「らーん、帰ろー」
「うん」
放課後、教室の入り口からモカがひょっこりと現れる。
スタジオでのあの件からしばらく経ち、毎日モカと帰るようになった。
一緒に帰っても特に何をするというわけでもなく、そのまま別れたり、モカが寄りたいと言えばパン屋に寄ったり、……特にその後の予定もないので気分次第だ。
つぐみはAfterglowを抜け、残ったメンバーで活動を続けようとしたが、ひまりが練習に来なくなってしまった。
モカもあたしも巴も何度も声をかけたが、スタジオに入るとあの時のことを思い出してしまうのだろうか。
もう一緒にできない、と短いメッセージが送られて来て、その後は何を送っても返信が来なかった。
学校で会って説得をしても、その度に涙を溢れさせて拒絶されれば此方も辛くなる。
残った3人に新しいメンバーを入れて、ということも誰も提案はしなかった。
元々バンドがやりたかったというわけではない。
みんなで、ずっといられるようにと始めたバンドだ。
別のメンバーとやっても意味がない。
そうして、Afterglowは、解散してしまったのだ。
「……ひまりは、どう」
「うん……フツーに、してるよ。怖いくらい、フツー」
あたしだけ別のクラスだが、幼馴染の他の4人は同じクラスだ。
当然、ひまりも巴もモカも、もうつぐみの傍には寄らず、つぐみも近寄って来ず、首を傾げるクラスメイトが多いらしいが、接さないだけで本人たちは何事もなかったように過ごしているので無駄な詮索をする者はいないらしい。
来年は4人全員つぐみと違うクラスになれればいいな、なんて思ってしまう自分が、少し嫌だ。
つぐみのしたことは、モカと巴と話し合って誰かに言うようなことはしなかった。
つぐみの両親……おじさんやおばさんに話して、あの優しい笑顔が悲しみに暮れるのを見たくなかったというのもある。
ただ、言った所でどうなる、といった気持ちも強かった。
両親に問いただされても、私たちの時のように嘘を吐くかもしれない。
親は、他人のあたしたちよりも自分の子を信じるかもしれない。
学校の先生にも言った所で信じてもらえないか、良くて生徒指導室に行くくらいだろう。
ひまりの件が初めてではないつぐみが反省するとは思えなかった。
もう、みんなつぐみに関わりたくなかったのだ。
「なーんか、やることなくなっちゃったね」
「……バンド解散したって言ったら、父さん、これで華道に集中できるなって言ってたよ」
「言葉だけ聞くと嫌なこと言ってるけど、蘭のパパ、悲しそうだったでしょ」
「……うん」
「……また他に打ち込めること、一緒に探す?」
「例えば?」
「パン屋巡りとか……」
「もー、モカはパンのことばっかり」
詩を書いていたのは、自分のもどかしさを、息苦しさを、叫びを、吐き出したかったからだ。
しかし今はそういった感情はなく、ただ、虚しさを感じてしまう。
この空虚さも、詩にぶつけたり、モカの言うように新しい何かを探すことで埋まるのだろうか。
そうだとしても、いつも通りの夕焼けは、もう二度と見られない。
モノローグは1の初め3行で終わってるのでモノローグなしのエピローグです。
書きたいことが書けなかったのでその内蛇足が書けたらいいですね。