俺は家に帰った後電話を火原火蓮にかける。まだ時間的には起きているはずなので何回か振動して彼女につながる。
「もしもし」
「どうしたの?」
彼女は特になんともないようにいきなりこちらに要件を聞いてきた。明日朝向かいに行きますと言ったらどんな反応をするだろう? また、厨二病的行動ととられる可能性もあるがそこは考えない。
「明日なんですけど先輩を向かえに家に行っていいですか?」
「え? なんで?」
「最近物騒なので・・・」
「大丈夫よ。登校するくらい」
まぁ、こういう風に返されるよな。別に登校くらい一人で行けると考えるのが普通だし高校生だもんな。だが、引き下がらん。
「いえいえ、物騒ですから」
「いや、だから大じょう・・・」
「物騒ですから」
「本当に大丈夫」
「万が一がありますから」
「分かった・・・。何考えてるか分からないけど分かった。明日家に七時半くらいに来て」
ふうー、なんとかオーケーを貰ったぞ。貰えなくても行くつもりだったが流石にそれはホラーだから何としても避けたかったのが本音。
「はい。それじゃあおやすみなさい」
「おやすみ」
プツンと携帯の通話が切れた。手のかかる後輩だとでも思われたの可能性が十二分にあり得る。と言うかそういう口調だった。
彼女は今何をしていたのだろうか? 考えても仕方ないが、恐らく父親と食事でもしてたんだろうな。
・・・母親の方はまだ帰っていない時間だな・・・・・・
俺の考える事じゃなかったな。明日の準備をして早く寝るか。火原火蓮の家に寄るからいつもより早起きしないと間に合わないしな。
目覚まし時計が鳴り響く。私は重い瞼を開けて耳に響く爆音をどうにかするべく手探りで時計の音を止めるボタンを押す。まだ完全に起きていない体が少し重く感じられるが鞭打ってベッドから起き上がる。二階にある自室から出て下に向かう。
下では既にパパとママが起きていて、パパは朝ごはんを作ってママはもう仕事へ行く準備を殆ど終えているだろう。
リビングのドアを開けて中に入る。
「おはよう。火蓮」
「おはよう」
パパとママが私に挨拶をし照れた。二人とも笑顔だが私がここに入るまではどうだっとのだろう・・・
「おはよう。パパそれにママ」
テーブルに用意されている朝ごはんを座って食べ始める。パパは洗い物をしてママは私に向かい合う場所に座っている。
「「・・・・・・」」
会話が無い。忙しい朝だから話す暇もないもないのかもしれない。
「私もう行くわ」
「あ、うん。いってらっしゃいママ」
「・・・先に行くわ」
「・・・分かった」
これくらいしか話すことがない程二人の溝が広がってしまったのだろうか。それに対して何も言えない私はなんなんだろうか。臆病な私は怖くて言えない。
もし、二人の仲が悪いことを私が指摘してそれが肯定で帰って来た時は・・・・・・一気に家族の中が崩れだしてしまうのではないかと思うと動けない。
そのまま離婚なんかになってバラバラになってしまうのが一番怖い。それなら今のままでもいい。こんな形でも家族で居られるのなら・・・・・・
「おはようございます」
「おはよう。・・・本当に来たのね・・・・・・」
髪型をいつものツインテールにして制服に着替えた後外に出ると最近仲が良く、体育祭の実行委員も一緒にやっている後輩の黒田十六夜が待って居た。
昨日朝学校まで送って行くと言っていたが本当に来るとは思わなかった。この後輩は最初は趣味が合って凄く話しやすく良かったのだがまさかの厨二病と言う精神病を持っていたことが発覚した。
もちろんそういうのは嫌いではない。だが将来彼が苦労すると思った私は何とか直してあげたいと思い何度か注意をしたのだが効果なし。一日にどうにかなる問題ではないとは思うのだがやり続けることで良くなるだろう。これから毎日ビシバシ注意していくつもりだ。
「それ、止めなさい」
「それは・・・無理です」
朝からいきなり突っ込むべきポイントを見つけてしまった。前後左右警戒しながら私をボディーガードするように立ち回るのだ。恥ずかしいんだけど・・・
普通に周りでざわざわ騒がれてるし、子供に指さされるし、何と戦っている想定をしているのだろう・・・。
何度も何度も注意してもそれを止める事は無かった。途中で聞き分けのできない子にはお仕置きをしようと思って頭を叩いたが全く気にしない。こいつを私は止めることが出来ないと思い、恥ずかしさでどうにかなりそうな気持を抑えて、電車に乗り学校までの道のりを歩いた。
学校に着くと私はここに来るまでの羞恥心の恨みをぶつけるように十六夜を睨みつけた。
「次あれやったら承知しないわよ・・・・・・」
「覚えておきます」
「はぁ~。急になんか疲れるわね」
前までは気楽に話せる友達位に思っていたが今では何をするか分からない手のかかる後輩がいるような気分だ。
その後、学校に入って私たちは別れた。
