今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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感想ありがとうございます。修羅場連続なので・・・一旦


31話

 アジフライである俺は個人競技をするため校庭の端っこで始まるのを待って居た。個人競技は先にやり、団体競技はその後で行われる。

 

まずは借り物競争。カードを引いてお題の物を持ってゴールと言う当たり前のルール。個人競技参加人数は三十六人であり、両校女子一年、二年、三年。そして男子と言う順番。

 

「十六夜君大丈夫ですか?」

「大丈夫です・・・・・・」

 

アジフライ呼ばわりが結構心に来ている。アジフライって・・・・・・。いや、嫌いじゃないんだけどね。

 

俺が暗い顔をしていると恥ずかしそうに銀堂は言葉を続ける。

 

「あ、あの、私はフォアグラよりアジフライの方が好きですよ・・・・・・アジフライってお手頃で美味しいですし。最近のフォアグラって作り方残酷ですから・・・・・・」

「お気づかいありがとうございます」

「いえ・・・・・・あんまり気にしないでくださいね。アジフライの方が好きな人も結構いると思いますから」

 

そのまま彼女は競技開始の為に去って行く。なんか元気出たな。そうだよアジフライって美味しいんだよ。フォアグラだって食べてみたら案外大したことないってよく聞くし。

 

アジフライの方が人気があるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 最初は女子一年。六人が並びその中には銀堂コハクも居る。

いつも通り男子の視線釘付けにしている。

 

 スタート地点に居る実行委員の人が笛を咥えて合図を出す。

 

 「それではよーい・・・・・ドン!」

 

六人の女子が一斉にスタート。伏せられている内のカードから一枚を引いて内容を確認。

 

 

ざわざわと人の盛り上がる声が響く。千人近い人がいるのだから当然なのだがいつも違う雰囲気が自然と高揚感になる。

 

 

銀堂コハクはどんなお題を引いたんだ? 少し迷っているが・・・・・・

 

「・・・・・・」

 

彼女はAクラスのいる方に走って行く。そして、野口夏子の手を取って走り出す。

同性の友達とでも書いてあったのだろうか? 確かそんなカードがあったのは準備の途中で見た気がする。

 

二人は何処か恥ずかしそうに笑いながら三位でゴール。絶対とは言わないがお互いに信頼をしているように見えた。

 

銀堂コハクが友と呼べるものが居る事に少し嬉しくなる。『原作』では人との信頼が中々作れない彼女が少し悩みはしたものの、野口夏子のもとに真っすぐ向かったのは良いことだ。

 

・・・・・・こういう『原作』ブレイクは歓迎したいんだがな。因みに俺のお題は『揚げ物』だったので何も持たずにゴールして審判に

 

『自分アジフライなんで・・・』

 

と言ったら一位を認められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次はパン食い競争。

 

「銀堂さん、頑張って!!!」

 

 

やる気満々と言った銀堂コハクが見える。野口夏子の声援も聞こえ先ほどの借り物で仲がさらに深まった感じがする。

 

銀堂コハクが少し恥ずかしそうに手を振って声援にこたえる。

 

「頑張ってください!!」

「俺達が付いてます!!!」

「女神!!!!」

「手振ってください!!!」

 

学校対抗戦なのに他校まで応援するという謎の事態が起きている。銀堂コハクは苦笑いで手を振る。

 

「うおおおお!!」

「今俺に振った!?」

「馬鹿俺だ!!」

 

何処の学校男子も思う事と考える事は大体同じか。

 

 

 

 

パン食い競争は紐によって吊るされたパンを手を使わずに口だけで取るという競技だ。

 

女子は大体一メートル八十くらいの高さに吊るされている。男子は二メートル。再び六人の女子が並び競技がスタートする。

 

「よーいドン!」

 

彼女は完璧なスタートの後に加速、一位をキープして数メートル走る。そして、パンが吊るされた場所まで一位で到着。

 

 

この場所では手を使ってはいけないので後ろに組んでジャンプして口で取らないといけない。

 

ジャンプして口で取ろうとするがかすかに揺れるゴムの糸により上手く取れずに何度もジャンプする。

 

「と、取れない」

 

腕を組むことでボディラインがさらに強調されジャンプすることで凄い揺れる。口を開けて何度も飛ぶ姿はエロい・・・・・・。

 

他の男子達が前かがみになっているが特に気にしない。仕方ないのだこれは。思春期ならあんな格好を見て反応するなと言う方が無理。

 

おっと、俺は反応しないが競技に備えて屈伸をしなくては・・・・・・

 

十回近く飛んでようやく取ることに成功する。その瞬間男子達ががっかりしたように頭を下げた。

 

彼女はそのまま一位でゴール。ポテンシャルの高さを感じたな、色んな意味で。俺はこの競技三位でした。

 

