バンドリSS   作:綾行

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『押しの強い幼馴染』の続きです。


振り回す幼馴染

 

 

俺は昔から特にスポーツなどはやっていないし部活動もやっていない。

その上積極的に外に出るタイプでもないので体育の授業があった日には疲労感が凄まじい。

それでも休日前夜ともなれば少し夜更かししたくなってしまうもので、下がる瞼に力を入れつつ深夜までゲームをしていた。

明日は休み。眠ければ好きなだけ眠ればいいのだ。

早く眠るよりも遅く起きたり昼寝をしたりする方が何故か満足感があるし。

そういった考えで限界まで遊んだ俺は一応このくらいには起きるか、とアラームを昼過ぎにセットして保っているのもぎりぎりだった意識をようやく手放した。

 

目を瞑っていたのは一瞬だったのではないかと思う程あっという間にアラームが喧しい音を立てる。

五月蠅いとは思いつつ覚醒する為に寝転がったまま伸びをしてからアラームを止める。

まだ寝足りずふぁ、と欠伸も出る中、寝惚け眼の視界には見慣れた部屋に見慣れぬものが映っていた。

 

 

「は?」

 

 

部屋の隅に体育座りをしてじと、と此方を見詰めている赤メッシュ。

睨まれている、にも近い。

何でいるのかという疑問の前にだから母さん勝手に俺の部屋に通さないでくれ……と文句が浮かぶ。

だからも何も、言った所で「やだアンタ、みんなのこと意識しちゃうの?やーだー!」なんて冷やかされるのが嫌で言っていない俺が悪いのだけれども少しは気を遣ってくれ。

しかも今回俺は寝ていたのだから、蘭だったから良かったもののひまりだったら食われていたかもしれない。

そんなことまで考えられる程度には意識もはっきりして来たので俺が起きても疑問の音を発しても無言のままの蘭に声をかけることにする。

 

 

「おはよう」

 

「……おはよ」

 

「何してんの?」

 

「……別に」

 

 

そんな隅にいてどうした、という意味で尋ねたのだが何をしているのかというそのままの意味で捉えたのか素っ気ない返事だ。

そりゃそうだ。座っているだけで何もしていないのだから。

 

 

「何か用?」

 

「用ってわけじゃないけど」

 

「じゃあ何だよ」

 

「……ひまりといちゃいちゃしたらしいじゃん」

 

「憶えがねぇ……」

 

「悪いことした政治家とか浮気した男ってみんなそう言うんだよ」

 

「事実だよ……」

 

 

そのいちゃいちゃの内容を詳しく言わせてみれば、俺とひまりがねっとりしっぽり濃厚に接触した、という根も葉もないし具体性にも欠けるものだった。

5人が俺の部屋に来てからひまりと会ったのは課題を邪魔された時だけだったのでアイツが勝手にべたべたして来ただけで何もしていないということを説明する。

ふーん、という興味なさげな反応にはお前が訊いて来たんだろうがと返すが黙殺される。

何故俺は寝起きでこんな疲れる話をしなければならないのだろうか。

 

 

「ひまりといちゃいちゃしたんだったらさ、」

 

「人の話聞いちゃいねぇな」

 

「あたしともしてよ」

 

「してないんだって」

 

「……遊びに行くのも駄目?」

 

「駄目じゃないけど……」

 

「じゃあ行こ。早く準備して」

 

「今からかよ」

 

 

此方はまだ顔すら洗っていないというのにせっかちな。

階下で待つよう言ってから適当な服をタンスから引っ張り出して着替える。

適当に身支度を整えてから階段を下り、母さんが自分用に買って来たのであろう菓子パンを朝食代わりに持って行かせてもらう。

蘭は動物園に行きたいらしく、それならそこそこ近場なので時間的には十分余裕があると思えば近場の動物園は嫌らしい。

俺が待たせている間に調べたらしい少し遠めの動物園を指定され、違いがわからないながらも了承する。

移動中にパンを食えたのは良いのだが着いた時間から考えれば閉園時間まで2時間程しかない。

急かされっぱなしなのだが早くという声に従いさっさと券を買って入園する。

ぐるりと全体を見て回るには時間がどうしても足りないので見たい動物を中心に回っていく。

蘭はカピバラやアルパカなど女子が可愛いと言う動物よりかは昔と変わらず強そうな動物が好きらしく、ホワイトタイガーやライオンに目を輝かせて観察している。

一方俺はというと、動物園なんて小学校の修学旅行ぶりという程度には動物園とは縁遠い。

動物を多少は可愛いと感じるがそれ以上でもそれ以下でもなく人と共にでなければ来ることはないだろう。

 

 

「智昭、見て」

 

 

不意にかけられた言葉に反応して指された方向へ目をやればフラミンゴが桃色の羽をピンと広げている。

 

 

「ひまりに似てる」

 

「色で言ったな?」

 

「まぁ。……智昭から見てあたしたちを動物に例えると?」

 

「えぇ?じゃあ……ひまりはフラミンゴでいいや」

 

「他にあるなら変えていいんだけど」

 

「何かそう言われたらもうイメージが付いちゃうんだよ……」

 

「そ。あたしは?」

 

「蘭は白いウサギ。つぐみは茶色いウサギ」

 

「つぐみが茶色なのはわかるけど、あたし白くないよ」

 

「白いからその分赤い目が強調されるからかなぁ」

 

「目が黒い白い毛のウサギもいるよ」

 

「そっちでも別に。小動物って感じだし」

 

「……あっそ。モカは」

 

「ナマケモノ」

 

「寝るの好きだからね」

 

「怠けてるって思ってるわけじゃないけど、っぽいなって」

 

「わかるよ。巴は?」

 

「ゴリラ?」

 

「っあははははは!!それ、巴に言ったら絶対怒られるからね!」

 

 

俺的には即決だったのだが予想していなかったのかツボってしまったらしい。

蘭は腹を抱えて笑っている。

俺が自分から巴に「お前ゴリラっぽいよな」なんて言うことはないのだから後日巴が腹を立てていたらそれは間違いなく蘭が告げ口したからになるのだが。

 

 

「……巴には言うなよ?」

 

「どうしようかな」

 

「言ったらお前も否定しないで笑い転げてたって言うからな」

 

「はいはい。……好きな動物は?変わってない?」

 

「おう。ペンギン」

 

「……此処にはいないみたいね」

 

「近場の方ならいたけどな」

 

「……嫌味?」

 

「事実」

 

「……今度はペンギンがいる動物園に行こ」

 

「別にいいけど、また動物園でいいのか?」

 

「いいの。約束だからね」

 

 

昼過ぎに俺を睨んでいた様子は何処へやら、にひ、と笑んでご機嫌なようだ。

それから閉園まで動物を見ている間も、帰りの電車に揺られている間も蘭は上機嫌で、いつもそれくらいならば可愛いのになと浮かんだ言葉は現状を損ねることになるので胸の内に秘めておいた。

 




紗夜の遊園地もそうですが、何を書けばいいのかわからないのに時間を経過させないといけないのでとても苦手です。
着地がほぼ失敗したのでさっさと更新したいですね。
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