穏やかな休日。
と言えば聞こえはいいがアルバイトもなく遊ぶ友人もおらず、ごろごろと過ごしているだけで夕方になってしまった悲しい男の1日だ。
平日は何とも思わないのに休みの日を無意義に過ごして夕方になった時の、もう1日が終わってしまう感は一体何なのだろうと常々思っている。
まぁ特にやりたいこともないのだから仕方がない。
漫画でも読み返そうかと本棚の前でどれを読むか選んでいると、階下が騒がしくなりドタドタと家の階段を上る複数の足音が近づいて来て。
「とーもあきっ、遊びに来たよー!」
部屋の扉が開かれ俺を見つけると豊満な胸が飛び掛かって来る。
あぁ違う、胸じゃなくてひまりだ。
体側面に広範囲にわたって感じるやわやわとした感触に平静を装うのが一苦労である。
「……ひまり。智昭にくっつかないで」
「そうだぞ。智昭が困って……はなさそうだけど離れてやれって」
「とも君モカちゃんもいるよー」
「智昭君、お邪魔します」
少し遅れてぞろぞろと蘭たちが入って来る。
普段は何とも思わないが、広いわけではない俺の部屋に6人もいれば狭苦しいことこの上ない。
嗜められて少しは体を離したひまりとは相変わらず距離が近いし。
「何だよお前ら急に……」
「智昭に会いたくて来ちゃった」
「違うでしょ。どうせ暇してるだろうから遊びに来てあげただけ」
「えー?あたしもとも君に会いたくて来たんだけどなー」
「モカちゃんもそうなの?」
「ま、会いたかったってのも大きいけど、時間的に一緒に夕飯でもどうかって話になってさ」
物心つく前から共にいた幼馴染たち。
幼い頃ならばまだ微笑ましいものなのだが、小学校の中学年から高学年になると「お前いっつも女子と一緒にいるよなー!」「そん中のだれかのこと好きなんじゃねーの?」「何人もまわりに女子置いとくのってタラシとかウワキモノって言うんだぞ!かーちゃんが言ってた!」などとよく揶揄われたものだ。
そういった時は「は?自分が仲良くなれないからって突っかかって来んなよ」と言えば大体は顔を真っ赤にして5人の幼馴染の内誰かのことを好きなのだと露呈させつつ捨て台詞を吐いて遠ざかって行った。
見えない所で言われていたわけでもないのでそう揶揄われていたのを知っていたくせに、この5人は中高一貫の女子校に入るまで当然のように俺と行動を共にしていたのだ。
俺は格好良いわけでもなく女子から僻まれるようなこともなかっただろうし、男子はコイツらに何か言うことはなかったので気にしなかったのだろうが多少は気を遣って欲しかったとは思っている。
学校が別になっても今もこうして遊びに来てくれるのは有難いことだと思えるくらいには精神的に大人にはなったので文句をつけるとすれば5人の態度が昔とは微妙に違うことだろうか。
ひまりだけは微妙に、で済まされる違いではないのだが。
「おー。俺も丁度腹減ってたし行こうぜ。何処行く?」
「ラーメン」
「ファミレス!」
「ハンバーガーの気分」
「えっと、洋食がいいかな」
「とも君のお母さんのごはーん」
最後1人店ですらないもの言った奴がいたぞ。そういうの急に言われても材料の問題とか準備の時間の問題とか色々あって母さんが困るからやめてくれ。
ついツッコんでしまうが一々口に出すのは面倒なので心の中に留めておく。
「よしファミレス行くぞ」
「やったぁ!智昭私の意見にしてくれたんだねっ」
「違ぇよ。ファミレスなら洋食はあるしハンバーガーもラーメンも店によってはあるだろ」
「なぁんだ」
「行き先も決まったし早速行くとするか」
「智昭、行こ」
「あー…ちょっと着替えてから行くから先行っててくれ」
「別に今のままでも変じゃないよ?」
「変じゃなくてもこれは部屋着なの。恥ずかしいだろ」
「とも君変な所で恥じらう乙女さんなんだからー」
「うっせぇ乙女じゃねーわ」
「じゃあ玄関で待ってるか」
「私が着替え手伝ってあげようかー?」
「結構です。ほらほら行った行った。着替え始められないだろうが」
動き出そうとしない4人と残ろうとする1人を部屋から追い出し適当に服を見繕って着替える。
財布を引っ掴んでそんなに時間がかかってもいないのにまだかまだかとでも言いたげにまた騒がしくなる1階へと階段を駆け下りた。
紗夜の話もこれも終わりが定まっていないので不安しかないのですが退路断ちに。