風の王国第二王女の苦労記   作:ロシアよ永遠に

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リメイクプレイしてたら妄想が浮かんできた。
誰得


ストーカー編
『私の騎士は変態さん』


私…リリィは、極めて平凡だった。

 

私には1つ年上の姉が居る。

 

姉は、私と比較して聡明で、そして気高く、更には美しい。

 

同性の私からしてみても、そう感じるほどに。

 

武においても、若干16歳にして、王国を守るアマゾネス隊隊長を務めるほどに槍術に長けている。

 

まさに天は姉にいくつもの才を与えたと言っても過言ではないだろう。

 

対して私は、

 

勉学は姉に及ばず、

 

姉のように誇り高くもなく、

 

姉には似ているけれど、そこまで美しいものでもなく、

 

槍術の模擬戦も負け越し…。

 

唯一誇れるところがあるとすれば、高くもないが魔法適性があったことくらい。

 

こんな私を姉は可愛がってくれた。

 

母の命と引き換えに生まれた弟も、私が育てねばと言わんばかりに姉は、時には母のように、時には姉のように、優しくも厳しく接していた。

 

そんな姉を、私は誇りに思っていたし、しかし同時に私の双肩にのし掛かってきていた。

 

そして何処かで思ってしまう。

 

皆は口にはしないが、私は姉と比べられて落胆されているのではないか、と。

 

勿論そんなことはないだろう。

 

しかし、私は姉と比べて余りにも平凡過ぎた。

 

そして皆から見られる度に感じてしまう。

 

「どうしてお姉様の方は出来るのに…」

 

「同じ血筋なのに…」

 

そう真しやかに囁かれているのではないかと。

 

実際聞いたわけでは無いが、そう疑ってしまっている私が居た。

 

そしてその重しは、弟が成長してきて更に顕著に感じていた。

 

弟は姉と同じく聡明だった。

 

私が弟と同じ年齢の時と比べても、その頭脳は弟のほうが優れていた。

 

勿論、弟はそれに驕ることもなく、姉と同じく私も慕ってくれていた。

 

だが、

 

私の胸の締め付けは、日に日に増していくだけだった…。

 

私には何が出来るのだろう?

 

何を残せるだろう?

 

「無論!私にとってマナの女神様さえ凌駕する、聖女の如きリリィ様がこの世におわしたと言う伝説です!」

 

そんな悩みを別な意味で吹き飛ばすのは、目の前に居る赤いローブを纏った茶髪の男性…。

 

「私はリリィ様の狗!御主人様を称え、そして傅くのが天命!故に崇拝は、正しく息をするかのような行為に等しいのです!さぁ、リリィ様!この卑しい狗めに、何卒!何卒、御命令下さい!」

 

王国の往来の真っ只中で、自身を家畜認定する彼は、やっぱり頭をやられていたんじゃないかと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

『紅蓮×私 しぃくれっと・さぁびす』

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石はリリィ様…お食事を召し上がるお姿も神々しい…!」

 

「嗚呼…私はリリィ様が口に運ばれるコカトリスの肉になりたい…!」

 

「あ…あぁ…ッ!リリィ様…!」

 

「食事中なので…静かにして頂きたいのですけど?」

 

あぁやこうやと食事中に私を褒めちぎる彼に、私は鋭い言葉の釘を刺しておく。何か痙攣してるし、正直気持ち悪い。

 

「ほっほ…リリィも中々…良い風の御仁を見つけてきたものよな。親として、鼻が高いぞ?」

 

「いや、どう考えても変態のそれでしょう!?」

 

暢気に、見えない目ながらも流暢に食事を進めるのは、父であるジョスターだ。

その昔に受けた傷によってその視力を失っておられるものの、それを補って余りある世を見渡す程の勘の鋭さを持っておられる。

 

「ジョスター王に褒めて頂き恐悦至極…つきましてはリリィ様と添い遂げさせて頂きたく…!」

 

「何を勝手に話を進めて…!」

 

「まぁ!リリィと結婚されるんですか?式はいつにしましょうか?」

 

「お姉様!?鵜呑みにしないで!?」

 

お姉様であるリースが、いつもの凜々しい表情から一変。

ニコニコと思いっきり首を突っ込んでくる。

 

「では兄上とお呼びする練習をしておかねばなりませんね!」

 

「エリオットォォォ!?」

 

弟のエリオットまでこんな始末…

もうやだ

私の家族が色々天然すぎる件について

 

「そ、そもそも!私はまだ15ですよ!?まだその…け、結婚なんて…。」

 

