バンドリSS   作:綾行

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『俺の幼馴染たち』の続きです。


押しの強い幼馴染

 

 

「ともあきーっ遊びに来たよー!」

 

 

晩飯前の空き時間。

この前と同様にひまりが部屋に飛び込んで来る。

他の奴らも一緒かと思えば開けっ放しにされた扉から続く姿は現れない。

ひまり1人で来たのだろう。

幼馴染とは言え年頃の男女を2人きりにするのは頂けないと思うぞ我が母よ。

はぁ、と深い溜め息を吐いてその旨をひまりにも忠告する。

 

 

「お前なぁ、男の部屋で2人きりとかなっちゃいけないやつだからな」

 

「えっ、もしかして智昭、私のこと意識してくれてる?やったぁ~」

 

「してない。俺だからいいけどっていうのが省略されてる」

 

「意識してよー。そのまま私と恋に落ちて?」

 

「落ちません。あと今課題やってるから遊びたいなら日か時間改めて」

 

「えー、折角来たから智昭といたいよー」

 

「いてもいいけど静かにしててくれ……漫画とか好きに読んでていいから」

 

「はーい」

 

 

俺の持っている漫画は努力!男の友情!バトル!みたいなものばかりでひまりが好みそうなものはなさそうだが大人しく何を読もうかと本棚を物色しているので余程日時を改めるのが面倒なのだろう。

邪魔して来ないならまぁいいやと目の前の課題に向き直る。

普段真面目に課題などやることはないのだがこの課題は授業の予習みたいなもので、予め教科書の問題を生徒に解かせ、次の授業で答えを発表させて解説を入れる、というスタイルを取っている教師なのだ。

そして、次の授業で答えを発表させられるのは順番的に俺だとわかっている。

やらなければ自分が悪いのだがクラスメイトの面前でどうしてやって来なかっただの説教されたくはない。

教えるのが教師の仕事なのに教えてないもんやらせんなと文句を垂れながら解くしかないのだ。

しかしうんうん唸りつつも一応真面目に進めているのに、飽きた奴が1人いて。

 

 

「……えーい」

 

 

やはり目ぼしい漫画がなかったのか後ろからひまりが圧し掛かって来る。

動画なんかでよく見る、構えと言わんばかりに邪魔をして来る動物のようだ。

 

 

「……重い。圧し掛かって来んな」

 

「圧し掛かってるんじゃなくてほら、当ててんのよってやつ!」

 

「確かに当たってるし乗ってるけどさぁ……」

 

「ドキドキ、しない?」

 

「いやするけど……」

 

「それはきっと恋だね!」

 

「違います」

 

「何で即答なのー!智昭胸おっきい子好きだよね?」

 

「好き」

 

「じゃあ何で私じゃ駄目なの?付き合ってくれれば好きにできるよ?」

 

 

振り返ろうとすれば体を少し離してくれるが両腕で寄せ上げるようにして胸を強調される。

恥じらいもないドストレートな色仕掛けだ。

たゆん、という擬音語が似合いそうな魅力的な胸ではあるのだが。

 

 

「そんな如何にも体目当てって感じでひまりはいいの?」

 

「智昭ならいいよ?その後ゆっくり好きになってもらうし」

 

「其処まで好かれる理由もわかんないけど……」

 

「……一緒にいたいなって思うのに理由なんてないでしょ」

 

「……よくわかんないよ」

 

 

胸は小さいより大きい方が好きだし、髪は短いより長い方が好きだ。

あれよりこっちの方が良い、好きだ、という感覚はわかるのだが、この人が良い、好きだ、という気持ちは俺にはまだわからない。

だからこんなにもひまりに猛プッシュされてもピンと来ていない自分がいる。

それよりも昔みたいな態度でいてくれた方が嬉しかったなんて思ってもしまう。

一緒にいたい、も、あの幼馴染たちが彼氏ができたとか遠くに引っ越すだとかで会えなくなるとすれば寂しくは感じるが、仕方がないと受け入れてしまうだろう。

 

 

「あ、まずは体の相性確かめてみるのでもいいし!ドア閉める?」

 

「閉ーめーなーい。お前そんな自分を安売りするなよ」

 

「安売りはしてないよ。智昭だからだし、……早く私のにしないと不安だから」

 

「何が不安なの?」

 

「……そういう所!」

 

 

頬を膨らませてふい、とそっぽを向かれる。

学校でも偶に見かけることがある。

友人の彼女が怒った振りで彼氏である友人の気を引こうとする時にやっているものだ。

大体は「ごめんてぇ~」「怒ってても〇〇ちゃんは可愛いね」などと下手に出ておだてれば機嫌を良くしている。

それを見る度にお前いつもそんなキャラじゃねぇだろとツッコミを入れたくなるのだが恋というものは人を狂わせるものなのだろうと何も言わずにいる。

いや、友人の話はいいのだ。

要するにポーズだとわかっているので特別何か此方からはしないことにする。

再び机に向き直って課題を進め始めるともう構ってもらえないのだと気付いたひまりがもー!と声を上げながら背中をぽかぽか叩いて来るがこれもスルー。

静かにしているという条件だったのだから破るのならば追い出してもいいくらいなのだが面倒なので放っておく。

その内下の階から「ご飯できたわよー!」と叫ぶ母さんの声が聞こえたので邪魔され終えることのできなかった課題はいったん閉じる。

 

 

「ご飯だー!」

 

「何、食ってくの?」

 

「うん!未来のお嫁さんだし、今の内に馴染んでおこうと思って!」

 

「……ひまり、知ってるか?」

 

「なに?」

 

「人の家で飯食うと自分の家で食う飯の倍のカロリーになるんだぞ」

 

「っええぇぇえええ!?そうなの!?」

 

「おー。お前胸が恵まれてるからまだ目立たないけど、結構やばそうだしやめといた方がいいんじゃないの」

 

 

自分の胸に感謝しとけ、と言葉を足すとぐ、と一度言葉に詰まり恨めし気に此方を睨みつけて来る。

 

 

「智昭の馬鹿!デリカシーない!」

 

 

罵倒はしつつもまたね!と言い残し、しかし腹を立ててはいるのか扉をバンと閉めて部屋から出て行く。

この様子だと食卓にひまりの姿はないだろう。

あんな嘘を信じるくらいには純粋なのにどうして体で迫って来るのか理解できないが飯は静かに食えそうだと数分経ってから飯を食いに向かうのだった。

 

 

 

 




恥じらいは大事。
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