「勝負だ紅蓮の騎士!!」
「…またか、デュラン。」
再び絡んでくるのは準騎士のデュラン。
初戦で見事下して以降、毎日のように模擬戦を挑んでくる。まぁ彼の気持ちが折れないのは流石と言うところだが。
「これから任務の受理だろう?さすがに任務の前に体力消費は、上司として頂けないな。」
「ぐ、ぐぬぬ…。」
デュランの配属は私の下となった。
流石に年若い騎士に何人も部下を着かせることはなかったため、実質私とデュラン、2人の部隊。
それだけに小回りが利くので、任務の内容は多岐にわたる。彼と2人で熟した任務はそこそこの数あるが、それでも任務の合間に模擬戦を仕掛けてくるのはどうかと思う。流石に報告書作成をすっぽかして挑んできたときは、
ともあれ、
やはりしっかりと論せば解ってくれる彼の素直さに感心しつつ、私達は玉座の間へと足を運んだ。
「うむ、良く来たな、ブライアン、デュラン。」
「「ハッ!」」
目の前に居る英雄王リチャード陛下に私達は敬服する。
出会ってから9年。顔に貫禄が出て来ており、益々威厳が溢れている。
「其方達を呼んだのは他でもない。とある所にそれぞれ親書を言付けて欲しいのだ。」
「親書を……いえ、それぞれ、と言うことは、我々が単独任務に着けと?」
「そうだ。マナストーンの保護においても、各国の連携は不可欠。先ずはその二国との連携を組もうと考えた次第。そこで、ブライアンはアルテナに行って貰う。」
「…ッ!アルテナに…?」
まさか私が任務でアルテナに行かされるとは…。
いや、可能性はあると覚悟はしていたはずだ。今更…私が及び腰になるわけにもいかない。
「…其方が彼の国で受けていた処遇は理解している。だが今の其方は立派な騎士。それを笑うものがいるのならば、それはフォルセナを笑うものだと伝えてやれ。…胸を張るのだブライアン。其方のこの9年、誰よりも自身に厳しく鍛えていたのは、私が一番知っている。それを笑うものは…誰もいない。」
「ハッ!…アルテナへの親書、紅蓮の騎士ブライアン、この身を以て届けます。」
「うむ。さて、準騎士のデュラン…其方はの向かう先だが…。其方にはローラントに行って貰う。」
「風の国に…?畏まりました。」
「うむ。互いに厳しい環境への任務となる。が、共に騎士、準騎士の中でも抜きん出た実力の其方達ならば、必ず成し遂げられると信じている。武運を祈るぞ。」
「「ハッ!」」
アルテナか。
このような形で戻ることになろうとは、世の中何が起こるかわからないな。
だが1つ、気掛かりがある。
「デュラン…お前の初めての単独任務だが…」
「お、おう?」
「ローラントにリリィという少女…年齢は…恐らく12、3だろう。もののついで、と言っては何だが、様子を見てきてはくれないか?」
「リリィ?」
こんな事を他人に…部下に頼むのもどうだというものだが、知っておけば少しは胸のつかえが取れると言うものだ。
「うむ、特徴としては金髪…としか解らん。…可能であれば、だが。」
「…ほ~~ん。」
頼む私に、何やら含みのある笑みを浮かべるデュラン。これはよからぬ事を考えている顔だな。
「若手最強と名高い紅蓮の騎士様が、よもや色恋沙汰とは…。」
「む、色恋沙汰などではない。…ただ。」
私が少しシリアスな声になっていたのを察したのか、デュランはニヤけ面を引っ込めた。
「私が騎士である所以…それがはかつて私が絶望の最中に陥っていたとき、幼き彼女が救いだしてくれたからなんだ。…私の命は、彼女に救われた。」
彼女がいなければ、出会わなければ、私は恐らく絶望の果てに沈んでいたかも知れない。今の私が真っ当で居られるのも、全ては彼女によるものが大きい。
「故に私は強くなろうとした。彼女のために…。」
「…初めてだな。アンタが強くなろうとした理由聞いたの。」
「む、そうだったか?」
「…戦う理由ねぇ…。俺はただ、父さんみたいに強くなりてぇって理由で剣を振るい続けたからなぁ。騎士になったのも、父さんを目指してたってのもあったからさ。」
確かに、デュランの強さは本物で、将来聞き及ぶロキの強さに迫るほどになるだろう。
しかし、このままでは彼に追い付く事も、追い抜くことも出来ない。
ロキとデュランには、決定的に大きな差があるのだ。
それは力や経験ではない別の差。
それに自分で気付かない限り、彼はロキに並べず、そして超えられない。
「まぁ強くなる為に1人で任務を熟して修行を積むのも良いだろう。大地の裂け目を抜けるまでは道中一緒だ。任務、抜からないようにな。」
「はっ!上等だ。伊達や酔狂でフォルセナの騎士やってねぇよ。」
相変わらずの減らず口だ。だが、それでこそ彼であるが所以であり、頼もしい。
「ふっ……頼りにしてるぞ。」
「…けっ。」
照れ臭そうにそっぽを向くデュラン。
しかし、
この任務が私達を苦しめるものだったとは、今の2人に知る余地もなかった。
おっと。そうだ。
「だがデュラン、1つ言っておく。」
「???」
「もし貴様がリリィ様にになんらかの破廉恥な行為に及んだとしたら…私は貴様をボン・ジュール殿の大砲に詰めて、300キロの爆薬と共に射出する!マナの女神とリチャード陛下に誓って貴様を八つ裂きにするつもりだ!わかったな!?」
「お、おう。」
釘はしっかり刺しておかなければ。