結婚

確かにそれは将来のヴィジョンとしては朧気ながらもある。

愛しい男性と添い遂げ、子を育み、共に年老いていく。

そんな未来に思いを馳せるのは、何らおかしなものでは無いだろう。

だが、今は自身を未熟と理解しているからこそ、まだ結婚というものは早いと考えるのであって…。

 

「ご安心下さい、リリィ様。」

 

傅いて食席に座る私の手を取り、その整った顔立ちで柔らかな笑みを浮かべて見上げてくる。流れるような腰まで届く三つ編みの茶髪と相まって、一瞬ドキリとさせられる物があった。

 

「15という齢は、十分私の守備範囲ですので。」

 

その甘酸っぱい胸の高まりは、やはり一瞬で冷めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ…と!」

 

警備(と変態)の目を盗んで3メートルはあろうかという金網を乗り越え、その先にある王国の聖域とも言われる天の頂へと駆ける。服装は、普段のドレスとは違い、お姉様のアマゾネスのそれに酷似した服へと着替えている。

切り立った崖の山道を、慣れた足取りでブーツの靴底を鳴らしつつ登っていく。

この辺りは昔から良く忍び込んでいたので、最早私の庭に等しい。モンスターもいるけど、彼らは縄張りに入らない限りは襲ってこないので、知り尽くした安全ルートを、ひたすら歩いて行く。

険しい道なので、良い下半身の鍛錬にもなるし。

そうして歩くこと10分ほど。

一際高く切り立った岩場。

そこが『私達』の秘密基地。

たなびく風に髪を抑えながら岩場に立てば、眼下に王城を一望出来る。

台地の天板…例えるならプリンのカラメルのポジションに聳える城壁に囲まれた城。

天然の立地を利用したそれは、世界で真しやかに難攻不落の名を欲しいがままにしている。

そして風の精霊ジンと、同じく風のマナストーン。

その恩恵でこの国は外敵から守られていた。

 

「キュクル?」

 

「えぇ、やはりここから見るローラント城の美しさは、絶景ですねフラミー。」

 

いつの間にか隣に居るのは、『翼あるものの父』と言われている女の子。

白く巨大な体躯に二対の翼。一見すると、竜か何かを彷彿させるその威圧される見た目だが、その外見とは裏腹に、少し臆病なだけの子。

数年前から城の者の目を盗んで会いに来ているので、今では数少ない友人の一人となっていたりする。

かく言う彼女も、友人は殆どいないらしく、一度だけ背に乗せてその友人に会わせて貰った相手は、巨大な亀か何かを思わせる外見の生き物だった。…そもそも、亀なのにシュノーケルを付けていたり、背中に旗が立っていたり、ちょっと変わった見た目だったけど。

 

「…で、ですよ?あの人は着替えてるのに私の部屋に入ってきて、『リリィ様にはやはりいつもの白が似合いますが、時には大人の黒というのも背伸びした風が感じられて、私的には惹かれます!』って、タンスを物色してたんですよ!?」

 

「キュ~。」

 

気が付けば、フラミーに対して愚痴っていた。

以前に『あの変態』が部屋に不法侵入したときのこと。思い出しただけでも腹立たしいので、その怒りを吐き出していた。

何せその時、タンスの奥に隠しておいた、『ちょっと背伸びパンツ』を広げてまじまじと見ていたのだから、殴ってぶっ飛ばした私は悪くない、はず。

フラミーはイマイチ理解できていないようだったが、それでも彼女が話を聞いてくれる(と私は思っている)だけで、どことなく気が楽になっていく。

 

「全く…ああ言う変態行為がなかったら…少しは……。」

 

「キュ?」

 

そもそも何で私なのか?

私なんかよりもお姉様の方が、世の殿方の目に止まるだろう。なのに何故妹の私なのかが理解できなかった。

それでも一途に思ってくれるのは確かに嬉しいものだが、その変態行為が、嬉しさ余って評価の底を割っていってることに気付かないのか?

 

「…と、少し長く話し込んでしまいましたね。そろそろ戻らないと、お姉様やじいに怒られてしまいます。」

 

気付けば西日が差し込む時間帯になってしまっていた。余程鬱憤が溜まっていたのだろう。手頃な岩場に座り込んでいたため、スッと立ち上がると、お尻に付いた砂埃をポンポンと払う。

もう帰るのか?と言わんばかりに首を傾げるフラミーに苦笑いが浮かんでしまう。

 

「大丈夫ですよ。また時間が空けば会いに来ますから。」

 

寂しげなフラミーの頬をそっと撫でれば、まるで猫のように目を細めてすり寄せてくる。

あぁ…可愛い…!

お持ち帰りしたい…!