 

 

 

二年、三年の男子のパン食いも終わり、そして、二人三脚。男女一つのペアで走るのでスタート地点で準備をするために一年男女が集まる。一年の男女の後に二年、三年と先ほどと同じ順番。

 

 

「縛るのは緩めでいいですか?」

「は、はい。お願いします」

 

 

俺は右足、彼女は左足を出してそこを縛る。距離が近いと言事もあるのだが体操服って事もあり余計に落ち着かない。

 

周りの参加する男子達はどうだ? ああ、緊張してるよね。やっぱり。初々しさがあふれるカップルの様だ。

 

応援の男子達は・・・・・・見なくても分かるな。

 

 

「あの、効率よく走るなら手を繋いだ方が良くないですか?」

「あ、はい」

 

まだ、スタートではないが彼女の手を取った。柔らかい。前にも握った事はあったけどこういうのは慣れない。

 

草食系を装って行こう。そう思っていると彼女は顔を赤くしながらも俺と目を合わせた。

 

「あの時もこうやって手を繋ぎましたね。お、覚えてますか? 不良に絡まれた時の事」

「え、あ、はい」

「そ、その時は大したことはなかったのに、い、今は凄いドキドキします。あの、十六夜君はどうですか?」

「ええ!? えっと今も昔も変わらず落ち着かない感じですかね・・・・・・」

「そ、それは私を異性として意識してると認識していいんですか?」

「ま、まぁ、女性だと思ってますからそうなのかな?」

「やった!」

 

小声で放った彼女の『やった』が聞こえた。

 

も、もう何なんだよ・・・・・・。胃を虐めるかと思ったらこんな恋愛漫画的なムードにして混乱するわ!!

 

凄い振り回されてる。これが主人公の力・・・・・・なのか? こんな甘えた感じで来て、小声で喜ぶってもう何なんだよ!!!

 

疲れるからもう意識しないぞって思ったら繋いでる手が柔らかい。それでまた意識しちゃうし。

 

無限ループ。

 

 

「それでは、よーいスタート~」

 

笛の音が鳴り思考から解放される。彼女に気を取られてる間に競技が始まってしまった。

 

「俺達も行きましょう。右足から」

「は、はい」

 

「「せーの」」

 

俺も彼女も右足を前に出した。二人三脚なのでお互いに違う足を出し続けることが必要になるのだがすっかり忘れていたため

 

「「ふぇええ」」

 

最初に彼女がひっくり返り、その勢いで俺もひっくり返る。

 

「す、すいません」

「俺が分かりにくいったのが悪いんです。こちらこそ申し訳ありません」

「大分差がついちゃいましたね」

「確かに、でも最後まで頑張って走りましょう」

 

お互いに合わせた足を主軸に立ち上がり前を見る。もう、ゴールしてるペアも居るから上位にはなれないがやりきることが大事。

 

「縛ってある真ん中の足から行きましょう」

「はい」

 

「「せーの」」

 

 

凄い早いわけではないが地道に二人で合わせて走る。彼女の揺れるものは一先気にしないようにして前だけを見る。

 

最下位でゴール。

 

「最下位でしたけどいい思い出になりました。ありがとうございます。十六夜君」

「いえ、こちらこそ。それじゃあ、ほどきますね」

「はい」

 

 

パパっとほどいた布の縄。これは実行委員に返却する物だから俺が持っていくか。

 

「じゃあ、俺は委員の仕事があるので・・・・・・」

「はい。それじゃあ、またお昼に」

 

 

 

さて、俺にも仕事があるから行かないと、これからクラスごとの団体競技が始まるから審判の準備が待って居るのだ。しかし、その前にトイレに行くか。これから行きたくても行けなくなるかもしれないし・・・・・・。

 

 

 

校内のトイレに向かうと

 

「久しぶりね。十六夜」

 

後ろからの声に振り返ると黒い髪と黒い目。結構美人で結構年とってる俺の今生の母さんである。黒田愛がそこにいた

 

「あ、久しぶり」

「元気にしてた? この間はお見舞い行けなくてごめんね」

「俺が来なくていいって言ったんだから気にしなくていいよ」

「それならいいけど・・・・・・あ、個人競技頑張ってたわね」

「ぼちぼちね」

「一位と三位だけども十分凄いわ!! それとあの二人三脚の子!!!」

「え?」

「彼女なんでしょ? お母さん嬉しい! あんな可愛いくて美人の子がお嫁さんなってくれるなんて!!」

 

大分深読みしてるな。ここは誤解を解かないと・・・・・・

 

「いや、彼女でも何でもないよ」

「またまた、あんな雰囲気で彼女じゃないなんてありえないわよ」

「いやいや、本当だから」

「えー! あんなほの字なのに!! ビックリ!!!」

「声が大きいから、ボリューム落として」

「あ、ごめんね。それより」

 

