ギャグやイチャイチャで1話完結型がストーカー編。
基本的にはシリアスで連載型が紅蓮の騎士誕生編になります。
「へっくち!」
頭が痛い
身体がだるい
寒気がする
ボーッとする
私は今、絶賛風邪を引いていた。
そもそも何故風邪をひいたのか。
それは昨日のお風呂上がりのこと
『さぁ!リリィ様!その濡れた肢体を、私が余すところなく、隅々まで、徹底的に拭いて差し上げます!』
『身体くらい自分で拭けます!』
『ふふふ…リリィ様が逃げ惑うお姿…それもまた眼福…!』
『ひぃ!?』
そんな感じで、長時間ろくに身体を乾かさないままに彼から(全裸で)逃げ回ったことで、ものの見事に風邪を引いてしまったのだ。大体ブライアンさんのせい。
「おいたわしやリリィ様…私めが徹底的に看病して差し上げます。風邪の奴…ゲームオーバーだ、ド外道…!」
「誰のせいでこうなったと…ケホッケホッ…!」
私が横たわるベッドの脇には、
何で彼が私の部屋に普通にいるのかはさて置き、正直看病してくれる人が居てくれるのは嬉しいものだ。
「リリィ様…今、タオルを冷たくしますので。」
そして絶妙なタイミングでタオルを濡らし直して額に乗せてくれる。ヒンヤリとした感覚が何とも心地よく、辛い身体に安寧を与えてくれる。
「…ブライアンさん…。」
「何でしょうか?リリィ様。何なりと…。」
「その…看病して下さるのは有り難いですけど……移りますよ…?」
流石に私の看病をしてくれて、今度は彼が風邪を引きました、なんて後味が悪すぎるし申し訳ない。
「問題ありませんリリィ様。」
そんな私の心配を払拭するかのように、彼は優しい笑みを浮かべる。
この笑顔は…正直私の心臓に悪い。ドキリとさせられる。
「リリィ様から頂けるのであれば、風邪の菌だろうと悦んで受け取ります。」
…ここは、キュンとする所なのかな?
「私は、リリィ様が壮健で居て下さるなら、我が身は粉になろうとも問題ありません。ですので…。」
「そんなこと、言わないで下さい…!」
彼の自分の身を省みない発言に、私は身体のだるさや諸々を忘れて勢いよく起き上がる。正直なところ、辛い。でも今の彼の発言は、それをはね除けるほどに私を突き動かした。
「貴方が傷ついてまで…喪ってまで、私はのうのうと生きたいと思いません…!ブライアンさんがこうして一緒にいてくれて…それで私は良いんです…!だから…私さえよければ、自分はどうなっても良いなんて…絶対…言わないで下さい…!」
「リリィ様…。」
「貴方が居なくなっては…私は…。」
あれ…?
どうしたんだろう…?
普段口にしないようなことが次々と…。
これは…風邪を引いて、意識が朦朧として、言葉の判断が付かないのだろう。
うん、きっとそうだ。
そしてこの涙は…目の汗なんだ。
「申し訳ありません、リリィ様。」
そっと、私の左の下瞼に何かが沿い、溢れる涙を拭い去る。
それが、ブライアンさんの指であることに気付いたのは、右の下瞼も拭おうとしたときだった。
「少々無神経でした。リリィ様を大切に思う余り、ついあのような発言を…。」
「本当ですよ。…重罰に値します。」
「重罰…謹んでお受けいたします。」
そう、重罰。
自分の身を省みない、望まない自己犠牲を、私は罰する。
「じゃあ…ギュッて…してください…。」
「…は?」
「ギュッて…抱き締めて下さい…。それが私からの罰、です。」
え?
私、何を言って…?
いやいやいやいや…こんなのおかしいよ。
風邪のせいで変な方向にはっちゃけてて…
べ、別に本心じゃないし…!
「これは…重大な罰ですね。」
「…私を泣かせた罪は重いんですっ。…それよりも。」
「わかりました。…では、失礼いたします。」
そして、私を覆う男性特有の太い腕。
その力強さとは裏腹に、優しく、壊れ物を扱うかのようにふんわりと、私の身体を包み込んでくれる。
「これで、よろしいでしょうか?」
「…はい。」
耳元で囁かれるあの声に、私の身体は風邪による熱と共に蕩けそうになる。
脈が迸り、
心臓がその鼓動を壮大に打ち鳴らす。
でもそれが…何処か心地よく、私に安らぎを与えてくれる。
その温もりをもっと求めて、彼の背に手を回して、私はより身体を密着させる。
「…リリィ様?」
「汗、臭くないですか?」
「いえ…リリィ様の香りの総ては、私にとって癒やしでございます。それが例え汗であろうとも。」
「…ばか。」
風邪って、こんなに大胆にさせるものなのかな?
そんな疑問がいつまでも渦巻くのを最後に、私の記憶はここでぷっつりと途切れていた。
「ん………。」
窓の外からの小鳥のさえずりで目を覚ます。
ゆっくりと、重い瞼を開きながら身体を起き上がらせる。
そうだ…私は風邪を引いていたんだ。
でも、昨日のような寒気やだるさ、その他諸々は感じられなくなっており、むしろ身体か軽い。
「…治ってる?」
どうやら風邪は完治したようで、その喜びに打ち震えようとした…が、
「へ…?」
はらりと、捲れたシーツから覗く私の身体は、一糸纏わぬ、所謂裸…。寝衣などなく、唯々私は生まれたままの姿で寝ていたのだ。
「な、なんで…裸…?」
「おはようございます、リリィ様。」
見上げれば、ブライアンさんがお粥の入っているであろう土鍋を持って立っていた。
「あ、え…その…へ?」
「お疲れではございませんか?夕べは激しく私を(抱き締めて欲しいと)求められていましたので…。」
「あ…あわわ……!」
こ、これって…もしかして…いや!もしかしなくても…!
記憶が無いけど、あの後私は…私は…!
「リリィ様?如何なさないましたか?」
「うぅ……もうお嫁に行けない……。」
羞恥の余り顔を真っ赤に染めた私は、全裸のままシーツを被って引きこもった。
羞恥と、ブライアンさんとどんな顔で話せば良いのかと悩みながら。
特にエッチぃことはしてません(断言)