風の王国第二王女の苦労記   作:ロシアよ永遠に

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少女は慟哭する。
少女は憤慨する。
奴の容赦ない攻撃(御奉仕)に。
ならばこそ、彼女は誓う。
「やられたらやりかえす。倍返しです!」

劇場版『逆襲のリリィ Lily's Counter Attack』

始まりません。



『御奉仕されるのも悪くない』

今日の日課を終えて、私は宛がわれた部屋に戻る。

今日はエリオット王子の鍛練にリリィ様への御奉仕、リース王女の稽古相手にリリィ様への御奉仕、アマゾネス隊の備品チェックにリリィ様への御奉仕…。

私がローラントに来て早6ヶ月…。もはや慣れたものだ。最初こそ余裕がなく、少し苦戦していたが、今は猶予を持って終えられるほどになっている。

ともあれ、流石に働き詰めだったようで、先程ジョスター王より明日一日の休暇を与えられた。…確かに最後に一日休んだのは何週間前だったか…。心なしか身体の節々が重い気がする。

ともあれ、明日一日に余暇が出来てしまったので、どうしたものかと悩みながら部屋の扉を開く。

明日のことは明日考えよう。

そう決意しながら私は部屋へと…

 

「お、お帰りなさいませ、ご主人様。」

 

天使がいた。

ロングスカートタイプのエプロンドレスに、頭に純白のヘッドドレス。金糸のような滑らかな髪が黒のエプロンドレスに恐ろしいくらいに似合っていた。

この世の物とは思えないほどに。

ここは、天国か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遡り数時間前】

 

私、リリィは考えていた。

ブライアンさんのストーキングという名の御奉仕に、どう仕返しをしようかと。

今日も鍛練を終えて水浴びした私に、「新しいお召し物です。」と下着やら何やら一式を、水浴び場に持ってきていた。

しかも全裸の私に。

これで何度裸を見られたのか解らない。

もう数えるのも嫌になってくるくらい。

 

「ぐぬぬ…!どうしたらあの人をギャフンと言わせられるのか…!」

 

幾度となく裸を見られた私の中で、リベンジの炎が燃えたぎっていた。

 

『聖剣伝説3 TRIALS of MANA 逆襲のリリィ』

始まります。

 

 

 

 

 

とりあえず、お姉様に相談してみた。

 

「え?ブライアンさんの奉仕のお返しがしたい?」

 

…若干意図が違うような気がしなくもないけど、大体合ってるから良いかな。

 

「うーん、そうね。……じゃあ逆にリリィがブライアンさんの御奉仕をしてあげたら良いんじゃない?」

 

「私が、御奉仕?」

 

「そう!いつもして貰ってるんだから、逆に奉仕してあげれば彼も喜ぶわ!きっと!」

 

私、喜んでいるわけじゃないけど。

ともあれ、お姉様の案も悪くないと思い、侍女に頼んで制服(メイド服)を貸して貰った。

ちなみに、

一番小さな侍女の物を借りても大きかったので、倉庫に眠っていた最小サイズを着ることになったのはここだけの話。

 

そして、彼の部屋で私は待つ。

フフフ…どう御奉仕しようかな?

いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも

勝手に部屋に入って、

お風呂に入ったら着替えを持ってきたり、

身体を洗おうと突撃してきたり…!

これを機に、いつも私がどんな気持ちなのかを思い知らせてやります…!フフフ…!

そして…

扉は開け放たれた。

 

「お、お帰りなさいませ、ご主人様。」

 

考えていた出迎えの辞と、よもや私が部屋に入っていたことが面食らったようで、目を丸くして固まっているブライアンさん。

フフフ…ちょっと恥ずかしいけど、第一段階は概ねせいこ…

 

「リリィ様!」

 

ガバッと、勢いよく抱き着かれた…!

 

「えっ?えっ?」

 

「あぁ…リリィ様、大変愛らしゅう御座います!

ロングスカートのメイド服…

芸術品と思しきリリィ様の髪…

リリィ様の小柄な体躯…

それらが渾然一体となり、まさにこの世の奇跡と呼ぶに相応しい…!」

 

「あ、ぁぅぁ……!」

 

ぎゅぅっと抱き締められて、私の方がガチガチになってしまっている。

さらに密着していることで、彼から男性特有の匂いがダイレクトに伝わってきて、頭をクラクラさせていく。

そして勢いそのままにグラリとバランスを崩して後方へ倒れ込む。

そのまま床に倒れていたら危なかったけど、ベッドだったから怪我はない。

けど、別の意味で危なかった。

抱き締められたままベッドに倒れ込んだから、当然私と共にブライアンさんも倒れてくる。

つまり今、私はブライアンさんに覆い被さられる様にベッドに倒れているのだ。

 

「ぶ…ブライアンさん…?」

 

男の人にベッドへ押し倒される=これからめくるめくオトナの時間を体験するだろうという予想を、私は幼いながらに彷彿できた。

 

高まり、早まる鼓動。

 

紅潮していると解る顔。

 

これから私は、オトナの階段を上るシンデレラになるのだろうか?

