バンドリSS   作:綾行

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コンビニエンスラブ

 

 

俺は遊ぶのが好きだ。

大体の奴はそうだろうが中には勉強が好きな奴もいるしスポーツが好きな奴もいるので一応。

勿論人の好きなものを否定するつもりもなく、俺は遊ぶのが好きだというだけ。

1人でゲームをするのも好きだし友人とするのも好きだ。

誰かと飯を食いに行ったり買い物をしに行ったりという意味でも。

だからいつでも、俺が暇だと思った時に都合のつく奴は何人でも持っておきたいものだ。

今日も今日とて放課後は暇を持て余していて、ゲームという気分でもなかったので携帯を取り出し今日はコイツでいいかと簡潔にメッセージを送る。

 

 

『今日暇?』

 

 

返信を待つ間にゲームの攻略サイトでも見るかと携帯の画面を切り替えようとすればそんな間もなく答えが来る。

 

 

『空いてるよ。どうしたの?』

 

『じゃあ駅集合で』

 

 

何時とも質問の答えも言わず集合場所だけ伝えて学校を後にする。

アイツの方が学校から駅は近いのだし空いてるならすぐ移動するだろう。

質問の答えもこれから会うのだからわざわざ時間を割いて今言うことではない。

案の定俺が駅に着く頃には遣り取りの相手であるひまりは先にいて、もう、と頬を膨らませている。

 

 

「移動中も返信くれたっていいのに!」

 

「ながらスマホとか危ないし迷惑だろ」

 

「それはそうだけど……」

 

「それよりコーヒーでも飲みに行こうぜ。飯でもいいけど」

 

「私コーヒーのがいいかな」

 

「そ。じゃあショッピングモールのとこにでも行くか」

 

 

ひまりの友人の家が喫茶店をやっていると聞いたこともあるが別に会いたくもないしチェーン店の方が気が楽だ。

飯を食うことになっていてもとりあえず何かしらあるだろうとショッピングモールに行くつもりで駅集合にしたのだ。

最初から目的地で落ち合うことにしなかったのはショッピングモールで、と言っても広い施設の何処だよという話になって面倒だから。

そもそも予測変換で出るとしてもショッピングモールと打つのがだるい。

 

駅から少し歩きはするが大した時間は歩かず目当ての場所に着き、そのままコーヒーのチェーン店へ直行する。

 

 

「俺席とっとくから注文よろしく。1番でかいドリップコーヒーと何でもいいからサンドイッチ」

 

「あ……うん、わかった」

 

 

ひまりが注文の列に並んでる間に2人掛けの席を確保し、待つ間は何を焦っているのかわたわたとした様子でレジにいるひまりを眺める。

それにはすぐ飽きて携帯でゲームをすることにしたのだが、此方もすぐやめることになる。

思ったよりも早くひまりがコーヒーを持って戻って来たのだ。

 

 

「お待たせ―」

 

「おう」

 

「私は新しく出たラテにしたよ。美味しそうでしょ?」

 

「まぁ」

 

 

ひまりが選んだサンドイッチはハムとレタスが挟まったものだった。

何でもいいと言ったしな、と何も言わずにトレイに置かれているおしぼりで手を拭いてからそれにかぶりつく。

早食いの自覚はないが数分でそれは食べ終わってしまい、あとはコーヒーを啜るだけだ。

その間ひまりは何かぼそぼそ言っていたが聞き取れない。

 

 

「……智昭君、聞いてる?」

 

「ん?何」

 

「言い難いから何度も言いたくなかったんだけど……」

 

「何。気にせず言えばいいじゃん」

 

「えっと……智昭君のコーヒーとサンドイッチ、600円だったんだけど……」

 

「ふーん」

 

「ふーん、って……」

 

「あぁ。ご馳走様?」

 

「払って、くれないの?」

 

「お前バイトしてるだろ?俺の学校バイト禁止だから金ねーんだよ。それくらい奢ってくれよ」

 

「…………わかった」

 

「他に話あるなら聞いてるからゲームしていいか?」

 

「……いいけど」

 

 

許可を取り閉じたばかりのゲームをまた起動する。

難しい操作は必要ないので話を聞けるのは事実なのだがひまりは何も話さない。

まぁ話がないならそれでいいしひまりも好きなことをしていればいいのだ。

聞く必要がないならと別のゲームを起動し、其処でお、と声が漏れる。

 

 

「新しいキャラ出てんじゃん……好みだし課金するか……?」

 

 

悩ましい。実に悩ましい。

ガチャというものは上手く出来ているもので課金しても確実に手に入るわけではない。

ゲームによっては上限まで回せば手に入るという温情もあるが、残念ながらこのゲームにそのシステムはない。

好みのキャラが出る度にこの悩みを繰り返しているが毎回欲求に負けてしまっている。

今回も例に違わず。

 

 

「1万入れれば出るだろ……」

 

 

フラグのように聞こえてしまうが決してそんなものは立たない。決して。

課金完了の音がしていざガチャへ。

と思ったのだが待ったがかかる。

 

 

「ねぇ、」

 

 

他でもない、目の前に座るひまりだ。

ガチャも頭は使わないといえども気分の問題として片手間でやりたくはない。

良い所で邪魔をされた感じはあるが手を止めて何かと尋ねる。

 

 

「私たち、付き合ってるんだよね?」

 

「そうだな」

 

「智昭君、私のこと好きなんだよね……?」

 

「そうだな」

 

 

よくいる女子の「好きって言って!」みたいな好意の確認。

謎のタイミングだ。いや、こういうものは相手が承認とか肯定されたいとふっと思った時にされるのだろうから予測も出来ないだろうが。

数カ月前にはなるが、バイト中のひまりを見て声をかけ、その後好きだと言ったのを忘れてしまったなんてことはないのだろうからそれを思い出していれば良いだろうに。

 

 

「だったら何でいつもそんな態度なの!?偶にしか連絡くれないし、折角一緒にいてもゲーム始めるし……」

 

「連絡来ないって思うならお前からすればいいだけだろ。お前は部活もバイトもバンドもやってて忙しいだろうからってこっちも気遣ってんのに俺が悪いみたいな言い方すんなよ。ゲームだって嫌なら訊いた時に嫌だって言えば良かったじゃねぇか」

 

「それは……」

 

「何、いちゃもんつけたかっただけ?」

 

「っ、会った時に使うお金もいつも私持ちだし、それなのに課金はしてて……何か、私のことなんかどうでもいいみたい」

 

「課金は俺の金じゃないからなぁ」

 

 

携帯電話の料金を払っているのは親だ。

バイトもしていない俺が払えるはずもない。

だから課金をするか否かで悩むというのは手持ちの金がなくて、ではなくてどの程度ならば親に咎められずに使えるかだ。

携帯やらパソコンに疎い親には料金が高いと言われてもある程度ならば「こんな便利なもん使うんだからそりゃあそれくらいかかるんじゃないの」と誤魔化せる。

 

 

「そんなに色々嫌ならもう面倒だし別れようぜ」

 

「え……?」

 

「お互い無理することないって。じゃ、こっちもしないからお前も連絡して来んなよ」

 

 

幸い、ホットのコーヒーを店内で洗ってまた使うカップではなく紙のカップに入れて出す店だ。

自分のコーヒーを手に取ると店を後にし帰路につく。

遊び相手が1人減ってしまったわけだがまた誰かしら探して仲良くなればいいだろう。

忘れない内にとひまりからの連絡を届かないように設定して、持ち帰る間にすっかり冷めたコーヒーの残りを一気に呷った。

 




その内刺されそうなメンヘラ量産マン。
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