これからもよろしくお願いします
胃が痛い毎日が続いた。銀堂コハクと火原火蓮は毎日のように威嚇しあい体育祭の前日までずっと心休まる日など無かった。
二人が争う過程で体育祭の日に二人ともお弁当を作ることに両者気付いたようでお弁当対決的な感じになったことで更に険悪な感じに。少し休もうぜ・・・・・・
そして、もう一つの心休まらない理由。それは次なる被害者、黄川萌黄についてである。
彼女に関してはバッドエンドまで大分時間はある。だが、仲良くなって損はないと思い偶々廊下ですれ違う時声をかけようとしたが・・・
『あの・・・』
『・・・・・・』
無言で汚物を見るような目で見られ話しかけるなと言うオーラを出しまくっていた。体育祭の実行委員、修羅場、学校の噂による黄川萌黄の好感度メーター氷点下。
胃が痛い・・・・・・。ただひたすらに・・・・・・。
黄川萌黄に関しては、まだ関わらなくてもいいのだがこの後関わらなければならないと考えると胃が痛い。どう接すればいいか分からない。
まぁ、もし彼女が嫌がっても無理やりいつも通り付いて行けばいいだけなのだが・・・・・・。
その場合、学校内の噂、校内新聞もとんでもないことになる。俺はバッドエンドの為なら多少の悪評は仕方ないと思っている。
だけど・・・
『噂の厨二、美女二人を侍らせてご満悦！！！』
『ストーカー、美女二人の弱みを握ったか！？』
『二つ名、ダブルディストラクションオーバーレイから、ただのクソに変更』
勘弁してくれ・・・・・・胃、胃、胃が痛い。これ以上どうなるんだ？
悩み、悩み、悩みによって
俺は押しつぶされかけた。
しかし、ここで止まるわけにいかない。恩返しと言う目標がある以上、思考をここで止めてはいけない。
思考を開始。
――バッドエンドを回避したら普通に学校生活をしようと思っているのだが、一生クソ男の汚名が付いて回るんじゃないか？
こんなことは考えない。心配だが今は彼女達の事を考えよう。
――黄川萌黄とも多少の関係を持ち、さらに修羅場を緩和
これだ。どうすればいいか方法は全く浮かばないがやるしかない。体育祭は何となく生徒の気持ちが深まるイメージがあるから何とかなるだろう。多分
さぁ、行くぞ！！！
覚悟を決めベッドに潜る。明日の為に早めの睡眠をとる為だ。しかし、そこで携帯が鳴る。
確認すると
『十六夜。仕事が急になくなったから、明日の体育祭見に行くわね。』
我が母からのメール。いつも忙しいのに珍しいな。仕事が急になくなったのか？ まぁ、来てくれるなら多少は良い姿を見せないといけない。
明日の目標が増えたが特に気に留めずそのまま、眠りについた。
体育祭の日、私は朝五時に起きた。弁当作りの為である。今まで料理などをしたことがない私だが今回はそんなこと言っていられない。
時間は無駄には出来ない。先ずはから揚げから！！
キッチンに立ち。油を注いで油を温め、冷蔵庫から昨日つけこんでおいた生の肉を取り出す。最近のスマホは便利だ。調べれば何でも出てくるのだから
パパが手伝ってくれると言ったがそれは断った。ここでパパの手を借りたら、それは敗北。銀堂コハクという女に敗北したと言うことになる。
油が温まったので生の肉を入れる・・・・・・。どうやって入れるんだ？
え？ 超怖いんだけど？？
「おはよう。火蓮」
「おはよう」
「手伝おうか？」
「いらない。私の聖戦だから」
「そ、そう。でも危ないから見てるね・・・・・・」
いつもはもっと起きるのが遅いパパも心配して、わざわざ私のお弁当作りを見に来てくれた。これはなんとしても成功させなければ。
油を見る。ここに肉を入れればい、ただそれだけ・・・・・・。だから、どうやって！？
「頑張ってるのね。火蓮」
「ママ！！」
「手伝う？」
「大丈夫・・・・・・っていうかママも料理できないでしょ」
「そういえばそうね。ここでパパと見てるわ」
ママも料理は一切できない。私が園児の時、卵焼きを焦がして、煮物の水分を全部飛ばしたので、それ以来料理禁止となったのだ。
私の料理下手はママの・・・・・・いや、私がやらなかっただけか・・・・・・
ビビりながらも網じゃくしでから揚げを入れることに成功する。しばらくは我慢。
数分後。油が跳ねてめっちゃ怖い中取り出し完成。次は卵焼き。
冷蔵庫から卵を出す。ええっと、軽くヒビを・・・・・・
潰れて中身が出てしまった。次、次、次。全部割れた。
「火蓮。ちょっといいかな？」
「ダメ！！」
「いや、でもこのままだと卵が・・・・・・」
「まだ、四個あるから！！」
「う、うん」
割れてしまった卵の中身は私の朝ご飯である。その後、最早スクランブルエッグの卵焼き。
そして、から揚げ。
時間がないので仕方なく入れた冷凍食品のシューマイとたこ焼き。
これらによってお弁当が無事完成した！！ 最初は出来が悪いかと思ったが詰めてみると案外いい感じ。
「できた！！！」
「よくやったね」
「成長したのね・・・・・・」
二人とも感無量と言った感じだ。どうだ！！ 私だってやればできるんだ！！！ これをお昼に十六夜に持って行って・・・・・・
『召し上がれ』
『ミシュランもびっくりだ！！！！ 火原先輩って家庭的なんですね！！！』
『これくらい大したことないわ！！』
嗚呼、完璧。フフフ。銀堂コハクもここまでは作れないでしょ。勝った！！！
