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今俺は、この世界の主人公である銀堂コハクを尾行している。この状況は俺がストーカーしているように見えるかもしれないが気にしない。
世界の命運が掛かっているんだ。そんなことは気にすることではない。
例え近所の子供たちに、指を差されその子の母親が見て見ぬ振りをしなさいと言っていようとも、止めるわけにはいかない。
それにしても、彼女はホントに美人なんだな。すれ違う人がみんな振り返っている。まぁ、そんなことは置いておこう。今気にすることではない。このまま彼女が帰宅してくれるまで、何事もない事をただ祈った。
約十分後、問題なし。このままいけば、彼女は不良に絡まれず家に帰宅する
そうすれば、この世界の未来は安泰。俺も危ない目に遭わず、余計な事を考える必要もなく高校生ライフをエンジョイできる。
「ねぇ~ちゃん。可愛いね。」
「その制服皆ノ色高校でしょ? これから俺たちと遊ばない?」
――ああ、世界は破滅を望むのか。
俺は、ただ目の前の事実から目を背けたかった。間違いなく最悪ルートの入り口である。二人組の不良が銀堂コハクに、絡んでいた。
「申し訳ありません。この後用事がありますので」
銀堂コハクは、用事があると笑顔で告げるとそのまま通り過ぎようとした。しかし、不良は彼女の腕をつかむ。
「そんなこと言うなよ」
「そうそう、用事なんてほっとけよ」
「離してください。用事があると言ってるではありませんか!」
不良達は、見た目通り乱暴で強引な男のようだ。この場面は、確か彼女は上手く切り抜けるのだが俺がここで行くことで、バタフライエフェクト的な効果で何かが変わるかもしれない。それにイレギュラーで、もしかしたらこのまま彼女は連れていかれるかもしれない
・・・・・・正直怖い。危ない事は好きではじゃないし、記憶を取り戻してから鍛えてみたがさほど強いわけでもない。でも、行かないと。何かを変えないと。よーし。・・・・・・行くぞ!
「ま、まてー」
少し声が上がってしまうが、不良に向かって行く。三人がこちらを見た。不良は目つきを鋭くしてこちらをにらみつけ、銀堂コハクは僅かな驚きを含んでいるようだった。
「何だ? お前?」
「彼女のクラスメイト・・・・・・です」
カッコよく行くつもりだったが、少し失敗してしまった。
「その人は、これから大事な用事があるので手を離してください。じゃないと、警察呼ぶぞ・・・・・・です」
「警察なんて怖くねえぞ」
「来る前にお前なんかぶっ殺せるしな」
野蛮な人達だ。そう思わざるを得ない。警察怖くないって、頭もイカレているらしい。
「・・・・・・あっ! 警察!」
俺は、不良たちの後ろを指さした。後ろには誰も居ないが、そこそこの大きな音量で。いくら怖くないと言っても実際に居たら多少動きにくいだろ。というか動けないはずだ。警察が怖くないというのは、ハッタリだと俺は見破った。しかし、不良も銀堂コハクですら誰も後ろを見なかった。
「そんな、古臭い手に引っかかるかよ」
「今時、そんなことやるやつがいたなんてな」
「・・・・・・」
三者三様だが、かなり驚いているようだ。俺の作戦があほ過ぎて。俺はいったん切り替える。
「取りあえず、彼女から手を離してください」
「悪いが彼女はこれから、俺達と遊ぶんだよ」
「そう、そうぶああ!」
――不良の片方の頬に、彼女の正拳がめり込んだ。
不良は思わず手を離す。そのまま彼女は、逃げ出した。
「貴方も逃げるんですよ」
彼女は俺の手を取って、走り出した。・・・・・・何か立場が逆の様な気が。
「っち! 追うぞ!」
「クソが、舐めやがって!」
不良は、彼女と俺の方に向かって走ってくる。
彼女と俺の足はそこそこ速いので何とかまくことが出来た。
「助かりました。ありがとうございます」
