メグは出てきません
「ちょっとぉ、いつまで寝てるのよ。さっさと起きなさぁい!」
何時ものように彼女達の、いや、彼女の声が聞こえる。この透き通った印象的な声、今日の当番は「あの娘」であろう
「おはよう、水銀燈。」
「おはようじゃないわよぉ。さっさと起きてちょうだい、あの娘はもう窓から飛んでいっちゃったわよぉ」
眠けまなこを擦りつつリビングに向かうと、水銀燈が食事の用意をしているところであった。
「いつも悪いね水銀燈。あとは、自分が代わるからゆっくり休んでてよ」
「あ、マスター。おはようございます・・・」
ひょんな事から、3体の水銀燈と生活を共にすることになってしまった自分。はてさて、この経緯を何処から話せばよいのやら?取り敢えずは、何故このようなことになってしまったのか?
先ずは、彼女達との出会いから話していくのがよいのであろう。
あれは、一週間前の出来事である。家路を急ぐ途中、とある場所で一人の少女を発見した。
「君、名前は?どこから来たかわかるかい?」
「お父様、お父様・・・」
何を質問しても、出てくる言葉はお父様。背丈はどうみても5才児くらいなのだがその見た目は5才児のそれとはかけ離れていた。赤色の両眼に雪のように白い肌、漆黒のドレス、そして極めつけは今にも地面についてしまいそうな長い銀髪、どうみても日本人のそれとはかけ離れていた。
この辺に交番もなくどうしようかまよっていると、ふと何か服を引っ張られたような感覚が伝わってくる。
先程の少女が「行かないで」とでもいっているように、私の服を引っ張っている。さらに、よく少女を観察すると来ている服はボロボロで何日も何処をさまよっているようにもみえる。
おまけに、荷物と言えるものは少女の背丈ほどあるトランクしかなかった。
ここにいても、らちが明かないので一先ずは家に帰り保護することに決めた。
その内、保護者も見つかるであろう。そう考えたのだ。
そんなこんなで、少女と共に帰路に向かう途中。とある場所でトランクを発見する。
「ええ・・・」
中を確認すると、先程の少女と同じ格好をした少女が眠っているではないか!しかし、よく観察すると彼女の方が容姿的に少し幼く感じる。さて、どうしたものか?
2人目の少女との解析というまさかの事態に頭が拒絶反応を起こしていると、その少女は目覚めた。
「あら?丁度いいところに来たわね。あなた、私のミーディアムになる気はなぁい?」
「ミーディアム?」
「説明は後でしてあげるから、取り敢えずあなたの家まで連れていってちょうだい。もう屋外生活はつかれちゃったわぁ」
そういうと、再び眠りにつく少女。これは恐らくあれだろう、寝ているうちに家まで連れていけという意思表示なのだろう。仕方がないので、このトランクも一緒に抱え家路を目指す。
そして、漸く玄関先まで着いたとき再びあのトランクが目にはいる。
「もう、わけがわからないよ・・・」
もはや、中を確認するまでもなかった。どうせ、またこの少女が入っているのだろう。
今さらトランクが2つになろうが、3つになろうが関係なかった。問答無用でそのトランクも抱え込み合計3つのトランクと共に、我が家への帰宅。
そして、3体の水銀燈がご対面。
「わたしじゃなぁい♪」
「・・・」
「はぁ?なにこれ、ふざけてるの」
不満げな声をあげる者、興味津々にこの状況を楽しむもの、そしてそそくさ自分のズボンの裾を掴み不安そうな顔でこちらを見上げる者、三者三様の反応を示す水銀燈。姿はにているのに、ここまで性格に違いが出るのだから面白い。
「2期の頃の私ってこんな顔してたのねぇ」
「ちょっと、気安く触らないで頂戴」
「そんなに怒っちゃやぁよぉ♪」
会ってまだ数分も経っていないのに、むこうでは水銀燈と水銀燈が言い争いをしている。
いや、あれは言い争うというよりは、片方の水銀燈の文句を飄々とあしらいながら遊んでいるといった表現のほうが正しいのであろうか?
そんなこんなで突如として始まった3体の水銀燈との不思議な共同生活、はたして今後どのような展開が待ち受けているのか?
いや、むしろここから続編を展開できる気力があるのか?
請うご期待
漫画、アニメ(1、2期)、SS、アニメ3期それぞれで容姿も性格もかなり変わってしまう水銀燈。
党員にはどの水銀燈が一番人気があるのだろう?
因みに私はSS番のポンコツお姉さんキャラが大好きです