バンドリSS   作:綾行

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『嵐、来たる。』の続きです。


女神、来たる。

 

 

 

またしても学校帰り。

通学に使う電車の所要時間は30分程と長くないもので、もうそろそろ駅に着く頃だと参考書を鞄に仕舞っていると制服のポケットに入れていた携帯がぶるりと震える。

友人からだろうかと思いすぐに開けば、この前知り合った銀髪の悪魔からだった。

 

 

『学校が終わったら駅にあるカフェで待ち合わせね。私はもういるから』

 

 

何で俺の帰る時間がわかるんだよコイツ。

見透かされているようでイラっとしたが、よく考えてみればこの前出会った時より少し早いくらいの時間だ。

今日もこの時間帯に駅付近にいると予想したのだろう。

どうせなら友人たちとだらだら話でもしてもっと遅く帰ってくれば良かったかもしれない。

流石に着いているのに行かないのは自分的に許せないので改札を出るとそのままカフェへ向かう。

長居する気にはならなかったので注文はブレンドコーヒーの1番小さいサイズにした。

しばし待ってコーヒーを受け取ると何処かの席にいるであろう湊の姿を探す。

 

 

「智昭、こっちよ」

 

 

見つけるよりも早く呼ばれて、其方を向けば4人席に座り微笑む悪魔と、見知らぬ女の子がいた。

湊とは別の、花咲川女子学園の制服を着ているようだ。

湊の友人だろうと呼ばれるままに近寄り改めてその女の子を見て、あまりの衝撃に持っているコーヒーを落としそうになってしまった。

黒く艶やかな長い髪。

控え目な性格を窺わせる伏せられた瞳。

幼さを僅かに感じさせる、可愛らしい顔。

そして何より、はち切れんばかりの豊満な胸。

俺の好みどストライクの女の子が、目の前に存在している。

 

 

「何してるの、早く座って」

 

 

湊と彼女は隣り合って座っていたので、迷いなく見知らぬ女の子の正面に座る。

湊がムッとしたのがわかったが知ったことではない。

少しでも良い声が出ないかと話す前に咳払いを1つして。

 

 

「えーと、今日はどういう用?」

 

「今日はあなたに私のことを知ってもらおうと思って、知り合いを連れて来たの」

 

 

正直自分のことを知らせる為に友人を連れて来る意味がわからなかったがこんな好みの子と出会えたのだからそんなことはどうでもいい。

そうか、と返す口を上がらないように堪えることで精一杯だ。

 

 

「あ、あの、私、白金 燐子といいます……湊さんが、その、好きな人に自分をプレゼンするなら本人からじゃない方が良いって言うので……」

 

「あー、そういう感じか。初めまして。西 智昭です」

 

「あ、はい……お名前は湊さんから何度か……」

 

「白金さん、いや、燐子さん」

 

「え?は、はい……」

 

「滅茶苦茶好みです。付き合ってくださ「ちょっと智昭何言ってるのよ!!」

 

 

大事な所を湊に邪魔された。

出来うる限り顎を上げ見下ろすように湊にガンを飛ばす。

 

 

「あぁ?湊黙ってろよ今燐子ちゃん口説いてんだから」

 

「あなたと知り合って今初めて名前を呼んでくれたことにちょっとときめいたのだけれど何で燐子はどんどん親密な呼び方になって私は苗字を呼び捨てなのよ!」

 

「そりゃ心の距離だろうがよ」

 

「いつでも心も体もあなたにぴったり寄りそうつもりだけれど?」

 

「俺には燐子ちゃんがいるのでお断りしますぅ」

 

「燐子はそういうつもりで呼んだんじゃないのよ!」

 

 

湊は俺が好きだと言うが根本的に馬が合わないのではなかろうか。

主に俺の態度が原因ではあるのかもしれないが、口を開けば即口論になっている気がする。

足は引っ込めているので今日は足を踏みつけられる心配はないのだが、目の前の燐子ちゃんはあわあわして少し可哀想になって来た。

そんな様子も可愛いのだが。

口論の最中にも燐子ちゃんに見惚れていることに気づいたのか、湊のターゲットは俺から燐子ちゃんに移ったらしい。

 

 

「こんな、こんなのどうしようもないじゃない……私だって大きければ嬉しかったわよ……」

 

 

隣の燐子ちゃんを虚ろな目で恨めしそうに見ると、湊は唐突に燐子ちゃんのたわわな胸を揉みしだき始めた。

 

 

「ひゃぅっ……み、湊さ……んっ……」

 

「私が男でもこんな揉み甲斐のある胸の女の子を選ぶわよ!どうせ私にはないものよ!」

 

「やっ、めて……くださ……んんっ」

 

 

え?燐子ちゃん、えっろ。

視覚と聴覚の刺激だけでもう何というか、臨戦態勢だ。

いや、この場合燐戦態勢というべきか。(後で冷静になってみたら上手くも何ともなかった)

というか湊お前羨ましいんだよ代われ。

ひとしきり揉んだら落ち着いたのか止めずとも燐子ちゃんを解放した湊は澄ました顔でコーヒーを優雅に飲み出す。

隣の顔が真っ赤になってしまった燐子ちゃんに謝罪とかはないのか。

俺も自分の欲に従ってしまい止めなかったので同罪にはなってしまうのだが。

燐子ちゃんにも注文したものを飲むように薦め、全員が落ち着くまではコーヒータイムとなる。

何か話すこともなく、コーヒーの香りと苦さの中の奥深さを味わって。

……よし、俺もどうにか立ち上がることができるくらいには落ち着いた。

 

 

「燐子ちゃん、湊がいるとその、プレゼン?進まなそうだし2人で話さない?」

 

「え……それは、ちょっと、」

 

「私が口を挟まなければいいのかしら?」

 

「……2人きりは駄目なんだろ。わかったよ。じゃあ連絡先交換しよ?」

 

「連絡先、ですか……?」

 

「うん。湊の良い所送ってくれれば読むから。それで燐子ちゃんのお役目達成じゃない?」

 

「……湊さん、どうです?」

 

「……まぁ、私の魅力はこのコーヒーを飲む短時間で伝えられるものでもないし、その方がいいのかしら」

 

「ほら、許可も出たし、ね?」

 

「は、はい……」

 

 

2人で話すことになってもそうするつもりではいたが、燐子ちゃんの連絡先を入手することに成功した。

これで湊を通さずに会うことができる。

 

 

「じゃあ俺ちょっと用があるから帰るわ。燐子ちゃんプレゼンよろしくね」

 

「わかりました……」

 

「あ、あとね」

 

 

ちょっと耳貸して、と言えば片耳を差し出してくれる燐子ちゃんのなんと素直で可愛らしいことか。

そのままの勢いで頬に口付けたい衝動が湧き上がったがそれは取り返しのつかないことになりかねないので堪えて口を寄せるに留める。

 

 

「さっきの告白、本気だから。考えてくれると嬉しいな」

 

「っ…………」

 

「……智昭、燐子に何を言ったの?」

 

「いや?何でも?じゃ、またな」

 

 

空になったコーヒーカップを返却口へと置くと意気揚々と店を出る。

押し過ぎかとも思うが、湊のあの勢いにも慣れていそうな彼女はこれくらいでも大丈夫だろう。

次に会えるのはいつだろうか、連絡は来るだろうかと、この前の湊よろしく、足取り軽く帰路へとついたのだった。

 

 

 




燐子好きなのでつい性格の気持ち悪さが滲み出てしまった。
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