「俺何にもしてないですよ」
結局彼女が殆ど自力で乗り越えた。俺のしたことは、あっ!警察!くらいだ。
「いえ、本当に助かりました。ええ~と貴方は同じクラスのかたですよね?」
「はい、黒田十六夜と言います」
「私は、銀堂コハクと言います。これからよろしくお願いしますね。十六夜君」
彼女は手を差し出した。これは握手を求めているのだろう。折角だからしておこう。俺は彼女の手を握った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
彼女の手は、何か柔らかい。何だドキドキする。先ほども手をつないだが意識してなかったので感想はなかったが、今は変な感想しか出てこない。手を離した後、彼女は俺に聞いてきた。
「十六夜君。一つ聞いて良いですか?」
「はい。何ですか?」
「貴方は、何故私を助けようとしたのですか? もしかしたら貴方が、傷ついたりあの不良に目を付けられる事になるかも知れなかったのですよ?」
この質問は複雑な質問だな。普通の質問にも聞こえるが・・・・・・彼女だから気になってしまう、聞いてしまうとも言えるだろう。
「・・・・・・クラスメイトが、不良に絡まれたら何とかしないといけないと思いました」
この答えは嘘ではない。世界の為と言う理由がほとんどだがこの答えも僅かに含んでいる。様な気がする・・・・・・
「・・・・・・そうですか。素晴らしいですね」
「ありがとうございます」
笑顔で褒めてくれた彼女から、笑顔が消えた。
――でも、あんまり他者に入れ込み過ぎると自分が不幸になりますよ。
ポツリと彼女から、発せられた一言。その時の彼女の表情は冷たくて悲しそうだった。俺と彼女の場の雰囲気が凍り付いたようにも感じた。しかし、すぐに彼女が笑顔に戻した。それと同時に二人の場が平穏に戻った気がした。
「それでは、私は予定がありますから。失礼しますね」
「送って行きます」
「大丈夫ですよ」
「いえ、念のため」
此処だけは譲れない。あの不良がまた来るかもしれない。原作ではそんな描写は無かったが、ここら辺にまだ居る。僅かなイレギュラーもあるかもしれない。
もしあったら、俺の責任かもしれないのだが・・・・・・俺が変に動いたせいでいきなりバッドエンドの可能性もありうる。ここは、俺が彼女のボディーガード兼、もしもの時の身代わり人形としていかねば。
「いえ、本当に大丈夫ですよ」
「念のためです。お願いします」
俺は頭を下げた。正直これから彼女に起こることは確定かもしれないし、そうでないかもしれない。でも、なんとかしたい。そう思った
「変わってますね。十六夜君は」
「普通ですよ。」
銀堂コハクの後に俺はついて行った。男女二人が一緒に歩くと大抵は特別な関係とも思われるかもしれないが、そんなことを気にする余裕は俺にはない。
彼女の隣を歩きながら、常に東西南北、前後左右を見渡しながら彼女を送った。
子供に指を差されたりしたが気にする余裕はなかった。
変な男の人だ。そう私は思った。
いきなり不良に絡まれた私を助けるくらいなのだから、喧嘩自慢なのかと思ったらそうでもない。むしろ不得意という印象を受けた。足も少し震えてたし、声も上ずっていた。意味が分からない。
怖いなら出てこなければいい。見て見ぬふりをすればいい。なのにどうして出てきた?なぜ、恐怖と向かいあった?
その後も変だった。私を家まで送ると言った後、最初は私と仲良くなりたいのかなと思ったが彼は常に周囲を気にしていた。
あの不良がいつ来てもいいように備えていた、その結果、会話なんてほとんどない。
本当に私を守る為だけについてきた。
ああいう事をされると、思い出したくない事を思い出す。誰かの為に勇気を出して、行動したのに裏切られた馬鹿を。
変な正義感で、一人になった馬鹿の事を。
――私は彼を見て、どうしても思い出したくない事を思い出してしまった