「えーと、から揚げは二度あげしてあるから・・・・・・。後はハンバーグとポテトとオムレツとアボカドのサラダと・・・・・・」
俺は朝起きてすぐに着替え学校に向かう。実行委員は朝からやることが多いため少し早く登校しなければならないのだ。
体育祭の場所は皆ノ色高校。そして、親の入場も許される。かなりの人数が集まることが予想される。その為日陰づくりの為のテント立て等もしなくてはならない。
前日に大体会場の準備は終わっているが細かいところの準備とかがまだ終わっていない。その為俺達実行委員が良いように使われるのだ。
学校に着くともう大体揃ってるな。時刻は七時前。七時から実行委員は作業開始だから結構ぎりぎりである。もっと余裕持ってくればよかったかな？
「よし、それじゃあ作業開始しよう」
金子太一の号令で実行委員が一人を除いて全員動き出す。火原火蓮はまだ来ていない。
お弁当作るって言ってたから、もしかしてそれが原因か？
作業する事四十分。
「ち、遅刻した！！！」
ダッシュで火原火蓮が到着。皆に頭を下げて謝っている。
「ごめんね。十六夜」
「これくらい、大丈夫ですよ」
「お弁当作りですっかり忘れてた・・・・・・」
彼女は頭を抑えて落ち込んでいる。慣れない事をして他の事が抜けてしまったんだな
「でも、すっごいのできた。星取れるくらい！！ 楽しみにしてて！！！」
「そ、そうなんですか。楽しみにします」
料理って上手だったか？ 彼女って『原作』だと、卵割るの失敗して一パック丸ごと無駄にしたり、煮物放ったらかしにしてラノベ読んで水分全部飛ばした、とか色々やらかしていたのだが・・・・・・原作とは違うという事か？
続々と準備が進むにつれ、生徒達も登校してくる。今日は体操服登校が許されているので直接着てくる生徒もいる。制服で来てから着替える生徒も結構いる。
一単色高校の生徒も続々と校内に入ってくる。彼らは両校の指定された陣地に荷物を置き待機と言う形で開催を待つ。両高の待機場所はさらにクラスごとに細かく分けられている。
実行委員も準備が終わると一旦クラスの待機場所に行き出席確認をする。待機場所は南側にある。北側には実行委員の待機エリアがあり、そこで色々仕事をする。
出席確認をした後、再び実行委員の待機エリアで開会式の準備をしているとで金子太一の声が聞こえてくる
「え？ 前で準備運動をする香川君が休み！？」
全体で準備運動をするため開会式の中に準備運動がプログラムに入っている。それを前でやる香川君が休みらしい。
大変だな。前で準備運動をやりたい奴なんていないから変えは直ぐには見つからないだろうし。
「進行役はやらないといけないし、誰か代わりに・・・・・・はッ！！」
俺を見るな。目線逸らしたのだが金子太一が俺の前に来る
「頼むよ。黒田君。色々やらかしてる君なら恥ずかしい事なんて今更ないでしょ！！」
超失礼。なんなのコイツ。当たってるのがもっとムカつく・・・・・・
「お願い！！ 君しか居ないんだ！！」
ムカつくけど・・・・・・コイツ委員長として頑張ってたし・・・
「わかりました・・・」
「ありがとう！！」
そして、体育祭の開会式の為、両校生徒たち全員が並んで開会式が始まる。集団で並ぶと人数の多さがはっきり分かるな。
生徒の親御さんの姿も、校内の至る所に居て全体で千人近くいるかもしれない。
「それでは体育祭の開会式を始めます。先ずは校長先生の話」
そこからは凄い長い。例の事件の事がありながら開催できたことの喜び。そこから謎に派生した世間話。それを×２。
軽く一時間くらいやった後、ようやくプログラムが次に進む。
「続きまして金親元次様より挨拶があります」
なんでだよ。意味が分からん。と思ってしまうが今回、金親会社から飲み物の差し入れがあったため色々あるらしい。前に金親が出てくる
「今回は合同体育祭が開催できたこと誠に嬉しく思います・・・」
「カッコいいい！！！」
「何あの子！！！」
「転校決意！！！」
両校の女子高生殆どがめっちゃ騒ぐ。両校の男子高校生殆どが中指を立てる。
いつもの事がスケールが大きくなっただけ。
クソの挨拶が終わり、女子たちの興奮が収まらぬ中・・・・
「続きまして準備運動。前で皆ノ色高校の黒田君がお手本としやりますので生徒全員怪我しないように真面目に執り行いましょう」
この空気の中行くのか。金親が出た後に。フィールドが完全にアイツの者になった後に・・・・・・
仕方ないから前に歩いて行く。
「あれ？ なんか・・・背小さくない？」
「顔は・・・・・・」
「可哀そう。イケメンの後に出るなんて・・・」
背が小さく見えるのは金親の後だからだよ。顔も金親を見た後ではそりゃ見劣りするのは当たり前だろ。
一単色高校の女子高生がひそひそ話をするのが心に響く。
「ちょっと、可哀そうでしょ！！！！」
とある一単色高校の女子高生が大声を上げた。何か嬉しい。
「仕方ないでしょ！！！ フォアグラの後にアジフライが出たら見劣りするの当たり前じゃん！！ それと同じだよ！！ いちいち言ったらあの子に失礼だよ！！！！」
お前がな。お前が一番失礼だよ。彼女がそう言うと、皆俺に気を使いちょっと気まずい感じになる。
何とも言えない空気の中準備運動をするのは地獄でした。