したいけど、この子はローラントでは神聖な存在だからそれはできない。連れて帰ろうものなら、じいの入れ歯が飛び、アルマが腰を抜かしてしまうだろう。

何より、フラミーにとっては狭い城よりも、自由な大空の方が良いだろう。

ひとしきり撫で終えて、名残惜しそうにするフラミーから手を離して一歩下がる。

 

「それじゃ…フラミー、また来ますね。」

 

振り返り、下山し始めようと一歩踏み出したとき、下山道にそれは居た。

鈍く夕日を反射するガシャリと重厚な鎧。

その右手には鋭く輝く両刃の騎士剣。

そして頭部を覆う兜。しかしその奥にあるはずの瞳はなく、空洞だ。

 

アーマーナイト

 

このローラント山岳地帯全域に出没するモンスターだ。

天かける道や風の回廊にも生息しているこのモンスター…。しかし、目の前のアーマーナイトはその力量(レベル)はその地域のそれを凌駕しているのがひしひしとわかる。伊達にこの天の頂の厳しい地形とモンスターに揉まれた訳ではないらしい。

恐らくは…今の私では太刀打ち出来ないほど。

しかし、どちらにせよ、今のこの状況を打開するには戦わなければならないのはわかる。

背中に携えたトライデントを構え、相手を睨み付ける。

せめてもの威嚇。

だが、視線を奴は逸らした。

まるで眼を切っても問題ない、歯牙にもかけない相手だと言わんばかりに。

 

「この…舐めるな…!」

 

伊達にお姉様に鍛えられては居ない。

山道で鍛えられた脚力を武器に、高速で私は肉薄する。その勢いで三つ叉の槍をアーマーナイトの兜目掛けて思い切り突き出す。いくら力量差があっても、それ程の重厚な鎧を纏っていては対応できないだろう。

そう思っていた時期が、私にもありました。

 

あろうことか、アーマーナイトは避けるどころか、逆に間合いを詰めてきた。

それにより、一番の威力を発揮するタイミングを外されてしまう。

挙げ句、その重厚な鎧。そして兜によって、軽量な私は物の見事に弾き返され、図らずも間合いを離されてしまう。

 

「くっ…!」

 

思わぬ反撃に思わず歯噛みする。追い打ちを警戒し槍を構えるが、相手は微動だにせず、それどころか未だに視線を逸らして通せん坊しているではないか。

まるで、掛かってこい。と言わんばかりに。

それが益々、私の心を煮えたぎらせる。

 

「ハァァァッ!!」

 

突き

 

払い

 

突き上げ

 

虚を突いての石突き

 

考え得る技を使い仕掛けるも、そのどれもを何の苦もなく捌かれていく。

そうする内に気付いてしまう。

遊ばれている、と。

いくら力量差があれど、ここまで楽々と捌かれて、なおかつこちらに決定だと言える攻撃をしてこないのだから、そう感じるのが自然と言うものだ。

 

「こうなったら…!」

 

焦りと憤りが、私を短慮にしていた。

詰めていた間合いを一旦取り、しっかりと両足で踏ん張る。

残された体力を以て、私の放てる最高の一撃を放つのだ。

 

「行きます!」

 

その大きな声と共に放たれた気迫。それはアーマーナイトの意識を、漸くこちらに向けさせるまでに至る。

後にも先にも、この一撃が最後。

これで倒しきれなかったら、最早後がない。

だったら込められる全てを込めて、そしてその上で討ち果たすのみ。

 

「ハァァァッ!!」

 

頭上で、槍を回す。

まだ遅い。

まだ早く、

もっと早く、

もっと力強く、

もっと高速に!

空気を裂き、その中央に集約される風は、やがて私の周囲に渦巻き、そしてその大きさは私を包み込める程の巨大な竜巻と化す。

 

「これで…!」

 

槍を振り抜けば、その巨大な竜巻はアーマーナイトへ、まるで意思を持つかのように突っ込んでいく。

槍を防がれるなら、技巧による防御が意味を成さない攻撃を仕掛ける。

それが私の出した答えだ。

そしてそれは、上手く功を奏する。

アーマーナイトは吹き荒れる暴風が厄介に感じたのか、剣を盾に使い、少しでも風を抑えようと守りに入ったのだ。

やれる!

今、渾身の力を込めて…

槍を、矢を射るように引き絞る。

 

「旋風槍!!」

 

お姉様に教わった、所謂必殺技。

巻き起こした竜巻で相手の動きを拘束し…仕上げに、

 

「やぁぁぁっ!!」

 

渾身の一突きで相手を仕留める!

