バンドリSS   作:綾行

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『振り回す幼馴染』の続きです。


読めない幼馴染

 

 

 

いつものように登校し、いつものように授業を受け、いつものように帰宅して。

 

 

「たのもー」

 

 

そして、段々とこれも『いつも』になりつつあるのだが、俺の部屋に来訪者が現れる。

いつも部屋にいる俺が言えたことではないのだが皆暇なのだろうか。

そろそろ、母さんともちゃんと話をする必要性も感じる。

 

 

「今日はモカか」

 

「えー何それー。日替わりで女の子誑してて今日はあたしかーみたいな」

 

「誑してない」

 

「嘘ばっかり。ひーちゃんといちゃいちゃして、この前は蘭とデートしたんでしょ?モカちゃん知ってるんだからー」

 

「事実じゃない話が増えていくんだけど」

 

「事実じゃないって言うけど、本人たちがそう言ってるんだよー?」

 

「お前らそんなに俺の話する程話題ないの?」

 

「そうじゃないけど……とにかく、そーゆーことだから、今日は女の子にだらしないとも君にお説教しに来たのだー」

 

「まじか。説教されんの嫌だわ」

 

「お説教じゃなくてお家デートって言い換えてもいいよ?」

 

「説教でいいです」

 

「じゃあそうするー」

 

 

本人が説教だと言うものだからベッドに寝転がっている状態から床に正座することにする。

カーペットは敷かれているが長時間だと辛いので手短に終わればいいと僅かに祈る。

モカも俺に倣ってか正面に正座するが、俺との膝には拳1つ分程の間隔しかない。

近くないか、という指摘は叱られるらしい立場からしたら言えたものではなく、藪蛇になる可能性もあるので黙っておく。

 

 

「まずね、とも君はずるい」

 

「ずるい、とは」

 

「よくあるお話の主人公みたく、周りの子の気持ちに気づかないわけじゃないのに、放っておくでしょ?そんなんだからみんな期待しちゃうんだよー。その気がないなら少し素っ気なくするとかもできるじゃん。でもしないし、それ所か偶に優しくしてもっと好きにさせちゃう。本当、とも君はずるいよ。人誑し」

 

「酷い言われようだな」

 

「それになーんかとも君って変な人ホイホイしやすいよね。イケメンじゃないのに知らない人に声かけられたりいっぱいするし」

 

「イケメンじゃないは余計だわ。あと何で知ってんの」

 

「内緒ー」

 

 

モカの言う変な人、が当てはまるのかはわからないが、登下校中、よく知らない人に声をかけられるのは事実だ。それも必ず女性に、だ。

道を尋ねられることも含まれるのだが、その場合教えても教えてもわからないから一緒に来てくれと言われる流れから外れたことはなく、用があるからだとか、運良くいた通行人を指し「あの人其処に行くみたいなんでついて行けばいいと思います」と押し付けてダッシュで逃げるようにしている。

その他はストレートに一緒にお茶でもしようとか連絡先を交換しようとかいう誘いだが、それらも漏れなく断っているので説教されるような要素はないと思うのだがモカは不満げだ。

何故知っているのかという点はとても気になるのだが、答えてもらえそうにないので忘れることにする。

 

 

「とも君はねー、自覚が足りないよー。しっかりしてくれないと困るんですよー」

 

「お前にしっかりしろって言われる日が来るとは……。で、何の自覚?」

 

「話すと女の子はみーんなとも君のこと好きになっちゃうって自覚?」

 

「それ自分で思ってたらナルシストで済ませられないくらい痛い奴になるんだけど」

 

「そーお?多分あたしたちみんな思ってるからそんなことないと思うけど」

 

「お前ら変なフィルターかけて俺のこと見過ぎなんじゃないの」

 

「そんなことないよー。……自覚して、話すのやめてくれる?」

 

「無茶言うなよ……」

 

「別にとも君のお母さんとか、家族はいーんだよ?でも、他の誰とも話さないで。遊ばないで。あたしだけにしてよ。あたしじゃだめ?物足りない?」

 

「物足りないとかじゃなくて、」

 

「もうね、嫌なの。とも君がいつあたしじゃない人のものになっちゃうのかって気が気じゃなくて、苦しくて、好きなのに憎くなって来ちゃって、でも好きでどうしようもないの」

 

 

好きだと言う割に、憎いと言う割に、モカは見る限りいつも通りで、苦しさを吐露しても涙を浮かべるわけでもない。

しかし自分だけにしてくれと発された声は幻聴などではなく、沈黙が続いても「なーんてね」などと言い出す様子もないので本心なのだろう。

ひまり程ではないがモカも俺に好意を持って接しているとは気づいていたが、まさか憎まれてもいたとは予想外で言葉に詰まる。

俺なりにではあるが、大事に思っている幼馴染に憎まれるというのは少し堪える。

 

 

「ごめん、今日はもう帰ってくれ」

 

「あたしだけにしてくれるって言ってくれたら、いーよ」

 

「モカ」

 

「……じゃあちゅーしてくれたら、かな」

 

 

空いていた膝と膝の間に手をついて前のめりになりずい、と近づかれるが、当然、キスに至りそうな程の距離ではない。

あくまで俺の意思でするのを待っているのだ。

尊重されていると言えば聞こえはいいが、きっとそういった意図ではない。

僅かに低くもう1度名を呼べばはーい、と諦めて体勢を戻す。

 

 

「嫌われたくはないからね。今日は大人しく退散するとしますかー」

 

 

慣れてないから脚が痺れちゃったよー、なんて言いながらも痛がることもなくモカは立ち上がって、じゃーねーと手をひらひら振りながら部屋を出て行く。

それを見届け再びベッドに転がろうとした俺の方こそ脚が痺れていて、久々の感覚に小さく呻きつつもベッドに体を横たえる。

嫌われているのでなければ好かれもしなくていいのに。どうしてこうも面倒なことになってしまったのか。

寝て目が覚めたらアイツら皆、ただ仲のいい幼馴染になっていたりしないかと無駄な願いを浮かべたまま、瞼を閉じた。

 




イケメンじゃないを強調していく。

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