そんな大きな不安と、ほんの少しの期待。

だがそんな淡い想いは、すぐさま崩れ去る。

 

「くぅ……くぅ……。」

 

「へ…?」

 

耳元で聞こえるのは、安らかな寝息。

横目で見遣れば、ブライアンさんは私を抱き締めながら目を閉じて寝ていた。

思えばブライアンさんは私が起きている時は大抵起きていた。それに休暇を取っている所なんてここ数週間見なかった。

つまり…疲労困憊になっていたと言うのがまざまざと理解できた。

押し倒された、と思っていたのは、抱き締めたまま力尽きて倒れ込んで寝てしまった、と言うことなのだろう。 

 

「全く…無理しすぎなんだから…。」

 

御奉仕はやり過ぎだけど、でも我が身を省みずにと言うのは私の望むところでもない。

倒れられたとあっては、私の夢見が悪い。

だから…

 

「今は…ゆっくり休んで下さい。」

 

無茶しすぎの私の騎士を、そっと背に手を回して抱き締めて労う。

彼の手が緩むまで、私は彼の背を撫でて、まるで幼子をあやすように安眠を促していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……。」

 

私は、薄らと目を開く。

映ったのは、私の部屋の天井。

私の部屋のベッドの上のようだ。

何故私はベッドで寝ているのだろうか。

確か昨日は…

部屋に戻って…

部屋には誰かいた。

そう、天使が居たのだ。

そこまでは覚えている。

そこからの記憶がない。

どうやってベッドで寝たのか。

その天使がどうなったのか。

それを覚えていない。

 

「あ、目が覚めましたか?」

 

視界の隅から、まるで見下ろすように顔を覗かせたのは、天使…リリィ様だった。

その服装は、城の侍女が身に纏うメイド服。

そう、それが最後の記憶だった。

 

「リリィ様…?」

 

「あ、起きちゃダメですよ。」

 

身体を起こそうとすれば、身体を押さえられて再び横にさせられる。

私の後頭部を、私の枕とは比べものにならないほどの柔らかな物が迎え入れる。

今のこの状況…

私は正に、リリィ様に膝枕をして頂いていた。

 

「ホントに…いきなり倒れ込んでくるからびっくりしました。」

 

「倒れ込む…?私が?」

 

「えぇ、私も巻き込まれて、ベッドにボスン…ですよ。」

 

ぷくっと頬を膨らませるリリィ様。少し怒っているのだろうが、それがまた愛らしい。

しかし…まさか倒れ込むなどと…どうやら私も修行が足りないようだ。これは鍛練を追加して…

 

「…もしかして、倒れ込んだのが修練不足だから、もっと鍛えよう…なんて考えてませんか?」

 

…何故バレた。このような無様な姿を曝しておいてそのままで居るなど、私には…

 

「どうせ、私の前で醜態をさらして、何もしないでいるなんて無理だ。って理由でしょう?」

 

何故筒抜けている…?

リリィ様は超能力者…?

否!愛故の以心伝心…!?

 

「ブライアンさん、変なとこで単純で顔に出るんですよ。さっきもちょっと苦虫をかみつぶしたような顔してましたし。」

 

「いやしかし…私の姫君の前でこのような醜態をさらして、何もしないというのはやはり…。」

 

ぺしっ!

額に痛みが走る。

が、鋭い痛みというわけでもない軽いもの。

それはリリィが私の額を軽くはたいた事によるもの。

 

「じゃあ、無理してこんな風に倒れて、そのお姫様に心配かけるのもブライアンさんの本意ですか?」

 

「いや…そう言うわけでは。」

 

「前に私が風邪を引いたときに言いませんでしたか?私のために貴方が犠牲になるのを認めないって…。騎士は確かに護ることを信条としているのでしょう。それは否定しません。ですが、護るのと身代わりとなるのとは違います。私の騎士と名乗るなら…その身を案じてください。私の騎士に求めるのは…ただそれだけです。」

 

決して侮っていたわけでもない。

だというのに、5つも歳の離れた少女に、私の騎士としての矜持を説かれることになろうとは。

だが改めて身に染みる言葉だった。

我が身が無ければ、護るべき方を護ることが出来ない。

己の保身を第一とするわけではない。だが、私自身の万全無くしていざというときにリリィ様を護れようか。

 

「申し訳ありません。リリィ様。私ブライアンめは、少々軽率でした。」

 

「本当にです。倒れ込んだときは、少し心配したんですよ?私を心配させた罰として、このまま私の膝枕でゆっくり休むこと。良いですね?」

 

「これはこれは…罰というよりも御褒美ですね。」

 

「じゃあ…私の騎士様に、普段のお礼と言う名の御奉仕、と言うことで。」

 

「リリィ様からの御奉仕……何と甘美な響き…。では…御言葉に甘えて…少し…休ませて貰います。」

 

「はい。ごゆっくり、お休み下さい。」

 

眠りに誘うかのように、リリィ様は私の頭を優しく撫でる。

くすぐったく、そして心地よいその愛撫に身を委ね、私は再び意識を手放した。

この愛しき姫を、私が護る。

その確固たる決意を新たに胸に刻んで。




解ってるよ!
だから読者の皆さんに、ブライアンの変態御奉仕を見せ付けなきゃならないんだろう!?
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