守りに入ったことで、アーマーナイトの頭部は剣に隠れて、こちらの動きが死角になっている。

これなら!

勝ちを確信した私は、そのまま流れるように槍を突き出してアーマーナイトに突進していった。

 

 

 

 

そう思った。

 

踏み出した瞬間、

私の繰り出した竜巻はことごとく消え去った。

そうそう自然に消えるものでもないはず。

だとしたら、何が原因で…?

そう考えたときには遅かった。

気付けば、青々とした空が視界いっぱいに広がり、身体が宙を舞っていたのだから。

 

「え……?」

 

何とも気の抜けた声だった。

身体に力が入らない。

手の感覚がなく、持っていたはずの槍も、手放しているのか否かも見当が付かない。

ただ、

ガシャリと鎧の軋む音だけは、嫌に鮮明に聞こえた。

 

『旋風剣』

 

周囲の風がアーマーナイトの剣に集約されていく。

恐らくは私の旋風槍の竜巻も、旋風剣の風に打ち消されたんだろう。

吹き飛ばされて、ゆっくりと感じられる落下の感覚に身を預けながら、私はアーマーナイトの技を軽く分析する。

視界の隅にアーマーナイトが映る。

その携えた剣に、風が渦巻いているのが見て取れる。

そして振りかぶる。

アレが振るわれれば、数多の剣閃が繰り出され、私の命を絶ちきってくるだろう。

口を酸っぱくして、天の頂に至る道を征くことはならないという言いつけを破った罰か。

 

お姉様…

 

エリオット…

 

お父様…

 

リリィは…王国不孝者(?)です…

 

諦めにも似た思いを胸に、そっと目を閉じる。

 

…こんなことになるなら…もう少しあの変態さんに構ってあげたら良かったなぁ…。

 

そして来るであろう斬撃と、それによる激痛に身構え、覚悟する。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

自身を包む、まるで羽毛のようなフワリとした感覚。

温かく、安心する何か。

もはや開くのも辛い瞼を開く。

その目先に居たのは…

 

「遅くなり申し訳ありません、リリィ様。貴女様の狗、紅蓮の騎士ブライアン…馳せ参じました。」

 

夕日に映える茶髪と紅蓮のマントを靡かせて、あの変態さんは居たのだ。

しかも私は横抱きにされ、所謂お姫様抱っこをされていたことに、ややあって気付く。

 

「ブライ…アン…さん…?」

 

「はい、我が姫よ。」

 

そう私に語りかける彼の目は、何処までも優しく、そして温かい。

諦めていた私の心を、暖炉の火のように温かく包み込んでくる。

 

「少々お待ち下さい。不届き者を、私が始末してきます故に。」

 

そっと私を岩場にもたれさせるように優しく座らせる。切り傷が正直痛み、受けたダメージで意識が朦朧とするが、ブライアンさんのお陰で幾何か気持ち的に楽になっていく。

 

「すぐに、終わらせます。」

 

腰に携えた騎士剣を抜き取った彼を見たアーマーナイトは、舐めていたその構えを解き、確りと剣をブライアンさんに突きつける。

それ程までに、彼は強いのだ。

 

「すぐに終わらせると言った。既に私の堪忍袋の緒は切れている。許さんぞ。」

 

殺気と共に構えた右手には蒼の魔方陣が展開される。

その魔方陣から発せられた光の奔流は、まるでアーマーナイトに纏わり付くように迸る。

 

「動けまい。」

 

魔力による拘束。

そして…

 

「我が姫君に剣を向けた罪、刻むが良い!」

 

魔方陣越しに騎士剣を振るい、魔方陣から魔力の斬撃がアーマーナイトを刻んでいく。

 

『魔方陣斬』

 

なすすべも無い、唯一方的な蹂躙。

 

「今日の私は…黄金の騎士ロキすら凌駕する存在だ!」

 

そして、トドメと言わんばかりに、魔方陣その物を2つに両断。

それに伴い、アーマーナイトも魔方陣と同じ剣閃で真っ二つに両断され、無に帰した。

 

凄い…。

 

いつもの変態さ加減からは想像できないほどに強く、そして洗練された剣戟。

そんな人に、私は守られていたんだ…。

 

「リリィ様。お気を確かに。今、城へと戻ります故。」

 

再び私を横抱きにして、彼は私を気遣って揺らさないようにゆっくりと山道を下っていく。

アーマーナイトが討ち果たされたことで…

私は緊張の糸が切れたのか、彼に抱かれて揺られる心地よさに身を委ねて意識を手放した。




ちなみにブライアンと言うのは、紅蓮の魔導師の本名だそうです。

クラスは必殺技の通りロード
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