話ドンドン先に進むな・・・・・・。悪気がないから何も言えないんだが

 

「昨日、お母さん占いの館に行ったのよ。それでね、十六夜の事占ってもらったのよ」

「そうなんだ。何で俺を?」

「いつも一緒に居れないから何かしてあげたかったの」

「そういう事、ありがとう」

「いえいえ、それでねその占いの人すっごい当たる人なの!! 当たりすぎて色んな事に巻き込まれるから田舎でひっそりと暮らしてるんだけど・・・・・・」

「なんでそんな人と知り合いなの?」

「高校の時の隣の席で仲良かったのよ」

「あ、そうなんだ」

 

「それで占いの結果なんだけど・・・・・・」

「・・・・・・」

 

俺は思わず唾を飲んだ。当たりすぎて何か色んな事に巻き込まれるから田舎で暮らすって相当だ。いい結果が出て欲しい。

 

 

「うーんとね。忘れちゃった」

「ええ?」

「スマホにメモ取ってあるからちょっと待って・・・・・・」

 

母さんはスマホを出しメモを読み始めた。

 

 

 

「至光の銀白、紅蓮の赤、稲妻の黄、大海の青、銀白の黒。これらの色が十六夜を縛るようにくっついているんだって!!」

 

 

 

「うそーん・・・・・・・・」

「本当だって。場合によってはお嫁さんが五人になるって!!!」

「それはダメじゃね?」

「お母さん良いと思う。子沢山だと楽しいし、私はサッカーチーム作りたいから十一人くらい孫が欲しいわね」

「それはない」

「あ、そうよね。補欠の子も必要だから十八人くらいかな?」

「そうじゃない」

 

 

天然も少し入っているのが黒田愛と言う人物。それにしても、五色縛りって・・・・・・占いだよな?

 

「あ、でもね。何か美しい色に淀みっていうか泥みたいなのが被るかもしれないって。そうなると色消えちゃうって!!!」

 

え? この占い師ガチじゃね? バッドエンドまでわかっちゃうの?

 

「既に銀白と赤は泥が消えてるって言ってた」

 

こわ!!!! 何それこわ!!! なんなのその人!! ばりくそ当たっとるやないか!!

 

「次に泥が来るの黄だって。お母さんお嫁さんが減るのはやだけど、十六夜がその泥を跳ねのけるから心配いらないって言ってた」

「お嫁さんって決まったわけじゃないと思うけど」

「もう決まったも当然だと思うわ。占い的中十割の子なんだから」

 

 

 

「でも、銀白の黒の子に関しては良く分からないだって。まだ、生まれてない? かもって言ってたけど至光の光の子と似てるって言ってた」

「・・・・・・その人ガチだわ」

「だからそう言ってるじゃない。黒の子は淀みもないけど、存在もない。でも十六夜の未来には居るって」

「超能力者だと思う。その人。連絡先後で教えて、絶対役立つ人だわ」

「うん、分かってる。十六夜はいずれ私の力を借りる時が来るだろうから連絡先を渡しておいてって、もう先に言われたの」

「怖い怖い怖い」

 

一応連絡先を渡してもらった。

 

「至光の銀白ってさっきの二人三脚の子なんじゃない?」

「どうだろうね」

「絶対そうよ。話してるうちにあの子だって確信したんだから!!」

「あ、そう」

 

「ちょっと十六夜!! いつまで油売ってるの!!」

 

凛とした声が響く。俺と母さんが声の方を向くとツインテールに体操服姿の火原火蓮が居た。

 

「紅蓮の赤!!!!」

「母さん落ち着いて」

 

我が母上が火原火蓮を見て興奮なさっている。確かに紅蓮の赤って感じはするが

 

「え? 十六夜のママ?」

「そうです」

「そうなんです!!! 貴方お名前は!?」

「二年の火原火蓮と言います。えっと十六夜にはいつもお世話になっております」

 

彼女は頭を下げる。我が母上は感心して、同時に嬉しそうな顔になる。

 

「あらあら、礼儀正しいのね」

「いえ、当然です」

「それに凄く可愛い!! 十六夜もそう思ってるでしょ?」

「まぁ、そうだけど」

「そ、そんな可愛いだなんて」

 

彼女は顔を赤くし照れている。落ち着かないのか前髪を触っている。

 

「そろそろ、俺行かないと」

「そう、それじゃあまたあとでね。火蓮ちゃんも」

「はい、また」

 

母親から離れて待機場所に向かう。結局トイレには行けなかった。我慢すればいいだけなんだが

 

「十六夜のママ、優しそうね」

「優しいですよ。怒ると怖いですが」

「うちのママもそうよ」

 

俺達お互いの家族の話に触れながらわずかな時間を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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