バンドリSS   作:綾行

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翡翠のphenobarbital 2

 

13時過ぎとは言えまだまだ昼食時。

大学からも建ち並ぶビルからも近いファミリーレストランはサラリーマンや学生で混みあっていた。

急いではいないのでのんびり待つことにしてレジ近くの椅子に2人して座る。

その間に少し、俺の話をした。

近くの大学の3年生であること。電車に乗らずとも大学に行けるようこの近くで1人暮らしをしていること。

話の途中でさやが「私の方が年下なので、敬語じゃなくて大丈夫です」と言ってくれたので砕けた話し方でそれらのことを話した。

その合間合間でさやが意識を別のものへと向けるのでやはり俺の話なんてつまらないだろうかと次のそのタイミングでさやの視線の先を追う。

 

 

『みなさーん』

 

『『『『『こんにちはー!!!』』』』』

 

『Pastel*Pallettesです!』

 

『この度、Pastel*Pallettesとのコラボメニューが期間限定で発売されることになりました』

 

『食べたら絶対るんっ♪ってしちゃうから、食べてみてねー』

 

『『『『『よろしくお願いします!』』』』』

 

 

視線が向けられていたのはレジ前の画面だ。

ふわふわした衣装の女の子たちがコラボメニューの宣伝をして、また別の広告へと切り替わる。

 

 

「どうしました?」

 

 

宣伝が終わったからだろうか、意識を向ける先が戻りさやが此方を窺って来る。

 

 

「あ、いや。さっきの、今人気のアイドル?だっけ?」

 

「……そうらしいですね」

 

「じっと見てたから好きなのかなって思って」

 

「……別に、好きではないですよ」

 

「そ、そっか」

 

 

見ていた割に芳しくない反応だ。

訊かない方が良かっただろうかと気まずくなりかけていた所で運良く店員さんが席へと案内してくれた。

メニューを広げて何食べようか、なんて言って先程までの話題を切り上げる。

俺はさくっとハンバーグセットを選んだがさやはなかなか決まらないらしい。

選んでいるのに話しかけるのも邪魔だろうと暇潰しにメニューを眺める。

レジ前の宣伝で見たアイドルとのコラボメニューであるルミナスパフェは3000円もして慄いてしまう。

ファミリーレストランでパフェ1つに俺はこの額を払えないな…と思ったが、周りを見てみれば意外とそのパフェらしきものを頼んでいる客が多い。

パフェが美味しいのかコラボメニューが食べられたからか客は皆満足そうだ。

そうしてメニューではなく他の客を見ている間にお待たせしましたとさやに声をかけられる。

サンドイッチとフライドポテトにしたらしいのでベルで店員さんを呼び決めたメニューを告げる。

また暫し待つ間にも、注文したものが運ばれ食べている間にも、再びお互いの話を始める。

年下、とだけ先に聞いたがさやはこの辺りではない大学の2年生で実家から通っているらしい。

1人っ子なので自分が家を出ては両親が寂しいだろう、と家の近くに決めたそうだ。

偉いなぁ、と言葉を返して苦笑いを漏らす。

俺は口五月蠅く言われるのが嫌で家からは通えない今の大学に決めたものだから、親が寂しがるなんて微塵も考えなかった。

まぁその結果学費は出してもらえるが生活費は自力で稼ぐ今の生活なのだ。

 

 

「1人っ子でさやくらい可愛かったら、家出ちゃうと親御さんも寂しくなっちゃうよね」

 

「……可愛いとは、思いませんが」

 

「可愛いって。俺妹いるんだけどさ、正月とかで偶に帰ると「うわ帰って来たの?最悪」とか言うんだよ。さやくらい可愛ければまだいいのにさぁ」

 

「妹さん、ですか」

 

「うん。さやは兄弟とか欲しかった?」

 

「……どう、でしょう」

 

 

1度くらいは友人と兄弟姉妹が欲しいか、みたいな会話をしたことがあるかと思ったがさやはないようだ。

言葉を止めて考え込むとぽつりと言葉を漏らす。

 

 

「いなくて、良かったかもしれません」

 

「まぁいても仲良くなれなかったりするの全然あるしね」

 

「そうなんですね」

 

 

そうこう話している内にお互い食べ終わり、そろそろ行こうかと立ち上がる。

さりげなく伝票を手に取るとそういえば、と気になっていたものを背負うさやに質問を投げる。

 

 

「それ、何の楽器のケース?」

 

「ギターです」

 

「さやギター弾けるんだ。格好良いね」

 

「……人に聞かせられる程上手くはないので、褒めないでください」

 

 

ほら、行きますよと背中を押されレジへと歩む。

俺が伝票を差し出す傍らでさやが財布を取り出すがいいからと制止して会計を済ませる。

レジ前では周りの迷惑になるだろうからと一旦財布をしまったさやが店を出てからお支払いします、おいくらでしたかと引き下がってくれないので少し困ってしまう。

 

 

「毎回とかならそりゃ無理だけど、1回だけなら格好つけたいもんなんだよ」

 

「そういうものですか」

 

「そ。言っちゃってる時点で格好つけるも何もないけどさ」

 

 

笑って言えば納得してない様子ではあったがようやくわかりましたと引き下がってくれ一安心する。

 

 

「それじゃあ次はどうしようか。何処か行きたい所は?」

 

 

徒歩だと遊べそうな場所はカラオケかゲームセンターくらいしかないが、電車に乗ればショッピングモールも水族館などの施設も行ける範囲だ。

無茶な場所でなければ大抵は聞いてあげられる。

しかしさやが口にしたのは完全に俺の予想していなかった場所だった。

 

 

「西さんのお家に行きたいです」

 

「え!?何で?」

 

「人の部屋に興味があると言いますか。見てみたいなと」

 

「男の1人暮らしの部屋なんて見ても何も面白くないよ……」

 

「近くなんでしょう?どうしても嫌なら見たらすぐ出ますから」

 

「そういう問題じゃなくない?」

 

「見られて不味いものでも?」

 

「そりゃあるよ……」

 

「ではそういったものは先に隠してください。漁ったりはしませんから」

 

「だからさやさんそういう問題じゃなくてね?」

 

 

恋人でもない男女が鍵もかけられる密室なんて明らかに良くないでしょ、と言いたいのをぐっと堪える。

いや言った方がいいに決まっているのだが変にそういった話を持ち出してアイドルの話の時みたく気まずくなりたくない。

意識しているのかと認識させてしまっても気持ち悪いだけだろうから気づかせないことにする。

単に俺が変なことをしなければ良いのだ。

部屋を見せて、さやが満足したら次の場所に行くなり少々話でもすればいい。

 

 

「……わかった。俺の家ね」

 

 

渋々了承の意を返して家へと歩き出す。

さやが黙ってついて来るのでその間に洗濯物は干しっ放しでなかったかや見られて不味いものは出ていないかを思い出しながら。

 

 




しゅわりん☆サイダーゼリーとかワクワクmeatスパゲッティとか色々考えましたが入る余地はありませんでした。
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