変態ブライアンがこうなった経緯は?と言う声がチラホラあるので書いてみました。
…短いです。
「で、
「…はい。」
目の前には仁王立ちで腕組みしたお姉様が、正座した私に説教していた。
昨晩、フラミーを使ってブライアンさんをボッシュートしたのがお姉様やお父様、というか城内の皆にバレており、こうして私は寝衣のまま床に正座してお説教されている。当然と言えば当然、かな。
「全く…もう少し穏やかに済ませることが出来なかったんですか?」
「面目次第もございません…。」
流石にお姉様の言われることも尤もだ。
あの時は夢の内容がデジャヴして、更に夜の謎のテンションによってあんなことをしてしまって、冷静になった今ではやり過ぎたと言う後悔で胸が一杯になっている。
「ほんとにもう…こんな事のために私達の護り神を使うなんて…!貴女の力なら、窓から投げるくらい出来たでしょうに…。」
え?怒るとこそこ?
私は、抵抗するも無駄と悟り、あの羽畜生に掴まれたまま運ばれていく。
とりあえずこれから幻惑のジャングルからローラントまで戻らなければならないので、今の間に休息を兼ねて睡眠をとっておくことにする。
そこで私は、あの運命の分岐点の日を夢に見て思い出すことになった。
私の目の前には、青々と何処までも広がる草原。
遠く霞んでチラホラ見える風車。
大地の裂け目を抜けて、俺が目指すのは草原の王国フォルセナに辿り着いた。
かの国にいる英雄王、そして私が強くなるための大いなる存在を探して。
「ふむ、お主の向かうべき所、とな?」
私は目の前にいる初老の男に自身の道を問う。
あの後、私が後に慕う事になるリリィ様と別れて、後ろ髪引かれながら質屋で指輪を売り(少々みすぼらしい見た目の私が、高級な指輪を持っていたことで、かなり疑わしげに見られたが)、パロから出るジャドへの定期船に乗り込んだ。そして洞窟を抜けた先の聖都ウェンデルで、私は光の司祭様に助言を頂いた。
遍く人々の悩みを聞き、その行く先を示すという彼は、私の顔を見るなり、そのフサフサに蓄えた顎髭を撫でながら、眉間にしわを寄せて悩み出した。
「お主、中々面白い気を感じるのう。」
「面白い、だと?」
当時の私は9歳。未だ未熟者だけに、口の利き方という物がなっていなかった。
「人を見るなり面白いと……?随分と無礼なんだな。」
「いや、面白い、と言うのは些か語弊があったな。言い換えるなら、奇妙な運命…と言ったところか。」
「奇妙…?」
「うむ。」
確かに、アルテナの生まれで魔力を持つ両親から生まれたにも関わらず、魔法が使えないというのも確かに奇妙なものだが…。
「お主の運命…それは大きく2つ見えておる。」
「…2つ?」
「そうじゃ。お主の行く先。お主が決める道。いわば分かれ道。」
「俺がどっちを選ぶかで、運命が大きく変わる、とでも?」
「聡いのう。伊達にアルテナの出ではないか。」
私はまだ、この地点でアルテナ出身とは名乗ってはいない。にも拘わらず、この御老人は見事に言い当てた。やはり、光の司祭は伊達ではない。
「続けよう。まず1つ。アルテナから遙か西。ひっそりと浮かぶ孤島に、広大に広がる『ガラスの砂漠』と呼ばれる場所がある。その先にお主の人生を決めうる何かが…見える。」
「何か…?」
「うむ…明確には解らん。じゃが黒いもやが掛かっておる。ワシの勘じゃが…邪悪な何かを感じる。」
「邪悪な…。」
「もう一つはここより北西。自由都市マイア、黄金街道、大地の裂け目を抜けた先…草原の王国フォルセナ。そこにもう一つの人生を決める者が感じられる。」
「フォルセナか…。」
確かフォルセナは王国直属の騎士団が結成されるほど剣術が盛んな王国だ。魔法王国出身の私が、そこへ向かう意味は感じられないのだが。
だが、ガラスの砂漠の先にある邪悪な何か、それにむざむざ向かうと言うのも躊躇われる。
「確か、ガラスの砂漠は…世界大戦の終息の地…だったな?」
「うむ。竜帝が黄金の騎士と相打ちになった場所でもある。」
「黄金の騎士…か。黄金の騎士の出身も、確かフォルセナだったか?」
「そうじゃ。そして英雄王リチャードの親友でもあるな。」
フォルセナという場所が、私にとってこの上なく運命の支点になっているようだった。
魔法王国出身の私でも、そのフォルセナという地がどのようなものが、そしてどのように変わってくるのか、それが知りたくて興味が湧いてくる。
「…解った。俺が向かう先は決まった。」
「ふむ、それがどちらであっても引き留めはせん。だが後悔だけはするでないぞ?」
「自分で決めたことだ。後悔も文句もない。…やはり、アイツの言ったとおり、アンタに会いに来て正解だったよ、光の司祭。」
「役に立てたのならば何よりじゃよ。…それよりもお主、よもや丸腰で洞窟を抜けて来おったのか?」
「…それがどうかしたのか?」
魔法以外の戦闘方法を学ばなかった私は、戦う術を持ち得ていなかった。アルテナから出て、お金もなかった私は、唯只管にモンスターに見つからないように進んで、その果てに辿り着いたのだから。
「流石に丸腰はマズかろう。まずは装備を調えるのじゃ。槍にせよ剣にせよ、何らかの武器があるのと無いのとでは、安全性がまるで違うからのぅ。」
「…それもそうだな。」
「それと!じゃ。
装備は買っただけでは効果が無い。ちゃんと装備するのじゃぞ!」
「当たり前だろう。何を言っているんだ爺さん、ボケたのか?」
そう言って私は今度こそ踵を返して大聖堂を後にする。
申し訳ありません、光の司祭殿。幼き日の私の未熟による無礼、どうかお許しを。
ただ、その言葉の意図が、未だにわかりかねないのも事実なのですが。
そして、最初に戻る。
「はぁっ!!」
ウェンデルで買ったアイアンソードで、目の前を暢気に跳ねていたラビを一刀両断する。
この世界において、一番狩りやすいモンスターとして有名な奴らで、私は道中剣の練習を兼ねて振るっていた。
最初こそはその重量に振り回されがちで思わぬ反撃を受けていたが、慣れというものは我ながら恐ろしいもので、再びジャドに着く頃には中々様になっていたように思う。
「やはり中々難しいものだな、剣というのも。魔法とは別の意味で。」
そこまで力の鍛練を積んでいなかった私は、日課に筋トレを組み込んでおく。最初こそは筋肉痛にさいなんでいたが、幼い時期というのが幸いしてか、日に日に、徐々にその筋力は増えていったように感じた。
そして、自分でもそれなりに強くなれたと自身が付いた頃に、私はフォルセナへと足を踏み入れた。