私だって心無い鬼じゃない、こんな少女にそんな事言われたら断れるわけないよ。だからリンドウさんは横でニヤニヤするのやめてくれませんかね?
あの後私とリンドウさんは食材を買い込み支部に戻って調理するかここの地区の食堂等で済ますか話し合っていた所に花をくれた少女が提案してくれたのだ。私の家は食堂だよと。
特にどうするか決めていなかった私達は断る必要性もなかったため、ここにきたのだ。
「あ、美味しい・・・」
「でしょ!お母さんの親子丼はホントに美味しいの!」
この環境の中でアツアツの親子丼は胃がもたれるかと思ったがそんな事はなかった。
ネギは多め、出汁もさっぱり目で食べやすいし卵はふわふわ。鶏肉もモサモサしておらず出汁がしっかり染み込んであってジューシーに仕上がってる。
正直こんな世界の中よくここまでの親子丼が作れるとは思わなかった。
「リンドウさん・・・極東のシェフに呼ぶことってできるんですかね?」
「確かに予想斜め上を行く美味さだが俺にそこまでの権限があるとお思いで?」
「いや、ないと思うんですけどね」
じゃー言うなよと軽く頭を小突きながら、でも意見を投げるくらいならできるかもなぁと軽く呟いた。
「ねぇ、月夜ちゃん。もし極東支部で暮らせれるってなったら嬉しい?」
「そこで暮らせたらどうなるの?」
「そうだねぇ、勉強できるしお腹いっぱいご飯食べれるし、何より1番安全かな」
じゃあ行きたい!と目をキラキラさせながら喜ぶ。
名前は食堂に来る間に教えてもらったのだ。雪のように真っ白い肌に綺麗な黒髪もあって凄く似合ってる名前だった。・・・どうしたらあんな綺麗な肌になるんだ。教えてほしい。何もしてないって?つらい
「リンドウさん速攻依頼ですよ。支部に来てもらえれば美味しいご飯が毎日食べれて月夜ちゃんも、もふもふし放だ・・・とにかくいい事づくめですよ!」
「──あはは、喜んで貰えて嬉しいなー!」
そう言いながら厨房から出てくるのは月夜ちゃんのお母さん。が、これがお母さん・・・?って感じなのだ。140くらいの身長な上に童顔なせいで月夜ちゃんの姉だと言われても普通に信じるレベルで。
「はい、月夜ちゃんも可愛いし親子丼も美味しくてとっても満足です!」
「月夜も親子丼も私の自慢の1品だからねぇ、そう言って貰えて本当に嬉しいよぉ」
ほわほわとした雰囲気でお母さんもお母さんで居るだけで癒されそう。
リンドウさん、はよ権限上げて。
「そう簡単に上がるもんじゃないわ」
「心を読まれた!?」
「こっちを見てそんなキッと睨まれたら誰でもわかるわ」
「おかしい、ポーカーフェイスを貫いてたはずなのに」
「ここにきてお前のポーカーフェイス見たことねーけど?」
そんなばかな。この私がポーカーフェイスをしたことがないと?
────怒るか怒られるかツッコミしかしてなかったや( ◜▿◝ )
「あはは、極東支部に行けても退屈しなさそうだねぇ」
「おっ、てことはムツミお母さんも移住賛成ですね!?」
「月夜が安全に暮らせるなら私はどこにだって行くよぉ」
ポンポンと月夜ちゃんの頭を撫でながら微笑む姿は娘を愛するお母さんって感じだった。いやまぁ見た目幼女過ぎるけど。
「むむっ、私は9歳じゃないよ」
「一言も言ってないよムツミお母さん!?」
「そんな表情されたらわかっちゃうよぉ」
そんな表情ってどんな表情なんだ。てか私ってそんなに表情が顔に出るタイプだっけ?・・・出るかもしれない。
「さて、と。飯も食った事だしそんなコントはやめて次に行くぞ、亜花梨」
「コントしてるつもりはなかったんですけど(白目)・・・で、どこに行くんです?」
リンドウは不敵にニカッと笑うと決まってるだろ?と言う。
「訓練だよ」
現実に叩き落とされた気がした。
この癒し空間が終わってしまうのがつらくて、いやぁぁぁ!と叫ぶが、しかしそれはリンドウさんには伝わらずお構い無しに首の後ろを掴まれて連れていかれてしまった。