ローゼンメイデンアラカルト   作:ぴちかー党

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 またまた、気がつくとミーディアムになっていた。今回はローゼンメイデン第5ドール真紅のミーディアムになっていたので、徹底的に甘やかすことにした。


気が付いたら真紅のミーディアムになっていたので徹底的に甘やかしてみた

0600i朝の日差しが眩しい。残暑が残る9月後半、世間ではやれ温暖化だの熱中症だの騒がれており、当たり前だがこの時間帯でも暑い。

 

まだまだ眠り足りないが2度寝をしたいという思惑は容赦ない暑さと、パートナーによる一言で見事に打ち崩される。

 

ここで初めに断っておくが自分は結婚なぞとは無縁の存在である。勿論、バツもついておらず子供はおろか、ペットすらも飼っていない。しかし、パートナーがある日突然できた。いや、この場合突如強制的にパートナーにされたというのが正しい。

 

「あら、ようやく起きたの?おはようなのだわ」

 

彼女は、既に起きていた。いつものように特等席のベッドの真ん中に鎮座し静かに読書をしていた。ローゼンメイデン第5ドール真紅。それが彼女の名前である。

 

服装は真っ赤なワンピースに、ケープコートとボンネット状のヘッドドレス、瞳は青。髪は金色で背丈よりも長く先がカールしているツインテールというどこからどうみてもいいところのご令嬢。さらに衣装のアクセントに、幾つもの紅薔薇を身につけている。

 

性格は見た目にたがわず?いやこの場合見た目通いりといった方がいいのだろうか。プライドが高くマナーに厳しい。そのおかげで、真紅との初対面でいきなり平手打ちをくらってしまった。

 

まあ、元が人形のそれなので威力自体は全くないが、人形という動いただけでもホラーなものにいきなりぶたれたのだ、身体的ダメージは0でも精神的ダメージは相当なものであった。

 

しかし、人間というのは不思議な生き物である。どんな厳しい環境下でもありえないと思えるような環境でもいつしか慣れてしまう。はじめは、この世にも奇妙な怪奇人形の存在に慣れることができず、一睡もできず死にそうな毎日が続いた。

 

「おはよう。真紅」

「あら、いきなりレディの頭を撫でるなんて、ちょっと無神経なのだわ」

 

しかし今では、コミュニケーションが取れるまでになっており、彼女が機嫌がいい日などはこのようなスキンシップがとれるほど親密になった(もちろん機嫌が悪いと触れさせてもらえないのがたまに傷である)

 

「ミーディアム、紅茶を持ってきてちょうだい」

「はいはい、一応聞くけどアイスとホットどっちにする?」

 

「勿論ホットなのだわ」

「残念、冷たい紅茶しかありません」

 

「ならいちいち聞かないでほしいのだわ」

 

もはや日課といってもよかった。朝・昼・晩のティータイム彼女は決まって紅茶を要求する。

そして自分はその要望に答えるため、彼女専用のティーセットに紅茶を用意する。といっても紅茶どころかお茶すらいれたことがない自分にお茶っ葉から淹れるなどという芸当ができるわけがない。

 

いつも通り冷蔵庫から「あれ」をとりだし真紅専用ティーポットに移し返作業を行う

 

「おまたせ」

「あら、はやかったわね今日の紅茶はなにかしら?」

 

「ミルクティーでよかった?」

「また市販品なの、たまには手作りをのみたいのだわ」

 

何だかんだ文句を言いつつも「おいしい」といってくれる彼女。その姿を見ているだけで心が和んでくる。

紅茶と真紅この組み合わせは反則でしかない。

 

なんというか、はっきり言えばただ紅茶をのんでいるだけなのにとても様になっている。その一つ一つの動作全てが優雅なのだ。大袈裟でもなんでもなく、「貴婦人」この言葉が似合すぎる。

 

しばしの間ティータイムを楽しむ真紅、そしてその姿ひたすら眺める人間というなんとも珍妙な構図が完成する。勿論真紅もその視線には気がついており「何を見ているのだわ?」とか「一緒にいただきましょう?」と初めのうちはきにかけていた。

 

しかし、最近はこのミーディアムはこういう変わったところがあるのね。といっている気がしないでもないくらい全くこちらを気にしなくなった。真紅としばらく生活を共にしわかったことが一つある。

 

彼女は、プライド高くとてもマナーに厳しい。しかし、かなりマイペースで契約者の意向を大切にする(勿論限度はある。それが証拠にネジを巻く前に履いてるか履いてないか確認したら、巻いたあとにひどい目に遭った)

 

「ちょっと、そろそろ時間なのだわ。だっこしてちょうだい」

 

もうそんな時間か。真紅が言う時間とは、「あれ」がそろそろ始まる時間なのだ。

真紅をお姫様だっこで抱え部屋を出ようとすると。猫パンチならぬ真紅の平手打ちが飛んでくる(勿論ダメージはない。)

 

わかってはいる。正しいだっこをわかってはいるが、どうしてもやらずにはいられない。

リビングにつきテレビを付けると丁度あの番組が始まっていた。

 

「くんく~ん!!」

 

突如上がった黄色い叫び声、それは「よ○さまー」のおばちゃんたちの叫び声とどこか同じものがかんじられた。

○のソナタ然り、くんくん探偵然り。いったい何が彼女達をここまで熱狂させるのであろう?試しに視聴したことはあるがその原因は理解不能である。

 

しかし、熱狂状態になった彼女は先程までのような貴婦人から一気に幼い子供へと早変わり。そのギャップがまた素晴らしい。

 

考えてもみてほしい、普段は冷静沈着全ての仕事を完璧に行う女性がふとしたときに見せる子供のような無邪気な一面、そんなものをふとした拍子に観てしまったら恐らくどんな人でさえそのギャップの可愛さに1撃でK.Oされてしまうのではないだろうか?

 

少なくとも自分は初回でやられてしまった。

 

猫にマタタビならぬ、真紅にくんくん。無我夢中で幼子のように夢中でテレビにかじりつく彼女。そんな、彼女をみているだけで正に至福の時間であると言えよう。この瞬間のために生きてきたといっても過言ではない。

 

しかし、幸せな時間というものは得てして永くは続かない。出社時間が来てしまった、名残惜しいがそそくさと出発準備を整え、職場へと向かう。真紅に留守のお願いをして、「いってらっしゃい」の返事をうけいざ出陣。

 

さてと、今日は帰ったら真紅と何を食べよう?そんなくだらない考えを浮かべつつ、地獄の満員電車へと乗り込む。

今日も今日とて長い一日がはじまった




真紅に限った話ではないが、何故金糸雀を除いたドールはあんなにもくんくん耐性×なのか?

キャラCDで薔薇水晶までくんくん狂と知ったときはビックリしましたね。

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