一年Aクラスの連中に朝から時情聴取をされた。話題は二つ一つは昨日の一単色高校の実行委員長を電話番号の件と朝から火原火蓮と一緒に登校してきた件だ。
適当に理由をつけて弁明をしたがなかなか納得する連中でもなく朝からさんざんな目に合った。銀堂コハクもチラチラこっちを見て何かを訴えるような目線を送ってきたため一日中落ち着ける時間が無かった。
今日は実行委員が無いためすぐに帰れるが、火原火蓮を守る為護衛を再びしなくてはならない。色々言われてはいるが諦めてもらおう。多少の恥なんてどぶにでも捨てておいて欲しい。
俺は念のためある人に昼休みに電話をかけていた。
『もしもし、昨日お世話になった黒田です』
『昨日はこちらこそお世話になりました。それで何か聞きたいことがあるんですか?』
学校の事が聞きたいと言う事で連絡先を交換したので俺に何か質問があると言う前提であちらは対応する。
『あの、今日って坂本は・・・じゃなかった坂本先生は学校に来てますか?』
『え? ああ、えーと今日はお休みだったと思いすよ。確か体調不良だったと聞いてはいたのですが・・・それが聞きたいことですか?』
『はい。それだけなので失礼します』
『ええ? それだけ・・・ですか・・・。分かりました。失礼します』
俺の聞きたいことは学校の事だが少しずれたことを聞いたかもしれない。一応学校に居ないと言う事は確認できた。これにより何処かで俺達を見ているのは確定事項。すぐに動き出すのは分かってはいたが気持ち的にいるのが確定してる方が俺としてもやりやすく、集中力もさらに上がる。
朝もそれっぽい奴は見たのだが直ぐに隠れたのでよく見えずに見逃してしまった。すぐに来たらその場で相対したのだが仕方ないが、やっぱりあれがそうなのだろう。
アイツの事だ。すぐにでも俺達を襲いに来るだろう。男の俺が居るから武器を持って人通りのないところでこちらに来るのは想定できる。俺もやるべきことは完璧だ。辞書は四冊服の下に入れたし、激辛水鉄砲も満タンで用意している。しかも、四個!!
火原火蓮に持たせて万が一の事を考えたからだ。前回は銀堂コハクがまさかの現場に居たのでストーカーに刺された。まぁ、辞典のおかげで無事だったのだが、今回もすべて俺の思い通りに行かない事も考え・・・彼女にこれを預けて逃げてもらう。
俺がやられた場合。彼女には逃げてもらわないといけない。勿論負けるつもりなんて微塵もない。しかし、世の中なんでもかんでも俺の筋書き通りにはならないと言う事を前回学んだ。
念を入れても何も不利益な事は無いだろう。
学校の玄関で私の後輩である黒田十六夜が待って居た。先ほどメールが届き今日も家まで送って行くと言うのだ。別に厨二行動をしなければ嫌でも何でもないので厨二行動をしないことを条件に承諾した。
「待たせたわね」
「いえ、待ってませんからお気になさらず」
私たちは二人で並びながら校門を出て帰りの道を歩き始めた。そこでだ。再び厨二行動が目立つ。
「や・く・そ・く!!!」
結構強めの口調で私が彼に指を差しながら告げた。なんだかんだ言って私も厨二が嫌いではない為どこか注意が甘くなってしまうから彼はこれを止めないのかもしれない。
「しましたっけ????」
覚えてるくせに白々しく嘘をつく。本当に手のかかる後輩だ。
ここ最近はずっと一緒に居て十六夜にこんな一面があることは昨日初めて知った。ただの私と一緒のオタクでごく普通かと思っていたらそうでもない。
何か不思議なやつだ。今まであったことあるようで無い。何処にでも居そうで居ない。
どこか他者とは違う独独とオーラを持っている気さえする・・・・・・・・・・・・
私も厨二っぽい事思ってるわね。やめにしましょうこれを考えるのは。
しばらく歩いていると十六夜は前後左右を見るのを止めた。顔が緊張感を持ったというか何というか・・・。額にも汗をかき手も震えていた。
どうしたの? と聞き返そうと思ったがその必要はなかった。理由が分かったからだ。
後ろから、誰かがつけてきている。気のせいかもしれないがさっきも同じようなフードを被った人を見た気がする。
ストーカー? 一体なぜ? 目的は私? それとも十六夜?
しばらく歩いていたがやっぱりついてきている。
「ねぇ。誰かつけてない?」
「・・・・・・つけてますね・・・・・・先輩はこのまま駅に向かって家に帰ってください」
「え?」
「俺が何とか引き付けますからお先に帰ってください」
そういうと十六夜は足を止めた。私も止めようとしたが十六夜が首を振ったのでそのまま走り出した。
あのストーカーは十六夜が目的? 本当に誰かに狙われていた?
此処で逃げていいのか? ずっと逃げてばかり・・・・・・
家族からも、大事な後輩がなにかに巻き込まれてるかもしれない時も・・・
私は卑怯者で意気地なしだ・・・